「家族のうつ」にはどう接したらいい?

公開日:2021/07/12  更新日:2021/07/14
「家族のうつ」にはどう接したらいいですか?

もし、家族の誰かが“うつ”と診断されたら、不可欠な治療とは別に、周囲の接し方が問われるでしょう。強く行くべきか、静かに見守るべきか、あるいは外部の力を頼るべきなのか。治療成績の行方を左右しかねない家庭のあり方について、「ライトメンタルクリニック」の清水先生が解説します。

清水聖童

監修医師
清水 聖童(ライトメンタルクリニック 院長)

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富山大学医学部卒業。国立精神・神経医療研究センター病院や都内の精神科・心療内科クリニック勤務後の2020年、東京都新宿区に「ライトメンタルクリニック」開院。「精神医療をもっと身近に」をモットーに掲げている。日本精神神経学会精神科専門医、精神保健指定医の資格を有する。

自分の主観で決め打ちしない

自分の主観で決め打ちしない

編集部編集部

家族がうつ病と診断されました。なにに気をつければいいですか?

清水聖童清水先生

大切なのは、「非難から入らない」ことですね。ご本人の状態や口にしていることも含めて、まずは「現状を認めて」あげましょう。過度な介入も避けるべきで、励ましが非難と受け取られる場合もあります。どういうふうにしてほしいのか、すべての主導権を患者さんに与えてください。

編集部編集部

全部「黙認」するわけでもないのですよね?

清水聖童清水先生

うつと診断されたご家族に対し、異議を唱えたり、どのような点で間違っているのかを指摘したりする分には、差し支えありません。ただし、どうしてもそこにご自身の感情が入りやすいです。「大丈夫だから」とか「外の風に当たると気持ちがいいわよ」といった、“根拠のハッキリしない、自分自身にとって好都合な圧力”は控えましょう。「屈服はしないけれど、感情的な攻撃もしない」、キング牧師的な対応が理想ですね。

編集部編集部

勤め先への対応は、本人に任せてもいいのでしょうか?

清水聖童清水先生

私個人の経験則になりますが、「辞職のような大きな決断」は、先延ばしにすべきでしょう。そこで問われるのが投げかけ方ですが、「すぐに辞めるのと後から辞めるのでは、こういう違いがあるよね。辞めるのは、休職した後からでもできるよ」といったかじ取りをしてみてください。判断材料を渡して、自分でどうするのか決めさせるのがコツです。

編集部編集部

なるほど。そのほか、最も避けるべきことはなんでしょう?

清水聖童清水先生

やはり、自殺のサインを見逃さないことでしょうか。「死にたい」「消えてしまいたい」「遠くへ行きたい」などの物言いが増えてきたら、具体的なアクションを起こしてください。ときには、行政や警察の手を借りることも必要です。

なにかをするなら、専門家と相談してから

なにかをするなら、専門家と相談してから

編集部編集部

しかし、見守るだけというのも歯がゆい気がします。

清水聖童清水先生

ご本人でなんとかなりそうなら、それを信じ、「キング牧師的な対応」の一手で臨んでください。難しいところですが、異常行動や生死の危険が顕著に感じられたら、保健所の相談窓口を利用しましょう。ご家族だけでも相談できます。

編集部編集部

行動にムラがあるのですが、対応を変えるべきでしょうか?

清水聖童清水先生

ご家族側の態度や発言内容は、一貫して同じであるべきです。そういう意味ではなく、「声がけのタイミングを図る」ということであれば、変えてみてもいいでしょう。相手が「声をかけてほしそうだな」という瞬間はあります。そんなときには、「待ち」を転じて、「なにか、してほしいことはある?」などと接してみてください。

編集部編集部

せめて、食事だけでも十分に取ってほしいです。

清水聖童清水先生

やはり、感情的にならないことが大切です。「家族として、心配しているから食べてほしい」というメッセージは発し続けましょう。その一方で、「こんなに心配しているのに」とか「また、食べてないじゃない」といった攻撃は厳禁です。水分だけでも摂っていれば、人は早々に倒れません。

編集部編集部

するべきことがほかにもあれば、教えてください。

清水聖童清水先生

一律的な対応がなじみませんので、医師と相談し、ケース・バイ・ケースで進めていくしかないでしょう。うつの分野は人の心を扱うので、医師によって考え方が異なるかもしれません。相談するとしたら、経験豊富な専門医を選んでみてはいかがでしょうか。

インターネット上のベキ論は参考にしない

インターネット上のベキ論は参考にしない

編集部編集部

ところで、うつ病の治療って、どのような内容なのでしょう?

清水聖童清水先生

「休養」「環境改善」「薬物治療」「精神療法」がうつ病治療の4本柱とされています。このうち難解なのは「精神療法」でしょうか。考え方の悪いクセを治したり、キーマンとなった人物との関係良化を図ったりしていきます。

編集部編集部

受診時に、家族が付き添ってもいいのですか?

清水聖童清水先生

ご本人が了承していれば、一緒にご来院ください。家族が治療内容や出口を知っておくことは、とても重要です。ご本人とは別のタイミングで、説明だけ聞きに来てくださっても結構です。ただし、「あのとき先生がこう言っていたじゃない」という攻撃は控えましょう。あくまでキング牧師に徹してください。

編集部編集部

のみ薬を嫌がっているのですが、どうすればいいでしょう?

清水聖童清水先生

結論は同じです。お薬の用法・用量を守らないと長期化傾向にあるものの、感情的な物言いは避けましょう。「お薬をのむとなにが良くて、のまないとなにが悪いのか」を、粛々と説明するしかないでしょう。難しそうだったら、医師へ相談してください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

清水聖童清水先生

「うつ病」という名称は「うつ症」へ変わることが決まりました。要は、それくらい“診断のつけにくい、幅をもった症状である”ということです。ベキ論がなじまない分野ですので、医師や行政と連携を取りながら、ケース・バイ・ケースで取り組んでください。

編集部まとめ

控えるべきは、「感情的に攻める」ことのようです。一方、したほうがいいこととなると、ケース・バイ・ケースに分かれます。つまり、正しい知識がないと、ブレーキ一辺倒になりかねないということですね。正しくアクセルを踏むためにも、ご家族が医師や行政担当と話し合ってみましょう。

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診療科目 精神科、心療内科