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溶連菌性咽頭炎
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

溶連菌性咽頭炎の概要

溶連菌性咽頭炎は、溶連菌(A群溶血性レンサ球菌)という細菌によって引き起こされる感染症です。通年発生する感染症で、とくに冬から春、初夏にかけて増えることが多いです。

溶連菌性咽頭炎は子どもに多い疾患で、なかでも学童期の発症率が高いことが知られています。子どもの咽頭炎のうち、数十パーセントが溶連菌による咽頭炎で、国内でも毎年数多くの感染が報告されています。

まれに猩紅熱(しょうこうねつ)や髄膜炎、敗血症などの重篤な合併症を招く場合もあるため、適切な診断と治療が重要です。

主な治療法は薬物療法で、抗生物質や解熱剤を使用して治療します。集団感染する可能性もあるため、日常的な手洗いやうがいの習慣化などの感染予防対策が重要です。

溶連菌性咽頭炎の原因

溶連菌性咽頭炎の原因は溶連菌です。

溶連菌は人の皮膚や鼻、のどの粘膜に常在している細菌で、菌の毒素が多い場合や免疫状態が低下しているときに症状を引き起こすと考えられています。

溶連菌は主に2つの経路で感染します。1つ目は「飛沫感染」で、溶連菌感染者の咳やくしゃみから出るしぶきに含まれる細菌を吸い込むことで起こります。2つ目は「接触感染」で、細菌が付いた手で口や鼻に触れることによって感染します。

溶連菌は侵入した場所によってさまざまな症状を引き起こします。溶連菌性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)や蜂巣織炎(ほうかしきえん)などを招くこともあります。

感染のリスクは患者との接触が増えるほど高くなります。とくに家庭内や学校などの集団生活の場で感染が広がりやすく、家庭内での感染率は高い数値が報告されています。

溶連菌性咽頭炎の前兆や初期症状について

溶連菌性咽頭炎は感染から2〜5日の潜伏期間を経たのち、高熱と喉の痛みを引き起こします。全身倦怠感や嘔吐をともなうことも少なくありません。

出典:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」

口腔内に点状の出血斑が出現し、喉が赤く腫れて白苔(はくたい:白いこけのようなもの)が付着することがあります。苺舌(いちごぜつ:舌が赤くイチゴのような見た目になること)を呈することも特徴的です。

顔のなかでも額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白になる(口囲蒼白)ことも特徴の1つです。

場合によっては皮膚に小さな赤い発疹が現れる猩紅熱に移行することがあります。猩紅熱は、A群溶血性レンサ球菌の産生する毒素(発赤毒素)によって発疹を生じる病態で、溶連菌性咽頭炎の一表現型とされています。

より重篤な合併症として髄膜炎や敗血症、リウマチ熱、腎炎などを引き起こす危険もあるため注意が必要です。

溶連菌性咽頭炎の検査・診断

溶連菌性咽頭炎は症状の観察をはじめ、「センタースコア」による評価や迅速検査キットの結果、血液検査結果などを組み合わせて診断します。

喉の痛みが強くて唾が飲み込めない、口が開けられない、首が大きく腫れ上がるなどの症状がある場合はより重篤な疾患の可能性があるため、できるかぎり早い段階で医療機関を受診することが必要です。

センタースコア

センタースコアとは発熱や咳の有無、首のリンパ節の状態、年齢などの要素から点数を計算し、溶連菌感染の可能性を数値化するものです。点数が高いほど溶連菌に感染している可能性が高くなります。

診断の初期段階で役立ちますが、確定診断のためには迅速検査キットなどと合わせて判断することが必要です。

迅速検査キット

迅速検査キットによる検査は、のどの奥から綿棒で検体を採取して菌を検出するもので、数十分程度で結果が得られます。

血液検査

血液検査では溶連菌に対する抗体の上昇を示す「ASO」や「ASK」などを調べて診断に役立てます。また、診断にあたってはほかの感染症との鑑別も重要です。

溶連菌性咽頭炎の治療

溶連菌性咽頭炎の治療は抗生物質を用いた治療が基本で、同時に解熱剤も使用します。

治療の途中で症状が改善しても菌が完全に排除されていない可能性があるため、抗生物質は医師の指示通りに最後まで服用することが大切です。

また、症状の緩和には十分な休息と水分摂取が大切です。とくに喉の痛みが強い場合は、食べやすいように柔らかくされた薄味の食事を心がけるとよいでしょう。

適切な治療を受けると他者への感染リスクは低下しますが、学校や保育園への復帰については、医師の判断に従うことが望ましいです。

溶連菌性咽頭炎になりやすい人・予防の方法

溶連菌性咽頭炎は誰でも感染する可能性があるもので、とくに学童期の子どもに多く発症します。

感染リスクが高まる状況としては、家庭内や学校、保育園などの集団で行動する場が挙げられます。なかでも家庭内での感染率は高く、兄弟間での感染率は高い割合が報告されています。

予防の基本は飛沫感染と接触感染を防ぐことです。こまめな手洗いやうがいを習慣づけること、咳やくしゃみをした後や食事前に必ず手を洗うこと、手指をアルコール消毒することが大切です。

また、咳やくしゃみをする際はマスクを着用し、マスクがない場合はできるだけティッシュやハンカチなどで口や鼻を覆うようにしましょう。

家庭内で溶連菌感染症の人がいる場合は、タオルの共有を避け、可能な限り接触を減らす工夫が必要です。感染者のケアをする際にはマスクを着用し、食器の共用も避けるようにしましょう。

溶連菌性咽頭炎は予防接種のような特異的な予防法はありませんが、健康的な生活習慣を心がけて免疫力を維持することも予防につながります。

十分な睡眠やバランスの良い食事、適度な運動など日常的な健康管理も大切な予防法の1つといえるでしょう。

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