「満月様顔貌(ムーンフェイス)」を発症する原因はご存知ですか?対処法も医師が解説!


監修医師:
関口 雅則(医師)
プロフィールをもっと見る
浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。
目次 -INDEX-
「満月様顔貌(ムーンフェイス)」の原因と対処法
満月様顔貌とは、顔に脂肪が沈着し、まるで満月のように腫れて膨らんで見える症状のことを指します。ムーンフェイスとも言います。 ここでは、満月様顔貌の原因と対処法について解説します。満月様顔貌の原因と対処法
満月様顔貌(ムーンフェイス)は、顔が丸く膨らんだように見える症状であり、その多くはホルモンの影響によるものです。読み方としては、「まんげつようがんぼう」となります。 特に、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌が関与していることが多く、体内の脂肪分布が変化することで特徴的な外見が現れます。こうしたコルチゾールの作用が過剰になることで、満月様顔貌の他にも特徴的な体の変化が現れる病気のことを、クッシング症候群といいます。顔だけでなく、体幹部(胴体)に脂肪が集中し、四肢が細くなるという体型変化が見られます。クッシング症候群の原因としては、副腎皮質という部位にできる腺腫(良性の腫瘍)があります。副腎皮質からは、コルチゾールを含むさまざまなホルモンが分泌されています。この部位に腺腫ができ、ホルモンを過剰に分泌するようになると、クッシング症候群が引き起こされることがあります。
クッシング症候群では、高血圧や耐糖能異常(糖尿病)、骨粗鬆症、女性の場合には月経の異常といった症状がでることもあります。 また、ステロイド薬の長期使用も挙げられます。ステロイドは炎症を抑える効果が高く、自己免疫疾患やアレルギー疾患、移植後の拒絶反応を防ぐために広く用いられています。しかし、長期間の使用により、副腎の働きが抑制され、体内のホルモンバランスが乱れることで、顔がふくらみやすくなります。
満月様顔貌の対処法として、まず原因となっている病気やホルモンの異常を特定することが重要です。血液検査や画像診断(CT・MRI)などで詳しく調べます。ステロイド薬が原因の場合は、自己判断で中止せず、医師と相談しながら徐々に減量などの調整をする必要があります。急に中止すると致命的な副腎不全を引き起こす可能性があるため、絶対に避けてください。
すぐに病院へ行くべき「満月様顔貌(ムーンフェイス)」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。急激に顔が丸くなってきた場合は、内分泌内科や一般内科へ
急激に顔が丸くなることに加え、血圧が高くなってきた、体重が増え続けているといった症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。また、手足が異常に細くなり、顔や胴体に脂肪が集中しているという体型変化も、クッシング症候群に特徴的なものです。疲れやすく、筋力低下がみられる場合もあります。これらはホルモン異常の可能性が高いため、内分泌内科や一般内科を受診することをおすすめします。
受診・予防の目安となる「満月様顔貌(ムーンフェイス)」症状のセルフチェック法
以下に該当する症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。- ・急激に顔が丸くなった場合
- ・血圧が高くなってきた場合
- ・体重が増え続けている場合
「満月様顔貌(ムーンフェイス)」症状の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「満月様顔貌(ムーンフェイス)」症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。クッシング病
クッシング病は、クッシング症候群の一つで、下垂体に発生する腺腫(良性腫瘍)が原因で起こります。この腺腫が、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰に分泌することで、副腎が刺激され、コルチゾールというホルモンが大量に産生されます。その結果、満月様顔貌(ムーンフェイス)や、顔やお腹周りに脂肪がつきやすくなる一方で、手足は細くなるという特徴的な体型の変化である中心性肥満、皮膚が薄くなり傷が治りにくくなる皮膚菲薄化、筋力低下、高血圧、糖尿病などが引き起こされます。これらの変化はゆっくりと進行するため、初期の段階では気づきにくいこともあります。治療の第一選択は、腺腫を取り除くための経蝶形骨洞手術です。この手術は、鼻の奥から下垂体にアプローチし、腫瘍を摘出する方法です。手術が成功すれば、ホルモンバランスが回復し、症状の改善が期待できます。
しかし、手術だけでは十分な効果が得られない場合、放射線治療や薬物療法が行われることもあります。 病院を受診すべき目安としては、満月様顔貌が目立つようになったり、体重が急に増加したり、皮膚菲薄化を認めるようになった場合です。
また、高血圧や糖尿病が悪化していると感じたときも、専門医の診察を受けることをおすすめします。受診先としては、内分泌内科や脳神経外科が適しています。
副腎皮質腺腫
副腎皮質腺腫は、副腎に発生する良性の腫瘍で、クッシング症候群の原因となることがあります。この腺腫が副腎皮質ホルモンを過剰に分泌することで、体内のコルチゾール濃度が異常に高くなり、満月様顔貌や体重増加、高血圧、骨粗しょう症、糖尿病などの症状が現れます。特に、中心性肥満が見られることが多いです。治療法は、腫瘍の大きさやホルモンの分泌の程度によって異なります。腺腫が小さく、ホルモンの分泌に大きな影響を与えていない場合は、経過観察を行うこともあります。しかし、ホルモンの過剰分泌が続いている場合は、手術による腫瘍の摘出が必要になります。副腎の片側に腫瘍がある場合は、その側の副腎を摘出することで、症状が改善する可能性が高くなります。 診断には血液検査や副腎のCT・MRI検査が用いられます。症状が続く場合は早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。受診する際は、内分泌内科や泌尿器科を選ぶとよいでしょう。
薬剤性クッシング
薬剤性クッシングは、クッシング症候群の一種で、ステロイド薬の長期間の使用が原因で発症します。ステロイド薬は、炎症性疾患や自己免疫疾患、移植後の拒絶反応を抑えるために広く使用されます。しかし、長期間にわたって高用量を服用すると、副腎の機能が低下し、体内のコルチゾール濃度が異常に高くなります。その結果、満月様顔貌や体重増加、皮膚菲薄化、筋力低下、高血糖、骨密度の低下などが引き起こされます。 治療の基本は、原因となるステロイド薬の使用を見直すことです。
ただし、ステロイド薬を急に中止すると、副腎不全を引き起こす可能性があるため、必ず医師の指導のもとで徐々に減量していく必要があります。また、ステロイドの減量が難しい場合は、骨粗しょう症を予防する薬の併用や、生活習慣の改善を行うことで症状の軽減を図ることができます。
病院を受診すべき目安は、ステロイドを服用している中で、顔や体型の変化を感じたときや、高血圧や糖尿病の悪化、骨折しやすくなったと感じる場合です。受診する際は、内分泌内科やかかりつけ医に相談し、ステロイドの適切な調整についてアドバイスを受けることをおすすめします。
「満月様顔貌(ムーンフェイス)」の正しい対処法は?
満月様顔貌はセルフケアなどでは改善は難しいです。そのため、いち早く原因を明らかにすることが不可欠です。また、市販薬で満月様顔貌を直接改善することはできません。原因となる病気の治療が必要です。特にステロイドを使用している場合、自己判断で減量や中止をすると危険なため、必ず医師と相談のうえで対応するようにしましょう。「満月様顔貌(ムーンフェイス)」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「満月様顔貌(ムーンフェイス)」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
満月様顔貌は他の疾患の副作用なのでしょうか?
関口 雅則医師
はい。特にステロイド薬の副作用として発生しやすいですが、ホルモン異常によるものもあります。
ステロイドで満月様顔貌は治るのでしょうか?
関口 雅則医師
ステロイドの使用を中止すれば、症状が改善することもありますが、完全に戻るかどうかは個人差があります。
まとめ
満月様顔貌は、ホルモンの異常やステロイド薬の副作用によって引き起こされることが多い症状です。特に、クッシング症候群やステロイド誘発性クッシング症候群が主な原因として挙げられます。もし、急に顔が丸くなったり、その他の体調変化があったりする場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。「満月様顔貌(ムーンフェイス)」で考えられる病気
「満月様顔貌(ムーンフェイス)」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。内分泌内科の病気
- 副腎皮質腺腫
- クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)
- 副腎皮質がん
- 異所性ACTH産生腫瘍
- 両側副腎の結節性過形成
- 薬剤性クッシング