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中枢性めまい症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

中枢性めまい症の概要

中枢性めまい症は、脳の異常によって引き起こされるめまいのことです。
主に、椎骨脳底動脈系や小脳、脳幹を中心とした脳梗塞や脳出血などが原因で生じることが多いです。
メニエール病や突発性難聴などの末梢性めまい症が主に耳の機能異常によって起こるのに対し、中枢性めまい症は脳自体の問題から生じます。

中枢性めまい症のめまいの特徴として、末梢性めまい症に比べて、程度が軽く浮動性(ふわふわとした感じ)のものが多い点が挙げられます。
また、めまいだけでなく頭痛や運動失調、手足のしびれ、嘔吐などの神経症状を伴います。

診断においては、めまいの特徴や神経症状の有無を詳しく調べます。
そのほか、眼振検査や、CT検査やMRI検査などの画像検査をおこないます。
中枢性めまいに特徴的なめまい症状や神経症状が見られ、画像検査で脳血管障害が確認された場合に、中枢性めまい症と診断されます。

治療は、主に原因となっている脳血管障害に対する治療が中心となります。

めまいの症状とともに神経症状が見られる場合は、極めて緊急性が高いため、すぐに救急搬送して専門的な治療を受けることが必要です。

中枢性めまい症の原因

中枢性めまい症は、脳血管障害が主な原因です。
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などによって、運動の調節を担う脳幹や小脳に機能障害が起こることで生じます。
これらの機能に異常が生じると、平衡感覚を正常に保てなくなり、めまいが生じます。

脳幹や小脳の近くを走行する椎骨脳底動脈の一過性脳虚血発作や、脊髄小脳変性症、てんかんなども中枢性めまい症の原因となることがあります。
これらの疾患によって、脳幹や小脳が体のバランスを保つ機能(平衡機能)を維持できなくなり、めまいが引き起こされます。

中枢性めまい症の前兆や初期症状について

中枢性めまいの初期症状は、めまいやさまざまな神経症状が組み合わさって現れることが特徴です。

めまい自体は、末梢性めまいでよく見られる激しい回転性のものが少なく、ふわふわとした浮動性のめまいが多い傾向にあります。
また、めまいの持続時間も比較的長く、慢性的に続くこともあります。

体のバランスを保つことが難しくなるため、立っていることが困難になり、座っている状態でも軽く押されただけで倒れてしまうことがあります。
神経症状としては、後頭部を中心とした頭痛、運動麻痺、運動失調、手足のしびれ、感覚障害、嘔吐、顔面神経麻痺などが挙げられます。

さらに、特定の方向を注視した際に眼球が揺れる「注視誘発眼振」が生じることも、中枢性めまい症に特徴的な症状の一つです。
これらの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

中枢性めまい症の検査・診断

中枢性めまい症が疑われる場合、問診や視診などを通して、めまいの特徴や神経症状の有無を詳細に確認します。
そのうえで、眼振検査や画像検査などの精密な検査をおこない、診断を確定します。
中枢性めまいに特徴的なめまいの症状や神経症状が認められ、画像検査によって脳血管障害が確認された場合に、中枢性めまい症と診断されます。

眼振検査

眼振検査では、注視眼振検査や頭位眼振検査などがおこなわれます。
注視眼振検査は、特定の目的物を注視する際に眼振が起こるかどうかを調べる検査で、中枢性めまい症の場合に生じやすいとされています。

頭位眼振検査は、頭の位置を変えたときの目の動きを観察する検査です。
フレンツェル眼鏡や赤外線のCCDカメラなどの特殊な機器を用いて、眼振の状態を詳しく確認します。
頭を動かすと強い吐き気が出現する場合や、目線が上下に揺れる「垂直性眼振」が見られる場合、中枢性めまい症が疑われます。

画像検査

画像検査としては、脳のCT検査やMRI検査などがおこなわれます。
脳出血であれば、CT検査で比較的容易に検出されることが多いです。
脳梗塞の検出には、MRI検査がより適しています。
特に一過性脳虚血発作などでは、拡散強調画像のMRI検査によって脳の微細な変化を検出できる場合があります。

中枢性めまい症の治療

中枢性めまい症の治療は、根本的な原因である脳血管障害に対する治療が中心となります。具体的な治療法は、原因疾患の種類や重症度によって異なります。

脳梗塞が原因の場合、梗塞部位をできるだけ早く開通させるためのカテーテル治療や血栓溶解療法がおこなわれます。
場合によっては、外科手術が必要となることもあります。

脳出血が原因の場合は、薬物療法によって血圧をコントロールしたり、外科手術によって出血病巣を取り除いたりすることがあります。
脳腫瘍が原因の場合は、外科手術による腫瘍の摘出、放射線治療、化学療法などが検討されます。

いずれの治療法も専門医による慎重な判断と、患者の状態に合わせた適切な治療計画が不可欠です。
中枢性めまい症は早期発見と適切な治療によって、症状の改善や進行の抑制が期待できるため、疑わしい症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

中枢性めまい症になりやすい人・予防の方法

高血圧や高脂血症などの生活習慣病に陥っている人は、脳血管障害のリスクが高いため、中枢性めまい症を発症しやすいと言えます。
また、過去に脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を経験したことがある人も、再発によって中枢性めまい症を引き起こす可能性が高くなります。

中枢性めまい症の予防には、生活習慣病の予防が重要です。
血圧や中性脂肪の上昇を防ぐために、減塩食や野菜を中心としたバランスの取れた食事を心がけましょう。
毎日適度な有酸素運動の習慣をつけることも大切です。
過度な飲酒は避け、禁煙することも予防につながります。

これらの生活習慣の見直しによって、脳血管障害のリスクを軽減し、中枢性めまい症の発症を予防できます。

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