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長田 和義

監修医師
長田 和義(医師)

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2012年、長崎大学医学部卒業。消化器内科医として、複数の総合病院で胆膵疾患を中心に診療経験を積む。現在は、排泄障害、肛門疾患の診療にも従事。診療科目は消化器内科、肛門科。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

腎臓結石の概要

腎臓は血液を濾過することで体内の余分な水分、塩分、および老廃物を尿として排出させる役割があります。
腎臓で生成された尿は尿管を通って、膀胱に入り、尿道から体外に排出されます。こうした尿の通り道にはミネラルや有機物が流れ込みますが、これらが結晶となると尿路結石と呼ばれます。
この中でも腎臓にできるものを腎臓結石と呼びます。

主にカルシウムや尿酸の過剰な蓄積が原因で、水分不足や特定の食生活がリスクを高めます。
成人男性の約9%に発症し、男性に比較的よくみられる疾患ですが、女性にも発症する可能性があります。

腎臓結石ができるだけでは症状はなく、健康診断などで偶然見つかることが多いですが、腎臓から尿道、あるいはそれより先に結石が移動することがあります。これにより尿の通り道に傷をつけて、血尿の原因になったり、通り道をつまらせて、腰の周りに激しい痛みを引き起こすことがあります。
場合によっては閉塞した尿道から尿が腎臓に逆流し、腎臓にダメージを与えたり、細菌が入り込むことで尿路感染症を起こすこともあります。

小さい結石は自然に排出されることもありますが、腎臓に障害をきたしていたり、結石が大きい場合は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経皮的腎結石除去術、または内視鏡手術が必要です。
一度発症すると繰り返すことも多く、適切な水分摂取や食事内容の調整によって予防・再発の抑制が可能です。

腎臓結石の原因

腎臓結石は、尿中に排泄されたカルシウムなどのミネラルや尿酸などが過剰になり、結晶化することが原因とされています。その他の原因には以下のようなものがあります。

脱水状態
十分な水分を摂取していない場合、尿中のミネラルが濃縮されやすくなります。
食生活
高カルシウム、高マグネシウム、塩分や糖分、肉類が多い食事がリスクを増加させます。
ストレスや運動不足
医薬品
特定の薬剤(例:カルシウムサプリメント、一部の利尿剤、ステロイド、ビタミンD製剤)が結石の形成を促すことがあります。
特定の疾患
代表的なものに、骨粗鬆症、高カルシウム血症や高尿酸血症、脂質異常症など、特定の健康状態が結石形成しやすくなると言われています。

腎臓結石の前兆や初期症状

健康診断や他の病気の検査中に見つかることが多く、無症状のことが多い傾向です。しかし、腎臓結石が移動することで、尿の通り道をつまらせると以下のような症状が現れることがあります。

尿中の血液(血尿)
尿がピンク、赤、または茶色に見えることがあります。
激しい腰痛または脇腹の痛み
激しい痛みが波のように現れることが特徴です。
排尿時の痛み
尿道に結石がある場合、狭窄部を通る際に強い痛みを感じることがあります。
頻尿
小さな結石が尿道に移動したとき、頻繁に排尿の衝動を感じることがあります。
発熱と寒気
結石により尿の通り道が詰まり、尿路感染症を引き起こす場合があります。尿路結石による尿路感染症は敗血症という重症の感染症に移行しやすく、尿路結石がある方、過去に尿路結石を指摘されている方で腰の痛みと発熱がある場合は速やかに受診しましょう。
吐き気と嘔吐
結石が引き起こす激しい痛みが原因で、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。

他にも、無症状でも尿の通りが悪くなり、腎臓に圧がかかるなどにより腎臓の機能が低下する場合があります。これらの異変を感じたら泌尿器科を受診しましょう。

腎臓結石の検査方法と診断

腎臓結石の診断に用いられる主な検査方法は以下の通りです。
一つの検査だけで診断できるものではなく、複数の検査を組み合わせて他の疾患の可能性なども考慮しながら検査を行うことが多い傾向です。

    血液検査
    カルシウム、尿酸、電解質の異常や腎機能の評価を行います。
    尿検査
    尿に出血していないかや感染の有無を調べます。
    超音波検査
    尿管の結石の位置や形態を視覚化します。
    痛みもない非侵襲的な検査でX線の被爆がない検査です。
    外来で比較的簡単に行うことができます。
    単純X線写真
    約9割の結石はこの検査で確認できるとされています。
    結石が小さい場合や腸のガスが多い場合、X線に映らない性質の結石では検出率が下がり、他の検査と合わせて行うこともあります。
    CT検査
    より詳細な画像を提供し、小さな結石でも検出が可能で、その位置や性状、尿路の狭窄部位、腎臓の形態などを正確に特定・評価できます。

    腎臓結石の治療方法

    結石の治療は、そのサイズ、位置、引き起こしている症状によって異なります。結石が小さく、自然に尿中に排泄できると判断された場合は尿のpHを調整する薬や、結石の成分に基づいて結石を溶かしやすくする薬などを使用します。排石の自覚や画像検査により経過を確認していきます。

    結石が大きい場合や腎臓機能を低下させている場合、感染症を合併している場合などは外科的治療や非侵襲的手法が選択されることがあります。

    体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
    体の外から超音波を用いて結石を小さな破片に砕き、排泄を促す方法です。痛み止めの服用のみで治療ができ、最初に行う治療方法になります。
    尿管内視鏡手術
    全身麻酔など、何らかの麻酔が必要になります。結石が大きい場合や、形が腎臓から尿管に沿って形成されるサンゴ状の場合に尿管に細い内視鏡を入れて結石を砕く方法です。
    経皮的腎結石除去術
    背中の皮膚から直接腎臓に小さな穴をあけて、内視鏡を入れ、そこから結石を砕く手術です。こちらも全身麻酔が必要です。

    腎臓結石になりやすい人・予防方法

    腎臓結石になりやすい人

    腎臓結石のリスクが高いのは以下のような方です。
    脱水状態になりがちな方
    不適切な食習慣の方

    予防の方法

    予防のためには以下の方法が有効です。
    適切な水分摂取
    十分な水分を摂取することで尿が薄まり、結石形成を防ぎます。特に汗をかきやすい環境で過ごすことが多い方はより気をつける必要があります。
    バランスの取れた食生活
    カルシウムや塩分、動物性タンパク質などの過剰摂取を避け、健康的な食事を心がけることで、結石形成のリスクが減少します。
    持病や生活習慣病の改善
    高カルシウム血症や尿酸血症などをお持ちの方は結石ができやすいとされています。

    これらの疾患をお持ちの方はかかりつけ医を持ち、定期的な受診、治療を受けることが有用です。


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