【漫画付き】気になる「残尿感」は放っておいても大丈夫? 検査したほうがいい?
トイレに行っておしっこをしたあとも、尿が残っている感じ(残尿感)がしたら、それは病気のサインかもしれません。残尿感があるときにはどんな病気の可能性があるのか、原因に男女差は? 検査はしたほうがいいのか? など、泌尿器科の専門医としてさまざまな症例の治療にあたってこられた土橋正人先生にお答えいただきました。
監修医師:
土橋 正人(どばし泌尿器科クリニック)
北里大学医学部卒業。国際医療福祉大学熱海病院泌尿器科、国際医療福祉大学病医院講師などを経て、2019年9月に泌尿器科とペインクリニック内科を専門とした「どばし泌尿器科クリニック」を開業。日本泌尿器科学会認定指導医・泌尿器科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
女性に多い膀胱炎、男性に多い前立腺肥大症
編集部
いつも残尿感があるのですが、病気の可能性はありますか? それくらいで病院にかかるのも気が引けるのですが……。
土橋先生
残尿感の原因は、膀胱炎や前立腺肥大、前立腺炎、過活動膀胱などが考えられます。これらは放っておいても大丈夫か、ということですが、たとえば膀胱炎の軽い場合は、水分をしっかりとってもらうだけで、症状が改善してしまうことがあります。ただ、膀胱炎かなと思っていたら実は膀胱がんだったという可能性もありますので、残尿感がある場合は、原因が何かをはっきりさせるために、できれば一度泌尿器科を受診いただくことをおすすめします。
編集部
残尿感の原因に、男女差はありますか?
土橋先生
あります。残尿感の原因で女性に一番多いのは、膀胱炎です。細菌による感染が原因で発症します。残尿感があるけど残尿がなければ、膀胱炎の可能性が高いですね。男性に多いのは、前立腺肥大症です。前立腺肥大症の場合は、肥大した前立腺によっておしっこの通り道の一部が狭くなるため、残尿感のほかに、尿の勢いが弱くなる、途中で止まる、おなかに力を入れないと尿がうまく出せない、などの排尿に関連するさまざまなトラブルを伴います。
編集部
排尿にトラブルがあるかどうか、自分で判断できるような基準はありますか?
土橋先生
おしっこをしている時間が長くなる、というのは一つの目安ですが、人と比べるものではないので、気づかない方もいらっしゃいます。そこで、残尿感がある方に排尿時間を確認するために私がよく聞くのは、「公衆トイレに入ったときに、隣の人と比べて自分が長いかどうか」です。自分がトイレの前に立ってから立ち去るまでに、隣の人が2人以上入れ替わるようなら、長いといえます。
編集部
男性に多い前立腺肥大症の原因と治療法は?
土橋先生
男性ホルモンに影響されるといわれていますが、その裏づけとなるデータはまだ出ていません。ただ、高齢になると増えてくるのは確かです。基本的に、前立腺肥大症は進行する病気といわれています。現在使われている薬の主流は前立腺の筋肉を柔らかくして排尿のサポートをする薬で、前立腺自体を小さくする薬ではありません。薬を飲んでよくなっても、薬をやめてしばらくすると元に戻ってしまうことがあります。また、前立腺肥大症の薬の中で、前立腺の大きさを小さくする薬もありますが、薬をやめるとまた前立腺は大きくなってしまいます。根本的に前立腺肥大を治そうとしたら、手術をするしかありません。そのため、前立腺肥大症の治療は、最初は薬物療法で自覚症状の改善を行い、それでも排尿に問題がある場合には、前立腺の通り道を広くするための手術をする、というのが現在の一般的な流れとなります。
実際に残尿があるかどうかを調べるには、泌尿器科へ
編集部
残尿感があるときに、実際に残尿があるかないかを自己判断する方法はありますか?
土橋先生
あくまでも目安ですが、仰向けになり、膀胱あたりを手で押さえたときに張った感じがすれば、尿が残っている可能性が高く、張った感じがしなければ、残尿がない可能性が高いですね。ただ、正しく診断するには、泌尿器科を受診していただくのが確実です。泌尿器科では、超音波や残尿測定器などを使って実際に残尿があるかを測定することができます。
編集部
泌尿器科では他にどんな検査をするのでしょう?
土橋先生
残尿感やその原因をさぐるためには、超音波や残尿測定器のほか、尿流量測定器を使って排尿のときの勢いや時間、量、排尿のパターンを測定します。これらの検査で、本人の自覚だけでなく、客観的な数値で多角的に判断することができます。その結果を見て、治療が必要かどうか、治療する場合はどのような方法で行うのかなどを判断します。
編集部
残尿感を数値化できるのなら、治療後の効果判定にも使えそうですね。
土橋先生
そうです。たとえば薬を服用して、患者さんが「症状が楽になったよ」とおっしゃっても、実は気持ちのうえだけのことかもしれません。それを、実際の数字で、たとえば元々の最大尿流量が8ml/秒しかなかったのが、薬の服用後は16ml/秒になった。としたら、それは確かによくなっていると判断できます。残尿感や勢いの弱さは、自覚だけではわかりにくいところがありますから、そのためにも、検査は役に立つのです。これらの検査機器は、内科などで置いてあるところはほとんどありませんので、残尿感など泌尿器系のトラブルは、専門の泌尿器科に行っていただいたほうが、数値に基づいた確実な診断が受けられます。
うつ病の薬で排尿トラブルになることも
編集部
残尿感の原因は、精神的な場合もありますか?
土橋先生
はい、心因性の残尿感もあります。大体は頻尿の症状があって、付随して残尿感を訴えられる方が多いですね。実際に残尿があるかどうかを見極めるためには、やはり残尿測定を行います。また、いろいろな病気の可能性を考えて診察や検査をして、病気ではなかったとしても、「でも残っている感じがするんですよ」っておっしゃる方がいたら、心因性による残尿感も疑います。
編集部
薬の影響などもあるのでしょうか?
土橋先生
あります。すでにうつ病の薬を飲んでいる方は、その薬自体に尿の勢いを止めたり、頻尿になったり作用があるので、それも見極める必要があります。また、残尿感や頻尿などはその方の感覚の問題なので、症状が最も悪い状態を0点、満点を100点とした場合に合格ラインを60点ぐらいにして、100点までよくならなくても、60点くらいまでいけばOKとしましょう、完全によくなることは難しいですよ、とお話しすることで、安心してくださることもあります。また、話をよく聞いてさしあげると、よくなる場合もあります。
編集部まとめ
膀胱がいっぱいになってトイレにかけこみ、出し切ったときのスッキリ爽快感は誰もが味わったことがあると思いますが、もし出し切れず、尿が残っている感じがしたら、不快に違いありません。そんな症状が出たとき、女性の場合は膀胱炎、男性の場合は前立腺肥大症のことを考えるとよいでしょう。膀胱炎は細菌による感染が原因で、前立腺肥大症は、前立腺が大きくなることで尿道を圧迫して様々な排尿トラブルが発生します。
実際、残尿があるかどうかは、泌尿器科に行くと、超音波や残尿測定器などを使って測定することが可能です。さらに、残尿の原因を探るために、尿流量測定器など専門の医療機器を使って、検査が行われます。これらの機器は、内科などには置いてないことが多いため、泌尿器系の不調の場合は、泌尿器科に行ったほうが、的確な診断を受けられることがわかりました。
残尿感は、精神的な原因による場合もあるそうですが、いずれにしても、気になることがあったら、泌尿器科を受診することが、不快な症状を解消する近道のようです。
医院情報
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アクセス | 熱海駅から徒歩17分/来宮駅から徒歩13分 JR熱海駅よりバスにて清水町バス停下車 |
診療科目 | 泌尿器科・腎臓外科・ペインクリニック内科・麻酔科 |