『やけど』をした際の応急処置の方法はご存知ですか?医師が監修!
料理中や暖房器具などで、誰しも一度はやけどの経験があるでしょう。
また、海水浴などでする日焼けも軽いやけどと同じ状態で、非常にありふれた怪我として知られています。
しかし、そのようなやけどでも重症度によっては酷い後遺症が残ったり、場合によっては亡くなってしまったりすることもあるのです。
そうならないために今回の記事では、やけどの原因・症状・応急処置の方法・受診を検討する目安・医療機関で行われる処置について解説します。
最後まで読んでいざという時に備えましょう。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
やけどの原因
熱い飲み物や食べ物を食べたときや料理中のやけど、ストーブや電気毛布でのやけどなど、生活の中には様々な危険が潜んでいます。
やけどは非常に頻度の高い怪我で、私たちにとってありふれたものなのです。やけどの原因を分類すると下記の4つに分類できます。
- 温熱やけど
- 電気やけど
- 化学やけど
- 放射線やけど
この章では上記にある4つの原因について解説します。
温熱やけど
温熱やけどとは、熱いものに触れてやけどになってしまうものです。温熱やけどの原因には下記のようなものがあります。
- 熱湯や熱い飲み物
- 高温の油
- ホットプレート
- ストーブ
- アイロン
- コンロ
これらに触れたり、浴びたりすることによって温熱やけどが起こります。温熱やけどはやけどの中で最も頻度が高いのです。
小さな子供の場合は、家庭での花火・調理中の湯気・アイロンによるやけどが多いです。高齢者の場合は、熱いお風呂での事故なども報告されています。
このように温熱やけどは家庭で発生しやすく、子供や高齢者は特に注意が必要です。
電気やけど
電気やけどとは、落雷や感電などによる電気刺激によってなるやけどです。他には、小さな子供がコンセントの穴に金属でできたものなどを差し込んで感電してしまったという事故も起きています。
また、頻度は少ないものの電線による電気やけども起きているのです。特に水は電気を通すため、皮膚が濡れている場合に重症化しやすいといわれます。
このように家庭だけではなく、一般的な歩道でも電気やけどの恐れがあります。特に災害時には電線や落雷による電気やけどに注意が必要です。
化学やけど
化学やけどとは、酸やアルカリなど刺激の強い化学物質に触れることでなるやけどです。
化学やけどの事故は、飲食店・食品製造・ビルメンテナンスなどの現場で報告されています。例えば、飲食店の洗い場で漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)がはねて目にやけどを負ったという事故が報告されているのです。
また、製造作業中に強アルカリの洗剤を浴びて足にやけどを負ったという報告もあります。
このように化学物質もやけどを起こす危険性があるため、人体に有害な薬品を扱うときは、防護メガネ・保護手袋・保護具を正しく着用しましょう。
放射線やけど
放射線やけどとは、放射線によるやけどのことをいいます。
放射線には、アルファ線・ベータ線・ガンマ線・エックス線・中性子線などがあります。この中ではアルファ線が最も浅いところまでで止まりますが、中性子線になると深部まで到達するため細胞の深いところまで破壊してしまう恐れがあるのです。
このように細胞が破壊されることによって、やけどと似たような症状を引き起こします。
やけどの症状
やけどは深さや症状によってⅠからⅢ度に分類されます。Ⅰ度が軽症で、Ⅲ度が最も重症です。これらの分類について詳しく解説します。
Ⅰ度熱傷の場合
Ⅰ度熱傷の場合は、表皮のみのやけどになります。症状は、ひりひりする痛み・発赤・熱感などです。
紫外線による日焼けもⅠ度熱傷に該当します。そしてⅠ度熱傷の傷跡は残らずきれいに治ります。
Ⅱ度熱傷の場合
Ⅱ度熱傷の場合は、表皮だけでなく真皮組織にまでやけどが及んだものです。Ⅱ度熱傷には浅達性と深達性の2つがあります。
浅達性の症状は、ひりひりとした痛み・発赤・水ぶくれなどで、1から2週間ほどでほぼ完全に治癒します。しかし、深達性の場合は神経が破壊されるため痛みが無く、傷口も白くなり、治癒には4週間ほどかかります。
また浅達性の場合、傷跡は残りませんが、深達性は傷跡が残ります。場合によってはケロイドや肥厚性瘢痕を残す場合もあるのです。
Ⅱ度熱傷の場合は医療機関への受診が必要な場合と、必要ない場合があります。やけどで受診を検討すべき目安は下記の3項目を基準にしましょう。
- やけどの範囲が患者の手のひらより広範囲のとき
- 皮膚の発赤・腫れ・水ぶくれ・強い痛みがあるとき
- やけどをした部分が白または黒くなり痛みを感じないとき
このような症状がある場合は、清潔なタオルやガーゼで包み、早めに医療機関を受診してください。自己判断で処置をすると、症状が悪化する恐れがあります。
また、薬局などで売っている消毒液や軟膏を塗るとその後の治療に影響が出る場合があります。そのため市販薬はなるべく使用せず、医療機関にかかりましょう。
Ⅲ度熱傷の場合
Ⅲ度熱傷の場合は、表皮から皮膚の最も深い部分である皮下組織にまでやけどが及んだものです。
Ⅲ度熱傷になると、痛みを感じる神経を破壊してしまうため、痛みが無くなります。やけどを負った皮膚は黒や白色になり、治るのにも1ヶ月以上の期間を有するのです。
症状は治っても傷跡は残ってしまい、その上やけどを負った部分の感覚が鈍くなったり、痺れが残ったりします。また、Ⅲ度熱傷では下記のような後遺症を残す場合が多いです。
- 瘢痕
- ケロイド
- 強いかゆみ
- ひきつれ
- 機能障害
これらの症状は、Ⅲ度熱傷などの重症なやけどや不適切な応急処置によって起こる可能性が上がります。
やけどの応急処置の方法
やけどをしたらすぐに冷やすことが最も大切です。例えば水道水やシャワーなどを使って、患部に15度から20度の冷水を5分から30分間当てましょう。
やけどの応急処置のポイントは下記の通りです。
- 服は無理やり脱がさずに服の上から冷やす
- 保冷剤や氷水は直接当てない
- 冷やすのは痛みが引くまで
- 低体温症に気をつける
- 広範囲なやけどの場合は、濡れたバスタオルなどで身体を包む
- 患部周辺の指輪や腕時計などを外す
まずは患部を冷却することが重要になります。やけどをしたらすぐに、服の上からでも水道水などを当てて冷却しましょう。
また、保冷剤や氷水など温度が低すぎるものはかえって症状を悪化させてしまう恐れがあります。冷たすぎない15度から20度くらいの温度で冷却するのがポイントです。
そして、広範囲のやけどの場合は冷却する際に、低体温症にも注意が必要です。広範囲なやけどを冷やすためには、濡れたバスタオルなどで身体を包みましょう。
また、患部周辺の指輪や腕時計などは、腫れによってうっ血する恐れがあるので外しておきましょう。これらのポイントを覚えておくと、いざという時にやけどの重症化を抑えることができます。
そして応急処置後は、様子を見ながら必要であれば医療機関に受診しましょう。
医療機関でのやけどの治療は、症状・患者の年齢によって異なります。Ⅰ度熱傷から浅達性Ⅱ度熱傷の場合は、冷却・鎮痛・感染予防が主な処置です。
深達性Ⅱ度熱傷になると、ダメージを受けた皮膚を取り除くデブリードマンを行います。
Ⅲ度熱傷になると、専門の病院での入院・皮膚移植などが必要になります。
まとめ
ここまで、やけどの原因・症状・応急処置の方法・受診を検討する目安・医療機関で行われる処置について解説しました。
やけどの原因はアイロン・ホットプレート・熱湯などが多く、何気なく過ごす日常に様々な危険が隠れていることがわかります。
やけどは非常にありふれた怪我ですが、適切な応急処置をすることによって症状の悪化を抑えられるのです。
また、適切な応急処置でケロイド・かゆみ・ひきつれなどの後遺症も予防できます。
熱湯やアイロンを使用する時は子供に触れさせないなどの予防と、やけどの適切な応急処置を行うことが非常に重要です。
そして、やけどの重症度によってはなるべく早めに医療機関を受診しましょう。