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発作性上室性頻拍
井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

発作性上室性頻拍の概要

発作性上室性頻拍(Paroxysmal Supraventricular Tachycardia、PSVT)は、突然発生する、不整脈の一種です。
前兆がなく突然始まるのが特徴で、心拍数が1分間に150〜250回と、通常の2〜3倍の速さになることもあります。
頻拍(ひんぱく=脈が速くなる)の症状は、短時間で自然におさまることが多いものの、頻拍にともなって動悸、息切れ、胸部不快感などの症状を感じることがあります。

発作性上室性頻拍の原因は、心臓を動かすための電気信号に乱れが生じるためです。心臓の上の部分にある心房や、その近くにある房室結節という部分に関係すると考えられています。

発作性上室性頻拍は、若年層や中年層で多く見られます。日常的なストレスや過度のカフェイン摂取なども原因として指摘されており、一過性で程度の軽いものなら治療を必要としないケースもあります。

一方、頻繁に発生する場合や、症状が重い場合などは心臓付近の機能に問題が生じている可能性があり、詳しい検査と治療が必要になります。

発作性上室性頻拍の原因が特定できた場合は、必要に応じてアブレーション(カテーテルで問題のある部分を焼く手術)をおこない、根治を狙うことができます。

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍の原因

発作性上室性頻拍の原因は、心臓を動かすための電気信号に乱れが生じるためです。
具体的には、心臓内部の制御機構に問題が生じ、通常とは異なる回路に信号が流れる状態となり、頻拍が起きます。

軽症のケースの大半では、ストレス、過労、アルコールやカフェインの過剰摂取、睡眠不足などの外部要因の影響が指摘されています。
構造的な心臓疾患を伴わないようであれば、発作性上室性頻拍は経過観察となり治療がおこなわれないこともあります。
一方で、心房細動などの心疾患が関与している危険なケースもあるため、繰り返し発症する場合や重症の場合は検査が急がれます。

発作性上室性頻拍の前兆や初期症状について

発作性上室性頻拍は、突然かつ予期せぬ症状として動悸や胸部の圧迫感、めまいや立ちくらみが現れることが特徴です。
多くの場合、頻拍の症状がおさまり次第回復しますが、長時間にわたって頻拍が続く場合は、失神や急性心不全など、より重篤な症状に移行する可能性もあります。

動悸

心臓が異常に速く、不規則に打つ感覚から動悸を自覚します。発作性上室性頻拍の初期症状の多くは、このような動悸から始まります。

胸部の圧迫感

胸部に強い不快感や圧迫感を感じ、息苦しさや呼吸困難を感じます。

めまいや立ちくらみ

症状の深刻さは個人によって異なりますが、血圧の急激な変化により、めまいや立ちくらみ、場合によっては一時的な失神を引き起こすこともあります。

心不全の症状

長時間にわたって心拍が速い状態が続くと、血圧低下により心臓に大きな負担がかかり、心不全の症状が現れることがあります。

発作性上室性頻拍の検査・診断

発作性上室性頻拍の診断には、心電図検査が重要な役割を果たします。
より詳細な診断のために心臓電気生理学的検査が行われるほか、必要に応じて心エコー図検査や血液検査も併せて実施されます。

心電図検査

発作性上室性頻拍では発作時(症状が出ているとき)の心電図記録を確認し、心臓の電気的活動の異常を詳細に観察します。発作性上室性頻拍に特徴的な記録結果を得られた場合は治療方針の決定などに役立ちます。
ただし、発作性上室性頻拍では発作時以外に心電図検査をおこなっても異常が見られないことが多いため、必要に応じて24時間ホルター心電図やイベントモニターが活用されます。

心臓電気生理学検査

心臓電気生理学検査では、頻拍が発生する理由や原因となる部位を特定できる可能性があり、最適な治療戦略を立てるのに役立てられています。

心エコー検査

心臓の構造的異常(血液の流れが滞っていないか、血液を送り出す力は十分か)を調べます。

血液検査

基礎疾患の有無や血液の固まりやすさなどを確認します。

発作性上室性頻拍の治療

発作性上室性頻拍の治療は、患者の症状と発作の特徴に合わせて慎重に選択されます。
治療には大きく分けて薬物療法、対症療法、カテーテルアブレーション3つのアプローチがあります。

薬物療法

ATP製剤(頻拍を止める薬)やβ遮断薬(心臓の負担を減らす薬)などを投与し、心拍数を正常に戻します。
頻回に発作が起こる場合は、継続的な薬物療法によって発作の頻度と強度を抑制することで生活の質の改善が狙えます。

ただし、薬物療法では発作性上室性頻拍を根治できるわけではありません。

対症療法

発作時の対応として、息を長く止めてこらえたり(バルサルバ法)、冷水を飲んで迷走神経を刺激したりする方法があります。

カテーテルアブレーション

発作性上室性頻拍の原因部位が特定できた場合は、カテーテルアブレーションによる治療が検討されます。カテーテルアブレーションは、問題部位までカテーテルを到達させたのち、高周波で焼灼する手術です。
カテーテルアブレーションでは頻拍の根本的な原因を取り除くことができ、治療成績もよいことで知られています。

発作性上室性頻拍になりやすい人・予防の方法

発作性上室性頻拍は、WPW症候群などの心疾患や他の心疾患が原因となって起こることもありますが、一般でも若年層から中年層まで、広く見られる疾患です。

心臓に構造的問題が原因となりうるほか、精神的・肉体的ストレスが多い人、不規則な生活習慣を送っている人も発症リスクが高くなります。

発作性上室性頻拍の予防には、生活習慣の改善が重要と言えるでしょう。

ストレス管理を徹底し、十分な睡眠と規則正しい生活リズムを心がけましょう。
カフェインやアルコールの過剰摂取を控えることも、予防に効果的と考えられています。

発作性上室性頻拍では治療を必要としないようなケースもあるものの、自覚症状がある場合の自己判断は推奨されません。気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診し、検査と診断を受けることが、正しい予防法と言えます。


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