

監修医師:
大坂 貴史(医師)
二次性高血圧症の概要
二次性高血圧症とは、特定の疾患や要因によって引き起こされる高血圧のことを指し、全高血圧患者の約5~10%を占めるとされています。一般的な高血圧(本態性高血圧)は原因が明確でないのに対し、二次性高血圧は腎臓病、内分泌疾患、睡眠時無呼吸症候群など、明確な原因が存在します。これらの基礎疾患を治療することで、血圧の改善が期待できる場合があります。特に若年者や急激に高血圧が進行した場合、または治療に反応しにくい場合には、二次性高血圧の可能性を考慮し、詳しい検査を行うことが勧められます。放置すると心血管疾患や腎不全などの合併症リスクが高まるため、早期発見と適切な治療が重要です。(参考文献1)
二次性高血圧症の原因
二次性高血圧症は、特定の疾患や要因が原因で発生する高血圧です。主な原因は以下のとおりです。
- 腎臓の疾患: 腎動脈狭窄症や慢性腎臓病など、腎臓の機能が低下すると、体内の塩分や水分のバランスが崩れ、血圧が上昇します。
- 内分泌系の異常: ホルモンの分泌異常が高血圧を引き起こすことがあります。例えば、原発性アルドステロン症ではアルドステロンというホルモンが過剰に分泌され、クッシング症候群ではコルチゾールが過剰になることで高血圧を引き起こします。また、褐色細胞腫では過剰なカテコラミンが分泌され、血圧上昇を招きます。
- 睡眠時無呼吸症候群: 睡眠中に呼吸が一時的に停止するこの症状は、交感神経の活性化や酸素不足を引き起こし、血圧の上昇につながります。
- 薬剤の影響: 一部の薬剤、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や経口避妊薬などは、副作用として高血圧を引き起こすことがあります。
- 血管の異常: 高安動脈炎、結節性多発動脈炎、全身性強皮症などで血管に炎症が起きると高血圧になることがあります。
- 中枢神経の異常: 脳腫瘍や脳の外傷により頭蓋内の圧力が高まると交感神経活動が高まって、高血圧になることがあります。(参考文献1)
二次性高血圧症の前兆や初期症状について
二次性高血圧症の症状は、原因となる基礎疾患や高血圧の程度によって異なります。一般的な高血圧と同様に初期段階では自覚症状がないことが多いですが、以下のような場合は二次性高血圧の可能性があるかもしれません。
- 若い人の重症な高血圧
- 50歳を過ぎてから急に発症した高血圧
- それまで良好だった血圧の管理が難しくなった場合
- 血圧の値は高くないが腎臓などの臓器障害が強い場合
- 血圧の変動が大きい場
他にも、二次性高血圧の背景にある疾患による症状が見られることがあります。例えば腎臓に異常のある場合は血尿や蛋白尿が見られたり、原発性アルドステロン症では夜間の多尿が見られたりすることがあります。また、睡眠時無呼吸症候群の場合はいびきや昼間の眠気が生じたり、早朝や夜間に特徴的に血圧が高くなったりすることがあります。甲状腺機能亢進症が背景にある場合は頻脈や発汗が見られる可能性がありますが、甲状腺機能低下症が背景にある場合は徐脈や浮腫が見られるかもしれません。(参考文献1)
二次性高血圧症の検査・診断
二次性高血圧症は、高血圧の原因となっている疾患を診断することが重要です。診断をつけるために以下のような検査が行われる可能性があります。
血液検査では腎機能や血中のホルモン濃度、電解質異常を測定します。調べるホルモンとしては、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、コルチゾール、TSH、ACTHなどがあります。
尿検査では血尿の有無を確認したり、尿中のタンパク質を検出したりすることができます。主に腎疾患の有無が確認されます。
画像診断としては腎臓や副腎の形態を評価するために超音波検査やCTが行われたり、脳や血管の異常を調べるために頭部MRIや血管造影検査が行われたりすることがあります。
そして、必要に応じて睡眠時無呼吸症候群の有無を確認する睡眠ポリグラフィーやホルモン分泌の異常を調べる負荷試験を実施することもあります。(参考文献1)
二次性高血圧症の治療
二次性高血圧症の治療は、まずその原因となる基礎疾患に対して適切に対処することが重要です。例えば、腎血管性高血圧の治療には降圧薬による薬物治療に加えて血行再建術や腎摘出などの外科的治療が行われることがあります。また、原発性アルドステロン症の治療には副腎の摘出が行われる可能性があります。他の内分泌疾患の場合は、それぞれの疾患に応じてホルモンの過剰分泌を抑制する薬物療法や、過剰分泌の原因となる組織の摘出が行われます。このように、二次性高血圧の治療には降圧薬による血圧の管理と並行して原因となる疾患に対する治療が行われます。(参考文献1)
二次性高血圧症になりやすい人・予防の方法
二次性高血圧症は全高血圧患者の10%以上にのぼると考えられています。中でも原発性アルドステロン症は高血圧患者の5-10%を占めると言われています。また、睡眠時無呼吸症候群も二次性高血圧症の原因として多いと言われています。(参考文献1)
二次性高血圧症を予防するには、原因となる疾患を予防する、もしくは早期に発見し治療することで二次的に高血圧を発症することを防ぐことが重要です。定期的な健診を受け、異常が見つかった場合は放置せずに医療機関を受診して治療しましょう。