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全身
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

テタニーの概要

テタニーは特定の病気や臓器の機能低下などが原因で低カルシウム血症が起き、筋肉の不随意的な収縮やけいれんが現れる症状です。
低カルシウム血症は、体内の電解質がアルカリ性に傾き、アルカローシスが起こることによって生じます。
カルシウムを体内に吸収するビタミンDや、筋肉に入るカルシウムの量を調節するマグネシウムの不足によっても起こることがあります。
血液中のカルシウムは筋肉のなかに入り込んで収縮させるはたらきがあるため、不足すると筋肉の収縮がスムーズにいかず、無意識的に手足のふるえが起こります。

テタニーは適切な治療をおこなえば予後は良好ですが、原因疾患によっては症状を繰り返し、長期的な管理が必要になることがあります。
症状が続く場合は、テタニーの原因疾患の特定とそれに対する積極的な治療が重要です。
定期的な血液検査や症状の経過を追いながら、適切な治療を継続することが求められます。

テタニー

テタニーの原因

テタニーを引き起こす原因は、過換気症候群や副甲状腺機能低下症、腎臓や消化官の機能低下などです。
いずれにも共通するのは、血中カルシウム濃度の低下を引き起こすことによって、テタニーを発症させうるということです。

過換気症候群

過換気症候群はテタニーを引き起こす最も多い原因です。過呼吸により血液中の二酸化炭素濃度が低下して、アルカローシスが起こることで生じます。
過換気症候群によるテタニーは通常一時的なものであり、呼吸が落ち着くと症状は改善します。
過換気症候群は10〜20代の女性に見られることが多く、不安や緊張などの精神的なストレスによって起こる症状です。
うつ病や不安症、パニック障害が原因で頻発する場合は、精神科で病気に対する治療をおこなうことが重要です。

副甲状腺機能低下症

副甲状腺機能が低下すると副甲状腺ホルモンの分泌が減少し、血中カルシウム濃度が低下してテタニーが発生します。
副甲状腺ホルモンは、体内のカルシウム量が足りないときに骨に蓄えられたカルシウムを血液中に放出して調節する重要なホルモンです。
副甲状腺機能低下症は、遺伝的な要因や免疫の異常などによって発症します。

腎臓の機能低下

腎臓の機能が低下するとビタミンDのはたらきが阻害され、カルシウムが体内に吸収されにくくなるため、テタニーの原因になります。
慢性腎不全などの腎疾患がある場合は、腎臓内科や泌尿器科などで適切な治療が必要です。

消化管の吸収不良

消化管の不調により食べ物のカルシウムが体内に十分に吸収されず、テタニーが生じることがあります。
長期間の下痢や嘔吐が続いた場合も電解質のバランスが崩れてアルカローシスになり、テタニーにつながる可能性があります。

テタニーの前兆や初期症状について

テタニーの初期症状は手足のしびれや筋肉の拘縮で、血中カルシウム濃度の低下に伴って不随意的な筋肉の収縮やけいれんも見られやすくなります。
過換気症候群が原因で起こる場合は、過呼吸の症状が前兆になります。

テタニー発症時の手は、すぼめたような形(親指が内側に入り、他の指が伸びた状態)になるのが特徴で「助産師の手」と呼ばれます。
また、テタニーが起こるといらいらしたり情緒不安定になるなど、精神面で異常をきたしたり、呼吸困難などの症状があらわれることもあります。

テタニーの検査・診断

テタニーの検査では、臨床症状の観察と血液検査が主に用いられます。
血液検査ではカルシウムとマグネシウムの値を測定し、基準値よりも低くてかつテタニーの症状を認める場合にテタニーと診断されます。

カルシウムとマグネシウムの測定の他に、原因として考えられる病気の検査もおこないます。
副甲状腺機能低下症が疑われる場合は副甲状腺ホルモンの測定や副甲状腺が位置する甲状腺の機能検査、慢性腎不全などの腎疾患が疑われる場合はクレアチニンの測定や尿検査、腎臓の画像診断などをおこないます。

テタニーの治療

テタニーの症状がでたときは、薬物療法や呼吸指導などで対処します。
基礎疾患が原因で生じている場合は、病気に対する治療も並行しておこないます。

薬物療法

血液検査で低カルシウム血症が確認された場合、カルシウムの補充がおこなわれます。
グルコン酸カルシウムの点滴投与をおこない、同時にカルシウムの吸収を促す活性剤ビタミンD製剤も投与します。
マグネシウムの値が低い場合は、カルシウムやビタミンDの補充をしても十分な効果が得られない可能性が高いため、硫酸マグネシウムも点滴投与します。
薬物療法は血液検査の結果や電解質の状態、症状の程度を確認しながら、投与量が調整されます。

呼吸指導

過換気症候群でテタニーが生じた場合は、呼吸指導をおこないます。
不安や恐怖を取り除くように声掛けをし、リラックスできるように促しながら、腹式呼吸をおこなってもらいます。
腹式呼吸は横隔膜を使ってゆっくりと長く息を吐くことで、自律神経のバランスを整え、過換気を抑制する効果があります。
しかし、根本的な原因解決のためには、ストレス管理や不安への対処法を身に付けることが重要です。

テタニーになりやすい人・予防の方法

テタニーは過換気症候群を繰り返している人や、副甲状腺機能低下症、腎臓の機能低下などで血液中のカルシウムやマグネシウムが低下しやすい人に起こりやすいです。
妊娠中や授乳中の女性もカルシウム不足になりやすいため、注意が必要になります。

予防の方法は、バランスの取れた食事を心がけ、カルシウムやマグネシウムを含む乳製品、緑黄色野菜、魚類などを意識して摂取することが重要です。
日光を浴びてビタミンDを摂取したり、水分摂取を心がけて電解質のバランスも整えましょう。

過換気症候群を予防するために、リラックスできる方法を見つけてストレスをためないことも大切です。
副甲状腺機能低下症や慢性的な腎臓の病気がある場合は、定期的な検査と適切な治療を受けることが予防につながります。


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