円板状エリテマトーデス
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

円板状エリテマトーデスの概要

円板状エリテマトーデスは、主に頭や顔、耳の周りの皮膚に、境界のはっきりとした赤い盛り上がりができる病気です。皮膚疾患の一つであり、免疫の異常で自分の体を攻撃することで発症する「自己免疫疾患」に分類されています。男女ともに発症する可能性がありますが、多くは女性に発症します。

円板状エリテマトーデスは主に頭や顔面の皮膚に症状が生じますが、首より下にも症状が生じることがあります。体幹に症状が生じた場合は、皮膚だけでなく関節や腎臓、心臓など全身に症状があらわれる「全身性エリテマトーデス」に発展する可能性があるため注意が必要です。

円板状エリテマトーデスは早期発見と適切な治療を行えば、症状の進行を抑えることができます。しかし、治療が遅れると傷跡が残ったり、まれに皮膚がんに進行したりする可能性もあるため、疑わしい症状がある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。

円板状エリテマトーデスの原因

円板状エリテマトーデスは、免疫系が自分の体の一部を異物と誤って攻撃してしまうことで発症すると考えられています。正確な原因は分かっていませんが、遺伝的な要因と環境要因が組み合わさって発症する可能性が挙げられています。一部のケースでは、特定の薬の使用や感染症がきっかけとなって発症することもあります。

また、日光や喫煙は症状を引き起こす要因となっています。日光を浴びることで症状が出始めたり、既存の症状が悪化したりします。さらに、喫煙は治療効果を低下させ、症状の改善を遅らせる可能性があるため、円板状エリテマトーデスでは禁煙が推奨されています。

円板状エリテマトーデスの前兆や初期症状について

円板状エリテマトーデスの特徴的な症状は、境界がはっきりとした円板状の赤い斑点です。斑点はわずかに盛り上がっており、表面には白い鱗屑(りんせつ:かさぶた状のもの)ができます。鱗屑を剥がすと小さな突起が見られるのも特徴です。

症状は主に日光の当たる部分にあらわれやすく、顔や頬、鼻、耳などに多く見られます。初期の段階では1~2か所の症状から始まることが多いですが、進行すると数が増えていくことがあります。また、時間とともに症状のある部分の中心が陥没したり、色素が抜けたりすることもあります。

頭皮に症状が出る場合は、その部分の髪の毛が永久に抜けてしまう「瘢痕性脱毛」に移行する可能性があります。また、首から下の体幹部に症状が広がる場合は「汎発型」と呼ばれ、全身性エリテマトーデスに進展するリスクが高くなります。

いずれの場合も、症状が進行すると治療が難しくなるため、早めの皮膚科受診をおすすめします。

円板状エリテマトーデスの検査・診断

円板状エリテマトーデスの検査では、はじめに患者の皮膚を観察し、特徴的な症状や症状の出ている場所、広がり方などを確認します。

しかし、見た目だけでは他の皮膚疾患との区別が難しい場合があります。そのため、確実な診断のために皮膚生検を行うことがあります。皮膚生検は症状のある部分の皮膚を一部採取して顕微鏡で調べる検査で、円板状エリテマトーデスで見られる特有の皮膚の変化がないか確認します。加えて、血液検査にて体の炎症の程度や免疫系の状態も調べます。

また、円板状エリテマトーデスは通常、皮膚以外の臓器には影響しませんが、全身性エリテマトーデスに進展する可能性もあるため、必要に応じて尿検査などの検査も行います。

円板状エリテマトーデスの治療

円板状エリテマトーデスは、日光の曝露を避けながら、薬物療法で治療することで改善を目指します。治療が遅れると病変が広がり、治すことができない瘢痕となってしまうため、早期に適切な治療を受けることが大切です。

薬物療法の中心となるのはステロイド薬や免疫抑制剤などの塗り薬です。症状のある部分に継続的に塗ることで、炎症を抑えて症状の改善を図ります。症状が強い場合は、病変部にステロイド注射を行うこともあります。

症状が広範囲にわたる場合や、外用薬だけでは効果が不十分な場合には、内服薬による治療が検討されます。

円板状エリテマトーデスになりやすい人・予防の方法

円板状エリテマトーデスは女性に多く見られる病気ですが、男性や他の年齢の方でも発症することがあります。明確な原因は分かっていないため、予防法は確立されていませんが、症状を悪化させる要因を避けることが重要です。

とくに、日光の曝露を避けるようにしましょう。症状は日光に当たった部分にあらわれやすく、悪化の原因になることが分かっています。外出時は日焼け止めの使用や帽子の着用など、十分な紫外線対策が重要です。

また、喫煙も症状の悪化に関係することが分かっているため、喫煙者は禁煙が推奨されます。過度のストレスや疲労も症状に影響を与える可能性があるため、規則正しい生活を心がけるとよいでしょう。

すでに症状のある方は、定期的な通院と医師の指示に従った治療を継続することで、症状の進行を防ぐことができます。


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