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グッドパスチャー症候群
中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

グッドパスチャー症候群の概要

グッドパスチャー症候群は抗糸球体基底膜腎炎(こうしきゅうたいきていまくじんえん)とも呼ばれる自己免疫疾患です。
腎臓の糸球体基底膜に対する自己抗体(抗GBM抗体)が産生され、糸球体に炎症を引き起こします。

糸球体基底膜は糸球体で血液をろ過するフィルターの一部であり、抗GBM抗体に攻撃されることで急速に腎機能が低下します。
腎臓に関わる症状だけでなく、肺出血を伴うこともあります。

グッドパスチャー症候群は、腎疾患のなかでも非常にまれで、予後が悪い疾患と知られています。
中高年での発症が多く、年間発症数は約100人程度とされています。

症状としては腎機能低下による全身倦怠感や微熱などが見られ、肺出血が合併した場合は、息切れや咳、喀血(血液を喀出すること)などの呼吸器症状も現れることがあります。
血液検査や尿検査では、腎機能低下や貧血、血尿、タンパク尿などの異常所見を認めます。

治療法としては腎機能に対する管理療法が主です。
ステロイド剤や免疫抑制剤による薬物療法が基本となりますが、症状の重症度に応じて血漿交換療法や、免疫抑制療法、血液透析などが選択されることもあります。

(出典:難病情報センター「抗糸球体基底膜腎炎(指定難病221)」

グッドパスチャー症候群

グッドパスチャー症候群の原因

グッドパスチャー症候群の原因は、糸球体基底膜のコラーゲンに対する抗GBM抗体が関与しています。
抗GBM抗体が糸球体基底膜に沈着し、異常な免疫反応を引き起こすことで糸球体に炎症が生じます。

グッドパスチャー症候群は非遺伝性の疾患であることからも、抗GBM抗体が産生される具体的なメカニズムは明らかにされていません。

グッドパスチャー症候群の前兆や初期症状について

グッドパスチャー症候群の初期症状では、全身の倦怠感や発熱、食欲不振などが見られることがあります。
咳や血痰などの呼吸器症状が初期に現れることもあります。
病気が進行するにつれて、血尿や尿量の減少などの腎臓に関連する症状が出現し始めます。
さらに症状が悪化すると、吐き気や息苦しさ、全身のむくみなどが現れます。

これらの症状は徐々に進行することもありますが、急速に悪化する可能性もあります。
肺出血が生じると貧血も見られるケースが多く、全身状態の悪化につながることがあります。

グッドパスチャー症候群の検査・診断

グッドパスチャー症候群の診断は、血液検査による抗GBM抗体や、尿検査による血尿などの所見、生体組織検査による半月体やIgG抗体を調べることでおこなわれます。
画像検査などで肺の状態についても調べます。

血液検査

血液検査では、腎機能の評価や貧血の有無を確認するとともに、抗GBM抗体の測定がおこなわれます。
抗GBM抗体の存在をもとに、確定診断をします。

尿検査

尿検査では、血尿やタンパク尿、円柱尿(腎疾患で見られる特異的な所見)の有無を確認します。

胸部画像検査

X線検査やCT検査による胸部画像の撮影は、肺の状態を確かめる目的で実施されます。
肺出血が生じている例では、肺胞に浸潤影が認められることが特徴的です。

CT検査ではより詳細な肺病変の評価が可能であり、X線検査で明確な所見が得られなかったときに使用されます。

生検組織検査

生検組織検査は、腎臓の糸球体に対しておこなわれ、半月体やIgGが沈着しているかを確認します。
蛍光抗体法(蛍光色素を使用して検体を調べる方法)によって、それぞれの組織から採取した検体を調べると、IgGが線状に沈着することが特徴です。

肺出血がある場合は、肺胞のIgGの有無を調べることもあります。

グッドパスチャー症候群の治療

グッドパスチャー症候群の治療では、主に免疫抑制療法と血漿交換療法が併用されます。
腎不全症状が悪化した場合には透析療法が必要になります。

免疫抑制療法

免疫抑制療法では、ステロイド剤やシクロホスファミドなどの免疫抑制剤を用いた薬物療法がおこなわれます。
これらの薬剤は経口投与されることが多いですが、症状が重篤な場合や経口摂取が困難な場合は点滴による投与が選択されます。
ステロイド剤やシクロホスファミドなどによって免疫反応を抑制し、炎症反応を軽減することを目的としています。

血漿交換療法

血漿交換療法は、患者の血液から血漿(血液のなかの血球以外の液体)を分離し、健常者の血漿などと置き換えて体内に戻す治療法です。
血中に含まれる病的物質などを除去することで、腎臓のろ過機能の負担を軽減させる効果があります。

透析療法

透析療法は専用の機械を用いて血液をろ過し、余分な水分や老廃物を取り除いた後、浄化された血液を体内に戻します。
腎臓のろ過機能を代替する治療法で、腎機能が低下している患者の生命維持に欠かせない役割を果たします。

グッドパスチャー症候群になりやすい人・予防の方法

グッドパスチャー症候群は中高年に多い傾向があり、平均年齢は63〜65歳です。
(出典:難病情報センター「抗糸球体基底膜腎炎(指定難病221)」

予防の方法はありませんが、早期発見と適切な治療が重要です。
全身の倦怠感や血尿などの症状が現れた場合は、できるだけ速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
早期の診断と治療開始により、症状の進行を抑制し、予後を改善できる可能性が高まります。


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