放置してはダメ! 怖い不整脈「心房細動」とは?
不整脈とは、本来一定のリズムを刻むはずの脈が、乱れたり途切れたりする状態で、放置しておくと、命を脅かす怖い不整脈があるといいます。果たしてそれはどんな不整脈なのでしょう。見つけ方や見つけたときの対処法、治療法について、河西内科循環器科クリニックの院長河西研一先生に、わかりやすくご説明いただきました。
監修医師:
河西 研一(河西内科循環器科クリニック 院長)
金沢医科大学医学部卒業、医学博士。いくつかの病院での研鑽を経て、横浜市磯子区の林内科医院に勤務。2002年からは副院長に就任。2005年、熱海市に河西内科循環器科クリニックを開業、現在に至る。1989年に慶應義塾大学理工学部機械工学科を卒業後、バブル期に会社員を経て金沢医科大学医学部に編入学という異色の経歴を持つ。2018年11月に、専門性の高いクリニックが複数入るクリニックビルの事実上のオーナーとなり、日本初の多施設共通受付・自動会計システムを導入するなど、医療を通じて様々なことにチャレンジしている。
脈が1分間に100回以上、または50回以下は要注意!
編集部
そもそも不整脈とはどういう状態なのでしょうか?
河西先生
字からみてわかるように、脈が整っていない状態のことを言います。ときどき脈がとんだり、一定でなかったり、規則正しくても速すぎたり遅すぎたりする状態です。それらが一時的に現れる場合も、不整脈と診断されます。安静時の脈が、1分間に100回以上、または50回以下の場合は要注意です。
編集部
不整脈には怖いものとそうでないものがあるそうですが、本当でしょうか?
河西先生
はい。不整脈には、治療しなくていい不整脈と、治療をしたほうがいい不整脈があります。ほとんどの不整脈は命にかかわるほど怖くはありませんが、怖いのは「心房細動」というタイプで、これはみつかったら治療をしたほうがいい不整脈です。心房細動とは、一定のリズムで活動するべき心臓の心房が、不規則になって起こる不整脈で、脳卒中や心不全などのリスクが高くなるため、それを予防するために治療が必要です。
編集部
心房細動による不整脈を見つけるには、どうしたらよいのでしょうか?
河西先生
不整脈を自覚するのはとても難しくて、心房細動の場合も、3分の1以上の方は自覚症状がありません。自覚がないので病院にも行きませんから、なかなか発覚されないのも怖いところです。当院でも心房細動と診断された方のうち、自覚症状があって来院された方は3割程度です。
編集部
自覚症状がある場合、どういった状況で気がつくものでしょうか?
河西先生
ほとんどは、安静にしているのに心臓がドキドキしたので受診した、という方が多いですね。ただ、心臓がドキドキと速くなれば心臓に問題があるのかな? と気づきますが、脈が速くない場合はなかなか気づきませんから見過ごされてしまうことが多いんです。
編集部
自分で脈を測るようにしていたら、不整脈には気づきますか?
河西先生
たしかに、自分で脈をとることができる人は、比較的みつけやすいです。心房細動の場合、絶対性不整脈といわれていて、すべての脈がバラバラなんです。普通の不整脈は、一定のリズムで脈が打っている途中で、急に速くなったり、しばらく脈が途切れたりします。でも、心房細動はリズムがバラバラなのが特徴で、脈をとっていても一定のリズムにはなりません。もちろん、医者が心音を聞けばすぐに異常に気づきます。ただ、最近は聴診器を当てない医者もいますから、できるだけ聴診器を使うよう警鐘を鳴らしているところです。
編集部
心房細動が起こる原因は何でしょう?
河西先生
原因はまだはっきりしていませんが、加齢とともに頻度が高まることはわかっています。70歳以上では10~20%の方に、心房細動があるといわれています。そのため、40歳を超えたら、定期的な健康診断などで心電図検査を受けることが大事です。
編集部
年齢以外のリスクファクターはありますか?
河西先生
高血圧の人は心房細動になりやすいといわれています。あとは、脱水状態が発症の引き金になることが多いです。これは、心房細動に限らず全ての不整脈にいえることですので、脱水状態にならないよう、普段から水分不足には十分に気をつけましょう。成人男性の体の約60%は水ですから、やはり人間にとって水は大事ということです。
不整脈を指摘されたら、早めに循環器内科へ!
編集部
心房細動に気づかないでいると、どうなるのでしょう?
河西先生
心房細動による不整脈は結構長く続きます。48時間以上続くと、心臓に血栓という血のかたまりができ、その血栓が血流にのって脳に行くと、脳の血管がつまってしまう「脳梗塞」を引き起こすリスクが高まります。
編集部
どうして血栓ができてしまうのですか?
河西先生
血液は動いていないと固まってしまうからです。心臓が十分に収縮していないと血液の流れが滞り、やがて心臓内に血液のよどみができ、血のかたまりができやすくなります。自覚しにくいのですが、誰にでも起こる可能性があり、血栓ができると命に関わることが多いのが怖いところです。いずれにしても、不整脈の自覚症状があったり、定期健診や人間ドックなどで不整脈を指摘されたら、放置せずに循環器内科を受診していただきたいと思います。
編集部
心房細動の治療法はありますか?
河西先生
今は、カテーテルアブレーションという手術で治すことができます。心房細動があることで一番困るのは、脳梗塞が起こることです。脳梗塞は命に関わる重大な病気ですから、それを予防することが一番の目的で、心房細動そのものを止めることが主たる目的ではありません。ただ、心房細動の脈が速い状態が長く続くと心不全になりやすくなるため、心房細動の治療は、心不全も避けることができます。
編集部
薬はないのでしょうか?
河西先生
不整脈を止める薬に抗不整脈薬という薬がありますが、これを使っても寿命は延びなかったという研究データもあり、それが発表されて以来、あまり積極的には抗不整脈薬は使われなくなりました。むしろ、心房細動がみつかったら、脳梗塞と心不全を防ぐ治療が必要です。
編集部まとめ
不整脈は、治療をしたほうがいいタイプと、しなくてもよいタイプに大別されます。治療が必要な不整脈の中でも気をつけるべきは、「心房細動」と呼ばれる不整脈です。心房細動は、心臓の心房の活動が不規則になって起こります。放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるため、治療が必要なのです。ただ、不整脈を自覚できるのは全体の3分1ほど。心房細動が起こる原因ははっきりしていないものの、加齢にともない増えることはわかっています。自分で脈をとる、定期的な健康診断を行うなどで、まずは不整脈を早めにみつけることが大切です。もしみつけたら、循環器内科を受診すること。心房細動はアブレーションという治療法で治すことができます。
医院情報
所在地 | 〒413-0015 静岡県熱海市中央町17-15 K’sメディカルビル5階 |
アクセス | 来宮駅から徒歩 約10分 熱海駅から徒歩 約16分 |
診療科目 | 内科・循環器科 |