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間質性肺疾患
松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

間質性肺疾患の概要

間質性肺炎は、肺の中にある小さな袋(肺胞)の壁に炎症が起き、壁が固くなっていく病気の総称です。
一般的な肺炎とは異なり、肺の構造が変化することで息苦しくなります。
肺胞の壁が厚く固くなることで、体内に酸素を取り込むことが難しくなり、息苦しさや乾いた咳などの症状が現れます。

間質性肺炎には、膠原病や環境による二次性のものと、原因がわからず難病に指定されている特発性間質性肺炎(IIPs)があります。
6つの主な病型と2つのまれな病型、そして分類できない型に分けられ、中でも特発性肺線維症(IPF)は多く見られる型です。

間質性肺炎の予後は、病気の種類や進み具合によって異なり、急激な悪化や肺の働きの低下が進むと命に関わる可能性があります。
診断後の平均生存期間は3〜5年とされており、高齢者の場合は他の病気の影響や治療の制限により、予後が厳しくなることがあります。

(出典:難病情報センター 特発性間質性肺炎(指定難病85)

早期発見と適切な治療により病気の進行を遅らせることが可能であり、近年では新しい治療薬も開発されています。

間質性肺疾患

間質性肺疾患の原因

間質性肺炎は、原因のはっきりしているものと、原因が不明なものに分けられます。
原因のはっきりしているものには、職業や環境による要因、薬による要因、そして他の病気に関連するものがあります。

間質性肺炎は感染症ではないため、他の人からうつることはありません。

職業や環境による原因

粉じんや化学物質を長期間吸い込むことが間質性肺炎の原因の一つです。アスベストや鳥の羽毛、カビなどが原因となることもあります。

薬による原因

抗がん剤や抗生物質、漢方薬などの一部が、副作用として間質性肺炎を引き起こすことがあります。

他の病気に関連する要因

関節リウマチや強皮症などの膠原病が間質性肺炎の原因として挙げられます。

原因が不明なもの

原因が不明なものは「特発性間質性肺炎」と呼ばれ、高齢者に多い特発性肺線維症(IPF)では、遺伝的な要因や環境因子が関係していると考えられています。
喫煙も間質性肺炎の危険因子の一つとされています。

間質性肺疾患の前兆や初期症状について

間質性肺炎は、初めのうちは症状がほとんど現れず、時間の経過とともに症状が少しずつ出始めることが特徴的です。
最初に気付きやすい症状は、痰の出ない乾いた咳です。
また、階段を上ったときや少し早く歩いたときに「息切れ」を感じることも、初期の大切なサインです。

病気が進むと、軽い運動でも息切れを感じるようになり、普段の生活に影響が出始めます。
体がだるく感じたり、少しずつ体重が減ったりすることもあります。

注意が必要なのは、それまで安定していた症状が急に悪化する「急性増悪」という状態です。
「特発性肺線維症」という種類の間質性肺炎では、急性増悪が起こりやすいことが分かっています。
病気が重症になると、息を吸うことが非常に苦しくなり、体に十分な酸素が取り込めなくなります。

唇や爪の色が青紫色に変わってきたり(チアノーゼ)、体重が大きく減少したりする症状が現れ、日常生活を送ることも難しくなります。

間質性肺疾患の検査・診断

間質性肺炎の診断は、画像検査、呼吸機能検査、血液検査、気管支や肺の一部を取る検査を組み合わせて総合的に判断する必要があります。

画像検査

画像検査では、細かい部分まで写すことができる高分解能CT(HRCT)を使います
HRCTでは、「はちの巣」のような特徴的な画像が見られ、病気の進み具合や広がりを調べることができます。

呼吸機能検査

呼吸機能検査では、肺に入る空気の量や酸素を取り入れる力を測り、肺が正しく働いているかを調べます。
検査結果は、病気の重さを判断し、治療の方法を決めるのに役立ちます。

血液検査

血液検査では、KL-6やSP-Dという間質性肺炎に特有の物質を測ります。
KL-6やSP-Dの値が高くなると、肺に炎症や傷が起きている可能性があり、病気の活動を表すため、経過を見るのにも役立ちます。

気管支鏡検査・肺生検

気管支の検査では細い管で肺の中を洗い、洗った液を取り出して中にある細胞を調べます。また、肺の組織を少し採って顕微鏡で見ることで、より正確な診断ができます。
ただし、体の状態によっては検査ができない場合もあります。

間質性肺疾患の治療

間質性肺炎の治療は、病気の特徴や進行状況に合わせて行われます。
治療の主な目的は、肺の線維化の進行を遅らせ、呼吸機能を維持し、患者の生活の質を向上させることです。
完全に治すことは難しいとされていますが、適切な治療により症状を安定させ、長期にわたって良好な生活の質を維持できる患者もいます。
治療の効果は個人によって異なるため、専門医との綿密な連携と定期的な経過観察が重要です。
治療の種類には薬物療法、酸素療法、呼吸リハビリテーション、肺移植があります。
家族の支援も治療の一環で、感染予防のための衛生管理、通院のサポート、服薬管理、精神的なサポートは、患者の治療過程において重要です。

薬物療法

薬物療法では、ピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化薬が使用されます。
肺の線維化が進むのを抑え、呼吸機能の低下を抑え、特発性肺線維症の進行を遅らせる効果があります。
ステロイド療法も重要な治療法の一つです。
免疫抑制作用のあるステロイド薬は、肺の炎症を抑える働きがあります。
非特異性間質性肺炎や膠原病に関連する間質性肺炎に対して効果的な治療法の一つです。

酸素療法

酸素療法は、呼吸不全の患者にとって重要な治療方法です。
酸素を補給することで、呼吸困難を和らげ、日常生活での呼吸を楽にします。
重症例では人工呼吸器を必要とする可能性もあります。

呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションも、患者の運動能力と生活の質を維持・改善するのに役立ちます。
首や肩回りのストレッチや体操を行い呼吸をしやすくしたり、患者に合わせた負荷量の運動を促して体力を維持します。

肺移植

重症例においては、肺移植が唯一の根本的な治療選択肢となり得ます。ただし肺移植を受けるためには、年齢や全身の健康状態など、複数の適応条件を満たす必要があります。
特発性肺線維症の末期段階では、患者の生存期間を延長し、生活の質を改善する可能性があります。

間質性肺疾患になりやすい人・予防の方法

間質性肺炎は、特に50歳以上の男性や喫煙者がなりやすいといわれています。

また、粉じんや化学物質に長期間さらされた経験のある人、膠原病の既往歴がある人にリスクが高い疾患です。

予防のためには、まず禁煙が最も重要な対策となります。

喫煙は肺の健康に深刻な悪影響を与えるため、禁煙することで間質性肺炎のリスクを大幅に低減できます。

職場環境に注意することも重要な予防策です。

粉じんやカビなどに長期間さらされることを避け、適切な換気や防護具の使用を心がけましょう。

感染症対策として、手洗いやマスク着用、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種も効果的です。

加えて定期的な健康診断を受診し、疾患の早期発見を心がけることが重要です。

初期段階から適切な治療を開始することで、病状の進行、重症化を防ぐことが期待されます。


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