

監修医師:
勝木 将人(医師)
目次 -INDEX-
脳卒中の概要
脳卒中は、脳内の血管が詰まるか、破れることにより脳の一部分が機能を失う病気で、発症部位によって異なる症状が現れます。
例えば、右側の脳で発症した場合は、反対側の左半身に麻痺が生じます。
また、麻痺だけでなく、脳は右と左で得意分野が異なり、右脳は空間的認知、左脳は言語や行為が得意分野となっています。
そんな、脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3種類にわかれ、それぞれは下記のように異なります。
脳梗塞
脳の血管が詰まり、血流が途絶えることによって、脳組織が壊死する病気です。
脳の細胞は、血流が止まると数時間以内に完全に死んでしまい、再生は困難なため、できるだけ早く脳に血流を送ることが重要です。
なお、脳梗塞は脳卒中の中でも最も割合が多く、約60%といわれています。
脳出血
脳内の血管が何らかの原因で破れて出血し、周囲の脳組織にダメージを与える病気です。脳出血で出血した血液は、しばらくすると血腫となり、さらに時間が進むと脳にむくみが生じます。
くも膜下出血
くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間に存在する血管が切れて起こる病気のことで、多くは脳動脈瘤と言われる血管のふくらみが、ある日突然破裂することによって起こります。
脳卒中の原因
脳卒中を生じる原因も、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血によって原因は異なります。
脳梗塞は、下記のような原因で、脳内の血管が詰まることによって発生します。
動脈硬化
高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの状態が続くと、血管に負荷がかかり、血管の内側が傷付いて、プラークと呼ばれるお粥のような柔らかい沈着物がたまります。
プラークがたまると内膜が厚くなり、本来弾力性のある血管が固くなります。
このような血管の状態を動脈硬化といいます。
動脈硬化になり、血液の通り道が狭くなると、その部位に血栓ができやすくなり、脳の血管を塞いでしまい脳梗塞を発症します。
高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの生活習慣病により動脈硬化が進行し、血管が狭くなったり詰まったりすることで脳への血流が阻害されます。
心房細動
心臓は、一定のリズムで血液を送り出していますが、このリズムが崩れて、心臓内の部屋が小刻みに震えて痙攣し、うまくはたらかなくなってしまう心臓の病気を心房細動といいます。
心房細動になると、心臓の中で血液がたまり、固まりやすくなって徐々に大きな血栓という血の塊が作られ、何かの拍子でこの血栓がはがれて、血流に乗って脳に運ばれると脳の血管に詰まって脳梗塞を引き起こします。
脳出血の原因
脳出血の最大の原因は、高血圧です。
高血圧は生活習慣病の1つで、塩分の取りすぎ、喫煙、過度の飲酒、運動不足、ストレス、肥満などが原因で生じます。
高血圧は血管内の血流が強い状態です。
そのため、持続的に高血圧の状態になると、血管に負担がかかり続けた結果、脳内の血管が破裂し、脳出血を引き起こします。
脳卒中の前兆や初期症状について
くも膜下出血の原因のほとんどは、脳動脈瘤の破裂です。
脳動脈瘤ができる原因は明らかになってはいませんが、高血圧や血流の異常によって血管へストレスがかかったり、喫煙、遺伝などなどが原因で
このくも膜下出血を発症すると、「ハンマーで殴られたような」、あるいは「今まで経験したことがない」と表現されるような激しい頭痛が生じます。
脳卒中の検査・診断
脳卒中は突然発症することが多い病気ですが、場合によっては、下記のような、前兆や初期症状がみられることがあります。
これらの症状を早期に認識して、迅速に対応することで、脳卒中による被害を最小限に抑えることができます。
前兆
脳卒中の代表的な前兆として、一過性脳虚血発作(TIA)があります。
一過性脳虚血発作とは、一時的に脳の血管が詰まることで症状を引き起こし、最大24時間症状が続くこともあります。
また、1日に数回起こる場合もあれば、数年間に2〜3回だけの場合もあります。
この、一過性脳虚血発作を発症したことがある人では、そうでない人と比べて、その後も脳卒中が起こる可能性がかなり高くなるといわれています。
一過性脳虚血発作の症状は人によって異なりますが、手足や顔面の運動障害や感覚障害、言葉がしゃべりにくいなどがみられます。
初期症状
脳卒中の初期症状は、発症部位や種類によって異なりますが、下記のような症状がよくみられます。 片側の手足のしびれや麻痺片側の手足が突然動かなくなる、あるいはしびれることがあります。
言語障害突然言葉が出にくくなったり、話された言葉が理解できなくなります。
視覚障害片目が見えなくなったり、視野が狭くなります。
顔面麻痺顔の片側が垂れ下がる、笑うと片側だけが動かないなどの症状がみられます。
めまいとバランス障害強いめまいが生じて、ふらつきや、歩行が困難になることがあります。
脳卒中の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、神経内科、脳神経外科です。
脳卒中は脳内の血流が遮断される疾患であり、神経内科や脳神経外科で診断と治療が行われています。
脳卒中の治療
脳梗塞の治療
脳梗塞の治療には、下記のような方法があります。
血栓溶解療法(t-PA)
発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞におこなわれることが多く、血栓を溶かす薬であるt-PAを静脈注射して詰まった血栓を溶かし、血流を回復させる治療方法です。
血管内治療カテーテルという道具を使用して、詰まっている血管まで通し、血の固まりを削り取ったり、吸引して血流を再開通させます。
血管内治療は、発症24時間以内で、太い血管が詰まっている場合では、t-PA治療に次いで後遺症が少なくなるといわれています。
脳出血の治療
脳出血の治療には、下記のような方法があります。
内科的治療出血量が少ない場合には内科的治療をおこないます。
具体的には、出血を抑えるために、血圧を下げる「降圧剤」を投与します。
また出血が生じると、その周囲の脳がむくんでくるため、「抗浮腫剤」を投与してむくみを抑えます。
出血が大規模で脳への圧迫が強い場合は、開頭血腫除去術、内視鏡的血腫除去術などの開頭手術をおこなって血腫を取り除きます。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血の治療には、下記のような方法があります。 内科的治療脳出血と同じように、再出血を防ぐために基本的には降圧薬を使用します。
外科的治療 くも膜下出血の外科的治療としては、脳動脈瘤の根元を金属クリップで閉じる開頭クリッピング術と、動脈瘤内にプラチナコイルを詰めて、血流を止めるコイル塞栓術があります。脳卒中になりやすい人・予防の方法
脳卒中になりやすい人には、特徴があるためそれらを知ることで脳卒中が発症する危険性を下げることができます。
高血圧
高血圧は脳卒中の最大のリスク要因です。
血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化や血管の破裂を引き起こす可能性が高まります。
そのため、高血圧の場合は、医師の指導に従い、薬物療法や生活習慣の改善をおこないましょう。
糖尿病
糖尿病は動脈硬化の進行を促すといわれてるため、食事を含めた見直しを行うことが重要です。
肥満
肥満は高血圧、糖尿病、高脂血症などのリスク要因を伴いやすく、脳卒中のリスクを高めます。
そのため、ジョギングなどの有酸素運動をおこないましょう。
定期的な運動は、血圧を下げ、血糖値を安定させ、体重を管理するのに役立ちます。
喫煙
喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を促進し、脳卒中のリスクを高めます。
そのため、禁煙をすることは、脳卒中予防に大変効果的です。
喫煙者は禁煙を目指し、必要なら禁煙補助薬やカウンセリングを利用しましょう。
飲酒
過度の飲酒は高血圧や心臓病を引き起こし、脳卒中のリスクを高めます。
1日平均3合以上のお酒を飲む人は、月に1〜3回程度お酒を飲む人に比べて、1.6倍脳卒中になりやすいともいわれています。
上記のような生活習慣の見直しとともに、定期的に健康診断を受けることで、早期に脳卒中のリスク要因を発見し、適切な対策を講じることができます。
脳卒中は突然発症することが多いですが、場合によっては前兆の症状を感じる場合もあります。脳卒中は時間との闘いの部分もあるため、気になる症状がみられた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
参考文献




