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見た目の異常はないのに舌がピリピリと痛む…考えられる病名は? 受診先はどこ?

 更新日:2023/03/27

舌は通常なら痛くありません。しかし、傷やできものなどがないにも関わらず、しびれたような違和感を覚えるとしたら。「斎田デンタルクリニック院長」の斎田先生によると、その名も「舌痛症(ぜっつうしょう)」という“不思議な”病気があるそうです。受診先も含めて、詳しい話を伺いました。

斎田 尚貴

監修歯科医師
斎田 尚貴(斎田デンタルクリニック 院長)

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鶴見大学歯学部卒業。鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座入局。歯科口腔外科を中心に一般歯科クリニック勤務。2020年、神奈川県横浜市に「斎田デンタルクリニック」開院。患者さん一人ひとりに治療説明をして向き合い、合意の上で精度の高い治療の提供を心がけている。日本口腔外科学会口腔外科認定医、厚生労働省認定歯科臨床研修指導医。日本口腔インプラント学会会員。

舌ではなく、「心」の問題かもしれない

舌ではなく、「心」の問題かもしれない

編集部編集部

舌の状態はなんともないのに、慢性的な痛みが続きます。

斎田先生斎田先生

調べてみないとわかりませんが、「舌痛症」と呼ばれている病気かもしれませんね。1日2時間以上の痛みが3カ月以上続いている場合で、原因となる病変などを特定できないと、舌痛症と診断されます。

編集部編集部

隠れたできものや腫瘍などではないのですか?

斎田先生斎田先生

もちろん、その可能性はあります。ただし、腫瘍や前がん病変なら“そうだとわかる”ので、舌痛症には含まれません。問題は、器質的な病変がないにも関わらず痛みを生じさせているケースです。「どうして痛いのだろう」と、不安が次々に高じてしまいます。

編集部編集部

そうなると、痛みの原因ってなんでしょうか?

斎田先生斎田先生

舌痛症は原因が解明されていませんが、中高年のうつ病や神経症などの「精神科領域の疾患」が関係しているかもしれません。女性かつ、更年期以降の患者さんが多いことも特徴で、当院比にすると、約9割といったところでしょうか。ある種の更年期障害とする見方もあります。

編集部編集部

舌痛症の症状は、「痛み」のほかにもありますか?

斎田先生斎田先生

やけどのような「しびれる感覚」や「味覚の変化」、「乾き」などを訴える患者さんもいらっしゃいます。捉え方は人それぞれですが、舌の先や横側に表れることが多いようです。こうした主訴は、リラックスしているときほど強く表れ、なにかに集中していると気にならなくなります。

受診先としては、まず歯科口腔外科を

受診先としては、まず歯科口腔外科を

編集部編集部

診断が難しそうですが、どのように診ていくのですか?

斎田先生斎田先生

さまざまな病気を除外診断していきます。例えば、舌の不随意運動が起きていないかどうか、入れ歯や詰め物などが当たっていないかどうか、粘膜疾患が診られないか、血液検査で異常値が出ていないかなどですね。これらのいずれにも該当しないと、舌痛症の可能性が高まります。

編集部編集部

血液検査は意外です。どのような観点なのでしょう?

斎田先生斎田先生

鉄分や亜鉛などが足りていないと貧血を起こし、それが原因で痛むことも考えられます。また、口腔カンジダ症のような菌による感染症も、血液検査で判明します。

編集部編集部

精神疾患なら、受診先は「精神科」ということになりますよね?

斎田先生斎田先生

入口としては、お口の粘膜疾患が扱える歯科口腔外科で構わないと考えます。ほかのお口の病気かもしれませんし、ストレスなどの環境要因を伺い、変えることで改善する場合もあります。いよいよもって舌痛症が疑われたら、血液検査のできる総合病院や、程度によっては心療内科をご紹介しています。

編集部編集部

一部で、耳鼻咽喉科の受診を推奨しているのはどうしてでしょう?

斎田先生斎田先生

詳しくはわかりませんが、甲状腺の異常でも舌の痛みが出るからでしょうか。しかし、最も怖いのは「舌がん」の可能性です。その点でも、口腔がん全般に詳しい歯科口腔外科の受診を推奨します。

ポジティブな思考が症状を軽減する

ポジティブな思考が症状を軽減する

編集部編集部

ところで、舌痛症の治療は可能なのでしょうか?

斎田先生斎田先生

入れ歯が当たっているケースのような、器質要因なら治療は可能です。また、前述した環境要因へのアプローチで解決する場合もあります。しかし、1カ月ほど向き合ってみて改善しないようなら、心療内科での治療が必要とされるでしょう。

編集部編集部

その場合、回復までに時間がかかりそうですが?

斎田先生斎田先生

1年程度の通院が必要となるかもしれません。認知行動療法などにより、「病気と向かい合える心構え」を培うことになると思います。「どうして私だけが」などのネガティブ思考から、「こうやって乗り越えていこう」というポジティブ思考への切り替えが求められますね。

編集部編集部

もし我慢できるレベルなら、いずれ自分で克服できますか?

斎田先生斎田先生

ご自身でポジティブ思考へもっていけるかどうかです。通例なら、病変が認められないので、むしろ「不安になる」と思われます。また、口内炎のお薬を服用するような間違った方向に進みかねませんので、早々に受診してください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

斎田先生斎田先生

舌にかかわらず、「痛みはなにかしらのサイン」ですから、決して放置しないようにしてください。医師として懸念するのは、やはり「口腔がんの可能性」です。実際、痛みの自覚が半年前からあって、調べてみたら舌がんのステージⅣだったというケースもありました。命に直結しかねませんので、きちんと調べましょう。

編集部まとめ

心因性の原因で舌が痛むこともありえるのですね。ストレスからくる頭痛や胃痛もありますから、「そういうことが起こりえる」ということを知っておきましょう。その際、舌がんや器質的疾患の可能性もありますから、ファーストチョイスとしては、歯科口腔外科を受診するといいでしょう。迷っている半年が余命を決定づけた場面も、実際にあったそうです。

 

舌に関する 症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

医院情報

斎田デンタルクリニック

斎田デンタルクリニック
所在地 〒221-0822 神奈川県横浜市神奈川区西神奈川3-17-11 2F
アクセス 東急東横線「東白楽駅」 徒歩5分
東急東横線「白楽駅」 徒歩7分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師