近年、
近視や乱視を矯正する手段にICLという治療法が加わった。ICLとは、簡単にいえば、眼内にレンズを埋め込む治療のこと。普段からコンタクトレンズを利用していると目に異物感があり、外れたり、ズレたり、また目が乾いたりなどのトラブルが起きる。しかし
ICLは、レンズを取り外す必要がないため、裸眼と同じような生活ができる。まだ世間的に認知度が低い治療だが、
レーシックと比べてドライアイ現象が出にくいなど、メリットも多い。石神井台アイクリニックの医院長を務め、近視矯正手術(
ICL)認定医である大野先生に、
ICLについて詳しくお話を伺った。
Doctor’s Profile
大野 隆一郎
石神井台アイクリニック 院長
信州大学医学部卒業、自治医科大学附属病院、自治医科大学附属さいたま医療センター、東京北医療センター眼科科長歴任。現在、石神井台アイクリニックで院長を務める。一般眼科から小児眼科、近視矯正治療、レーザー治療、白内障など幅広い診療を行い、目の健康のトータルサポートに尽力している。
近視矯正手術(ICL)認定医、日本眼科学会認定 眼科専門医。日本手術眼科学会など所属学会多数。
普段眼鏡やコンタクトレンズを使用している人にとって、裸眼で生活できることは非常に魅力的です。最近それを可能にするICLという治療があると伺いました。どのような治療法なのでしょうか?
わかりやすく説明すると、ソフトコンタクトのようなレンズを目の中に入れる治療です。取り外しをしない限り、24時間コンタクトレンズの働きをし続けてくれるので、その人にとって常にちゃんと見えている状況を維持できます。そのため、裸眼で生活ができるようになります。
目の中に入れるとなるとレンズの素材が気になります。どんなレンズを用いるのですか? また違和感はありますか?
まさにソフトコンタクトレンズのような柔らかい素材です。科学的な知識が必要になってくる話なのですが、簡単にいうと、コラーゲンを含んだ生体適合性の高い素材です。ソフトコンタクトレンズが目の上にのっている感覚とは明らかに違います。目の中に埋め込んでいるため、違和感は特にありません。
この治療法はいつ頃から行われるようになったのですか?
遡ると50年ほど前でしょうか。ロシアの女性が
白内障手術のため、数十年前に入れたレンズを取り出したという事例があります。
日本では10年ほど前から行われるようになりました。
私自身はこのクリニックを開院して3年と、その前の近視矯正のクリニックに勤めていた時代を合わせて、10年くらいの治療歴があります。日本で
ICLが取り扱われ始めた当初から関わっています。
ICLでどのくらい視力が回復するものなのですか?
個人の主観によるところが大きいですが、視力1.0以上を目指す治療です。その人が眼鏡やコンタクトレンズで矯正された視力を最大限引き出します。あくまでもコンタクトレンズの代わりと思っていただければよいと思います。
ICLは誰でも受けられる治療でしょうか?
日本では厚生労働省が定めている45歳までの人です。そして、適応検査を受けて問題ない人が受けられます。目にレンズを入れるため、角膜、眼球に病気のある人には治療できません。また近視の度合いがあまりにも強すぎると、それに適応するレンズがないので治療できないこともあります。
治療できる人は限られてくるのですね?
そうですね、まれに狭くてできない人がいます。日本人では2%くらいの比率のようですが、レンズを入れるスペースがない人もいるそうです。しかし、普段からコンタクトレンズを使っている人は、だいたい治療できると考えてもらって大丈夫ですよ。
角膜を削らないことが大きな違いなのですね?
はい。
ICLは何かあったときに
レンズを取り出せば元の状態に戻すことができます。角膜を削ってしまう
レーシックと比べて、そこがとても大きな違いですね。
レーシックは減らす治療ですが、
ICLは足す治療ということです。
また元の状態に戻せるというのは、とても大きな安心感がありますね。
そのとおりです。それで
レーシックではなく、
ICLを選ばれる方が多くいると思います。また、
視力が長期的に安定するということも大きなメリットでしょう。
レーシックの場合、近視が再発することもあり、視力の変動があります。しかし
ICLは、自分自身の近視が進まない限りは、長期間安定して視力を保っていられます。
レーシックと比べて優位な点が多いのですね。先生のクリニックのICLの治療の流れを教えてください。
まず、希望の方には適応検査を受けていただきます。近視の度数、視力の出方、目の形状など眼球全体の検査をします。そして治療が可能かどうかを診断し、可能であれば術前検査で入れるレンズの度数を決めます。
度数が決まったらレンズのオーダーをするのですが、在庫があるかないかで治療にかかる期間が大きく変わってきます。レンズがあれば1週間くらいで届きますが、在庫がない場合は最長2カ月くらいかかることがあります。
治療自体はどのくらいかかるのですか? また痛みはありますか?
治療時間は片目15分程度なので、両目で30分くらいです。極力痛みを軽減できるよう、麻酔の扱いに注意しています。術後に痛いということはありませんが、1週間くらい違和感が続くことがあります。
治療時間はとても短いのですね。治療のリスクなどはありますか?
まれに起こるリスクとしは、レンズの位置ずれ、度数ずれ、白内障、緑内障、眼内炎というものが挙げられます。これは治療前にも必ずお伝えしています。
一番怖いのは、感染症である眼内炎です。治療前から抗菌の目薬を使ってもらい、目の中の菌を減らし、消毒を徹底的にやります。感染症を防ぐために力を入れています。
治療後に視力が安定するための期間はどれくらい必要ですか? また治療を受けた人が注意すべきことはありますか?
視力が安定するまでには1週間程度かかります。気を付けることは、点眼薬を1カ月はこまめに使ってもらうこと。あとは、当たり前ですが目を傷つけないように注意することですね。
治療後、何か日常的に必要なメンテナンスなどはありますか?
一定期間点眼薬を使うこと以外は特にありません。目をこするなど、目を傷つけることにだけ気を付けてもらえればいいと思います。あとは近視が進むことがないような生活を心がけてもらうこと。近視が進むのは大体20代までなので、それ以外の人は特にありません。
やはり治療費が多くの人の気にかかるところです。先生のクリニックではおいくらで治療できますか?
乱視があるかないかで変わってきます。乱視がなければ50万円、乱視があれば55万円です。通常70~80万円が相場ではないでしょうか。近視矯正の素晴らしさをたくさんの人に味わっていただきたいことから、この値段で提供しています。よくいわれていますが、コンタクトレンズを25~30年使い続けるのと同じくらいの額です。
先生が治療でこだわっている点を教えてください。
こだわっている点は、年齢に合わせて度数調整をすることです。20代の人の場合、まだ近視が進む可能性があるので少し強めの度数を。40代の人であれば老眼が出るかもしれないので、弱めのレンズを入れるなど、年齢によって調整の仕方を変えます。よく運転をするとか、海に潜りたいなど、その人のライフスタイルに合わせた調整を心掛けています。
医院として力を入れているポイントがあれば、それも教えていただきたいです。
治療後のサポート体制に力を入れています。半年は定期的に検査を受けてもらえるよう、治療費の中に検査費用が含まれています。また、もし術後3カ月以内に度数が合わなくなる方がいれば、一度だけレンズ取り換えの治療もします。
手厚いサポート体制ですね。
3カ月くらいで問題がなくなり、来なくなってしまう人もいるんですけれどね! うちとしては、半年は定期的にしっかりサポートさせていただきたい。あとは、先ほども言いましたが、治療での感染症が起こらないように消毒は徹底的にやります。衛生面は特に気を付けています。ほかには、クレジットカードでお支払いしていただくこともできますよ。
治療費が高額なため、クレジットカード対応は助かる人も多いと思います。どんな方にこのICLを受けて欲しいと思いますか?
眼鏡やコンタクトで視力がしっかり出ていない人、眼鏡やコンタクトで不便を感じている人ですね。もう一度裸眼で生活をしたいと思っている方におすすめします。
ICLの治療を受けようと考えている方、Medical DOCの読者にメッセ―ジをお願いします。
治療というと怖いと感じる人は多いと思いますが、
ICLの場合、切る量はわずか3mmです。治療時間も片目15分程度と短いものであり、痛みが少ないよう麻酔の使い方にもこだわっています。
麻酔は使い過ぎると目に負担がかかってしまうので、適切に麻酔を扱い、極力痛みのない治療を心掛けています。
もう一度裸眼で生活をしたい方、コンタクトや眼鏡では不便と思っている方はぜひ一度相談しに来てください。当院のスタッフ一同、緊張が解けるよう親身な対応をさせていただきます。
ICLとは、コンタクトでお困りの方や近視の方にとって効果が期待できる治療法です。レンズを目の中に入れることを怖いと感じる人もいるかもしれません。しかし、レーシック治療のように角膜を削ることを必要としないため、ハローグレア現象やドライアイ現象が起きにくいなど、メリットが多くあります。また、レンズを取り出せば元の状態に戻れるなど、ICLだから得られる安心感がありました。角膜を削ることにより起こる弊害がないことは、レーシック治療に比べて大きな優位性を感じます。もし角膜に削ることに抵抗を感じる方や、コンタクトレンズによるドライアイに悩んでいる方は、一度ICL治療の検討をしてみてはいかがでしょうか?
医院情報
石神井台アイクリニック
所在地 |
〒177-0045
東京都練馬区石神井台4丁目7-3
石神井台クリニックモール4F
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アクセス |
西武新宿線『武蔵関駅』より 徒歩12分
西武新宿線『上石神井駅』より 徒歩15分 |
診療内容 |
一般眼科 小児眼科 緑内障 白内障 加齢黄斑変性他 |