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馬蹄腎
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

馬蹄腎の概要

馬蹄腎(ばていじん)は、通常左右に1つずつある腎臓がつながり、馬の蹄(ひづめ)のような形状になる先天性の疾患です。
腎臓の先天性奇形では最も多く、約400〜1000人に1人の割合で発生すると言われています。

馬蹄腎を発症する明確な理由は、現在もわかっていません。
一部には、胎児期における腎臓の発育異常が、馬蹄腎の発症に関与する報告もあります。
また、奇形症候群や先天性の脊椎湾曲、骨盤や血管の異常、循環器疾患などがある人は、健常者と比べて馬蹄腎をきたしている可能性が高いと言われています。

馬蹄腎は自覚症状に乏しいケースが多いですが、水腎症や尿路感染症、尿路結石症などの合併症が生じる場合があります。
これらの合併症が生じると、疝痛(せんつう)発作という突然生じる激しい背部痛、寒気、嘔吐などが見られます。

馬蹄腎の治療法は症状の有無によって異なり、健康面に影響がない場合は、治療せずに経過観察となるケースも多いです。
ただし、馬蹄腎が慢性腎臓病などの悪化をきたす可能性がある場合には、年齢や腎臓の機能を考慮して外科的治療が選択される場合もあります。

馬蹄腎は、先天的な要因や疾患が先行して発症する場合が多いとされています。また、合併症リスクが高い水腎症や尿路感染症、尿路結石症などの予防が欠かせません。

激しい背部痛や寒気、嘔吐などの普段と異なる体調変化がみられた場合には、早めにかかりつけの病院を受診しましょう。

馬蹄腎の原因

馬蹄腎を発症する明確な理由は、現在もわかっていません。
一部には、胎児期における腎臓の発育異常が、馬蹄腎の発症に関与するという指摘もあります。

通常、腎臓は発育の過程で骨盤内から腰の部分に移動しますが、何らかの影響で移動が妨げられて左右の腎臓が接すると、馬蹄腎を招く可能性があると考えられています。

左右の腎臓が接する代表的な要因として、先天的な脊椎の異常な湾曲や骨盤内の異常、循環器疾患、血管の異常などが考えられています。

馬蹄腎の前兆や初期症状について

馬蹄腎は左右の腎臓がつながった状態であり、馬蹄腎そのものが病的な状態を示すわけではありません。
そのため、自覚症状に乏しいケースが珍しくなく、成人してから発覚するケースも報告されています。

ただし、水腎症や尿路感染症、尿路結石症などの合併症を伴う場合は、疝痛(せんつう)発作(突然生じる激しい背部痛)、寒気や嘔吐、下腹部の痛み、排尿時や排尿後の痛み、発熱、血尿などが生じることがあります。

幼い子どもの尿路感染症では、発熱以外の症状が乏しい場合もありますが「機嫌が悪い」「おしっこのときに痛がる」などの変化がみられる場合があります。
そのため、普段の様子と異なる点がないか観察することが重要です。

馬蹄腎の検査・診断

馬蹄腎の診断では、画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査など)や血液検査、尿検査などがおこなわれます。

画像検査は腎臓の形状把握に優れており、馬蹄腎の診断でとくに重要な検査です。
なかでも超音波検査は放射線による被ばくがなく、簡易的に検査できるため、子どもの馬蹄腎の診断でとくに選択されやすい傾向があります。

そのほか、合併症の有無を確認するために、血液検査や尿検査で全身状態を確かめることもあります。また、馬蹄腎は無症状の場合が多いため、水腎症や尿路感染症、尿路結石症などを検査する際に偶然見つかる場合もあります。

馬蹄腎の治療

馬蹄腎の治療法は、症状の有無によって異なります。
健康面に大きな被害がない場合は、治療せずに経過観察となるケースがほとんどです。
その場合は定期的に尿検査や血液検査などをおこない、腎臓の機能に変化がないか確認します。

ただし、馬蹄腎が慢性腎臓病などの悪化をきたす可能性がある場合には、年齢や腎臓の機能を考慮して外科的治療が選択される場合もあります。

水腎症や尿路感染症、尿路結石症などが合併している場合は、症状に適した治療法が選択されます。

馬蹄腎になりやすい人・予防の方法

馬蹄腎はの原因は不明です。しかし、ターナー症候群や18トリソミー症候群などの染色体異常による奇形症候群、先天性の脊椎湾曲、骨盤や血管の異常、循環器疾患などの先天異常がある場合は、健常者と比べて、馬蹄腎を発症する可能性が高いと言われています。高血圧症や慢性腎臓病などの基礎疾患も、馬蹄腎により病状の悪化をきたす可能性があります。

馬蹄腎を完全に予防するのは難しいですが、発症後は水腎症や尿路感染症、尿路結石症、高血圧症、慢性腎臓病などの予防が重要です。

激しい背部痛や寒気、嘔吐などの普段と異なる体調変化がみられた場合は、可能な限り早めにかかりつけの病院を受診しましょう。
また、減塩や野菜の摂取を意識した食生活、運動などの規則正しい生活習慣への取り組みが、悪化の予防につながります。

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