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肝硬変
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

肝硬変の概要

肝硬変は、肝臓の慢性的な疾患であり、肝細胞が徐々に破壊され、その後に線維組織に置き換わることで肝臓が硬くなる状態を指します。この疾患は、肝臓の正常な機能を阻害し、多くの健康問題を引き起こす可能性があります。

肝硬変の原因

肝硬変は、多岐にわたる要因によって引き起こされることがあります。 以下では、その代表的な原因について説明します。

ウイルス性肝炎

肝硬変の主要な原因の一つは、ウイルス性肝炎です。なかでも、C型肝炎ウイルス(HCV)とB型肝炎ウイルス(HBV)は、慢性的な肝炎を引き起こし、長期にわたる炎症によって肝細胞が破壊されることから肝硬変を引き起こします。HCVは主に血液を介して感染し、一度感染すると慢性化しやすい傾向があります。HBVも同様に血液や体液を介して感染し、慢性化することで肝硬変に進行することがあります。

アルコール

長期間にわたる過剰なアルコール摂取も肝硬変の主要な原因です。アルコールは肝細胞に直接的なダメージを与え、脂肪肝やアルコール性肝炎を引き起こします。これらの状態が続くと、肝細胞の再生と破壊が繰り返され、最終的には線維化が進行して肝硬変に至ります。アルコール依存症の方々は特にリスクが高く、早期の介入と治療が重要です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームと関連している疾患で、肝硬変の一因となります。NAFLDは肝臓に脂肪が蓄積することで始まり、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行することがあります。NASHでは、脂肪の蓄積に加えて炎症と肝細胞の損傷が見られ、最終的には肝硬変に進展することがあります。

自己免疫性肝疾患

自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの自己免疫性肝疾患も、肝硬変の原因となります。これらの疾患では、免疫系が誤って自身の肝細胞を攻撃し、慢性的な炎症と線維化を引き起こします。

その他の原因

その他の肝硬変の原因としては、遺伝性疾患(ウィルソン病やヘモクロマトーシスなど)、薬剤や毒物の長期摂取、慢性的な心不全などが挙げられます。これらの要因は、直接的または間接的に肝細胞にダメージを与え、肝硬変を引き起こすことがあります。

肝硬変は、さまざまな原因によって引き起こされる重篤な肝疾患です。早期の診断と適切な治療が、病気の進行を遅らせ、患者さんの生活の質を向上させるために不可欠です。原因となる疾患の管理と生活習慣の改善を通じて、肝硬変のリスクを減少させることが可能とされています。

肝硬変の前兆や初期症状について

肝硬変は、初期段階では自覚症状がほとんどないといわれているため、気付かれにくい病気です。しかし、進行するにつれてさまざまな前兆や初期症状が現れることがあります。

肝硬変の初期には、疲労感や全身倦怠感が現れることがあります。これは、肝臓の機能が低下することで、エネルギーの代謝や毒素の解毒が効率的に行われなくなるためです。このような症状は、日常生活に支障をきたすことがあり、慢性的な疲れを感じることが多くなります。

黄疸は、皮膚や眼球が黄色くなる症状で、肝硬変の初期に見られることがあります。これは、肝臓がビリルビンを適切に処理できなくなるために発生します。黄疸は、肝機能の低下を示す重要なサインであり、早期に医師の診察を受ける必要があります。

肝硬変が進行するにつれて、腹部の不快感や膨満感を感じることがあります。これは、肝臓の拡大や腹水(腹腔内に液体が溜まること)によるものです。腹部が膨らんだり、圧迫感を感じたりする場合は、早期に医療機関での診察が必要です。

肝硬変の初期には、皮膚に蜘蛛状血管腫(くも状の小さな血管の拡張)や手のひらの赤み(手掌紅斑)が現れることがあります。これらの皮膚の変化は、肝機能の低下を示すものであり、注意が必要です。

食欲不振や吐き気、嘔吐などの消化器症状も、肝硬変の初期に見られることがあります。これらの症状は、肝臓の機能低下によって消化酵素の分泌が減少するために発生します。食事を摂ることが困難になるため、体重減少を伴うことが多いようです。

その他、肝硬変の初期症状として、かゆみや出血傾向の増加(例えば、鼻血や歯茎からの出血)が見られることがあります。これらの症状は、肝臓が血液凝固因子を十分に産生できなくなるために起こります。 肝硬変は、初期段階では自覚症状が少ないため、定期的な健康診断や血液検査が重要です。疲労感や黄疸、腹部の不快感などの症状が現れた場合は、早期に医療機関を受診することが推奨されます。早期発見と適切な治療によって、肝硬変の進行を抑え、生活の質を維持することが可能とされています。

肝硬変の疑いがある場合は、消化器内科を受診しましょう。

肝硬変の検査・診断

超音波検査(エコー)

非侵襲的で手軽に行える検査方法です。肝臓の形状や腫瘍の有無を確認します。

CTスキャン

詳細な画像を得るために用いられます。特に、肝臓内部の構造や腫瘍の位置、大きさ、形を確認するのに適しています。

MRI

磁気を利用した検査で、肝臓の軟部組織の詳細な画像が得られます。特に、血管や胆管の状態を評価するのに有用です。 血液検査も肝臓ガンの診断に役立ちます。以下の項目が測定されます。

肝機能検査

ALT、AST、ALP、γ-GTPなどの酵素のレベルを測定し、肝臓の機能を評価します。

腫瘍マーカー

AFP(αフェトプロテイン)、PIVKA-II、CEAなどが用いられ、これらの値が上昇している場合、肝臓ガンの可能性が高まります。 画像診断や血液検査の結果が肝臓ガンを示唆する場合、確定診断のために生検が行われることがあります。細い針を用いて肝臓の組織を採取し、>顕微鏡で異常細胞の有無を確認

肝硬変の治療

肝硬変の治療は、病気の進行を遅らせ、合併症を予防・管理することを目的としています。治療方法は、原因の除去、症状の管理、肝機能のサポート、そして最終的には肝移植に至ることもあります。

肝硬変の治療において重要なのは、原因を特定し、それを除去することです。例えば、ウイルス性肝炎が原因であれば、抗ウイルス療法が行われます。C型肝炎には直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が有効であり、B型肝炎には核酸アナログ製剤やインターフェロン療法が用いられます。アルコール性肝硬変の場合、禁酒が重要な治療法です。患者さんがアルコール依存症である場合、専門的な依存症治療プログラムも併用されます。

肝硬変の進行に伴う症状や合併症を管理するための治療も重要です。例えば、腹水(腹腔に液体が溜まること)が見られる場合、利尿薬が処方されます。また、食塩摂取の制限も行われます。出血傾向がある場合、ビタミンKや新鮮凍結血漿の投与が行われることがあります。脳症が見られる場合、低蛋白食やラクツロースの投与が推奨されます。 肝硬変により肝機能が低下するため、肝機能をサポートする治療も行われます。栄養療法やビタミン補充、肝保護剤の使用などが含まれます。また、定期的な血液検査を行い、肝機能の状態をモニタリングしながら治療を調整します。

肝硬変が進行し、肝不全に至った場合、肝移植が唯一の治療法となることがあります。肝移植は、適切なドナーが見つかることが前提となりますが、多くの患者さんにとって命を救う手段となります。移植後は、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤の継続的な投与が必要です。

肝硬変になりやすい人・予防の方法

慢性肝炎ウイルス感染者は、C型肝炎ウイルス(HCV)やB型肝炎ウイルス(HBV)に感染している方々は、慢性的な肝炎を引き起こし、肝細胞が長期間にわたって破壊されることで肝硬変のリスクが高まります。

また、アルコールを過剰に摂取することは、肝臓に多大な負担をかけ、アルコール性肝炎や脂肪肝を経て肝硬変に進行するリスクが高まります。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者さんや自己免疫性肝疾患患者さんや遺伝的要因を持つ方々も肝硬変になりやすいと言われています。 肝硬変の予防方法としては以下の点が挙げられます。

肝機能を評価するための定期的な血液検査や画像検査を受け、肝炎ウイルス感染の有無や肝臓の状態を早期に把握することが重要です。

適度なアルコール摂取を心がけ、過剰な飲酒を避けることで、肝臓への負担を減らし、肝硬変のリスクを低減できます。

バランスの取れた食事と定期的な運動を行うことで、肥満や糖尿病を予防し、非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクを減らすことができます。

B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種を行い、C型肝炎ウイルスの感染予防として適切な衛生管理を徹底することが重要です。

肝疾患のリスクがある場合は、定期的に医療機関での診察と検査を受け、肝機能の状態を監視しながら、早期に適切な対策を講じることが大切です。

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