

監修医師:
高藤 円香(医師)
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老人性脂腺増殖症の概要
老人性脂腺増殖症は、主に顔面にあらわれる良性の皮膚病変です。真皮(皮膚の深い部分)に存在する脂腺が異常に増殖し、皮脂の分泌が増えることによって発症します。男性の高齢者に多く、まれに女性や若年者にも見られることがあります。
特におでこや頬、鼻などの皮脂の多い部分に、小さな黄白色のブツブツとした盛り上がりができるのが特徴です。通常数ミリメートル程度の大きさで、中心部に小さなくぼみがあることが多いです。
老人性脂腺増殖症は時間とともに数が増えていく傾向がありますが、健康上の大きな問題を引き起こすことはありません。ただし、顔に目立つため見た目が気になる方も多く、その場合は治療が検討されます。悪性化することもほとんどありませんが、基底細胞癌などの皮膚癌との鑑別が必要になることもあります。

老人性脂腺増殖症の原因
老人性脂腺増殖症は、皮膚の真皮にある脂腺に関係する病気です。脂腺は皮脂を分泌し、皮膚や毛を保護する働きを持っています。老人性脂腺増殖症は脂腺が年齢とともに異常に増殖したり、大きくなったりすることで発症します。
老人性脂腺増殖症は加齢による脂腺の変化が最も大きな原因です。年を重ねると皮脂を作る細胞の入れ替わりが遅くなり、その結果として脂腺が異常に増殖したり、一つ一つの脂腺が大きくなったりします。
老人性脂腺増殖症状は男性に多く見られますが、男性ホルモンが脂腺の働きに影響を与えているためだと考えられています。
また、臓器移植を受けた方にも起こりやすいことが分かっています。臓器移植後は、移植した臓器を体に定着させるために免疫抑制剤を長期間使用することにより脂腺が増殖しやすくなります。
老人性脂腺増殖症の前兆や初期症状について
老人性脂腺増殖症の主な症状は、顔面に現れる特徴的な皮膚の変化です。一般的に数ミリメートル程度の大きさの、黄白色のニキビに似た盛り上がり(丘疹:きゅうしん)が認められます。特におでこや鼻周りなどの、皮脂が増えやすい部分に多くあらわれる傾向があります。
丘疹の特徴的な点は、中心部にへそのようなくぼみ(中心臍窩:ちゅうしんさいか)があることです。触ると柔らかく、表面はなめらかです。よく観察すると、皮膚の下に存在している脂腺に一致する多数の小さな点状の構造が確認できます。(出典:あたらしい皮膚科学第3版「1.脂腺増殖症」)
老人性脂腺増殖症は、一つだけできることもありますが、多くの場合は複数の盛り上がりが同時に存在します。主に顔面に現れますが、まれに胸や背中などの部位にも見られることがあります。
痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。皮膚の変化は健康に大きな問題を引き起こすことはありませんが、顔に目立つ形であらわれるため、気になる方も多くいます。
また、一般的な老人性脂腺増殖症は良性の病変ですが、見た目が似ている他の皮膚の病気との鑑別が必要になる場合もあります。そのため、気になる症状がある場合は、皮膚科の受診をおすすめします。
老人性脂腺増殖症の検査・診断
老人性脂腺増殖症は、特徴的な見た目から、通常は医師が診察時の視診で診断できます。視診では、皮膚の盛り上がりの形や色、中心部のくぼみの有無などを確認します。
より詳しい観察が必要な場合は、ダーモスコープと呼ばれる特殊な拡大鏡を使うことがあります。ダーモスコープを使うことで、皮膚の詳しい状態がよく分かり、診断の確実性が高まります。
他の皮膚の病気との区別が必要な場合には、皮膚生検によって皮膚の一部を採取し、顕微鏡で調べることもあります。皮膚生検では、脂腺の増殖程度や組織の変化を確認できます。
老人性脂腺増殖症の治療
老人性脂腺増殖症は良性の皮膚病変であるため治療が必ずしも必要ではありませんが、顔に目立つことから、美容面で治療を希望される方も多くいます。
また、どの治療法を行っても病変部を完全に取り除かないと再発する可能性があるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。
レーザー治療
CO2レーザーやQスイッチヤグレーザーなどを使用して、増殖した脂腺を除去します。最も一般的に行われている治療法です。傷跡が比較的目立ちにくく、回復も早い特長があります。
電気治療
ラジオ波という電気を使って脂腺を焼き切る方法です。レーザー治療と同様に、傷跡が目立ちにくい利点があります。
外科的治療
大きな病変の場合は、手術で取り除くことがあります。局所麻酔をして、メスで直接切除する方法です。完全に取り除くことができますが、傷跡が残る可能性があるため、治療前に医師と十分に相談する必要があります。
老人性脂腺増殖症になりやすい人・予防の方法
老人性脂腺増殖症は加齢に伴ってあらわれる病気であるため、完全な予防は難しいです。特に男性は、男性ホルモンの影響で発症しやすい傾向があります。また、臓器移植後に免疫抑制剤を使用している方も、発症する可能性が高くなることが分かっています。
気になる症状があらわれた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。特に、丘疹の形や大きさが急に変化したり、症状が気になったりする場合は、医師への相談が大切です。




