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自然流産は、その後の妊娠糖尿病のリスクを増大させる【医師による海外医学論文解説】

 更新日:2023/03/27

中国同済大学らの研究チームが、流産を経験した妊婦がその後に妊娠した場合、自然流産の回数が多いほど妊娠糖尿病のリスクが高くなっていたとの論文を医学誌「JAMA」に発表しました。この論文について工藤医師に伺いました。

工藤 孝文 医師

監修医師
工藤 孝文(医師)

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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

中国同済大学の研究グループが発表した内容とは?

中国同済大学の研究グループが発表した研究内容について教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

今回の研究は、中国同済大学の研究グループが行ったもので、2022年3月8日のJAMA Network Open誌電子版に掲載されたものです。研究グループは、自然流産もしくは人工妊娠中絶の経験が、その後の妊娠において妊娠糖尿病のリスク上昇にどのように関係するかを調べました。研究は2014年1月から2019年12月に受診して診療記録が残っていた妊婦のうち、妊娠24~28週に標準的なブドウ糖負荷試験を受けて妊娠糖尿病の診断を確認していた10万2259人を対象に行われました。10万2259人の妊婦の平均年齢は29.8歳で全体の14.3%に当たる1万4579人が自然流産のみを、17.5%に当たる1万7935人は人工妊娠中絶のみを、3.9%に当たる4017人は自然流産と人工妊娠中絶の両方を経験していたということです。妊婦のブドウ糖負荷試験をしたところ、1万2153人が妊娠糖尿病と診断され、妊婦全体での有病率は11.9%という結果が出ました。流産歴のない妊婦グループの有病率は10.7%、自然流産歴のみがあるグループでは15.7%、人工妊娠中絶歴のみがあるグループでは12.3%、自然流産と人工妊娠中絶の両方を経験していたグループでは15.9%だということです。流産歴のない妊婦を基準として妊娠糖尿病の相対リスクを計算すると、自然流産のみがあるグループの相対リスクは1.25。自然流産と人工妊娠中絶の両方を経験していたグループは1.15で、いずれもリスク増加を示しました。一方、人工妊娠中絶のみを経験していたグループは相対リスク1.04と、有意な差は見られなかったということです。
また、自然流産の回数と妊娠糖尿病の関係を調べると、流産歴のないグループと比較した場合、自然流産歴1回の相対リスクは1.18、自然流産歴2回では1.41、3回以上では1.43となったそうです。これらの結果から研究グループは、人工妊娠中絶と妊娠糖尿病の間には有意な関係は見られなかったが、自然流産歴はその後の妊娠における妊娠糖尿病リスクの増加と関連していたと結論づけています。

妊娠糖尿病とは?

妊娠糖尿病について教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です。妊婦が高血糖になると妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化を引き起こすだけでなく、胎児についても流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡などの影響が出る可能性があります。

今回の研究内容の受け止めは?

今回発表された研究内容の受け止めについて教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

妊娠糖尿病は厳密な血糖値コントロールが必要なため、妊娠早期に妊娠糖尿病の有無を確認する必要があります。今回の報告から流産歴のある妊婦さんに対しては、特に妊娠糖尿病に注意して検査をするべきだといえるでしょう。

まとめ

中国同済大学らの研究チームが、流産を経験した妊婦がその後に妊娠した場合、自然流産の回数が多いほど妊娠糖尿病のリスクが高くなっていたとの論文を発表したことが、今回明らかになりました。研究チームは今後の研究でメカニズムを検討する必要があると報告しており、最新の情報を随時チェックしておきたいところですね。

原著論文はこちら
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2789578

この記事の監修医師