「コーヒーを飲み過ぎる」と現れる症状はご存知ですか?適切な摂取量も医師が解説!
コーヒーを飲み過ぎてしまった時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
「コーヒーを飲み過ぎる」と現れる症状
コーヒーを飲むと目が覚めたり、リラックスする作用があります。コーヒーに含まれるカフェインの影響です。カフェインとはコーヒーやお茶に含まれる苦味成分でアルカロイドと呼ばれる成分の一種です。覚醒作用や疲労回復作用、利尿作用がありますが、コーヒーの飲みすぎなどでカフェインの過剰摂取になると、様々な症状が現れる危険性があります。
不眠
コーヒーに含まれるカフェインは脳を覚醒させる作用があります。
コーヒーの飲みすぎや就寝前に飲むと睡眠の質を下げ、睡眠のリズムが乱れて不眠症の原因になってしまいます。
不眠が続き日中の生活に支障がでるようなら、まずカフェインの摂取量を減らしてみましょう。特に、寝る前のカフェイン摂取は控えた方が良いでしょう。
胃もたれ
コーヒーには胃酸の分泌を促進する働きがあり、飲みすぎると胃炎や胃潰瘍などの原因となります。症状は胃酸過多が原因による吐き気、胃もたれ、胃痛などです。また、カフェインにより消化管運動が亢進します。このため、下痢などの症状が現れることもあります。
胃痛や腹痛が続く、吐き気や嘔吐が続く場合は速やかにコーヒーを飲むのを中止し、それでも症状が改善しなければ、消化器内科を受診しましょう。また、元々胃潰瘍や胃炎などがある方はコーヒーの飲みすぎに注意が必要です。
動悸
カフェインは神経を鎮静させる作用のあるアデノシンという物質と似ており、体の中ではアデノシンの受容体に結合してしまうことでアデノシンが受容体に結合できなくなり、アデノシンの働きを妨げます。このため、中枢神経を興奮させ、めまい、心拍数の増加、興奮などを引き起こします。
心拍数が増加することで動悸が起こりやすくなります。特にカフェインを過剰に摂取するとこの症状は起こりやすいです。コーヒーをはじめとするカフェインの摂りすぎに注意しましょう。
頭痛
カフェインは脳の血管の収縮作用があり、脳の血管の拡張が原因で起こる片頭痛には頭痛を緩和させる作用があります。しかし効果は一時的です。また、慢性的にカフェインを摂取すると、カフェインの作用が切れたときに頭痛を引き起こすこともあるため、摂りすぎには注意が必要です。
片頭痛とともに多い、筋緊張型頭痛は血管が収縮して起こる頭痛のためカフェインの摂取は頭痛を悪化させやすいです。どちらのタイプの頭痛なのか、専門医にかかり診断を受け、頭痛が起こった時の注意点をあらかじめ聞いておくことが良いでしょう。
カフェインで逆に頭痛が悪化した場合には、頭の血管を冷やしたり、カフェインを体の外に出すことで血流が改善され、症状が緩和される場合があります。
また、痛みが強い場合は脳卒中など重篤な病気が隠れている場合もあるため、至急脳神経外科を受診しましょう。
頻尿
カフェインはアデノシン受容体を阻害することで、腎臓の血管を拡張させ、腎臓への血流量を増やし、尿の生成を促進する利尿作用があります。また、ナトリウムの再吸収を阻害することでの利尿作用を持つと言われています。このため、尿量が多くなり、頻尿につながります。
カフェインが原因の頻尿はコーヒーなど利尿作用がある飲み物を減らし、飲水量を適量にすることで症状が改善されます。
頻尿は膀胱炎や過活動膀胱の可能性も考えられるため、症状が続くようなら泌尿器科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「コーヒーの飲み過ぎ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
めまいや吐き気・嘔吐が出た場合は、救急外来へ
短時間でカフェインを大量に摂取すると、カフェイン中毒を起こし危険です。カフェインを摂りすぎると中枢神経が過剰に刺激され、めまい・頭痛・吐き気や嘔吐・興奮・心拍数の増加、不整脈などが起こります。重症化すると痙攣・錯乱状態・不整脈・昏睡など重篤な状態に陥ることもあります。カフェイン過剰摂取による死亡例の報告もあり、注意が必要です。
大量のカフェインを摂取後に繰り返す嘔吐、動悸や痙攣などの症状が現れた場合は救急要請をしましょう。エナジードリンクやカフェイン製剤、薬など、摂取した種類や量の把握が治療に役立ちます。
「コーヒーの飲み過ぎ」に関する特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「コーヒーの飲み過ぎ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
カフェイン中毒
カフェイン中毒とはカフェインを短時間で一度に大量に摂取し中毒が起こった症状です。エナジードリンクとカフェイン製剤の併用で死亡した例もあります。
めまい・心拍数の増加・震え・下痢や嘔吐・興奮、重症では痙攣発作・昏睡といった症状が現れます。
カフェインを多く含む飲料(コーヒー・紅茶・緑茶など)・エナジードリンク・栄養ドリンク・カフェイン製剤の併用や大量摂取など、カフェインの摂りすぎが原因です。
カフェインに対する解毒薬はないので、治療の基本は点滴などで体の中のカフェインの濃度を低下させます。
カフェインを一度に大量に摂取した後に症状が現れた場合は、命に関わることもあるため救急要請をしましょう。
不眠症
不眠症は寝付きが悪い(入眠障害)・途中で何度も目が覚める(中途覚醒)・早朝に目覚める(早朝覚醒)・熟睡した感じがしない(熟眠困難)などにより、日中に意欲低下・集中力低下・倦怠感などが出現する病気です。原因はストレス・心や体の病気・生活リズムの乱れ・薬の副作用・カフェインやアルコールの過剰摂取など様々です。
治療法は規則正しい食事・適度な運動・就寝前のカフェインやアルコールの制限・寝室環境を整えるなど、睡眠衛生(睡眠がとれるよう条件を整えること)を意識しましょう。睡眠時無呼吸症候群・うつ病など心や体の病気が原因であればその治療を優先します。
家庭での不眠対策をしても効果が出ないときは精神科や心療内科を受診しましょう。
不整脈
不整脈とは脈が乱れた状態です。脈拍の乱れ・脈が早くなりすぎる(頻脈性不整脈)・遅くなりすぎる(徐脈性不整脈)があります。
症状は動悸・息切れ・胸痛・失神や心不全、突然死などです。無症状の場合もあり、治療が不要なものもありますが、治療を要するもの、危険な不整脈に発展するものもあります。
加齢・心疾患・甲状腺の病気・生活習慣・ストレス・睡眠不足・過労・肥満・コーヒーやアルコールの飲みすぎなどが原因です。
抗不整脈薬・心臓内の組織を直接治療(カテーテルアブレーション)・ペースメーカの植込みなどで治療します。
不整脈の既往、動悸・息切れ・胸痛など不整脈を疑う症状がある場合は速やかに循環器内科を受診しましょう。
高血圧
高血圧とは血圧が高い状態です。日本高血圧学会の高血圧の診断基準は、診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。食塩摂取過剰・肥満・過剰飲酒・ストレス・運動不足・喫煙などが原因です。高血圧を放置すると動脈硬化が進み、脳卒中・心疾患・慢性腎臓病を発症するリスクが高まります。
治療法は食塩制限・標準体重の維持・節酒・禁煙など生活習慣の改善と必要に応じた薬物療法です。
健康診断などで高血圧を指摘されたり、家庭での血圧が繰り返し基準値を越えたりする場合は、早めに内科を受診しましょう。
コーヒーを含めた適切なカフェインの摂取量
カフェインを多く含むものは、コーヒー・お茶・チョコレート・コーラ・エナジードリンクや栄養ドリンク・風邪薬や鎮痛薬など様々です。
代謝・健康状態・反応の違いなどからカフェインによる症状の現れ方には個人差があります。日本では摂取量の上限は設定されていませんが、国際機関などにおいてカフェインの摂取に関して注意喚起がされています。
カナダ保健省では18歳以上の大人は、カフェインの摂取量を1日当たり400mgまでが推奨量です。
コーヒーでは237mLのカップで約3杯までに相当します。
不整脈がある人は発作の誘発、人によっては高血圧のリスクが高くなる、カルシウムが不足している人はカルシウムの排出増加による骨粗しょう症の発症の可能性があるので、カフェインの摂取量に注意が必要です。
食品中のカフェイン濃度
食品 | カフェイン濃度 | 備考 |
---|---|---|
エナジードリンク又は 眠気覚まし用飲料(清涼飲料水) |
32~300mg/100mL (製品1本当たりでは36~150mg) |
製品によってカフェイン濃度及び内容量が異なる |
コーヒー(浸出液) | 0.06g/100mL (=60mg/100mL) |
浸出法:コーヒー粉末10g、熱湯150mL |
インスタントコーヒー(粉末) | 4.0g/100g 2g使用した場合1杯当たり80mg |
|
玉露(浸出液) | 0.16g/100mL(=160mg/100mL) | 浸出法:茶葉10g、60℃湯60mL、2.5分 |
せん茶(浸出液) | 0.02g/100mL(=20mg/100mL) | 浸出法:茶葉10g、90℃湯430mL、1分 |
ほうじ茶(浸出液) | 0.02g/100mL(=20mg/100mL) | 浸出法:茶葉15g、90℃湯650mL、0.5分 |
玄米茶(浸出液) | 0.01g/100mL(=10mg/100mL) | 浸出法:茶葉15g、90℃湯650mL、0.5分 |
ウーロン茶(浸出液) | 0.02g/100mL(=20mg/100mL) | 浸出法:茶葉15g、90℃湯650mL、0.5分 |
紅茶(浸出液) | 0.03g/100mL(=30mg/100mL) | 浸出法:茶葉5g、熱湯360mL、1.5~4分 |
抹茶(粉末) | 3.2g/100g(お湯70mLに粉末1.5gを溶解した場合、カフェイン含有量48mg) |
コーヒーを含めたカフェインの正しい飲み方
カフェイン摂取によるメリットは覚醒・利尿作用による老廃物の排出・交感神経の働きを高め疲労感の低減などです。
カフェインは覚醒作用があるため、眠りの質を低下させる可能性があります。カフェインの代謝は個人差があり、コーヒーをどれくらい、何杯飲んだら眠れなくなるかは人により異なりますが、夕方以降~寝る前の摂取は控えることをおすすめします。空腹時や胃の調子が悪いときの摂取は胃酸過多や胃痛を起こす可能性があるため避けましょう。
禁煙サポートグッズのニコチンガム・精神神経薬(フルボキサミン)、強心薬(アミノフィリン)、気管支拡張薬(テオフィリン)、解熱鎮痛薬(アスピリン)などはコーヒーと同時に摂取することで、薬の作用が増強し、十分な効果が得られなくなる可能性があるため注意が必要です。
「コーヒーの飲み過ぎ」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「コーヒーの飲み過ぎ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
コーヒーは一日に何杯飲むのが適量でしょうか?
伊藤 陽子(医師)
カナダや米国では、健康な成人のカフェイン摂取量は1日400mgまでと推奨されています。コーヒーで換算するとマグカップ3杯までです。カフェインを多く含む他の物と摂取量と合わせてカフェインの過剰摂取にならないよう注意しましょう。妊婦や胎児は体にカフェインが長く留まりやすいため、成人よりも摂取量の上限は低くなります。市販のコーヒー飲料は、高エネルギーで太る原因や糖尿病発症の原因になるので、摂取には注意が必要です。
コーヒーはシュウ酸を多く含むため、結石ができやすくなり、尿路結石を発症しやすくなります。コーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を阻害する働きがあるので、貧血がある人は食事の前後ではコーヒーの摂取を控えましょう。
まとめ 適量でコーヒーを楽しみましょう
コーヒーを飲むと目が覚める・疲れにくくなる・リラックスできるなど良い効果を得られますが、カフェインを過剰に摂取することで効果が強まり過ぎて悪影響になることもあります。カフェインの体内での反応は個人差があるため、1日の推奨量を越えない範囲で、適量の摂取がおすすめです。
「コーヒーの飲み過ぎ」で考えられる病気
「コーヒーの飲み過ぎ」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
- 不整脈
- 頻脈
整形外科の病気
- 骨粗しょう症
一般内科の病気
精神科の病気
消化器系の病気
- 胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 尿路結石
コーヒーの飲みすぎで考えられる病気は、神経の興奮作用によるもの・コーヒーに含まれる成分の過剰摂取によるものがあります。病気の発症や悪化予防のためにコーヒーは適量の摂取がおすすめです。上記の疾患が疑われた場合にはコーヒーの摂りすぎに気を付け、症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。
「コーヒーの飲み過ぎ」に似ている症状・関連する症状
「コーヒーの飲み過ぎ」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
コーヒーに含まれるカフェインの摂りすぎは様々な症状を引き起こしますが、他の病気が隠れている可能性もあります。症状が続くようなら、早めに医療機関を受診しましょう。