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五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

気管支炎の概要

気管支炎は肺の気道にある気管支が炎症を起こした状態を指します。気管支は空気を循環させる気道に分類される呼吸器官です。口腔・鼻・喉とつながっている部分が上気道、鎖骨付近から肺につながっている部分が下気道に分かれています。そのため、下気道で炎症が起きると咳やたんなどの呼吸器の症状を引き起こす病気です。

また気管支炎は、数日から数週間で治まる急性気管支炎と、長年にわたって咳やたんなどの症状が続く慢性気管支炎の2種類に分けられています。

気管支炎の原因

気管支炎の原因は、急性気管支炎と慢性気管支炎で異なります。特に急性気管支炎は発症率が男女ともに高く、年齢によるものではありません。誰でも発症する可能性が高い病気です。

急性気管支炎

風邪症候群と似た症状がみられる急性気管支炎は、ウイルス感染によって発症します。

  • RSウイルス
  • アデノウイルス
  • ライノウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • パラインフルエンザウイルス
  • ヒトメタニューモウイルス

上記の感染症によって、気道上皮が壊死して脱落します。その結果、気道を塞いだり気道が傷ついたりして炎症を引き起こします。ウイルス感染以外にも、肺炎マイコプラズマ・肺炎クラミジア・百日咳菌による細菌感染もありますが、稀な症例です。

慢性気管支炎

慢性気管支炎は百日咳菌・抗酸菌・緑膿菌などの感染症によって発症することがあります。特に慢性気管支炎の発症リスクを高めるのは喫煙です。喫煙に伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、有害物質を長期にわたって吸入・曝露することで生じる肺の炎症性疾患になります。喫煙習慣のある40歳以降の中高年に発症しやすく、生活習慣病に該当する病気です。感染症や喫煙以外にも、副鼻腔気管支症候群・びまん性汎細気管支炎なども慢性気管支炎の発症リスクを高めると考えられています。

気管支炎の前兆や初期症状について

気管支炎の前兆や初期症状は主に3つあります。

  • 風邪の症状が出る
  • 3週間以上せきとたんが続く
  • 息が苦しくなる

上記は気管支炎の前兆として現れやすい症状の順になっています。

風邪の症状が出る

気管支炎の前兆には、風邪の症状がみられます。具体的な症状は以下のとおりです。

  • 鼻水
  • たんが出る
  • 喉の痛み
  • 食欲不振
  • 疲労感
  • 悪寒
  • 咳が出る
  • 発熱(37.5~38度)
  • 背中や腰の痛み
  • 筋肉痛
  • 胸部不快感

上記のように風邪の症状にも個人差があります。ですが、気管支炎が生じている場合には咳やたんなどの下気道症状が主体として現れます。
これらの症状がみられる場合には、まず内科を受診してください。必要に応じて呼吸器内科を紹介されることもあります。

3週間以上せきとたんが続く

まず留意してほしいことは、風邪症状が3週間以上続くことはありません。風邪症状は微熱・倦怠感・喉の痛みから鼻水や鼻づまりに続き、その後咳やたんが出ます。発症から3日前後で症状がピークになり、7〜10日間かけて症状が軽減するのが一般的な風邪症状です。健康な状態であっても気道の分泌物であるたんは出ています。常に少しずつたんは分泌されていますが、気道表面から再吸収されたり喉まで上がってから無意識に飲み込まれたりするため、通常は気になりません。たんが続くのは、病原菌を排除する反応の結果です。ほかの風邪症状が落ち着いても、咳やたんが3週間以上続くときには気管支炎の可能性が高いといえます。

息が苦しくなる

息が苦しくなったり胸部不快感を覚えたりした場合には、気管支炎から気管支喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)に発展している可能性が高い状態です。通常の呼吸であれば、「スースー」といった静かな音です。ですが、気管や気管支が狭くなると、喘鳴(ぜんめい)という「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった苦しそうな音が発生します。気管や気管支が狭くなっている状態であれば、聴診器がなくても呼吸音が聞こえることもあります。急に「ゼーゼー」とした呼吸音に変化した場合には、症状が重症化している可能性が大いに考えられるため、早急に内科や呼吸器科を受診してください。

気管支炎の検査・診断

気管支炎は風邪症状と似ているため、検査が必要になります。検査方法と診断の基準は以下のとおりです。

検査

まずは問診でどのような症状が出ているのか把握する必要があります。発熱・咳・たんなどの自覚症状が長引く場合には、気管支炎や肺炎の合併症が疑われます。その際に行われる検査方法は以下のとおりです。

  • 胸部エックス線画像(胸部CTスキャン検査)
  • たんの細菌検査
  • 呼吸機能検査
  • 気管支内視鏡検査

呼吸機能検査は、異常な呼吸音を確認できる場合に行われます。気管支喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、気管支が狭くなっていないかを調べるための検査です。もし胸部エックス線画像やたんの細菌検査で肺炎や肺がんの可能性がある場合には、病変している部分から直接細胞を取って調べる気管支内視鏡検査をすることもあります。気管支炎を調べるうえではたんの細菌検査が大切で、たんのなかに含まれる細菌・結核菌・がん細胞・炎症細胞である好酸球などを調べることができます。

診断

診断は問診や検査結果によって医師が評価します。胸部エックス線画像で肺炎や肺がんの疑いがないこと、なおかつたんの細菌検査でたんからウイルスや細菌が確認された場合には気管支炎と診断されます。一般的には咳やたんが3週間以上続いていれば急性気管支炎と診断されるため、発症率や発症頻度は高い病気です。

気管支炎の治療

気管支炎の治療方法は、対症療法と薬物療法の2つです。診断結果に応じて医師が治療方法を判断します。

対症療法

気管支炎を発症する原因のほとんどは、ウイルス感染によるものです。ウイルス感染は、インフルエンザを除いて効果的な治療薬がありません。そのため、生じている症状を緩和するために安静にしたり、水分や栄養補給をしたりするなどの対症療法が中心になります。

薬物療法

対症療法が中心ですが、症状が強く出ている場合にはその症状に応じて症状を和らげる薬物療法を用いることがあります。一般的に処方される薬物療法は、以下のとおりです。

  • 咳が強い場合には鎮咳薬
  • たんが絡む場合には去痰薬や抗菌薬
  • 細菌感染の場合には抗生物質
  • 気管支喘息(ぜんそく)の場合には吸入ステロイド薬
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の場合には気管支拡張薬

慢性気管支炎の場合には、有効な抗菌薬を長期間内服するケースもあります。しかし、症状が緩和する効果や副作用には個人差があると把握しておくことが大切です。医師の判断によって薬物療法は用いられますが、副作用や使用中に違和感を覚えたら早急に医師に相談するようにしましょう。

気管支炎になりやすい人・予防の方法

気管支炎になりやすい人の特徴は、生活習慣が乱れていたり不衛生な環境に身を置いていたりすることが挙げられます。具体的には以下のとおりです。

  • 喫煙者である
  • ほこりや粉塵を吸い込みやすい職業である
  • 空気の流れが悪い場所で長期間過ごしている
  • ストレスや疲労によって免疫力が低下している
  • 基礎疾患がある

上記の条件に該当する人は気管支炎を引き起こしやすくなるため注意が必要です。また急性気管支炎はウイルス感染によるものが大半になります。

風邪やウイルス感染対策を徹底することは気管支炎から身を守る有効な予防方法です。具体的な予防方法をいくつか挙げると、以下になります。

  • インフルエンザの予防接種
  • うがい・手洗いを徹底する
  • マスクの着用を習慣にする
  • 咳エチケットを習慣にする
  • 定期的に換気をする
  • 人混みを避ける
  • 正しい生活習慣を意識する

咳をするときには、ティッシュ・ハンカチ・上着の内側・袖などでお口や鼻を覆う咳エチケットに留意することが大切です。

ほかにも乾燥は気管に悪影響を及ぼします。加湿器を取り入れたり、温度と湿度を快適な数値に維持するなどの対策が必要です。

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