ラミネートベニア治療の流れ|メリットや注意点、費用相場も解説
更新日:2025/08/22

短期間で歯を白く、あるいはきれいな歯並びにできる方法としてラミネートベニアが注目されています。数回の通院が実現できるその治療とは、どのような方法なのでしょうか。 本記事ではラミネートベニア治療の種類や流れ、メリット、デメリットなどを詳しく解説しています。さらに後悔しないための注意事項や、大切な費用も紹介します。 周囲がうらやむきれいな歯にしたいとお望みの方に、参考になれば幸いです。

監修歯科医師:
石毛 俊作(大神宮デンタルクリニック)
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東北大学歯学部卒業。千葉大学医学部附属病院 歯科・顎・口腔外科 臨床研修医。千葉大学大学院 医学薬学府 医学博士。独立行政法人地域医療機能推進機構。船橋中央病院。歯科口腔外科/インプラントセンター勤務。いとう歯科クリニック勤務、海岸歯科室勤務。
目次 -INDEX-
ラミネートベニア治療の基礎知識
ラミネートベニア治療とは、歯の表面を少しだけ削り、セラミック製のパネルを接着剤で貼りつける治療法です。ネイルチップ(付け爪)をつけるようなイメージです。
何らかの原因で前歯が変色したり、歯の間にすき間があったり、歯列にがたつきがあったりして外観が気になる場合に審美的に改善するために行われます。
この治療で重要なポイントは、元の歯の表面を覆うエナメル質の保存です。エナメル質が十分に残せていれば、歯とラミネートベニアとの接着が強固になり、耐久性が向上します。
また歯髄に影響が及ばず、健全な歯の構造が維持できる点でも評価できる方法です。
ラミネートベニアの種類
ラミネートベニアではできるだけ切削量を少なくするため、既存歯への負担が軽くて済みます。リスクの少ない審美性の改善手段です。
ラミネートベニアの治療では、使う材料が3種類あります。まず安価で耐久性が低いハイブリッドセラミック、そして硬く透明感があるe-max、さらに強度が高いジルコニアがあります。それぞれ希望や適性で選択が可能です。
また、技術的に見た場合は3つに大別されます。治療の目的によって使い分けられる方法で、それぞれ個別に解説します。
フルラミネートベニア
フルラミネートベニアは、一般的なラミネートベニアの治療法です。前歯の唇側表面のエナメル質をごく薄く全面にわたって切削し、その型を取って作ったシェルを接着剤で貼りつけます。 歯が変色している場合や形が不ぞろいな場合に、外観を整える目的で行われる方法です。従来のかぶせ物よりも削る量が少なく、歯の負担を軽減できます。 耐久性は一般的に10~15年、あるいは20年程度とかなり長く使えます。ただし、接着剤の寿命はもっと短いとされるため、定期的な検診は必須です。パーシャルラミネートベニア
パーシャルラミネートベニアは、歯と歯のすき間を埋めたり、欠けた部分を補修したりする部分的な治療法です。 すきっ歯が目立つ場合とか、何かにぶつかるなどで歯が欠けた場合に適応になります。部分的なすき間を埋める治療で、治療そのものの難度は高くはありません。 ただ、周囲の色調との整合性を取る必要があります。自分の歯と補修材の境目を、目立ちにくいように自然な見た目に仕上げるのが治療の大きなポイントです。ノンプレップラミネートベニア
ノンプレップラミネートベニアは、基本的に歯を削らない治療法です。ほかの治療では多少なりとも自分の歯を切削しますが、この方法ではごく薄く作ったシェルを貼り付けるだけです。 削らずに貼り付ける治療なので、ごく薄いシェルであっても貼り付けた歯は大きくなります。そのため、大きすぎる歯を小さくはできません。 ほかの方法のように削ってしまえば歯はもとに戻りませんが、ノンプレップラミネートベニアなら歯はそのまま残ります。こうした特徴的なメリットがある治療法です。ラミネートベニア治療の流れ
ラミネートベニア治療は、欠けた歯や小さな穴が開いた歯を治療する場合もありますが、大半は審美的要素の強い治療です。
つまり、外観をよくする目的で行うもので、通常の歯科治療のような咀嚼機能の改善などを目的にする治療とは流れもかなり異なります。
治療そのものが特徴的なラミネートベニア治療の流れを、以下で解説します。
カウンセリング
ラミネートベニア治療は審美的要素が大半です。歯科医師と患者さんとでイメージが食い違っていては治療が成功しないため、治療のゴールである完成形の共有が極めて重要です。 初回のカウンセリングでは、歯科医師がラミネートベニア治療の全容を詳しく説明します。そのうえで、患者さんが考えている希望や、何をどう改善したいかを尋ねます。 患者さんも、自身が不安に感じていることや、疑問な点を遠慮せずにすべて話しておくことが大切です。 こうした一連の流れのなかで、ラミネートベニアが本当に適切な治療法なのか、かぶせ物や詰め物ではどうなのかも並行して話し合われます。すべて終わると、双方合意のもとでの治療計画の完成です。歯の表面処理と型取り
カウンセリングが終了次第、ラミネートベニアの治療開始です。まず歯のエナメル質をごく薄く削ります。歯髄に届くことはありません。 仮歯を試着して歯の長さや外からの見た目、噛み合わせなどを確認します。その後型取りを行なって初日は終了です。歯科医院により色合わせのための写真撮影を行なう場合があります。 この型取りで装着するシェルの形が決まるため、治療の過程では重要な場面です。また、撮影した写真や色見本を見ながら、シェル完成時の色も決まります。ラミネートベニアの作製
型取りが終わったらラミネートベニアの作成開始です。型取り時に患者さんも含めて色合わせも行われており、それにしたがって正確に作られます。
作業はラミネートベニアの作成経験が豊富な歯科技工士が担当します。かかる時間は個人差がありますが、おおむね1~2週間程度で完成です。
ラミネートベニアの接着
ラミネートベニアができたら装着です。まずお口のなかに入れてみて、形や色の見え方、噛み合わせを確認します。 問題なければ光に反応する接着剤を塗ってお口のなかに固定し、特殊な光を当てて固まらせると完成です。 固まったら研磨して治療は終了します。ただし、これですべてが終了ではありません。ラミネートベニアの接合部分は、むし歯や歯周病になりやすい場所です。 日々の歯磨きが大切なのはいうまでもありません。しかし、それだけでは磨き残しが出てしまう可能性があるため、定期的に歯科医院で検診を受けることが長持ちさせるコツです。ラミネートベニア治療のメリット
歯の見た目が気になる場合、改善するにはさまざまな方法があります。代表的な方法は、すきっ歯や乱杭歯なら歯列矯正治療、変色や欠けではかぶせ物や詰め物などです。
そのなかでもラミネートベニアを選択するのはどのような理由があるのでしょうか。ラミネートベニア治療のメリットを紹介します。
審美性が高い
メリットとしてまず挙げられるのは、審美性の高さです。貼りつけるシェルはセラミック製の薄い板で、天然歯に近い透明感と色調を持ちます。 自分の歯と同じような質感に調整でき、自然な見た目に仕上がるために審美的に大変優れた治療法です。 薬剤の影響や体質など、歯の色のコンプレックスで長く悩んできた方でも、理想的な白い歯が自分のものにできます。 ホワイトニングでは白くならない歯や、色ムラになる歯でもきれいになります。着色や劣化しにくい材質なので、適切な手入れで長期間きれいなまま維持が可能です。耐久性が高く変色しづらい
ラミネートベニアに使うセラミックは、大変硬く汚れが付きにくい特性を持つ材料です。これがそのまま耐久性や変色しにくいメリットにつながります。 素材としてよく使われるセラミックのe-maxは、歯のエナメル質と同等の硬さです。さらに、ジルコニアはエナメル質をはるかに超える硬さです。 このような丈夫な素材を使うため、耐久性は大変高く変色も見られません。経年劣化が起こりにくく、耐久性に関しては20年以上長持ちした事例も見られます。治療期間が短い
ラミネートベニアの治療は、通常数回の通院で装着が終わるメリットがあります。
カウンセリングと事前検査、色合わせ、型取りで1~2回の通院が必要です。シェルが完成するまでに1~2週間かかりますが、でき上がって装着すればその日で治療は終わります。
同じような治療で、かぶせ物の場合は3~4週間かかるのが普通です。また、歯列矯正なら平均で2年程度必要になります。
こうした治療と比べると、2~3回の通院で1~2週間後には自分の歯と区別できないきれいな歯ができるのは、画期的な短期間治療です。
歯並びも整えられる
ラミネートベニア治療では、歯と歯のすき間を埋めたり、捻れて生えた歯をほかの歯の並びに揃えることができます。 歯列矯正治療のように物理的に歯を動かさず、出過ぎた部分を削りへこんだ部分を盛り上げる手法で歯並びを整える治療です。 歯の間にすき間が多く手入れが大変な方や、他人の整然とした歯並びをうらやましく感じてきた方には、自然で美しい歯並びが簡単に実現できるのは大きなメリットです。 ただ、ラミネートベニアによる対応は、歯列の乱れが軽度な場合に限られます。本格的な歯列矯正になると、歯列矯正治療にはおよびません。ラミネートベニア治療のデメリット
ラミネートベニアにはデメリットも存在します。治療方法によるデメリットや材質によるデメリットなど、さまざまな不都合な部分も併せ持つ治療法です。
ラミネートベニアにもあるデメリットを紹介していきましょう。
歯を削る必要がある
ラミネートベニアの種類のうち、ノンプレップラミネートベニア以外の手法では健康な歯を削るのが一般的です。 変色やすき間が見えるだけで、機能的には問題のない健康な歯を削ります。その結果むし歯や歯周病になるリスクが発生し、余分な負担がかかって歯の寿命を縮めることを理解する必要があります。 一度削ればもとに戻せない点をよく考え、審美的な魅力だけにとらわれず、メリットとデメリットの両方を考えて判断しましょう。欠けたり割れたりする可能性がある
ラミネートベニアに使われるセラミックでは、e-maxかジルコニアがよく使われます。これらの材料は硬くて耐久性がありますが、衝撃に弱く欠けたり割れたりしやすい性質です。 日常生活でも歯に強い衝撃が加わる場合は十分あり得ます。また、強く噛みしめる癖や就寝中の歯ぎしりがある方の場合、割れたり欠けたりする可能性が高くなります。保険適用外の自由診療である
ラミネートベニア治療は目的が審美治療のため、健康保険は適用されません。治療費の金額は歯科医師の裁量に任される自由診療扱いです。 治療費は歯科医院によって相当なバラつきがあり、一般的なかぶせ物などのむし歯治療より高額な費用を支払うことになります。適用できないケースがある
ラミネートベニア治療は、誰でもどのような歯でも治療できるわけではありません。 治療が適用できないケースは以下のとおりです。- 奥歯
- 噛みしめ癖や歯ぎしりがある
- 歯並びが悪すぎる方
- すき間が大きいすきっ歯
- 変色部の色調が濃すぎる
- 進行したむし歯
ラミネートベニア治療を受けるときの注意点
短期間できれいな歯が実現するラミネートベニア治療は、削った歯はもとに戻せないなど微妙な部分もある治療です。また、リスクの可能性や素材の選択などの重要なポイントもあります。
治療を決心する前に押さえておきたい注意点を紹介しましょう。
歯の削る量を事前に確認しておく
ラミネートベニア治療では、歯の表面のエナメル質を薄く削るのが一般的です。ただ、歯は削るともとには戻せません。 そして、削ったことで起こるリスクがあるため、事前に削る量を確認しておく必要があります。リスクは以下の点が挙げられます。- 知覚過敏が起こる
- むし歯や歯周病にかかりやすくなる
- 歯が弱くなる
予算や生活スタイルに適した素材を選ぶ
ラミネートベニア治療の素材は、ハイブリッドセラミックやe-max、ジルコニアの3種類から選べます。長い間満足感をもって使えるラミネートベニアを得るためには、予算や生活スタイルに適した素材の選択が大切です。 まず予算面では、プラスチックとセラミックの混合物のハイブリッドセラミックが優位です。ただし、審美性や耐久性ではほかの素材におよびません。 ラミネートベニア治療の目的でもある審美性を重視するなら、自然な白さと透明性に優れたe-maxが適切な素材です。審美性のほか耐久性も十分備えています。 見た目より耐久性にこだわる場合、e-maxもジルコニアも優れた素材です。ただ、硬度はジルコニアが高いため、噛みしめる力が強い方はジルコニアが適しています。治療後は定期的にメンテナンスを受ける
ラミネートベニア治療の完了後、何もしないと劣化が進み、はがれたりむし歯になったりして長く使えません。治療直後の状態を保つには、歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける必要があります。 口腔内の歯垢清掃や歯石除去などで、むし歯や歯周病の予防や早期発見、早期治療を目指すためのチェックおよびメンテナンスです。 ラミネートベニアの寿命は一般的に10~20年といわれます。一方で接着剤の寿命は5年ともいわれるため、素材の劣化面での対応でもメンテナンスは重要です。ラミネートベニア治療の費用相場
ラミネートベニアの治療費用は健康保険の適用外のため、各歯科医院が独自に設定しています。同じ材料で同じ治療をしても、歯科医院ごとに違う料金です。
一般的なフルラミネートベニア1本あたりの治療費は、110,000~143,000円(税込)程度になります。使用材料はe-maxとジルコニアで、差を設けないか、差があってもジルコニアがやや高い程度です。
編集部まとめ
白くきれいな歯並びが短期間で実現するラミネートベニアを、治療の流れを中心に解説しました。
ラミネートベニアは技法や素材により種類があります。どれを選ぶかは事前のカウンセリングで決定しますが、削った部分は戻せないことを理解し、慎重な判断が必要です。
治療は数回の通院で完了しても、治療後のメンテナンスは必須です。また、治療にはメリットとデメリットがあり、事前に理解すべき注意事項も存在します。
これらを考えあわせて、自分に適したラミネートベニア治療を選びましょう。
参考文献



