目次 -INDEX-

性器ヘルペス(男性)
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

プロフィールをもっと見る
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

性器ヘルペスの概要

性器ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス(HSV)」によって引き起こされる性感染症です。男性の性器ヘルペスは、亀頭部や陰茎などの性器やその周辺に痛みを伴う水疱や潰瘍が発生し、まれに角膜炎や髄膜炎を発症するケースもあります。

単純ヘルペスウイルスは、「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」と「単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)」の2つにわかれ、主に性行為を通じて感染します。一度感染すると治癒することはなく、ウイルスが神経節に潜伏して免疫力の低下などを機に再発する可能性があります。

いずれの単純ヘルペスウイルスも非常に感染力が強く、感染率は女性のほうが高い傾向にあり、再発率は男性のほうが高いことがわかっています。

男性の性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスに感染後、2〜10日程の潜伏期間を経て患部に1〜2mm程度の水疱が複数出現します。水疱はかゆみや痛みを伴い、次第に破れて一つの潰瘍になります。
また、水疱だけでなく、足の付け根のリンパ節が腫れたり、尿道口から分泌物が出たりします。男性同性愛者の肛門を介した性行為では、肛門の周囲や腸の粘膜に水疱ができることもあります。

一度性器ヘルペスを発症すると生涯に渡って症状が再燃することがあるため、再発を予防するための対策や、他の人にウイルスを感染させないことが大切です。

性器ヘルペスの原因

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型や単純ヘルペスウイルス2型に感染することで発症します。

単純ヘルペスウイルス1型は、主に口腔から性器へと感染します。乳児期に保護者の唾液を介して感染し、その後性行為によって相手に性器ヘルペスを発症させることが多いです。単純ヘルペスウイルス2型は主に口腔や性器、肛門を介した性行為によって感染します。

いずれのウイルスも皮膚や粘膜の小さな傷から体内へと侵入します。一度感染すると神経節に潜伏し、生涯にわたって体内に留まります。

性器ヘルペスの感染リスクを高める要因には以下のものが挙げられます。

  • 不特定多数のセックスパートナーがいる
  • 性行為の際にコンドームを使用しない
  • 他の性感染症(クラミジア、淋病、HIVなど)を発症している
  • 免疫力が低下している

性器ヘルペスの前兆や初期症状について

性器ヘルペスでは、初めて感染した時に起こる「急性型」と、感染後に無症状で経過し、免疫力低下などを機に初めて症状が現れる「誘発型」、過去に感染し、再発を繰り返す「再発型」の3つの症状にわかれます。

急性型は、感染後2日〜10日の潜伏期間を経て性器のかゆみや不快感などの症状が現れます。その後発熱やリンパ節の腫れ、全身倦怠感、亀頭部や陰茎、包皮、冠状溝に痛みを伴う水疱が発生します。

誘発型や再発型は急性型と比べて症状が軽度のことが多く、1週間以内に自然に軽快することもあります。症状が現れる前に感染部位にうずきやかゆみなどの違和感が現れることもあります。
(出典:国立感染症研究所所NIID 「性器ヘルペスウイルス感染症とは」)

性器ヘルペスの検査・診断

性器ヘルペスの診断では、視診や患部からウイルスを直接検出する検査などが行われます。

診断時は、まず医師による視診が行われます。患部にかゆみや痛みを伴う水疱が複数出現している場合は性器ヘルペスが疑われます。

ただし、他にも似たような症状を示す疾患があるため、確定診断のためには単純ヘルペスウイルスを検出するための検査が必要です。

ウイルスを検出するためには、綿棒で病変部を拭って検体を採取し、ヘルペスウイルスの1型もしくは2型の抗原の有無を調べる検査が行われます。この検査は間易に行え、患者さんに身体的な苦痛も伴わないことから広く用いられています。

この他、場合によっては血液検査が行われることがあります。血液検査では、単純ヘルペスウイルスの抗体(HSV抗体)を検出できます。

性器ヘルペスの治療

単純ヘルペスウイルスを完全に排除するための治療法はないため、性器ヘルペスでは主に症状を和らげるための薬物療法が行われます。薬物療法では、「アシクロビル」や「バラシクロビル」「ファムシクロビル」などの抗ヘルペスウイルス薬が用いられます。抗ヘルペスウイルス薬を使用することで、ウイルスの活動や増殖を抑える効果が期待できます。

初発感染の場合には、より重症となるケースがあるため、感染の疑いを持ったら速やかに治療を開始することが重要です。一般的に抗ヘルペスウイルス薬は内服で5日間使用しますが、重症の場合には入院のうえ点滴で投与するケースもあります。

再発型の場合には無治療でも自然に軽快するものの、抗ヘルペスウイルス薬を使用することで症状を呈する期間が短縮できます。内服薬のほか、外用薬のみで治療が行われることもあります。再発の頻度が高い場合には、定期的に抗ヘルペスウイルス薬を内服する「抑制療法」が行われることもあります。

性器ヘルペスになりやすい人・予防の方法

不特定多数のセックスパートナーがいる人や性行為の際にコンドームを使用しない人、免疫力が低下している人などは性器ヘルペスになりやすいといえます。

性器ヘルペスに有効なワクチンは存在しないため、発症を予防するためには適切な感染対策を行うことが重要です。不特定多数のセックスパートナーを持つことは避け、性行為の際はコンドームを適切に使用しましょう。感染部位が広範囲に及んでいる場合には、コンドームを使用しても感染を予防できないケースもあるため、十分注意しましょう。
免疫力の低下を防ぐために、バランスの良い食生活や十分な睡眠、適度な運動などを心がけることも大切です。


関連する病気

この記事の監修医師