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ブレインフォグ
伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

ブレインフォグの概要

ブレインフォグとは、頭の中に霧がかかったように感じて思考がぼんやりし、集中力や記憶力が低下する状態です。正式な医学用語ではなく、症状の総称として使われる場合が多いです。ブレインフォグは、日常生活に大きな影響を及ぼし、仕事や学業、家庭生活に支障をきたす可能性があります。

具体的な症状としては、以下のようなものがあります。まず、頭がぼんやりして物事に集中できない、頻繁に物忘れをする、相手の話が頭に入ってこない、今までできた仕事がうまくできない、普段の音がうるさく感じる、何をするにも億劫で考えがまとまらない、などです。これらの症状は、うつ病や慢性疲労症候群、睡眠障害などとも重なるため、診断が難しいことがあります。

ブレインフォグは、特に新型コロナウイルス感染症の後遺症として報告されることが多く、感染後数週間から数ヶ月にわたり症状が続くことがあります。これにより、患者さんは日常生活や仕事に大きな支障をきたし、精神的ストレスが増加します。また、ブレインフォグの症状は一時的なものではなく、慢性的に続くことがあるため、長期的な対策が必要です。

ブレインフォグの治療法や予防法は、まだ確立されていない部分が多いですが、生活習慣の改善やストレス管理、適切な医療機関での診断と治療が推奨されます。患者さん自身も、自分の症状を理解し、適切な対処法を見つけることが重要です。

ブレインフォグの原因

ブレインフォグの原因は多岐にわたります。

新型コロナウイルス感染症の後遺症

ブレインフォグは新型コロナウイルス感染症の後遺症の1つです。ウイルス感染後、集中力や思考力の低下がみられます。また、回復した患者でも記憶障害や遂行障害、睡眠障害などの症状が認められます。

日常生活のストレスや不安

また、日常生活におけるストレスや不安もブレインフォグの原因となります。職場や家庭でのストレスが積み重なると、脳が過度に疲労し、思考や集中力が低下します。特に長時間労働や睡眠不足が続くと、脳の回復が追いつかず、ブレインフォグの症状が現れやすくなります。このようなストレスは脳内の神経炎症を引き起こしやすいです。

生活習慣の乱れも大きな要因です。不規則な食事や栄養不足、運動不足、アルコールの過剰摂取などが脳に悪影響を与えます。特に、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸などの栄養素が不足すると、脳の機能が低下しやすくなります。

ホルモンバランスの変動

さらに、ホルモンの変動もブレインフォグの原因となります。女性の場合、生理前症候群(PMS)や更年期障害などでホルモンバランスが崩れるのをきっかけにブレインフォグの症状が現れることがあります。これらのホルモン変動は、脳の神経伝達物質に影響を与え、認知機能を低下させる可能性があります。

薬物の影響も無視できません。抗うつ薬や抗不安薬、ベンゾジアゼピン系の薬物を使用している場合、その副作用としてブレインフォグが現れることがあります。また、薬物の減薬や中断によっても症状が悪化することがあります。

精神疾患

慢性疲労症候群やうつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの精神疾患もブレインフォグの原因となることがあります。これらの精神疾患は、脳の注意機能や認知機能に影響を与えるため、ブレインフォグの症状が現れる場合が多いです。

ブレインフォグの前兆や初期症状について

ブレインフォグの前兆や初期症状は、日常生活の中で徐々に現れます。特に認知機能や思考力に関する症状が出現します。

集中力の低下

頭がぼんやりして集中力が低下する症状が挙げられます。例えば、仕事や勉強に集中しようとしても思考がまとまらず、効率が悪くなる場合があります。この状態が続くと、仕事のパフォーマンスが低下し、ストレスが増加するでしょう。COVID-19の後遺症としてブレインフォグが現れた場合、思考力や集中力の低下が少なくとも15か月持続すると言われています。

頻繁な物忘れ

頻繁な物忘れも初期症状の一つです。例えば、日常の些細なことを忘れてしまったり、予定を思い出せなかったりするなどが挙げられます。これにより、日常生活に支障をきたすため自己効力感が低下してしまう可能性があります。

話が頭に入ってこない

相手の話が頭に入ってこないという症状も見られます。会話中に集中できず、話の内容が理解できないことがあります。そのため、コミュニケーションが円滑に進まず、人間関係に悪影響を与えかねません。

今まで出来ていたことがうまく出来なくなる

さらに、今までできていた仕事や家事がうまくできなくなることも初期症状の一つです。例えば、簡単なタスクでも時間がかかり、ミスが増えることがあります。これにより、自己評価が低下し、さらにストレスが増加してブレインフォグが悪化します。

感覚過敏

ブレインフォグの症状では普段の音がうるさく感じる感覚過敏の症状があります。例えば、テレビの音や周囲の雑音が普段よりも気になり、集中力がさらに低下します。このような感覚過敏は、ブレインフォグの初期症状として現れることがあり、睡眠障害を引き起こす可能性もあります。

思考が散漫

何をするにも億劫で考えがまとまらない症状も見られます。例えば、日常のルーティンをこなすのが難しくなり、やる気が出ない場合があります。これにより、生活の質が低下し、精神的なストレスが増加します。

これらの初期症状が現れた場合、早めに対処するのが重要です。生活習慣の見直しやストレス管理、適切な休息を取ることで、症状の進行を防ぐことができます。また、症状が続く場合は、心療内科や精神科の専門医に相談することをおすすめします。

ブレインフォグの検査・診断

ブレインフォグの検査・診断は、症状の多様性と主観的な感覚に基づくため、難しいのが現状です。まず、ブレインフォグは正式な医学用語ではなく、特定の診断基準が存在しないため、他の疾患との鑑別が必要です。診断の第一歩として、患者さんの詳細な病歴と症状の聞き取りが行われます。これにより、ブレインフォグの可能性があるかを判断します。

認知機能検査

認知機能の検査では、WAIS-Ⅳ検査(ウェクスラー成人知能検査)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの標準化されたテストを使用します。記憶力、注意力、言語能力、視空間認知などの認知機能を評価します。これにより、認知機能の低下が確認されれば、ブレインフォグの可能性が高まります。

画像診断

画像診断では脳を検査します。MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)を使用して、脳の構造的な異常を確認します。特に、脳血流SPECT検査(単一光子放射断層撮影)やPET(陽電子放射断層撮影)を使用することで、脳の血流量や代謝活動を評価し、ブレインフォグの可能性がある脳の機能異常を特定します。

血液検査

血液検査も重要な診断材料です。例えば、ビタミンB群や鉄分、甲状腺ホルモンなどの栄養素やホルモンのレベルを測定し、栄養不足やホルモンバランスの乱れがブレインフォグの原因かどうかを確認します。また、感染症や炎症のマーカーも測定し、感染症後の後遺症が原因のブレインフォグの可能性を探ります。

精神疾患の評価

精神疾患の評価も重要です。うつ病や不安障害、慢性疲労症候群などの精神疾患がブレインフォグの原因である場合、それらの疾患の診断基準に基づいて評価されます。これにより、適切な治療方針が立てられます。

最終的には、これらの検査結果を総合的に判断し、ブレインフォグの診断が下されます。診断が確定した場合、適切な治療計画が立てられ、患者さんの症状の改善を目指します。

ブレインフォグの治療

ブレインフォグの治療は、原因に応じてさまざまです。そのため診断にあった治療方法を適用します。以下で具体的な治療を紹介します。

生活習慣の改善

生活習慣が乱れている場合は改善が必要です。規則正しい睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけることが重要です。特に、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含む食品を積極的に摂取することで、脳の機能をサポートします。

ストレス管理

ストレス管理も重要です。リラクゼーション法やマインドフルネス、ヨガなどを取り入れることで、ストレスを軽減し、脳の疲労を回復できます。また、趣味やリフレッシュの時間を持つことで、精神的な負担を軽減します。

薬物療法

薬物療法も一つの選択肢です。例えば、抗うつ薬や抗不安薬を使用することで、うつ病や不安障害が原因のブレインフォグを改善できます。また、認知機能をサポートする薬物も使用されることがあります。ただし、薬物療法は副作用のリスクもあるため、医師の指導のもとで慎重に行う必要があります。

反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法

反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法も有効な治療法の一つです。rTMS療法は、脳に磁気刺激を与えることで、神経活動を調整し、認知機能を改善する方法です。特に、うつ病や慢性疲労症候群、脳卒中による麻痺に対する効果が報告されています。rTMS療法は非侵襲的で副作用が少ないため、多くの患者さんに適しています。

心理療法

精神疾患が原因の場合、心理療法も有効です。認知行動療法(CBT)やカウンセリングを通じて、患者さんの思考パターンや行動を改善し、ストレスや不安を軽減します。これにより、ブレインフォグの症状が緩和され、日常生活が改善されます。

栄養療法

栄養が不足して脳が正常に働いていない場合、栄養療法も重要です。ビタミンB群や鉄分、亜鉛などの栄養素をサプリメントとして補うことで、脳の機能をサポートします。また、抗酸化物質を含む食品を摂取すると、脳の炎症を抑える効果が期待できます。

最後に、患者さん自身が自分の症状を理解し、適切な対処法を見つけることが重要です。日記をつけて症状の変化を記録したり、リラクゼーション法を取り入れたりすることで、ブレインフォグの症状を管理できます。

ブレインフォグになりやすい人・予防の方法

ブレインフォグになりやすい人には、いくつかの共通点があります。まず、長時間労働や過度なストレスを抱えている人が挙げられます。仕事や家庭でのプレッシャーが大きいと、脳が過度に疲労し、ブレインフォグの症状が現れやすいです。また、睡眠不足や不規則な生活習慣もリスク要因になります。
また、慢性的な疲労を感じている人や精神疾患の人もブレインフォグになりやすいです。例えば、慢性疲労症候群やうつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)などでは、脳の機能が低下しやすく、ブレインフォグの症状が現れることが多いです。また、女性の場合、ホルモンバランスの変動が原因でブレインフォグが現れることがあります。特に、生理前症候群(PMS)や更年期障害の時期に症状が悪化する可能性があります。

ブレインフォグの予防法として、規則正しい生活やストレス管理、定期的な健康チェックが挙げられます。
下記の方法で完全に防ぐことは難しいですが、改善の一助になる可能性がありますので、近い症状に悩んでいる方は実践してみてください。

規則正しい生活

まずは規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。十分な睡眠をとり、バランスの取れた食事を摂ることで、脳の機能をサポートします。特に、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含む食品の積極的な摂取が大切です。また、適度な運動を取り入れることで、脳の血流を改善し、疲労を回復できます。

ストレスの管理

ストレス管理も重要な予防策です。リラクゼーション法やマインドフルネス、ヨガなどを取り入れることで、ストレスを軽減し、脳の疲労を軽減します。また、趣味やリフレッシュの時間も大切です。

定期的な健康チェック

定期的な健康チェックを受けることも予防に役立ちます。例えば、血液検査で栄養状態やホルモンバランスを確認し、必要に応じてサプリメントを補うことで、脳の機能をサポートします。また、感染症の予防や早期治療も重要です。特に、新型コロナウイルス感染症の予防には、ワクチン接種や感染対策を徹底するのが推奨されます。

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