歯周基本治療とは?内容や費用、治療の流れを解説

歯茎の腫れや出血といった症状が気になり始めた際、歯科医院でまず提案されることが多いのが歯周基本治療です。この治療は、歯周病の進行を抑えてお口の環境を整えるための基礎となる大切な工程として位置づけられています。歯周基本治療にはどのような処置が含まれており、費用や期間はどの程度かかるのかを知ることは、安心感を持って通院を続けるための第一歩です。
この記事では、具体的な治療内容から外科手術が必要になるケースまで詳しく解説します。

監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
目次 -INDEX-
歯周基本治療の基礎知識

歯周病の初期から中等度の症状が見られる場合は、歯科医院にて歯周基本治療が行われます。ここでは、歯周基本治療の適用内容や費用、期間などについて解説します。
歯周基本治療とは
歯周基本治療とは、歯周病の原因となる歯垢や歯石を除去し、細菌に感染しにくい口腔環境を作るための治療を指します。具体的には、適切な歯磨き方法の指導やスケーリング、必要に応じた噛み合わせの調整や適合状態が悪い被せ物の除去などを行います。多くの症例が、この歯周基本治療を適切に行うことで改善に向かう傾向があるといわれています。
歯周基本治療が必要になるケース
歯周基本治療は、主に歯周病の初期から中等度にかけての症状がある方に検討されます。また、日本歯周病学会の指針によれば、歯周基本治療は原因やリスク因子を排除するための工程であり、歯周病の有無に関わらず、お口の健康を維持したい方に推奨される処置であると考えられています。
歯周基本治療にかかる費用と期間の目安
歯周基本治療にかかる費用と期間は、歯周病の進行度合いによってことなります。歯周基本治療に含まれるスケーリングやルートプレーニングなどは、保険適用の場合、1回あたり数千円程度の負担となる傾向があります。
軽度の歯周病であれば数回の通院で完了するため、総額でも1万円前後の治療費に収まる場合があります。一方で中等度以上の場合は、お口の状態を安定させるために数ヶ月以上の通院が必要となることもあり、その分費用負担も増えることが想定されます。正確な期間や費用については、診断に基づいた治療計画を確認することが望ましいです。
歯周基本治療の具体的な内容

歯科医院で行われる歯周基本治療の具体的な内容について解説します。
歯磨き指導
歯周病をはじめ、むし歯などの口腔トラブルを予防するセルフケアの基本は歯磨きです。歯周病の兆候が見られる場合は、これまでの歯磨きが十分ではなかった可能性があるため、方法の見直しが求められます。
歯科医院では、歯科衛生士や歯科医師による歯磨き指導を実施します。磨き残しが生じやすい箇所や、歯並びによって磨きにくい箇所など、一人ひとりに合わせて注意すべきポイントなどを伝えます。また、その方に適した歯ブラシや歯間ブラシなどの製品選びについても助言が得られます。
スケーリング
スケーリングとは、歯に付着した歯石や歯垢を除去することを指します。スケーラーという専用の器具を使用して、歯ブラシなどでは落とすことが難しい歯垢や歯石を物理的に取り除きます。手動で進める場合もあれば、超音波振動などを与えて砕きながら効率よく歯石を除去していく場合もあります。
細菌の巣である歯垢や、歯垢の蓄積を促進してしまう歯石を丁寧に除去していくことで、歯周病の原因を解消し、後は免疫力によって歯周病が改善するのを待ちます。
ルートプレーニング
ルートプレーニングとは、歯周ポケットの深部にスケーラーを差し込んで、歯石や歯垢をかき出す処置です。
ルートは根っこという意味の言葉で歯の根の面を意味し、プレーニングは平らに滑らかにすることを意味します。歯に付着した歯石や歯垢を除去するという点ではスケーリングと同じで、目に見える部分(歯茎よりうえの部分)に対して行うものをスケーリング、歯茎の内側の目に見えない部分に対して行うものをルートプレーニングと呼びます。
ルートプレーニングは、歯周ポケットの深い部分をキレイにすることで、歯周病の原因を取り除きつつ、歯肉が歯にもう一度くっつくように促す目的があります。
歯周ポケットという目視しにくい隙間に対して行われる処置のため、歯科衛生士の技術が求められます。ルートプレーニングは中等度以上の歯周病に対して行われ、スケーリングとセットで行われる場合があります。
なお、スケーリングはあまり痛みなどを感じることがありませんが、ルートプレーニングは歯茎の深い部分に器具を挿入するために痛みを感じやすい処置です。そのため、ルートプレーニングを行う際は麻酔注射などを行うことがあります。
身体への負担もスケーリングと比べて大きいことから、ルートプレーニングは一度にすべての歯に対して行うのではなく、お口全体を複数回にわけて処置することが多いです。
噛み合わせの調整
特定の歯や歯茎、顎骨などに負担がかかっていることが歯周病の原因となっている場合には、噛み合わせの調整が行われることがあります。
具体的には、噛み合わせを悪化させている歯を少し削ってかかる力を分散させるという処置が行われますが、歯並び全体の調整が必要な場合には歯列矯正などの治療が必要になることもあります。
噛み合わせを調整して特定の歯に強い負担がかからないようにすることで、歯周組織が安定し、歯のぐらつきや炎症を軽減させ、歯周病の進行を抑えることにつながります。
必要に応じた詰め物や被せ物の再治療
歯周病の原因が、詰め物や被せ物に関係している場合があります。噛み合わせに問題があったり、高さが合わず負担がかかっていたり、隣接する歯との間に隙間がなく歯磨きがしにくかったりといった状況は、歯周病を進行させる要因となります。そのような場合は、詰め物や被せ物を付け替えたり、高さを合わせたりといった調整を行います。
また、被せ物が歯茎に当たって炎症を起こしている場合も、同様に再治療を行う必要性が生じます。
重度の場合の抜歯
歯周病が重度の場合や、これまでの治療でも改善が見られない場合には、やむをえず抜歯を検討することがあります。歯のぐらつきが大きく、安定させることが難しい状態であったり、歯周の炎症や歯垢の付着が著しくスケーリングなどを十分に行えなかったりする場合は、抜歯にいたる可能性があります。
抜歯を行う場合は、歯を抜いた部分の噛み合わせを補うための治療として、入れ歯やブリッジ、インプラント治療といった治療の検討も必要です。
歯周基本治療の流れ

歯周病と診断された際、どのような流れで治療が進められるのかを解説します。
歯周病の検査と診断
まずは、歯周基本治療が必要な状態かどうかを検査します。
歯周病の検査では、プローブと呼ばれる細い針状の器具を使って、歯周ポケットの深さと、歯茎からの出血や膿の有無を確認します。歯周ポケットは3mm以内が正常な範囲とされ、4mm以上の深さになると歯周病が疑われます。
さらに、レントゲンで骨の状態も確認します。骨が減少しているようであれば、歯周病菌によって内部で炎症や歯槽骨の吸収が起きている可能性があります。
そのほかに、口腔内の細菌状態や歯の動揺度なども確認します。染め出しによってプラークの付着具合をチェックしたり、採取した細菌を顕微鏡で観察したりすることもあります。
スケーリングやルートプレーニング
歯周病と診断されたら、スケーリングやルートプレーニングによって、歯垢の除去が行われます。スケーリングは初期の歯周病から対象になりますが、ルートプレーニングは歯周ポケットが深い中等度以上の歯周病に対して行われます。これらを組み合わせて行う治療は、SRPと呼ばれることもあります。
なお、スケーリングやルートプレーニングは一度にすべての歯に対して行うのではなく、複数回にわけて数本の歯ずつ対応していくことがあります。これは処置による口腔内への負担が強くなりすぎないようにするための配慮で、6回程度にわけて通院が必要になることもあります。
歯面清掃(PMTC)
歯科医院で行われる歯面清掃は、ブラシや研磨剤などを使って、すべての歯を清掃することをいいます。歯垢を除去したり、歯の表面にこびりついたバイオフィルムを除去したり、食べ物などによる着色汚れを取り除くなどの役割があります。
セルフケアでは落とすのが難しい奥歯の側面や、歯と歯の間に詰まった歯垢、歯の表面の汚れなども落とすことができます。こちらは歯周病基本治療の流れに含まれますが、予防治療の一環としても一般的に行われる処置です。
歯科医院によってはエアフローという細かい粒子と空気で歯の細かい汚れを除去する処置を行う医療機器を使用して歯面清掃を行う場合もあり、保険診療ではなく自費診療での処置を提供していることもあります。
一定期間後の再評価
歯周基本治療は、1回で終えることは少なく、2週間から4週間程度の間隔を空けて、その都度検査をして歯周病の状況を再評価していきます。前回の処置からの改善度合いなどを確認しながら、処置の頻度を決めたり、必要に応じて歯磨き指導などを継続したりします。
必要に応じて歯周外科治療を実施
歯周基本治療や歯磨き方法の指導だけでは改善が見られない中等度や重度の歯周病の場合は、歯周外科治療という外科的な処置が検討されることがあります。歯周外科治療とは、歯茎を切開して、隠れている汚れを直接見ながら除去するフラップ手術や、吸収された骨を再生させる骨再生手術などが挙げられます。
歯周基本治療で改善しない場合の外科治療

上記で触れた歯周外科治療について、代表的なものを紹介します。
フラップ手術
歯茎を切開し、歯の根元に近い部分を露出させ、隠れていた歯垢や歯石などの汚れを直接除去する手術です。ルートプレーニングでは届かないような歯周ポケットの深部に詰まった汚れがある場合に選択されます。
歯肉切除術
歯周病で腫れた歯肉や、増殖して大きくなった歯肉をメスやレーザーで切除する手術です。深すぎる歯周ポケットを改善することができ、汚れの管理をしやすくする狙いがあります。また、炎症箇所を取り払うことによって、再発を抑える効果も期待されます。切除後は一時的に歯肉が下がり、歯が長く見えたり知覚過敏が生じたりすることがありますが、少しずつ回復に向かいます。
骨移植術
骨移植術は、痩せた骨の量と強度を高める目的で行われる手術です。歯周病の細菌感染によって溶けてしまった歯槽骨を再生させることで、歯を安定させたり、噛み合わせを整えたり、将来的にインプラントなどができる状態を目指します。歯茎を切開し、歯槽骨に自身の骨や人工骨を充填して、再度歯茎を縫い合わせ、数ヶ月間かけて骨が再生するのを待ちます。
歯周組織再生治療
歯周組織再生治療とは、歯周病によって溶けてしまった骨や歯茎などの組織を再生させて、健康な状態を目指す治療です。特殊な薬剤を使用する方法や、特殊な膜を使って骨再生を促す方法などがあります。歯周組織再生治療は、将来的に歯を失う可能性を低減させる効果が期待されています。
歯周基本治療とメンテナンスの違い

歯周基本治療は、行われる内容が予防治療のメンテナンスに近い部分がありますが、治療とメンテナンスでは目的などに違いがあります。
実施する内容の違い
歯周基本治療では、歯磨き指導と、スケーリングやルートプレーニング、そして噛み合わせの調整が行われます。一方、メンテナンスでは、専用の機器を用いた歯面清掃や歯磨き指導が主に行われます。
保険診療で受けられる頻度の違い
保険診療における歯周基本治療は、一般的に月に1回または2回が目安とされています。実際には歯周病の進行具合によって段階的に通院回数や頻度が決められるため、歯科医師が診断を行っていきます。歯周病が中等度以上の場合は、月に1回から2回のペースとなる傾向があります。一方、メンテナンスは2ヶ月から3ヶ月に1回程度の頻度が一般的です。また、保険適用でメンテナンスが受けられる回数には、歯科医院の形態によって制限がある場合があります。
費用と期間の違い
歯周基本治療の1回あたりの費用は、歯周病の進行度や実施内容にもよりますが、保険適用で3千円から1万円程度となる場合があります。一方でメンテナンスの場合は、保険適用で2千円から3千円程度が目安です。
まとめ

歯周基本治療は、歯周病の原因となる汚れを取り除き、お口の健康を取り戻すために欠かせない治療です。日々の正しいセルフケアと歯科医院での専門的な処置を組み合わせることで、多くの症状は改善に向かうことが期待できます。もし基本治療だけで十分な結果が得られない場合でも、外科的な治療を選択することで歯を維持できる可能性があります。ご自身の大切な歯を長く守り続けるために、まずは現在の状態を正しく把握し、適切な治療計画を歯科医師と相談しながら進めていくことが大切です。
参考文献

