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歯周病の初期症状とは?見逃しやすいサインと進行時の変化を解説

 公開日:2026/04/07
歯周病の初期症状とは?見逃しやすいサインと進行時の変化を解説

歯周病は症状が進行していない初期のうちに治療を行うことが大切ですが、そもそも初期症状がどのようなものかが分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事においては、歯周病の初期症状や症状の進行による変化などについて解説し、早めに治療につなげるためのポイントなどを紹介します。

松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

歯周病はどのような病気?

歯周病はどのような病気?
歯周病は、むし歯と並んで日本人が歯を失う要因の一つであり、歯周病とむし歯は歯科の二大疾患ともいわれています。
初期症状のうちは大きな変化がないのですが、歯周病が重度に進行すると歯を支えている骨が溶かされてしまい、歯茎が下がっていきます。そして、そのまま放置していると歯がぐらつき始め、場合によっては歯が抜けていく状態となります。
骨が溶かされるというと痛そうに感じますが、歯周病はむしろ痛みがない点が怖いところで、自覚症状が出にくいため、病気に気が付かずに症状が悪化してしまう可能性が高いという特徴があります。
まずは歯周病の原因や、初期症状から重度までの診断基準などを解説します。

歯周病の仕組みや原因

歯周病は、主に口腔内の細菌が作り出す毒素などによって生じます。
単一の細菌が原因ではなく、ポルフィロモナス・ジンジバリスやアグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンス、タネレラ・フォーサイシア菌といった複数の細菌が原因菌で、それぞれの細菌が作り出す毒素が歯肉の炎症や歯を支える骨を溶かすといった働きをします。
歯周病の原因菌は元々口腔内に存在している常在菌で、少量であれば特に問題はないのですが、口腔内が不衛生であったり、免疫力が低下していたりすると増殖して多くの毒素を作り出すようになります。逆に、歯磨きをはじめとしたセルフケアや定期的な歯科医院での歯のクリーニングなどによって口腔内が清潔に保たれている場合は、細菌の増殖が抑えられているため歯周病が進行せず、健康な口腔環境が維持されやすくなります。

歯肉炎や歯槽膿漏との違い

歯肉炎や歯槽膿漏は、歯周病の症状の一つです。
歯肉炎は歯周病の初期から生じる症状で、歯の周りにある歯肉(歯茎)が、細菌が作り出す毒素や酸などの影響によって炎症を引き起こすというものです。炎症によって歯肉が腫れたり、出血しやすくなったりします。
一方、歯槽膿漏は歯周病がある程度進行してから生じるものです。歯槽とは歯茎のことであり、歯茎から膿漏、つまり膿が漏れ出してくるような状態を歯槽膿漏と呼びます。元々、歯周病は歯槽膿漏と呼ばれてきた歴史があり、現在の日本歯周病学会も以前は日本歯槽膿漏学会という名称でした。現在は歯肉炎も含めて歯周病と呼ばれることが一般的です。

初期症状から重度歯周病までの診断基準

歯周病は、アメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病連盟(EFP)によって初期症状であるステージ1から、重度歯周病のステージ4まで、重症度に応じて4つの段階に分類されています。
最も軽度な初期症状であるステージ1は、歯間部の歯周ポケットの深さが1~2㎜で、X線検査で確認できる骨吸収の程度が歯根の長さの15%未満という状態です。歯の喪失はなく、治療しやすい状態といえます。
ステージ2は歯周ポケットの深さが3~4㎜で、骨吸収が歯根の長さの33%未満の状態です。歯の喪失は出ておらず、適切な治療を行えば歯を失わずに済む可能性が高い段階といえます。
歯周ポケットの深さが5㎜を超えたり、骨吸収の程度が歯根の長さの33%を超えると、ステージ3や4に分類されます。ステージ3は4本以内の歯の喪失、ステージ4は5本以上の歯の喪失がある状態で、特にステージ4にまでなってしまうと、多くの歯を失うリスクが高まります。
なお、それぞれのステージは治療の複雑度によっても分けられ、歯根の分岐があるなど治療の難易度が高い歯の場合も高いステージとして扱われる場合があります。

歯周病の初期症状として現れやすいサイン

歯周病の初期症状として現れやすいサイン
歯周病の初期症状として現われやすいサインは下記のとおりです。

歯茎の腫れや赤み、出血

歯周病の初期症状で現れやすいサインの一つが、歯茎の腫れや赤みです。初期の歯周病は歯肉炎から生じるものであり、細菌が作り出した毒素によって歯茎が炎症を起こすため、腫れや赤みが生じます。
また、炎症を起こしている歯茎は少しの刺激でも出血しやすく、歯磨きの際に歯ブラシがあたる刺激や、食べ物を噛んだときの刺激などによって出血が生じる場合があります。

口臭の変化や口腔内のねばつき

歯周病によって口腔内の細菌が増殖すると、細菌が口腔内のタンパク質を分解することで、揮発性硫黄化合物(VSC)というガスが発生します。特に、歯周病の原因である細菌はメチルメルカプタンという成分を作り出すため、玉ねぎが腐ったような臭いが口臭に混じるようになります。
また、口腔内の細菌は活動によってネバネバとした物質を生成します。このネバネバは歯に細菌が張り付いて巣にするための成分でもあり、蓄積されると歯垢として歯磨きでも除去しにくい細菌の塊になります。歯周病の初期症状として口腔内の細菌が増殖するとネバネバ成分が多く生成されるようになるため、お口のなかがねばついたような状態になります。

歯や歯茎の違和感、知覚過敏

歯周病によって歯茎に炎症が生じると、歯茎がむずむずするような感覚があったり、噛み合わせがいつもと違うように感じたりする場合があります。初期症状の段階では強い違和感までは現われにくいですが、進行するとより違和感が強まる可能性があります。
また、歯周病によって歯茎が下がるなどして、歯の根の部分に刺激が伝わりやすい状態になると、知覚過敏のような痛みが生じることがあります。これは、歯茎におおわれている歯根部にはエナメル質と呼ばれる層が存在しないため、冷たいものなどをお口に含んだ際の刺激が神経に伝わりやすいためです。

歯周病の初期症状に気が付きにくい理由

歯周病の初期症状に気が付きにくい理由
歯周病は初期症状のうちに気付いて治療を行えれば健康状態を回復させやすい病気である一方で、そもそも初期症状に気が付きにくいという特徴がある病気です。
初期症状に気が付きにくい理由を解説します。

痛みなどの自覚症状が現われにくい

歯周病の特徴として、痛みなどの自覚症状が現われにくいという点があります。同じ口腔疾患のむし歯も痛みが現われにくいですが、むし歯の場合は重度に進行すれば強い痛みが生じ、治療の必要性を感じることができます。
一方、歯周病は初期症状どころか重度に進行しても痛みが現われにくく、気が付いた時には治療を行っても手遅れという状態になってしまう場合もあります。

症状の変化が緩やか

歯周病は、数ヶ月から数年単位でゆっくりと症状が進行していく病気です。日々の変化がとても小さいため、症状の進行による違和感などが現われにくく、初期症状や進行した症状が出ていても、歯周病を患っている本人はあまり気が付くことができません。
そのため、周囲から口臭や歯茎がさがっているという見た目の変化などを指摘されて、初めて気が付くというケースもあります。
また、症状の変化が緩やかであることからすぐに治療が必要と考えにくく、そのうち歯科医院を受診しようと考えていて、より病状が進行してしまう場合もあります。

初期症状を放置すると現れる歯周病の進行サイン

初期症状を放置すると現れる歯周病の進行サイン
歯周病は、初期症状として歯肉の赤みや腫れ、口臭などが現われやすい病気ですが、治療を受けずに放置していると、下記のような症状が現われる可能性があります。

歯周ポケットの深まりや歯茎の後退

歯周病の進行によって引き起こされる変化の一つが、歯周ポケットが深くなり、歯茎が後退する(下がる)というものです。これは歯周病によって歯を支えている顎骨が減少するためで、顎骨を土台としている歯茎も一緒に後退します。
歯茎が後退すると、歯が以前よりも長くなったように見えたり、歯茎におおわれていた部分から歯の神経に刺激が伝わりやすくなって知覚過敏が生じたりします。

歯がグラつく

歯周病が進行して顎骨が溶かされていくと、歯がグラつくようになります。強く噛んだときなどにグラつくような状態から、舌で押しただけで動く状態まで少しずつ進行していき、この状態を放置していると最終的には歯が抜け落ちてしまう可能性があります。

歯茎から膿が出る

歯周病によって歯茎が炎症を起こすと、炎症によって死滅した組織が膿となって蓄積していきます。そして、蓄積された膿が一定の量になったり、外部からの刺激などを受けたりすると粘膜が破れ、たまっていた膿が排出されます。この状態が歯槽膿漏と呼ばれる状態です。
歯周病は進行しても痛みが生じにくい疾患ですが、膿が蓄積されると歯茎が内側から圧迫され、痛みを感じることもあります。

歯周病を初期症状の段階で治療すべき理由

歯周病を初期症状の段階で治療すべき理由
歯周病は、なるべく早い段階、できれば初期症状の段階で治療することが重要です。なぜなら、歯周病の進行によって溶けてしまった顎骨は自然に回復することがないためです。
初期症状である歯肉炎の段階であれば、顎骨は溶けていないため、治療を行えば健康な口腔環境に戻すことができます。一方で、症状が進行して顎骨が溶けてしまった場合は歯周病の治療を行っても完全に元の状態には戻らず、歯が弱くなった状態でその後の人生を過ごさなければならない可能性があります。
歯周病ではなくても加齢によって骨の量は減少するため、歯周病によって早い段階で顎骨が減少している場合、将来歯が抜けてしまう可能性が高まるといえるでしょう。天然の歯が十分に残っていて、しっかりと噛めることは健康寿命を長くするためにも重要であるため、老後も元気に過ごすためには、歯周病はとにかく早めに治療し、顎骨を健康な状態に保ちましょう。

歯周病の主な治療法

歯周病の主な治療法
歯周病の治療は、主に下記のような方法で行われます。

初期症状の歯周病で行われる主な治療内容

初期症状の歯周病は、歯周基本治療と呼ばれる治療で改善が可能です。歯周基本治療は歯周病の原因である細菌を徹底的に除去し、身体の免疫機能による回復を待つというものです。
細菌の除去はスケーリングルートプレーニングと呼ばれる方法で行われます。スケーリングルートプレーニングはどちらも専用の器具を使用して歯の周囲についた歯石や歯垢を除去する処置で、スケーリングは歯茎より上の目に見える範囲、ルートプレーニングは歯茎の内側、歯周ポケット内の目に見えない範囲を対象としています。
歯周病が初期症状であれば歯周ポケット内に歯石が少ないため、スケーリングのみで治療を行える可能性がありますが、症状が進行して歯周ポケットの深い部分に歯石や歯垢が蓄積されている場合は、ルートプレーニングが必要です。スケーリングは麻酔なしで行える処置ですが、ルートプレーニングは痛みが生じやすいため局所麻酔下で行うのが一般的で、身体への負担が大きいため複数回に分けて口腔内全体のケアが進められます。
なお、歯石や歯垢を除去してもすぐに歯周病が治るわけではなく、汚れがない状態を維持して少しずつ回復させる必要があるため、一通り治療が終わったとしても定期的な通院が必要です。スケーリングルートプレーニングを受けるだけではなく、歯磨き指導でセルフケアの質も向上して、清潔な口腔環境を保ち続けることが重要です。

歯周病が進行している場合の主な治療内容

ルートプレーニングを複数回受けても歯周ポケット内に歯石が残り、歯周病の改善が見られない場合には、歯茎を切開して歯周ポケットの深い部分にある歯石を目視しながら取り除くフラップ手術が行われる場合があります。
また、歯周病の進行によって歯槽骨が減少してしまっている場合は、エムドゲインなどによる歯周組織再生療法も検討されます。歯周組織再生療法は、骨の成長を促進する薬剤を顎骨の周囲に充填する治療で、減少した歯槽骨を増強することで健康な口腔状態の回復を目指すものです。
そのほかにも、後退してしまった歯茎を補うため、歯茎の移植手術などが行われる場合もあります。

まとめ

まとめ

歯周病の初期症状は歯茎の赤みや腫れといった歯肉炎から始まり、放置していると顎骨が溶かされて歯がグラつくなどの症状が現れるようになります。
歯周病は痛みなどの自覚症状が現れにくく、進行スピードも緩やかであるため自分自身ではなかなか気が付けないという特徴がある病気で、気が付いたときには手遅れになってしまう可能性もあります。
また、初期症状の段階で治療を行えば治療による負担も小さく、健康なお口の状態を回復させやす一方で、重度になると元通りに回復することが困難な病気であるため、早期発見と早期治療のためにも、何か少しでも違和感があればすぐに歯科医院を受診することが大切です。
できれば症状がなくても定期的に歯科医院を受診し、歯周病の原因である口腔内の汚れを除去して、健康なお口を保つようにしましょう。

この記事の監修歯科医師