「日中の激しい眠気」は「過眠症」や「更年期障害」が原因?医師が監修!
「夜しっかり寝ているけれど、昼間も眠い」「眠すぎて仕事に集中できない」という経験をする人もいるでしょう。
単に睡眠不足やストレスということもありますが、実は日中の眠気には病気が関係しているかもしれません。
日中の激しい眠気で日常生活に支障が出るのは大変でしょう。そこで今回は日中の激しい眠気に関して原因・考えられる病気・対処法などを解説します。
日頃から激しい眠気に襲われて大変な人は、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
昼間の激しい眠気の原因と対処法
昼間に激しい眠気に襲われると、仕事や家事など日常生活に支障が出ることもあるでしょう。ここでは、日中の激しい眠気に対して考えられる3つの原因とその対処法について解説します。
睡眠習慣が原因の対処法
実は夜寝る前に行っている睡眠習慣が、日中に影響を及ぼしているかもしれません。よく挙げられるのは寝る前にスマホを長時間触ることです。
人は日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなるという睡眠リズムがあります。これは人間の脈拍数や血圧を低下させ、睡眠を誘うメラトニンというホルモンが原因です。
メラトニンは強い光を浴びると分泌量が減り、暗い場所にいると分泌量が増える仕組みのため、夜になると眠りやすくなります。
しかし寝る前にパソコンやスマホを触っていると脳が日中だと錯覚し、メラトニンの分泌量を減らしてしまうことで脳が覚醒し、眠りが浅くなってしまいます。
しっかり夜眠り、日中すっきりした状態にするためには寝る2時間前にはスマホを触らないようにすることが大切です。また21時以降は部屋を暗めに設定し画面の明るさも暗くすると、睡眠の質が上がり、日中の眠気を改善できるでしょう。
ストレスが原因の対処法
ストレスと日中の眠気は大きく関係しています。日頃仕事のことや人間関係のことなどでストレスを受けていると、脳の視床下部というところから副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が増えます。
このホルモンは覚醒作用があり、睡眠を妨げる働きです。その結果、夜の夜間の寝つきが悪くなったり途中で目が覚めたりすることが増え、睡眠不足になってしまいます。
ストレスが原因で日中の眠気が出ている場合は、ストレスを上手く発散し溜め込まないようにすることで改善が期待できます。
また夜寝る前にゆっくり湯船につかってリラックスするのも良いでしょう。最近では夜寝る前に瞑想をして、心を落ち着かせてから眠るという人も増えています。
寝る前に自分がリラックスできることを見つけられると、睡眠の質も良くなり日中の眠気も軽減できるでしょう。
病気が原因の対処法
日中の眠気に関して、ストレスや寝不足で睡眠不足が続いている場合はある程度自分自身で対処することが可能でしょう。
しかし日常生活に支障が出るほど激しい眠気であったり、連日日中の眠気が続いたりしている場合は病気の可能性があります。
考えられる病気はいくつかあり、睡眠時無呼吸症候群・過眠症・不眠症・月経前症候群です。
これらは睡眠と深いつながりがあり、しっかりと治療しなければいつまでも症状が改善されないでしょう。
自分でいくら対策をしても日中の眠気が取れないというときは、医療機関へ受診し治療を受けることで眠気の改善が期待できるでしょう。
昼間の激しい眠気で疑われる病気
眠気に対して自分なりに対策をしても中々改善されないという場合は、病気の可能性があります。
もし病気だった場合は、しっかりと医療機関で治療を受けることで改善が期待できます。ここでは、よく激しい眠気で疑われる病気を3つ紹介するので参考にしてください。
過眠症
中枢性過眠症は、睡眠時無呼吸症候群のように睡眠を妨げる病気を発症していない状態かつ極度の睡眠不足でないにも関わらず、日中激しい眠気を感じる睡眠障害の1つです。
中枢神経の異常が原因であると考えられています。過眠症にはナルコレプシー・特発性過眠症・クライネ-レビン症候群などが含まれています。
ナルコレプシーとは非常に強い睡眠欲求と、食事中や歩行中など普段ではあり得ない状況で居眠りしてしまうことや、レム睡眠への移行時に幻覚や睡眠麻痺など異常行動が見られるのが特徴です。
また数分から数十分程度の居眠りの後に覚醒し、目が覚めたときがすっきりしているというのも特徴の1つです。思春期に発症した後から徐々に症状が進み、数年かけて症状が出そろい長期間持続する慢性的な睡眠障害になります。
原因は、脳の中にある覚醒状態を保つオレキシンを作る神経細胞が働かなくなることだといわれています。
ほかの特発性過眠症やクライネ-レビン症候群もナルコレプシーと同様に強い眠気に襲われるので、しっかりと治療を受けることで症状が改善されるでしょう。
ナルコレプシー・特発性過眠症は薬物療法が行われますが、基本的にカフェイン・アルコール・ニコチンなど睡眠を妨げるものを摂取しないことや十分な睡眠機会を意識して作ることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は閉塞性と中枢性の2種類に分類され、睡眠時に何度も呼吸が止まる病気です。1日5回以上、1回10秒以上の無呼吸があった場合には睡眠時無呼吸症候群の診断がつきます。
睡眠中に呼吸が止まる状態が何度も続いてしまうと睡眠の質が悪くなり、日中激しい眠気に襲われ日常生活に支障をきたします。
また血中濃度が低下することで心臓・脳・血管などに負荷がかかり、脳卒中・心筋梗塞・狭心症などの合併症を引き起こす可能性があるだけでなく高血圧や糖尿病にも悪影響のため、早めに対処することがとても重要です。
日本では約500万人がこの病気だといわれていますが、実際に治療を受けている人は1割程度となっています。
肥満・小さい顎・飲酒・睡眠薬の使用・舌根沈下などが発症の原因です。睡眠時無呼吸症候群の診断をするためには検査が必要ですが、1泊もしくは2泊入院する必要があります。治療法は軽症であればマウスピースの使用と生活習慣の改善を行います。
ダイエット・飲酒の制限・睡眠薬の中止もしくは減量などです。
重症の場合は持続陽圧呼吸療法(CPAP)を使用することが多く、これは人工呼吸器のような装置で、持続的に空気圧を送り上気道を閉塞させないようにします。
睡眠時無呼吸症候群はしっかりと治療を受ければ劇的に症状が改善されるので、無呼吸やいびきが大きいなど指摘を受けたら医療機関へ受診しましょう。
不眠症
不眠症とは入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠障害が1ヶ月以上続き、日中に集中力低下や倦怠感が出る病気です。
個人差がありますが、人によっては不眠が続くことにより不眠恐怖が生じ、睡眠状態に対するこだわりによってさらに不眠に陥るという悪循環が生まれることがあります。
夜間の不眠が長期間に及ぶこと・日中に身体や精神面での不調を自覚し生活の質が低下するという、この2つが当てはまると不眠症の診断となります。
不眠症は国民病とも呼ばれ、5人に1人が何かしら睡眠の不調を訴えており、決して特殊な病気ではありません。
60歳以上の人は3人に1人が不眠だというデータもあります。
不眠症の原因は様々で、高血圧・心臓病・呼吸器疾患など病気が原因ということもありますが、実際はストレス・生活習慣の乱れ・精神疾患などが原因であることが多いです。
治療法は不眠の原因となっている要因を取り除くことが1番です。
睡眠リズムを作るために、起床・就寝時間を決める・適度な運動・ストレス解消・寝室の環境づくりなどで改善が期待できます。もしそれでも改善されないようであれば、睡眠薬を処方することもあります。
睡眠時間は大事ではありません。大事なのは睡眠の質です。
睡眠時間が多少短くとも睡眠の質が良ければ日中もすっきりして活動的になれます。睡眠時間にこだわるのではなく、睡眠の質を意識してみると日中の眠気にも効果が出るでしょう。
女性特有の激しい眠気の原因と対処法
日中の眠気には、睡眠時無呼吸症候群や過眠症などの病気が関係しているという解説をしました。しかしほかにも女性特有の病気が日中の眠気の原因となっていることもあるので、紹介します。
PMSが原因の対処法
生理前に激しい眠気を感じる人は多いでしょう。生理2週間前に身体的・精神的な不調を感じるのが月経前症候群(PMS)です。
生理前に眠れなくなる状態を月経前不眠症、日中強い眠気に悩まされることを月経前過眠症といいます。
月経に関しての不眠は41%の女性が感じており、そのうち月経前過眠症は43%の女性が自覚しているというデータもあります。
生理周期にはエストロゲンとプロゲステロンが大きく関係し、このうち日中の眠気に大きく関与しているのがプロゲステロンです。
このプロゲステロンは体温を上げる作用があり、黄体期は最高気温と最低気温の差が大きいのですが、卵胞期に入るとその差が小さくなるのでメリハリがつかず日中も眠くなってしまうメカニズムです。またプロゲステロンには催眠作用もあります。
月経前過眠症は生理1週間前に強い眠気を感じ、生理開始とともに症状が軽くなるのが特徴です。
強い眠気が2日以上続き、年1回以上あると月経前過眠症の診断となります。
治療法は睡眠の質を高めるために生活習慣の改善を図りますが、それでも難しいようであれば薬物療法を行います。
薬は経口避妊薬を使用し、排卵を止めることにより症状の改善が期待できるので、生理前の強い眠気に困っているようであれば医療機関へ相談しましょう。
更年期障害が原因の対処法
更年期の症状として火照り・皮膚の乾燥といった身体的な症状だけでなくイライラ・抑うつなど精神的な症状を感じる人は沢山いるでしょう。
この症状の原因はエストロゲンにあります。エストロゲンはセロトニンやノルアドレナリンなど脳内神経伝達物質の正常な働きを守る働きをしています。
これらの脳内物質は外からの情報を制御して、精神を安定させる働きを持っており、うつ病の原因はこの脳内物質の不足です。
しかし更年期に入ってエストロゲンが減少することにより、セロトニンやノルアドレナリンの機能も低下してしまうことで、うつ症状・パニック感・不眠に悩む人が増えることに関係していると考えられています。
この症状を改善するのに効果的なのは、ホルモン補充療法です。
精神的な症状が強い場合には抗精神薬を使用しつつ、エストロゲンを補充することで大幅な効果が期待できます。更年期の眠気だけでなく、ほかの症状にも悩んでいる場合は早めに医師へ相談しましょう。
昼間の激しい眠気がある場合の診療科
日中の眠気が酷いときは何科に受診すれば良いのか迷われる人もいるでしょう。眠気を引き起こしている原因がある程度分かっている場合は、専門科へ行くことをおすすめいたします。
例えば、睡眠時無呼吸症候群であれば上気道の詳しい検査や画像検査が必要になるので、耳鼻科に受診するのが良いでしょう。
内科を受診するときは呼吸器や循環器を強みにしている場所を選ぶようにしましょう。
また過眠症や不眠症を疑って受診する際は、精神科か内科に相談してみてください。月経前症候群や更年期障害は婦人科へ受診してください。
日中の眠気が強いけど、自分はどの病気に当てはまりそうか分からない場合は、内科を受診して状況によってほかの医療機関に紹介してもらうと安心でしょう。
まとめ
日中の強い眠気には様々な病気も絡んでいますが、ストレスや不規則な生活など睡眠環境が十分に整っていないことが原因だと考えられます。
まずは睡眠の質を妨げるカフェイン・アルコールなどを控え、快眠グッズやリラックスできるような方法を探してみましょう。
ですが病気によっては、睡眠環境を整えるだけでは改善しないこともあり、日常生活に支障をきたしている場合は早めに治療を受ける必要があります。
自分だけでは改善が難しく、日中の眠気が酷いときは医療機関へ相談しましょう。