「腸内細菌が性格を決める」ってホント!?

海外でおこなわれた実験によると、ふん便を移植されたマウスは、移植元のマウスの性格までも引き継いだという。その原因と考えられているのが、ふん便の中に生息している「腸内細菌」だ。ある種の細菌は、人間の性格にも影響を与えるのだろうか。その真偽を、「厚木胃腸科医院」の寒河江先生にたずねてみた。

監修医師
寒河江 三太郎(厚木胃腸科医院 院長)

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北里大学医学部卒業後、国際親善総合病院での研修を経て慶應義塾大学一般・消化器外科教室に入室。その後、稲城市立病院、平塚市民病院、慶應義塾大学病院で消化器疾患を中心に幅広くキャリアを積み、2015年に父が院長を務める「厚木胃腸科医院」を継承。地域のかかりつけとして一般外来をおこないながら、「厚木から胃や腸のがん患者をゼロにしたい」という思いのもと、専門分野である内視鏡による胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に尽力している。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本禁煙学会認定指導医。

編集部編集部

腸内細菌がヒトの性格や行動を決めるというウワサを聞いたのですが?

寒河江先生

にわかには信じがたいですね。大腸内には、大腸菌や乳酸菌などのさまざまな菌が住んでいます。一説によると、その数は100種類、100兆個以上ともいわれているのです。はたして、特定の菌が、ほかのすべての菌を押しのけるほど影響力を持つでしょうか。仮に持ったとしても、100兆の菌の中から、どうやってその菌を見つけていくのでしょう。

編集部編集部

しかし、ふん便を用いたマウス実験がおこなわれたそうです

寒河江先生

ヒトのふん便を菌ごとマウスの腸内へ移植する実験は、日常的におこなわれています。ただし、一つ一つの菌を評価しているわけではありません。例えば下痢で悩んでいるヒトがいたとして、そのふん便をマウスに移植して同様の結果になったら、その原因は腸内環境にあるのかもねと。このように、全体として評価しているだけです。

編集部編集部

マウス実験の結果は、額面どおりに受け取れないと?

寒河江先生

ヒトに応用できるかどうかもわかりませんし、そもそもまだ実験の規模が小さすぎますよね。たまたま起きたことを、おもしろおかしく書いている側面が否めません。普遍的な傾向なのかどうかは、まだまだこれからの話でしょう。否定するつもりはないものの、コップ一杯の水の中で偶然見られた現象が、海全体にも通用する真理と言えるのか。現状では、断定しきれないでしょう。

実は「悪さ」もする善玉菌

編集部編集部

そもそも、腸内細菌とは何なのでしょう?

寒河江先生

主に小腸から大腸にかけて生息する菌の総称です。胃にも菌はいますが、通常、胃酸の働きで死滅してしまいます。また、一般に「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」などと大別されていますが、実は良くわかっていません。例えば「善玉菌」といわれているビフィズス菌にしても、量が多いと便秘になりますし、少ないと下痢を起こします。常に善玉として働いているわけではないのです。

編集部編集部

やはり、種類の多さが正体をつかみにくくしているのでしょうか?

寒河江先生

種類だけでも数百、組み合わせとなると天文学的な数字になってしまいますよね。正直、評価のしようがないのです。腸内細菌全体として見たとき、こういう組み合わせだとこういう傾向になることがあるみたいだね・・・と考えられている段階です。

編集部編集部

「腸内フローラ」という考え方を導入している医院もあるようですが?

寒河江先生

腸内フローラは、全身の炎症やリウマチ、自己免疫性疾患などに有効とされています。ただし、これらの症状と特定の菌との間に、1対1の因果関係が示されているわけではありません。あくまで、全体のバランスを調整する治療方法です。

ピロリ菌に続く大発見はあるのか?

 

編集部編集部

乳酸菌などの効用をうたった商品もありますよね?

寒河江先生

はい。腸内細菌の研究は、製薬会社や乳業会社でもおこなわれています。しかし、臨床応用の数自体が少ないですし、はっきりしてくるのはこれからだと思います。千や万の単位で起きたことが、億や兆という単位でも起こりえるのか。ヨーロッパの一部地域で取り入れられてきた健康法が、日本人の腸にも有効なのか。まだまだ何とも言えないと思います。

編集部編集部

性格の話と関連して、脳の伝達物質が腸でも作られると聞きましたが?

寒河江先生

腸内細菌は炎症性疾患の原因となる物質を生み出すので、ある程度の関わりはあるのでしょう。ただし、個人差があるはずですし、やはり未知数ですよね。

編集部編集部

そう考えると、ピロリ菌と胃がんの関係は、まれな大発見なのですね?

寒河江先生

胃と大腸では環境が異なるため少し事情は違いますが、消化器内細菌の発見や検証が難しいからこそ、ピロリ菌の発見者はノーベル賞の栄誉に輝いたのでしょう。要は、それくらい困難なことなんです。おいそれと証明できるようなものではない。「性格」との関連性も同様で、いまだ研究中といったところなのではないでしょうか。結論付けるのは早計だと思います。

編集部まとめ

どうやら腸内細菌と性格の関係は、まだまだ解明途中の1ステップであるようです。デマやフェイクニュースの類いではないにせよ、あしたから何かが変わるわけではなさそう。ここは落ち着いて、今後の研究成果を待ちましょう。

医院情報

厚木胃腸科医院

厚木胃腸科医院
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診療科目 内科・消化器科・胃腸科・歯科