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男性でも更年期障害になるの?

 更新日:2023/03/27

更年期」という言葉は女性の「閉経」とセットで語られているようですが、男性にも更年期や更年期障害があるのでしょうか。少なくとも、身近な話題に上ることはありません。はたして、「年のせい」とは異なる実情があるのかどうか、「ぐみょうじ泌尿器科」の速水先生に伺いました。

速水先生

監修医師
速水 悠太郎(ぐみょうじ泌尿器科 院長)

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関西医科大学医学部卒業。関西医科大学附属枚方病院(現・関西医科大学附属病院)、大阪府済生会野江病院などの勤務を経た2020年、神奈川県横浜市に「ぐみょうじ泌尿器科」開院。幅広い知識と経験から、最適な医療をおこなうよう心掛けている。日本泌尿器科学会認定専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。日本排尿機能学会、日本泌尿器腫瘍学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本腎泌尿器疾患予防医学研究会の各会員。

老化と違って「回復が望める」症候群

老化と違って「回復が望める」症候群

編集部編集部

ホルモンバランスの乱れによる体調の変化って、男性にも起こるのでしょうか?

速水先生速水先生

起こります。「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」という名称があるくらいです。女性には「閉経」という劇的な変化がありますので、更年期障害を自覚しやすいですし、発症も閉経後の数年に限られています。他方の男性は、徐々に男性ホルモンの分泌が減少するので、「いよいよ来たか」といった自覚をすることが難しく、長期化の傾向にあります。

編集部編集部

ズバリ、性欲の低下やED(勃起障害)のことでしょうか?

速水先生速水先生

必ずしもそうとは限りません。①性欲の低下やEDに加え、②うつ状態、不安、疲労感といった精神症状③発汗、ほてり、頻尿、睡眠障害などの身体症状もあります。更年期障害由来のうつ症状は、精神科を受診しても、なかなか快方に向かえないと思います。

編集部編集部

更年期障害と老化は、異なるのですか?

速水先生速水先生

一般には、「年のせい」や「別の病気」と勘違いしている方が多いようです。「年のせい」と言えばそうなのですが、更年期障害は、正しい治療により回復が望める症候群です。心身の変化を変化として受け止めて、まずは受診してみてください。

編集部編集部

医療機関で検査すればわかりますか?

速水先生速水先生

わかります。新しい分野なので未発達なところはあるものの、「加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き」というガイダンスに、検査や問診、治療方法が記載されています。なお、LOH症候群の受診先としては、泌尿器科を推奨します。

予防対策は生活習慣病対策に準ずる

予防対策は生活習慣病対策に準ずる

編集部編集部

予防、あるいは改善目的として、自分でできることってありますか?

速水先生速水先生

適度な運動習慣を身につけることですね。男性ホルモンの分泌が促されるだけでなく、生活習慣病予防としても有効です。とくにEDは、生活習慣病との関わりが深いとされています。

編集部編集部

ほかにもコツがありましたら、教えてください。

速水先生速水先生

睡眠の質を上げることです。睡眠不足は、男性ホルモンを低下させます。決まった時間に就寝し、7時間の睡眠を目安としてください。また、ストレスをためないことや、孤独にならないことも重要です。

編集部編集部

孤独ですか。むしろ孤独好きでリラックスできる場合は?

速水先生速水先生

本当にリラックスできているなら構いませんが、なにかからの「逃げ」や「言い訳」が介在し、“好きなつもりで我慢している”としたら問題です。また、孤独につきものなのが、運動不足と乱れた生活習慣でしょう。孤独な生活の結果として、LOH症候群になっているのかもしれません。

編集部編集部

男性ホルモンの分泌を活発にしてくれる食べ物などはありますか?

速水先生速水先生

よく聞くのはカキやワカメなどですが、医学的に証明されているわけではありません。むしろ、特定の食べ物に偏ったり頼ったりするのではなく、栄養バランスに留意してください。生活習慣病対策と同じですね。

編集部編集部

逆に、避けたいことは?

速水先生速水先生

過度の飲酒と喫煙習慣は、間違いなく悪影響を起こします。ぐっすり眠るために「お酒に頼る」のは逆効果で、むしろ睡眠の質を下げてしまいます。アルコールとタバコで得られることは「なにもない」と思ってください。

症状に合わせた漢方薬の処方が標準治療

症状に合わせた漢方薬の処方が標準治療

編集部編集部

自己努力しても改善しない場合は? 受診のめどがわかりづらいです。

速水先生速水先生

境目や決まりはないのですが、自分で「おかしいな、困ったな」と思ったら、やはり、受診しましょう。逆に、特段困っておらず、元気いっぱいの方が予防目的で受診されると、保険の適用外になってしまいます。

編集部編集部

男性の更年期障害が性格として表れると、なかなか病気とは思いません。

速水先生速水先生

女性でもそうですが、攻撃的な性格になったり、イライラ感が募ったり、気分が落ちこんだりするケースはあります。「陽」と「陰」の双方に変化するので、他人から指摘されることもあるでしょう。素直に受け止めて、受診動機にされてはいかがでしょうか。

編集部編集部

仮に治療ということになると、どう進めるのですか?

速水先生速水先生

治療方法としては優しい、漢方薬の服用から始めます。直接的な男性ホルモンの注射や塗布は、最後の段階ですね。また、EDに対しては「PDE5阻害剤」を処方することもあります。男性ホルモンを増幅させるのではなく、性交渉に“自信をもっていただく”ようなお薬です。性交渉への自信から「いい循環に入る」方もいらっしゃいます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

速水先生速水先生

男性の更年期障害の治療や検査は、内容により保険適用になる場合と、自費診療になる場合があります。事前に主治医に確認してください。

編集部まとめ

男性の更年期障害は、「老化」というよりも「生活習慣病」に近い印象です。更年期障害の原因も、生活習慣病に等しいといえるでしょう。その意味で、「孤独」にはご注意を。コロナ禍における自粛生活と同様、生活サイクルの乱れが起きがちです。健康“的”な生活が、まさに健康を築くということなのでしょう。

医院情報

ぐみょうじ泌尿器科

ぐみょうじ泌尿器科
所在地 〒232-0067 神奈川県横浜市南区弘明寺町137-6
アクセス 京急線「弘明寺駅」 徒歩5分

診療科目 泌尿器科

この記事の監修医師