ICL治療が「向いている人」と「向いてない人」、何で決まる?

公開日:2021/07/08  更新日:2021/07/09
ICL治療が「向いている人」と「向いてない人」、何で決まる?

近視矯正治療として注目されている「ICL(眼内コンタクトレンズ)」。その適応に向き・不向きはあるのでしょうか。あるとしたら、何が両者を分けるのでしょう。厳密な線引きがなされる条件から許容範囲を含む条件まで、「和田眼科」の和田先生が詳しく解説します。

和田佳一郎

監修医師
和田 佳一郎(和田眼科 院長)

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奈良県立医科大学卒業。2005年、兵庫県西宮市に「和田眼科」開院。以来、白内障手術4000件以上、多焦点遠近眼内レンズ400件以上、ICL・網膜硝子体手術100件以上の日帰り眼科手術の実績を誇る。日本眼科学会認定眼科専門医、ICL研究会ICL認定医。日本眼科医会、日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本糖尿病眼学会、日本緑内障学会の各会員。

線引きが伴う器質的な条件

線引きが伴う器質的な条件

編集部編集部

ICLに「向き・不向き」はあるのでしょうか?

和田佳一郎和田先生

結論から言うと「ある」と思われます。適応についていろいろな観点があると思うのですが、ここでは、「目の形や基礎疾患などを問うケース」と、「生活をしていくうえで、施術していると楽なケース」に分けて、考えていきましょう。

編集部編集部

では、「目の形や基礎疾患などを問うケース」からお願いします。

和田佳一郎和田先生

わかりました。眼内レンズを“目の中に埋入”するわけですから、置き場所が問われますよね。一般に「前房の深さが2.8mm以上」ないと、埋入が困難になります。「前房」とは、目の表面の角膜とその奥にある水晶体というレンズの間のスペースのことです。

編集部編集部

一方、基礎疾患というのは体の病気のことでしょうか?

和田佳一郎和田先生

基本的には、現時点での眼病と、将来的な眼病の可能性が問われます。例えば、隠れ糖尿病による「糖尿病網膜症」が予見できる場合、施術に入らずにそのリスクをお伝えします。もし、将来的に網膜の施術が必要となったときは、せっかく埋入した眼内レンズを取り出さないといけません。なお、こうしたリスクは、施術前の検査で把握することができます。また、妊娠中の女性も、ICLに必要な薬への制限がかかるので、お断りしています。

編集部編集部

施術前の視力は、気にしないでいいのでしょうか?

和田佳一郎和田先生

軽度の近視に関しては、無理に施術するよりもメガネなどの代替方法を模索した方がいいように思います。近視の目安ですが、もし、コンタクトレンズを処方されているなら、箱などに書いてある数値でご確認ください。なお、「−3.0D」より強い近視が適応範囲です。不明な場合は、術前に検査いたします。

振れ幅がある生活上の条件

振れ幅がある生活上の条件

編集部編集部

続けて、「生活をしていくうえで、施術していると楽なケース」についてお願いします。

和田佳一郎和田先生

さまざまな想定がされるものの、総じて「メガネや一般的なコンタクトレンズの脱着の手間から解放されると恩恵を受けるケース」になります。例えば、アレルギーやドライアイの進行により、一般のコンタクトレンズが合わなくなってきた人、あるいは子育て中のママさんなどが当てはまるでしょうか。お子さんの夜泣きや授乳などで睡眠時間を割かれますので、「起きたらすぐ裸眼状態」という環境にICLは一役買うでしょう。

編集部編集部

ほかにも裸眼が好ましい例を教えてください。

和田佳一郎和田先生

極端な例かもしれませんが、災害による避難時はどうでしょうか。停電なども考えられるなか、メガネやコンタクトレンズを探したり装着したりする間もなく緊急行動へ移ることができます。加えて、避難生活中においても、レンズ確保や目のケアに関する手間から解放されるでしょう。

編集部編集部

なるほど。マリンスポーツとの相性も知りたいです。

和田佳一郎和田先生

目のことを優先するなら、術後、3か月くらいはなるべくご遠慮いただきたいです。ICLに関係なく、そもそも目には外傷や感染症のリスクがあるため、3か月経過後でも“絶対に大丈夫”とは言えません。慎重になるとしたら、ゴーグルなどで目を保護しながら楽しみましょう。もっとも、ICLはスポーツでの打撲や外傷に対しても強く、比較的安全性は高いと言われています。一般的なコンタクトレンズを装着してマリンスポーツをしている人に比べれば、はるかに安全で快適なはずです。

編集部編集部

うつぶせ寝などで、レンズがズレることはないのですか?

和田佳一郎和田先生

たしかに考えられますが、ICLの施術件数は総計で100万例を超えています。もし、寝るたびにレンズがズレていたら、大変な騒ぎになっているでしょう。そもそも、うつ伏せで眼球を圧迫しながら寝ることが目にはよくありません。普段通りに過ごしていても、摩擦による白内障や、強い力が加わったことによる水晶体の脱臼は起こり得ます。ICL治療の有無にかかわらず、目の保護という意味で寝方に配慮してみてください。

一概に言えない年齢条件

一概に言えない年齢条件

編集部編集部

眼内レンズって、白内障にも用いられますよね?

和田佳一郎和田先生

はい。混乱の起きやすいところですが、ICLは、水晶体を“削らず”に装着します。まさに、コンタクトレンズが目の外にあるか目の中にあるかの違いです。対する白内障用の眼内レンズは、白く濁った水晶体を削った部分に埋入します。

編集部編集部

白内障になりかけの年代って、ICL治療をするか悩みどころですね?

和田佳一郎和田先生

ICLの適応は「45歳くらいまで」と考えておいた方がいいかもしれません。なお、白内障の手術によって水晶体というレンズを削ると、ピント調節機能が大幅に失われます。白内障用の眼内レンズを施術する際には、遠近双方が見える「多焦点眼内レンズ」も選択肢の1つとして検討してみてください。ピントが近方か遠方どちらか1つに固定される「単焦点眼内レンズ」の場合、クリアな視界になるものの、メガネや老眼鏡を必要とするかもしれません。

編集部編集部

ICL治療に対する年齢の下限はどうですか?

和田佳一郎和田先生

成人の定義変更を受け、「18歳未満」は保護者の同意が必要になりました。もっとも、この年代で治療費を自己負担できる人はごくわずかでしょう。親の了承のうえでの援助が前提になると思われます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

和田佳一郎和田先生

ICLは自費診療ですが、コンタクトレンズの長期使用と比べると、費用面においても有力な選択肢になり得ます。今、ICLをしておけば、後々の費用負担は原則として発生しない、もしくはかなり抑えられます。固定費用を一極集中するか、生涯にわたって流動費用を分散していくかの違いです。また、ICLなら角膜損傷や衛生面のリスクなども低減されます。加えて、「視力1.0近くの裸眼で過ごせる」という手応えが、心理的な抑制や負担も軽減してくれるのではないでしょうか。

編集部まとめ

ICL治療を検討している人にとって、目のスペースの問題と将来も含めた眼病の可能性は、避けて通れないシビアな条件になりそうです。タイトルにある「向いていない人」の例ですね。他方、「向いている人」のイメージは、端的に言うと「裸眼だと楽な人」ということでした。ただし、趣味の中身や寝方、年齢などによって、多少の幅があるようです。本記事の内容はあくまで目安にすぎないので、詳しくは身近な眼科医と相談して決めてみてください。

 

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和田眼科

和田眼科
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診療科目 眼科