「背中にしこり」ができる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
背中のしこりで、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
後藤 和哉(医師)
「背中のしこり」の症状で考えられる病気と対処法
背中のしこりの原因は様々ありますが、腫瘍の可能性をまず考えます。良性のものから悪性のものまでありますので、ここでは代表的な疾患についてご紹介します。
背中のしこりができる症状で考えられる原因と対処法
しこりといえば腫瘍性のものをまずは考えます。脂肪腫、粉瘤といった良性の腫瘍から軟部肉腫といった悪性腫瘍まで様々な疾患が考えられます。これらについて詳しくは後述しますが、皮膚が袋状になって中に角質がたまる粉瘤の場合は、ある程度ご自分でもわかるものの、皮膚の下にできたしこりの場合は、判断が難しいので医療機関(皮膚科や形成外科、軟部腫瘍専門の整形外科)で早めにご相談いただくことをお勧めします。また、腫瘍以外では、ニキビの一部が炎症を繰り返すと皮膚が固くなってしこりのように感じることもあるでしょう。ニキビであればその前に赤や白の小さなぶつぶつがいくつかあって、炎症を起こせば赤く痛みを伴うことが多いです。外用薬や内服薬で治療可能ですのでお近くの皮膚科の受診をお勧めします。背中の傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになり盛り上がる場合も、しこりとして感じることがあります。その場合は傷跡に沿って周囲に盛り上がった状態となり痒みや痛みを伴います。この場合はお近くの皮膚科か形成外科を受診されることをお勧めします。
痛くないが背中にしこりがある症状で考えられる原因と対処法
腫瘍の可能性があります。表面に変化がない場合は皮下腫瘍の可能性があります。良性の皮下腫瘍の代表的なものには脂肪腫と粉瘤があります。脂肪腫は、比較的やわらかい腫瘍で、ゆっくりとですがかなり大きくなり得ます。粉瘤は表面に小さな穴があり内部に角質がたまる小さな袋状のできものです。いずれも根治治療は手術で取り除く必要があります。粉瘤の場合は経過中に炎症を起こすと急激に大きくなったり痛みを認めますが、いずれも炎症やサイズが大きくなるなどで生活に支障がでなければ経過観察可能な病気です。ただ、悪性の皮下腫瘍の場合も初期は痛みを伴わないことが多くあります。複数ある小さなしこりでは他の部位の癌からの皮膚転移であるという可能性もあります。見た目で良性悪性の区別は難しいため、総合病院の皮膚科や形成外科、軟部腫瘍が専門の整形外科を一度受診されて診断をつけておかれることをおすすめします。また、皮膚表面に変化がありごつごつと盛り上がったり、赤や青や黒といった色の変化がみられたり、出血を伴っているしこりの場合は皮膚癌の可能性があります。その際はすみやかに皮膚科を受診ください。
背中のしこりを押すと痛い症状で考えられる原因と対処法
しこりを押すと痛い症状がある場合は、腫瘍が感染などで炎症を起こしている場合や、周囲の神経を圧迫して痛みがでている可能性があります。粉瘤という良性の腫瘍では通常は痛みを伴いませんが、感染や炎症を起こすと数日で急に赤く腫れて大きくなり痛みを伴ってきます。臭い膿のようなものが排出されることもあります。切開排膿などの処置が必要になる場合がありますので粉瘤を疑い痛みがある場合は、早めにお近くの皮膚科や形成外科を受診されることをお勧めします。また周囲の神経を圧迫することで痛みがでる場合の腫瘍は良性悪性いずれの可能性もあります。脂肪細胞由来の脂肪腫や神経を取り巻いて保護するシュワン細胞からできた髄鞘由来の神経鞘腫というものがあり、いずれも良性の皮下腫瘍ですが何年もかけてゆっくり大きくなるうちに神経を圧迫するようになれば痛みを生じます。悪性腫瘍(軟部肉腫)の可能性もあります。3週間~3ヶ月程度と短期間で大きくなる場合は悪性の可能性が高くなります。ですが、悪性腫瘍(軟部肉腫)でも基本的には痛みがないため、よほど大きくならないと症状がでないことにご注意ください。超音波やMRIなどの画像検査、場合により組織検査を行って診断します。治療は切除術になります。
背中にしこりをみつけられた場合は、無症状でもなるべく早めに医療機関を受診されることをお勧めします。悪性を疑う場合は整形外科が専門になります。診断及び治療に高い専門性が必要な病気ですので、皮下にできものがある際は、皮膚科や形成外科と整形外科の常勤医がいる総合病院や軟部腫瘍の専門医のいる病院を受診して相談されることをおすすめします。
背中に固いしこりがある症状で考えられる原因と対処法
背中のしこりが固く、特に動きの悪いしこりの場合はまずは悪性腫瘍を疑います。皮膚の表面に盛り上がり、赤色や青色、黒い色をしている場合は皮膚癌、皮下にできている場合は軟部肉腫や転移性癌の可能性があります。なるべく早く総合病院の皮膚科や整形外科を受診されることをおすすめします。特に大きな皮下のしこりの場合は、まずは軟部腫瘍専門の整形外科を、皮膚の表面に盛り上がるしこりの場合は、皮膚科を受診されることをお勧めします。
背中に柔らかいしこりがある症状で考えられる原因と対処法
柔らかいしこりの場合は脂肪腫といった良性腫瘍の可能性があります。
硬いとか柔らかいといった感覚には個人差がありますので、放置せず基本的には柔らかいしこりを感じた場合には皮膚科や形成外科を受診されることをお勧めします。
背中にしこりがありかゆい症状で考えられる原因と対処法
背中のしこりが、小さくて赤くはれて痒い場合は、虫刺されの可能性があります。また、背中に多数の固くて痒いしこりができる場合、特にひとつひとつが小さくて(径1cm程度の)暗褐色の表面がカサカサしたドーム状のしこりができる場合は結節性痒疹という病気の可能性があります。結節性痒疹は腕や脚にできることが多いですが、広がると背中にできることもあります。難治性の疾患で様々な基礎疾患を背景にでてくることがありますので、このような症状の場合はお近くの皮膚科を受診されることをお勧めします。また、背中の傷跡が体質によっては肥厚性瘢痕やケロイドになり盛り上がる場合も、しこりとして感じることがあります。その場合は痒みや痛みを伴い傷跡に沿って周囲に盛り上がった状態となります。この場合は皮膚科か形成外科を受診されることをお勧めします。
背中に動くしこりがある症状で考えられる原因と対処法
診察するときに医療用語では「可動性良好」といった表現をしますが、しこりをさわってゆらしてみたときに、しこりが皮膚の下や皮膚とともに左右にスムーズに動くようなら良性の腫瘍の可能性が高いと考えます。前述の脂肪腫、粉瘤、神経鞘腫などの良性腫瘍の可能性があります。悪性の場合は周囲の組織に細胞が根を張って動きにくいことが多いからです。ですが例外も存在するため、放置はせず動くしこりをみつけた場合は、早めにお近くの医療機関(皮膚科や形成外科)を受診されることをおすすめします。
すぐに病院へ行くべき「背中のしこり」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
背中のしこりが赤く腫れて膿や血がでる場合は皮膚科へ、背中のしこりが皮下で急に大きくなって痛みがでてきた場合は整形外科へ
背中のしこりが赤く腫れて膿や血がでる場合は粉瘤が炎症を起こした可能性があります。切開排膿などの処置が必要な場合がありますので、お近くの皮膚科への受診をお勧めします。
背中のしこりが皮下で数週間程度で急に大きくなって痛みがでてきた場合は、軟部肉腫という皮下の悪性腫瘍の可能性があります。軟部腫瘍専門の整形外科への受診をお勧めします。
受診・予防の目安となる「背中にしこり」があるときのセルフチェック法
- ・背中のしこり以外に痛み症状がある場合
- ・背中のしこり以外に膿がでてくる症状がある場合
- ・背中のしこり以外にしこりの大きくなるスピードが速い場合
- ・背中のしこり以外にしこりが赤、青、黒い色をしている場合
- ・背中のしこり以外にしこりから出血している場合
「背中のしこり」の症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「背中のしこり」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
粉瘤
粉瘤は毛穴の部分で皮膚が袋状になり、角質や皮脂が内部にたまる良性の腫瘍です。内部の角質が透けて見えて灰色調に見えることがあります。初期の頃は1cm程度ですが10cm近くまで大きくなることがあります。皮膚表面に小さな袋の出口が見られ、時々内部の角質や皮脂が排出されます。袋が皮膚の内部で破裂したり、感染すると炎症のため痛みを伴って赤く腫れ、臭い膿がでてきます(炎症性粉瘤)。粉瘤は症状のない間は経過観察でかまいませんが、炎症性粉瘤で膿がたまっている場合は、局所麻酔下に袋を一部だけ切開して排膿させる応急処置を行う場合があります。毎日の洗浄と軟膏処置で炎症は治りますが、袋は残りますので、再発防止のために根治を希望される場合は、後日に全摘切除術を行うことになります。また、長期に経過した粉瘤でごくまれに癌化したという報告がありますので、急におおきくなる場合は注意が必要です。そのような場合はいずれにしても医療機関を早めに受診ください。皮膚科や形成外科を受診されることをおすすめします。根治術を希望される場合は、皮膚腫瘍の手術を行なっている病院かどうかあらかじめご確認ください。
脂肪腫
脂肪腫は皮膚の下にできた脂肪細胞由来の良性腫瘍です。皮膚の色は変わらず、通常は痛みも伴わず、皮膚の下がやわらかく盛り上がった状態になります。何年もかけて徐々に大きくなります。とても大きくなってくると周囲の神経を圧迫するため痛みを生じることがあります。そのような状態や、生活の支障になる場合には切除術を行います。特にお困りでない場合は、経過観察でかまいませんが、見た目や触った感じだけでは悪性を除外することは困難です。もし軟部肉腫(悪性)であった場合は速やかに治療を開始する必要があります。生活に支障はなくとも背中にこのようなしこりをみつけた場合は、総合病院の皮膚科や形成外科を受診して画像検査などで悪性の所見がないか一度診断しておかれることをおすすめします。
軟部肉腫
軟部肉腫は、筋肉、腱、脂肪、血管、リンパ管、関節、神経などの軟部組織から発生する悪性腫瘍です。できた組織の場所によって様々な種類があります。皮膚の下にできるしこりとして自覚されます。(できる部位は様々で、例えば皮膚の下にある筋肉からできる場合は筋肉の中にしこりができます。)軟部肉腫は、四肢(腕や脚)にできることが多いですが、背中などの体の皮下にできることもあります。初期から痛みがでることは少なく、大きくなって腫瘍が周囲の神経を圧迫してから痛みやしびれなどを自覚して気がつくことがあります。良性腫瘍に比べて早く大きくなる傾向があります。スピードとしては数週間から数ヶ月程度で大きくなることが多いようです。超音波やMRIなどの画像検査、場合により組織検査を行って診断します。治療は切除術になります。組織検査の方法や切除方法などは専門性が高いため、ご自分で疑って受診される際は、整形外科で軟部腫瘍の専門医のいる病院を受診して相談されることをおすすめします。
「背中のしこり」の正しい対処法は?
背中にしこりがある場合、良性の疾患のことが多数ですが、悪性腫瘍であったとしても初期は痛みなどの自覚症状のない場合が多くありますので、背中にしこりがある場合は、自己判断で経過観察されるよりもはやめに医療機関を受診されることをお勧めします。もし背中のしこりが炎症性粉瘤で膿がでるような状況であれば受診までの間は、お風呂はシャワー浴のみとして、市販の滅菌されたガーゼをあてていただいてお過ごしいただければと思います。
「背中のしこり」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「背中のしこり」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
背中にしこりがあるのですが何科に行けばいいですか?
後藤 和哉 医師
皮膚表面に変化があって盛り上がるような場合、皮膚の下にやわらかいしこりがある場合、小さくて硬いしこりがある場合は、皮膚科や形成外科を受診されることをお勧めします。切除術をご希望の場合や診断確定をご希望の場合は総合病院を受診されることをお勧めします。クリニックでは画像検査や切除術ができない場合がありますので、お近くのクリニックを受診された場合は総合病院を紹介される場合があります。しこりが腫れて膿がでるような場合は、お近くの皮膚や形成外科をまず受診されることをお勧めします。
皮膚の下にできている大きいしこりで数週間~数ヶ月程度でおおきくなって痛みを伴う場合は、軟部肉腫の可能性がありますので軟部腫瘍専門の整形外科を受診されることをお勧めします。わからない場合は皮膚科と軟部腫瘍専門の整形外科医のいる総合病院でご相談ください。皮膚科をまず受診していただき、疑われた場合に軟部腫瘍専門の整形外科への紹介をしてもらえる場合があります。
背中にこぶのようなできものがあります。押すと痛いのは危険ですか?
後藤 和哉 医師
炎症や感染により痛みがでている場合があります。また皮下に大きなしこりがあり、数週間〜数ヶ月程度で大きくなって痛みを伴う場合は軟部肉腫(悪性)の可能性があります。
背中のしこりはがんなのでしょうか。
後藤 和哉 医師
多くは良性のものですが、癌などの悪性の場合もあります。皮膚癌の場合は表面が赤、青、黒色といった色がみられることがあります。皮下の軟部肉腫の場合は初期はただのしこりとして自覚されます。
ストレスが原因で背中にしこりが出来ることはありますか?
後藤 和哉 医師
ストレスが直接の原因でしこりができることは考えられません。
まとめ
背中のしこりというテーマから腫瘍について重点的にお話しさせていただきました。
大半が良性の腫瘍だと思いますが、悪性の場合でもしこり以外痛みなどの自覚症状がない場合も多く、背中はご自分でも色調など確認が難しい場所だと思います。
背中にしこりを自覚された場合は、なるべく早めに医療機関を受診されることをお勧めします。
「背中のしこり」症状で考えられる病気
「背中のしこり」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科・形成外科の病気
- 脂肪腫
- 粉瘤(炎症性粉瘤)
- 神経症鞘種
- 皮膚癌(種類は多数あり)
整形外科の病気
- 軟部肉腫(種類は多数あり)
多くの場合は良性の腫瘍です。しかし、背中は自分自身で確認が難しい部分であるため、しこりに気がついたときは一度受診することをお勧めします。
「背中のしこり」に似ている症状・関連する症状
「背中のしこり」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「背中のしこり」症状の他にこれらの症状がある場合でも「脂肪腫」「粉瘤(炎症性粉瘤)」「神経症鞘種」「皮膚癌(種類は多数あり)」「軟部肉腫(種類は多数あり)」などの疾患の可能性が考えられます。悪性腫瘍などで腫瘍が大きくなり神経を圧迫するようになると痛みやしびれなどの神経症状を伴うようになります。