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類天疱瘡
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

類天疱瘡の概要

類天疱瘡(るいてんぽうそう)は、皮膚や粘膜に水疱やびらん(表皮の欠損)が生じる自己免疫疾患の一種です。免疫システムが誤って自分の皮膚を攻撃してしまうことで、表皮と真皮の間にある「表皮基底膜」に自己抗体が沈着し、皮膚を傷つけることで水疱が生じます。水疱が破れると痛みを伴うびらんとなります。

類天疱瘡は、水疱性類天疱瘡と粘膜類天疱瘡の2つに分けられます。前者は主に皮膚に症状があらわれ、後者は主に粘膜に症状があらわれるのが特徴です。

類天疱瘡の発症は、60歳以上の高齢者に多くみられ、中でも70~90歳代の高齢者に好発します。全国には少なくとも7000~8000人程度の類天疱瘡患者がいると推定されています。
出典:難病情報センター「類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)(指定難病162)」

類天疱瘡は難治性の病気で、中でもより若い年齢で発症したケースは完治または症状の消失が困難な傾向があります。早期に正しい診断を受け、適切な治療を受けることが重要になるため、皮膚に異常があらわれた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

類天疱瘡

類天疱瘡の原因

類天疱瘡は、自己免疫の異常によって引き起こされる病気です。免疫は体内に侵入した細菌やウイルス、異常化した自身の細胞の排除を行うのが本来の役割です。しかし、何らかの原因によって、正常な細胞や組織を誤って攻撃してしまうことで発症します。

具体的には、皮膚の表皮と真皮をつなぐ基底膜に、自身の正常な細胞や組織を攻撃する「自己抗体」が作られ、皮膚が傷つくことで水疱やびらんが生じます。水疱性類天疱瘡はBP230やBP180、粘膜性類天疱瘡はBP180やラミニン332と呼ばれるタンパク質に対して、自己抗体が生まれると考えられています。
現段階では自己抗体が作られるはっきりした原因は判明していません。

類天疱瘡の前兆や初期症状について

類天疱瘡は、水疱性類天疱瘡または粘膜性類天疱瘡で症状の特徴が異なります。

水疱性類天疱瘡

皮膚にかゆみを伴う赤い発疹や緊満性水疱(膜が厚く破れにくい水疱)があらわれるのが特徴です。
これらの症状は、手足や体幹など身体の広範囲にわたって見られることが多く、水疱が破けることでびらんが生じます。まれに口腔などの粘膜に生じることもあります、ほとんどは皮膚に症状があらわれます。

粘膜性類天疱瘡

主に口腔や眼の粘膜に症状があらわれます。口腔では、歯肉や頬の粘膜に好発するのが特徴です。また、口腔だけでなく、咽頭や喉頭、食道などにも症状があらわれることがあり、重篤な場合は呼吸困難に陥る場合もあります。
水疱性類天疱瘡と異なり、皮膚には症状がほとんど見られません。症状があらわれても軽度な場合が多いです。

類天疱瘡の検査・診断

類天疱瘡の診断は、定められている診断基準をもとに行われます。診断を確定させるには、皮膚生検または蛍光抗体直接法の検査が必要です。最近では、ELISA法と呼ばれる検査が出てきており、皮膚生検や蛍光抗体直接法よりも早く、正確に検出できるようになったため、積極的に使われるようになってきています。

また、間違った診断によって適切な治療が行われないと重篤化する恐れがあるため、できるだけ早期に皮膚科の専門医に診てもらうことが重要になります。

皮膚生検

症状があらわれている皮膚の一部を採取し、顕微鏡で観察します。類天疱瘡であれば表皮と真皮の間に水疱が作られているのが確認できます。組織を採取する際には、基本的に局所麻酔が行われるため、患者への負担も少ないです。

蛍光抗体間接法

皮膚生検で採取した組織を使い、蛍光抗体間接法を行うことがあります。蛍光色素を結合させた抗体に光を照射すると、蛍光色素が発光し、抗体に沈着していることが確認できると類天疱瘡の診断が確定されます。

ELISA法

別名、酵素結合免疫吸着測定法と呼ばれ、目的である抗体を検出することができます。保険適用内での検査も可能です。非常に感度が高いため、微量の抗体でも検出可能です。

類天疱瘡の治療

類天疱瘡の治療は、症状の進行を抑え、患者さんの生活の質を維持することを目的としています。治療法は、患者さんの症状の重さや全身状態に応じて調整され、主に以下の方法が採用されます。

ステロイド外用薬または内服薬

ステロイドは、類天疱瘡の治療において最も一般的に使用されます。ステロイド外用薬または内服薬のみで改善が見られるケースもありますが、他の薬剤と併用して使われることが多いです。
推奨されているのはテトラサイクリンとニコチン酸アミドとの併用で、有効性が明らかになってきています。

免疫抑制療法

ステロイドだけで十分な効果が得られない場合や、ステロイドの副作用を軽減するために、免疫抑制剤が併用されることがあります。
免疫抑制剤は、免疫の過剰な活動を抑え、類天疱瘡の症状をコントロールします。重症例だと、アザチオプリンやシクロフォスファミドとの併用が検討されますが、患者さんの状態に応じて適切な薬剤を使い分けます。

血漿交換療法

血漿(けっしょう)交換療法は、他の治療法が効果を示さない場合や、副作用などでステロイドの大量使用が難しい場合に限り、適用される治療法です。血中の免疫グロブリンを取り除くことで、自己抗体の濃度を低下させる効果が期待できます。

類天疱瘡になりやすい人・予防の方法

類天疱瘡は70歳代~90歳代の高齢者が発症しやすい病気です。

自己免疫疾患であり、自己免疫の異常を引き起こす原因がはっきりしていないため予防は困難です。しかし、医師の指示に従い、薬剤の服用をきちんと続けることで再発予防の効果が期待できます。

内服薬を自己判断で変更したり中止したりすると、消失した症状が再発する可能性があります。服用するタイミングや頻度など、医師の指示を守りながら、飲み忘れにも注意しましょう。また、治療中には外力が加わる場所に水疱が生じやすいため、外力が加わらないようにすることも重要です。


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