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熱中症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

熱中症の概要

熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調節機能が乱れたりすることで起こる症状の総称です。軽度の筋痙攣や熱疲労から、生命を脅かす熱射病まで、さまざまな重症度があります。熱射病は迅速に対応しないと致命的になることもあります。

熱疲労の段階では、中枢神経系は正常に機能しており、身体はまだ熱を放散する能力を保っています。しかし、熱射病に進行すると、身体の熱放散機能が破綻し、発汗が見られる場合もありますが、中枢神経系の機能障害が現れます。高体温や精神状態の変化が見られる患者さんは、発汗の有無に関わらず熱射病を疑う必要があります。

熱中症は、屋外での運動や労働だけでなく、例えば高齢者が暑い夜にエアコンを使わずに寝ている間にも室内で発症するリスクがあります。予防のためには、適切な水分補給や塩分補給、そして涼しい環境を保つことが重要です。

熱中症の原因

熱中症は気温や湿度が高い環境で発生しやすくなります。なかでも、梅雨の晴れ間や梅雨明け直後など、急に気温が上昇する時期は要注意です。また、風が弱く、日差しが強い場所も危険です。具体的には、運動場、公園、海やプール、駐車場に止めた車の中などが挙げられます。

気密性の高いビルやマンションの最上階、体育館、家庭内の風通しの悪い部屋(浴室やトイレ、寝室など)でも熱中症は起こりやすいです。
人間のからだには体温を調節する機能が備わっていますが、あまりに暑い環境ではこの機能が乱れ、体内に熱がこもってしまいます。激しい運動や作業によって体内で大量の熱が生産されると、熱中症のリスクが高まります。また、暑さに体が慣れていない場合も同様です。

疲れや寝不足、病気などで体調が良くないときも熱中症にかかりやすくなります。なかでも、高齢者や乳幼児は体温調節機能が十分でないため、注意が必要です。また、心臓病、糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病がある場合も、体温調節機能が乱れやすくなります。

熱中症の前兆や初期症状について

暑さで体温が上昇すると、体内にこもった熱を外に逃がすために皮膚の血管が広がります。この結果、全身を流れる血液の量が減少し、血圧が下がり、顔面から血の気が失せためまいや立ちくらみ、一時的な失神が起こります。また、呼吸の回数が増え、脈は速く弱くなり、唇のしびれなども見られることがあります。

熱中症の初期症状として、めまいや立ちくらみのほか、全身の倦怠感(だるさ)や吐き気・嘔吐、頭痛などが挙げられます。熱失神では、脳への血流が一時的に損なわれ、突然倒れることがよくあります。
熱中症の症状が軽度であれば、内科や一般外来を受診してください。特に体調が悪化した場合や重症度が増す場合には、速やかに救急外来を受診することが必要です。熱中症は迅速な対応が求められるため、重症化する前に医療機関に相談することが大切です。

熱中症の検査・診断

熱中症の主な検査方法としては、以下のようなものがあります。

問診
熱中症の疑いがある患者さんには、まず問診を行います。問診では、どのような症状があるのか、症状が始まった時期や状況、現在治療中の病気や服用中の薬について詳しく聞きます。

血液検査
血液検査では、脱水の程度や電解質バランスの乱れ、臓器機能の状態を評価します。脱水状態では、血液中のヘモグロビン濃度が高くなることがあるため、確認することで適切な水分補給の指針とします。また、カリウムやナトリウムなどの電解質の異常をチェックし、不整脈や臓器障害のリスクを評価します。

診察
診察では、皮膚や舌、指先の血の巡りを観察し、脱水の有無を確認します。血液検査でヘモグロビン濃度が普段より高い場合、脱水が進行していることを示します。

体温測定やバイタルサインのチェック
体温測定やバイタルサインのチェックでは、意識状態の評価などを行います。体温の上昇は熱中症の重要な指標であり、意識障害の有無や神経症状を確認することで重症度を判断します。
熱中症は、ほかの原因となる病気を除外したうえで、問診や身体診察、必要に応じて血液検査や画像検査を行い、総合的に判断します。

熱中症の治療

熱中症の治療は、水分補給や氷を使った冷却などの応急処置が推奨されていますが、重症の場合は、点滴や入院治療が必要です。

氷枕や氷嚢を使用

熱中症の治療には、氷枕や氷嚢を使用して効率的に体温を下げる方法があります。首の付け根(前頚部)や脇の下(腋窩部)、太ももの付け根(鼠径部)など、太い血管が通る部分に氷枕や氷嚢を当てて冷やします。

濡れタオルと扇風機

氷水に浸したタオルをたくさん用意し、全身にのせて次々と取り換えることで体温を下げます。さらに、霧吹きや濡れタオルで体を濡らし、扇風機で風を当てると効果が期待できます。

水分・電解質の補給

意識が正常な場合は、スポーツドリンクなどで水分と塩分を補給します。大量に汗をかいた際には、水だけでなく塩分を含む飲料を摂取し、必要ならスポーツドリンクに少量の塩を足すか、生理食塩水(0.9%食塩水)を用います。

意識障害がある場合や吐き気がある場合は、無理に飲ませると気道に流れ込む危険があるため、速やかに医療機関で点滴などの処置を受けることが重要です。

熱中症になりやすい人・予防の方法

熱中症は誰もが発症する可能性があります。しかし、以下の特徴に当てはまる方は注意が必要です。

高齢者
高齢者は、体温調節機能が低下しており、発汗や血液循環の機能が弱くなります。また、暑さや喉の渇きを感じにくくなるため、エアコンの使用を怠ったり、水分補給を忘れたりすることがあります。

子ども
小さな子どもは体温調節機能が未熟であり、外気温が高くなると体内に熱がこもりやすくなります。また、体調が悪くても言葉で表現できないことが多く、症状に気付きにくいとされています。

肥満の方
皮下脂肪が多いと体内に熱を溜め込みやすく、熱中症のリスクが高まります。

体力がない方
運動不足や暑さに慣れていない方、体力がない方も熱中症のリスクが高まります。

体調不良の方
寝不足や疲労、風邪気味などで体調が悪いと、体温調節機能がうまく働かなくなり、熱中症にかかりやすくなります。

二日酔いや消化器症状がある方
二日酔いや下痢、嘔吐がある方は脱水状態になりやすく、熱中症のリスクが高まります。

持病のある方
高血圧、糖尿病、精神神経系の病気、皮膚の病気などを持つ方は熱中症になりやすいとされています。薬の副作用で体温調節機能が低下することもあります。

特定の職業に従事している方
炎天下での作業をする運搬業や建築業の方、厨房で働く方、長距離ドライバーや販売員、事務員なども熱中症のリスクが高くなります。

スポーツ選手と観戦者
スポーツ選手やスポーツ観戦をする方も熱中症になりやすい環境にあります。

また、熱中症を予防するためには、以下のような対策が有効です。

暑さを避ける工夫をする
外出時は直射日光を避け、日陰を歩くようにし、帽子や日傘を使用することが大切です。通気性のいい服装を選び、室内ではエアコンや扇風機を利用して涼しい環境を保ちます。

こまめに水分補給をする
汗をかかなくても体内の水分は減少します。定期的に水分を補給し、大量に汗をかいた場合は塩分も補給することが重要です。なかでも、スポーツドリンクや塩あめが推奨されています。

健康管理に気を付ける
日常的に栄養バランスの取れた食事を摂り、適度な運動と十分な睡眠を心がけ、体調を整えましょう。体調が悪い時や睡眠不足のときは、注意が必要です。

エアコンを賢く活用する
エアコンを利用する際は、設定温度が適切であることを確認し、冷風が直接当たらないように注意します。扇風機を併用して風を動かすと、室温をあまり下げずに涼しく過ごせます。

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