「ほくろが大きくなる」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
ほくろが大きくなる時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
後藤 和哉 医師(京都大学医学部附属病院)
京都大学医学部附属病院、天理よろづ相談所、皮膚科医。
「ほくろが大きくなる」症状で考えられる病気と対処法
「ほくろ」とは医学的には色素性母斑(母斑細胞母斑)のことを言い、メラノサイト系細胞である母斑細胞の増殖によるできもので、特に小さいサイズのものを「ほくろ」と呼びます。母斑細胞はメラニンという色素をもつため色は褐色~茶色~黒色をします。生まれつきあるものと大人へと成長する途中ででてくるものがあります。形も平坦なしみのようなもの(色素斑)から、盛り上がるものまでさまざまです。直径が6mmを超えることは少なく、6mmを超えてさらに大きくなってくるものや急速に大きくなるものは悪性の可能性が考えられます。ここでは、色素性母斑(母斑細胞母斑)による医学的「ほくろ」と一般的に「ほくろのようにみえてほくろでないもの」についても紹介させていただきます。
ほくろが大きくなる症状で考えられる原因と治し方
ほくろは色素性母斑(母斑細胞母斑)という母斑細胞の集まりです。できてからしばらくの間はゆっくり大きくなりますが、多くは直径が6mm以下にとどまり、6mmを超えてどんどん大きくなることは殆どありません。
6mmを超えて大きくなってくる場合は、「ほくろ」以外の皮膚の病気か、悪性黒色腫などの悪性腫瘍(メラノーマ)の可能性を疑う必要があります。悪性黒色腫の詳細は後述します。
ただし、生まれつきの「ほくろ」の中には、時間をかけてとても大きくなるものがあり、先天性巨大色素性母斑とよばれています。大人になったときに直径20cm以上(1歳時点での目安は体で6cm、頭や顔では9cm以上)になる場合に巨大と定義されています。こちらの病変では、通常の「ほくろ」である色素性母斑(母斑細胞母斑)とは異なり、数パーセントの頻度で将来的に悪性黒色腫が発生する可能性があります。そのため、幼少時に母斑を広範囲に除去する必要があります。方法としては削り取ったり手術で切り取るなどの外科的な治療が一般的です。ただし創部に傷痕が残るため、成長してから傷跡を目立ちにくくする処置を施す場合があります。
色素性母斑、先天性巨大色素性母斑の診断は近医の皮膚科や形成外科で可能ですが、先天性巨大色素性母斑の治療については専門性が高く、一般的に総合病院の形成外科が担当しています。あらかじめお住まいの地域で、専門医が診察している病院を近医(小児科や皮膚科)から紹介してもらうことをお勧めします。
ほくろが大きくなり盛り上がる症状で考えられる原因と治し方
ほくろは、母斑細胞の集まる腫瘍です。母斑細胞が皮膚の下層に集まれば盛り上がることがあります。そのような症状をきたすほくろには、青色母斑やスピッツ母斑があります。青色母斑とは、多くは乳幼児期にでき、メラニンをもつ青色母斑細胞が増殖して生じたやや硬い青色から黒色調のほくろです。青色母斑は直径1cm程度まで大きくなりますが、大部分は良性です。しかし、やや大きいものは悪性化する可能性があり、治療は完全切除になります。
スピッツ母斑(別名若年性黒色腫)は、急にできて比較的急に直径 2cm 程度まで大きく盛り上がるほくろで、色は黒色だけでなく赤色であることもあります。小児にできることが多いですが、大人になってできることもあります。見た目や病理組織が悪性黒色腫に似ているため鑑別が難しいですが、基本的には良性で深くまで広がることや、転移などは起こしません。悪性との鑑別が難しいため、治療は外科的切除となります。
これらの病変は直径6mmを超えることがありますが、基本的に良性です。しかし、一部は悪性化する可能性があり、また、悪性との鑑別が難しい場合もあるため、直径6mmを超えて大きくなり盛り上がるほくろに気づいた場合は、念のために早期の皮膚科受診をおすすめします。
急にほくろが大きくなる症状で考えられる原因と治し方
小さい色素性母斑(母斑細胞母斑)であるほくろは良性であり、悪性のように急に大きくなることは通常ありません。
そのため「ほくろのようなもの」が急におおきくなってきた場合は、まずは悪性腫瘍(悪性黒色腫など)を考える必要がありますので、掻いたり軟膏をぬったりなどといった刺激を加えずに早めに皮膚科を受診してください。
急に大きくなると言っても1-2日で大きくなるわけではありません。スピードとしては早くて1-2ヶ月、通常1-2年単位で大きくなってくるため、気になる方は病変にピントをあわせて写真撮影しておくこととサイズをmm単位で測っておかれることをお勧めします。もし1-2ヶ月おきにサイズを測ってmm単位で大きくなってくるようなら皮膚科を早めに受診してください。初期の悪性黒色腫は診断が難しいことがあります。サイズの経過ともし経過の写真があれば医師にご提示ください。ダーモスコピー検査(皮疹を拡大して観察できる検査)のできる皮膚科専門医を受診されることをおすすめします。
悪性黒色腫の詳細は後述します。
顔のほくろが大きくなる症状で考えられる原因と治し方
小さいうちにほくろにみえていたものが大きくなって別の病気であることがわかることがあります。顔のほくろのようにみえていたものが大きくなった場合、老人性色素斑というシミや脂漏性角化症という老人性のいぼの可能性があります。これらは紫外線のあたる部位に出やすく、中年以降に出現しやすいものです。紫外線のあたる部位にでるので顔以外の部位にもでます。老人性色素斑は褐色の平坦なシミで、円形に近い形をしています。脂漏性角化症は灰褐色〜黒褐色をした1-2cmのもりあがったできもの(いぼ)です。いずれも良性のもので、美容的に取りたい場合はレーザー治療や凍結療法、手術などでとることができます。診断は皮膚科のクリニックで可能ですが、取り除きたい場合は手段によって美容皮膚科や手術のできる施設を受診する必要があり、自費診療となる場合もあります。その他、顔のほくろのようにみえていたものが大きくなった場合、悪性黒色腫や基底細胞癌といった悪性腫瘍の場合もあります。基底細胞癌は8割以上が顔面の特に正中にできやすい黒褐色の癌で、すこし盛り上がって中央が潰瘍化(皮膚がなくなる)することが多い癌です。癌という名前がついていますが、基本的には転移をしないので、外科的に取り切ることで通常は根治が可能です。一方、悪性黒色腫は命に関わる癌になりますので、早期発見・早期治療が大切です。そのため、顔のほくろのようにみえていたものが大きくなった場合、はやめに皮膚科専門医を受診してください。
手のひらや足の裏のほくろが大きくなる症状で考えられる原因と治し方
小さいサイズの色素性母斑(母斑細胞母斑)であるほくろは日本人の場合、手のひら、足の裏にもよくできます。医学的には、良性のClark母斑や単純黒子と呼ばれ、平坦で黒褐色の丸いほくろです。通常は、サイズも直径6mmを超えることはなく悪性の心配はありません。ただし、6mmを超えて大きくなってくる場合は悪性の可能性があります。手の平、足の裏にできる末端黒子型という悪性黒色腫があります。サイズが数ヶ月で大きくなってくる、6mmを超えて大きくなってくる場合は、皮膚科を早めに受診してください。
すぐに病院へ行くべき「ほくろが大きくなる」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
ほくろと思っていたものが急に大きくなる、形がいびつで色の濃淡がある、平坦だったものの中央がもりあがってきた場合は、皮膚科へ
ほくろと思っていたものが6mmを超えて急に大きくなってきた場合、ほくろの形がいびつで色の濃淡がみられる場合、平坦だったものの中央が盛り上がってきた場合は
悪性腫瘍の可能性がありますので、はやめに皮膚科を受診してください。
受診・予防の目安となる「ほくろが大きくなる」時のセルフチェック法
- ・ほくろが大きくなる以外に盛り上がってきた症状がある場合
- ・ほくろが大きくなる以外に赤、青、白色などの色が混在してきた症状がある場合
- ・ほくろが大きくなる以外に形がいびつ(左右非対称、ぎざぎざ)で絵の具を垂らしたような染み出し、濃淡症状がある場合
- ・ほくろが大きくなる以外に平坦だったものの中央が盛り上がってきた症状がある場合
「ほくろが大きくなる」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「ほくろが大きくなる」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)とは、皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)が癌化した腫瘍と考えられています。癌細胞がメラニン色素を多量に産生して黒色に見えることが多いため黒色腫と呼ばれますが、メラニン色素の産生の程度により、褐色~茶色であったり、まれにメラニンをほとんど産生せずに肌色であったりすることもあります。
罹患率は日本人の10万人あたり1~2人と稀な癌です。
よくできる場所や形などによって次の4つのタイプに分けられます。
- 1. 末端黒子型: 日本人に最も多く、足の裏や手の平、手足の爪などにできやすい。
- 2. 表在拡大型: 色の白い人や白人に多く、体の中心部や手足の付け根付近にできやすい。
- 3. 結節型: とくに部位は関係なく、もりあがった塊がだんだん大きくなる。
- 4. 悪性黒子型: おもに高齢者の顔面にできやすく、不規則な形の黒いしみが徐々に大きくなり、時間がたてばしみの中央が盛り上がる。
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診断)
- Asymmetry 形が左右非対称である
- Border irregularity まわりがギザギザした形をしており、境界に鮮明な部分と不鮮明な部分がある
- Color variegation 黒褐色が多いが、色にむらがあり、 青、赤、白などの色が混在することもある
- Diameter enlargement 直径が6mm以上ある
- Evolving lesions 大きさ、形、色、表面の状態、症状の変化がある
診断にはまずは視診が重要です。次に示す基準(ABCDE基準)を参考にします。
視診のほかにはダーモスコープというライトのついた拡大鏡を使って皮膚の状態を詳しく診察する方法があります(ダーモスコピー検査)。また、診断を確定するために皮膚生検(病変の一部を切除して顕微鏡で細胞の形態を評価する検査)を行う場合もあります。昔は悪性黒色腫の生検は転移を助長する可能性があると考えられてきましたが、その後に再発転移に影響を及ぼさないという多数の報告がなされ、現在は確定診断のために随時行われています。視診とダーモスコピー検査で診断がついた場合は、最初から腫瘍全体を広めに切除する全摘生検にて確定診断を行います。
治療)
まず、全身の画像検査を行って病期を決定し、それによって治療法を決めます。
腫瘍(癌)を小さいうちに発見し、手術によって取り切れば根治することが可能です。
手術では、最初にできた腫瘍を大きめに切除(広範切除術)します。所属リンパ節が腫れている場合は、所属リンパ節かく清術(所属リンパ節をすべて取り去る)を同時に行います。所属リンパ節が腫れていない場合は、腫瘍が一番最初にたどりつくリンパ節(センチネルリンパ節)に転移がないか、センチネルリンパ節生検で調べます。そこに転移がみつかれば所属リンパ節かく清術を追加します。
しかし、腫瘍が小さいうちに発見できず、全身のあちこちに転移がみつかった場合は取り切ることができないため手術ができないことがあります。その場合は、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの薬物療法を主体とし、外科治療、放射線治療を加えた集学的治療が行われます。
早期発見・早期治療が大切なので、前述した症状がある場合は早めに皮膚科専門医のいる病院を受診してください。悪性黒色腫を疑う場合は、癌を専門にしている大学病院やがんセンターを紹介される場合があります。
「ほくろが大きくなる」ときの正しい対処法は?
ほくろが大きくなる場合、ほくろのようにみえてほくろではない場合があります。
特に急に大きくなってきた場合は悪性の可能性がありますので、はやめに皮膚科専門医を受診してください。
ほくろを触ったり傷つけるとほくろが変化する場合があります。悪性化の可能性もありますので、刺激をさけるようにしてください。もし、ほくろから出血する場合は、ガーゼなどで保護して皮膚科を受診してください。
多量の紫外線曝露もほくろや皮膚がんの発症と関連が示唆されています。したがって、ほくろや皮膚がんを予防するためにも、ふだんから日焼け止めの使用、帽子日傘などの着用をおすすめします。
「ほくろが大きくなる」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ほくろが大きくなる」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ほくろを刺激すると大きくなるのでしょうか。
後藤 和哉 医師
ほくろをいじったり、傷つけたりなど刺激を与えるとほくろが変化したり大きくなる可能性がありますので、日頃から刺激をさけましょう。
悪性のほくろの特徴を教えてください。
後藤 和哉 医師
悪性黒色腫の特徴としては次のようなものがあります。ほくろのようなものが直径6mmを超えて急に大きくなってきた。平坦だったものの中央部が盛り上がってきた。黒色以外に赤、青、白色などの色が混在している。形が左右非対称でいびつ、周囲もギザギザしている、絵の具を垂らしたような色の濃淡、染み出しがみられる。以上に当てはまるものがある場合は、早めに皮膚科専門医を受診ください。
顔のほくろが急に大きく膨らんできたら病院で治療できますか?
後藤 和哉 医師
まずは正確に診断した上で治療法を選択することになります。悪性の可能性もありますので、はやめに皮膚科専門医を受診してください。
ほくろが大きくなるのはなぜでしょうか。
後藤 和哉 医師
外的刺激や紫外線が原因細胞の増殖に関与している可能性があります。悪性黒色腫の発生にも多量の紫外線や外的刺激が関与している可能性が指摘されています。
まとめ
通常のほくろは直径6mmを超えてどんどん大きくなってくることはありませんが、小さいうちにほくろにみえていたものが大きくなって別の病気であることがわかることがあります。頻度的にはまれですが、悪性黒色腫などの悪性腫瘍の可能性がありますので、ほくろのようなものが直径6mmを超えて急に大きくなってきた、形がいびつで色の濃淡がある、一部が盛り上がってきた、といった特徴に合致する場合はやめに皮膚科専門医を受診してくださいね。
「ほくろが大きくなる」で考えられる病気と特徴
「ほくろが大きくなる」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
通常、ほくろは悪性化することはありません。ただし、小さいうちにほくろにみえていたものが大きくなって別の病気であることが判明する場合はあります。
「ほくろが大きくなる」と関連のある症状
「ほくろが大きくなる」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「ほくろが大きくなる」症状の他に、これらの症状がある場合も「悪性黒色腫(メラノーマ)」「基底細胞癌」などの悪性腫瘍の可能性が考えられます。
以前と比較してほくろのサイズが大きくなっている場合には、早めの医療機関への受診をおすすめします。