「ストレスによる耳鳴り」の解消法はご存知ですか?考えられる病気も医師が解説!

ストレスによる耳鳴りを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる病気や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修理学療法士:
小島 雄也(理学療法士)
目次 -INDEX-
耳鳴りとは?
耳鳴りとは、外からの音が存在しないにも関わらず、本人の耳にのみ音がしているように感じる現象を指します。その音は高音から低音まで様々で、聞こえ方も人によって異なります。多くの人が経験する症状です。しかし、特に現代社会におけるストレスは、耳鳴りを悪化させる要因と考えられています。この記事では、耳鳴りの原因と、ストレスとの関連性から、考えられる病気、ご自身でできる対処法まで、専門医が分かりやすく解説します。
なぜ起きる?耳鳴りのメカニズム
耳鳴りの発生について、近年では脳が大きく関わる中枢発生説が主流となっています。実は、耳鳴り自体は正常な脳の活動に伴うものであり、静かな環境では誰でも耳鳴りがすると言われています。しかし、何らかのきっかけで聴力が少し低下すると、脳は聞こえにくくなった音を補おうとして、音を司る脳の一部(聴覚野)の活動を過剰に活発にします。この脳内神経細胞の異常な興奮が、実際には鳴っていない音を耳鳴りとして認識させてしまうのです。つまり、耳鳴りの主な原因部位は耳ではなく、脳であると考えられています。
耳鳴りとストレスの関係性
誰でも聞こえる可能性のある耳鳴り、ほとんどの人はそれを意識することなく生活しています。ところが、強いストレスや疲労、不安を抱えていると、脳はこの些細な耳鳴りの信号に注意を向けるようになります。そして、耳鳴りに対して「不快だ」「嫌だ」というネガティブな感情が結びついてしまうと、脳はその信号を重要な危険信号と捉える、つまり不必要に耳鳴りに注意が向いてしまいます。この「耳鳴りを不快に感じるよう脳が変わってしまう」と、「不快感からさらに耳鳴りに注意が向いてしまう」という悪循環を生んでしまいます。このように、心因的な要素により、耳に病気がないのに、耳の違和感や症状を感じることがあります。これは「心身症(身体症状症)」と呼ばれます。耳の病気なのか、それとも心身のバランスによるものかをきちんと見極める必要があります。
「ストレスによる耳鳴り」の症状で考えられる病気と対処法
ストレスに関連した耳鳴りを診断する場合、まずは難聴、つまり「実際に耳の病気が隠れているかどうか」が非常に重要な問題です。難聴がある場合は、難聴の原因疾患に対する治療により耳鳴が改善する可能性があります。原因となる診断するうえで、どの様な音かは診断のためのヒントになる場合があります。
ストレスによってボーやゴーなどの重低音の耳鳴りが起きる症状で考えられる原因と治し方
「ボー」という低い音や耳が詰まる閉塞感が特徴です。まずは心身を休ませることが大切です。原因としては、低音障害型感音難聴やメニエール病の初期症状が挙げられます。症状が続く場合は、難聴が進行する可能性もあるため、耳鼻咽喉科を受診してください。
ストレスによってキーンやピーなどの高音の耳鳴りが起きる症状で考えられる原因と対処法
耳の中で「キーン」とした金属音のような高い音が聞こえることは、最も一般的な耳鳴りの症状です。ストレスで症状が悪化することが多く、まずは静かな環境を避けて音楽をあえて聞くことで耳鳴りから意識をそらす音響療法がすすめられます。突如発症する難聴に伴う高音の耳鳴りは突発性難聴の可能性があり、この場合は緊急性が高いため、すぐに耳鼻咽喉科を受診する必要があります。
ストレスによってボコボコやポコポコなど不定期に聞こえる耳鳴りが起きる症状で考えられる原因と対処法
「ボコボコ」といった規則的もしくは不規則な音は、耳と鼻をつなぐ耳管の機能不全や、のどや鼻を構成する小さな筋肉が異常収縮(けいれん)を起こすことが原因のことがあります。あくびなどで一時的に改善することもありますが、治らない場合は耳鼻咽喉科で相談しましょう。
ストレスによる耳鳴りと閉塞感が起きる症状で考えられる原因と対処法
耳が詰まった感覚に耳鳴りと同時に起こりやすい症状としては、低音域の難聴でよくみられます。メニエール病や低音障害型感音難聴では、この様な難聴を示すことが多いです。ストレスや睡眠不足が誘因となるため生活習慣の見直しが重要です。難聴やめまいを伴う場合は早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
ストレスを抱えていて片耳だけ耳鳴りがする症状で考えられる原因と対処法
片耳だけの耳鳴り、特に聞こえにくさを伴う場合は注意が必要です。突発性難聴やメニエール病が疑われます。特に突発性難聴は治療開始が遅れると聴力が回復しないことがあるため、1週間以内の治療開始が望ましいとされています。
ストレスによる耳鳴りとめまいが起きる症状で考えられる原因と対処法
回転性めまい(自分または周囲が回転しているように感じる症状)を耳鳴とともに認める場合には、まずは安全な場所で安静にしてください。初めて起きた症状であれば、めまいを伴う突発性難聴の可能性があります。もしこれまでにも同様の発作を繰り返しているのであれば、メニエール病が見分けるべき疾患に挙げられます。また、力が入らない、座った姿勢を保てないといった症状では脳梗塞の可能性もあります。いずれにせよ、病院での精密な検査が必要です。
すぐに病院へ行くべき「ストレスによる耳鳴り」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
ストレスによる耳鳴りと難聴や強いめまいを伴う場合は、耳鼻咽喉科へ
急に症状が出現し、耳鳴りとともに難聴を感じる場合は突発性難聴の可能性を第一に考えます。もし、これまでにもめまいと同時に耳鳴り、難聴の発作を繰り返している場合、メニエール病の発作が考えられます。これらの病気は早期治療が聴力の回復に大きく影響するため、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。
病院受診・予防の目安となる「ストレスによる耳鳴り」ときのセルフチェック法
・一晩寝ても治らない、あるいは改善しない耳鳴り
・耳鳴りで仕事や睡眠に支障が出ている
・耳鳴りに加え、難聴、めまい、耳の閉塞感を伴う
・耳鳴りと体が動かない、感覚がおかしいといった症状がある
上記に一つでも当てはまる場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科、特に体の麻痺がある場合は救急病院で診察を受けることをお勧めします。
「ストレスによる耳鳴り」に関する特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「ストレスによる耳鳴り」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
メニエール病
内耳のリンパ腔が浮腫(むくみ)を起こすことが特徴の疾患で、回転性めまい、難聴、耳鳴り、耳閉塞感の発作を繰り返す病気です。ストレスが引き金になることが多く、生活習慣の改善が治療の基本です。症状がある場合は耳鼻咽喉科を受診してください。
突発性難聴
突然、片耳が聞こえなくなる原因不明の病気で、耳鳴りを伴います。原因はわかっておらず、ウイルス感染や自己免疫による細胞障害、血流障害などが関与すると考えられ、ステロイド薬による早期治療が聴力回復の鍵となります。疑わしい症状があれば、すぐに耳鼻咽喉科を受診すべき緊急性の高い疾患です。
低音障害型感音難聴
低音域の聴力だけが低下する病気で、若い女性に多く見られます。低い音の耳鳴りや耳閉塞感が主な症状で、ストレスや疲労との関連が深いと言われています。休息と治療で比較的治りやすいですが、再発することもあります。
自律神経失調症
ストレスや睡眠不足、慢性疲労、不安などが原因で耳鳴りだけでなく体の不調全般が強く意識される状態を指す、一般的な呼称です。多くの場合、聴力検査では異常が見られません。耳鳴りのほか、頭痛、動悸、不眠など心身に様々な不調が現れます。まずは耳鼻咽喉科などで体の病気がないかを確認し、必要に応じて心療内科の受診も検討します。
睡眠不足
睡眠不足は、脳の働きを不十分にし、不快な感覚に対して過敏にさせることが原因で、耳鳴りを感じやすくなります。また、疲労感や集中力の低下が、不快な感情を強めることがあります。すると、結果として耳鳴りと不快感を自分の脳が結びつけるきっかけとなりかねません。質の良い睡眠を確保することは、耳鳴りの悪循環を断ち切るための第一歩です。
「ストレスによる耳鳴り」の正しい対処法・改善法は?
耳鳴り治療への第一歩は、耳鳴りが起きている原因を知ることです。ストレスの原因と向き合って対処することも重要です。
気になる耳鳴りを止める方法はある?
先程も述べた通り、耳鳴り自体は、正常な脳でも発生しうる信号の一つです。そのため、耳鳴り治療の目標として、音を完全に消し去ることは設定しません。たとえ耳鳴りが鳴っていても、それを苦痛に感じることなく、気にせず快適に過ごせるようになることを目標とします。解消法として、心地よい音楽などで耳鳴りから注意をそらす「音響療法」や、耳鳴りへのネガティブな考え方の癖を修正する「認知行動療法」などがあります。まずは耳鼻咽喉科で適切な診断を受けることが最も重要です。
ストレス緩和や耳鳴り予防におすすめの生活習慣とは?
ストレスの管理が不可欠です。十分な睡眠、バランスの良い食事、ウォーキングなどの適度な運動を心がけましょう。ぬるめのお湯にゆっくり浸かって体を温めたり、首や肩周りのストレッチをしたりすることも、心身のリラックスにつながるためおすすめです。
「ストレスによる耳鳴り」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ストレスによる耳鳴り」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ストレスが溜まると耳鳴りがしやすいです。早く治すにはどうしたら良いでしょうか?
小島 敬史(医師)
ストレス軽減と十分な休息が基本です。しかし、耳鳴りの背景に病気が隠れている可能性もあるため、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。原因を特定することが早期改善につながります。耳鳴りの悪循環を断ち切るための専門的なアドバイスを受けることができます。
ストレスによる耳鳴りは自律神経の不調が原因でしょうか?
小島 敬史(医師)
「自律神経失調症」は医学的に確立された病名ではありません。しかし、一般的に「自律神経が乱れている」と言われるような、体調の悪さ、睡眠不足、疲れ、ストレスといった不調の状態では、脳の働きが不十分になったり、感覚が過敏になったりして、結果的に耳鳴りを感じやすくなる可能性は高いと考えられます。
ストレス過多で耳鳴りがするとき、何日以上続いたら病院を受診した方が良いですか?
小島 敬史(医師)
一晩しっかり寝ても改善しない場合や、耳鳴りのために日常生活に支障が出ている場合は、受診をお勧めします。特に、聞こえにくさやめまいを伴う場合は、日数にかかわらず早く受診してください。
睡眠不足で疲れていてめまいと耳鳴りがするときはまず休息を取るべきですか?
小島 敬史(医師)
まずは休息が必要ですが、症状が強い場合や改善しない場合は、メニエール病や突発性難聴などの可能性も考えられます。自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
まとめ ストレスによる耳鳴りがするときは早めに耳鼻咽喉科を受診しよう
ストレスによる耳鳴りは、あなたの脳が発している危険信号です。つらい症状の背景には、耳鳴りと不快な感情の悪循環があります。これを断ち切るためには、生活習慣の見直しと共に、専門家による正しい診断と指導が不可欠です。耳鳴りを一人で抱え込まず、まずは耳鼻咽喉科の専門医に相談してください。
「ストレスによる耳鳴り」症状で考えられる病気
「ストレスによる耳鳴り」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
神経内科・脳外科系の病気
- 小脳梗塞
- 脳幹梗塞
- 聴神経腫瘍
耳鳴りでは、まず難聴があるかどうかを診断します。それ以外の大きな症状を伴う場合は脳梗塞等の可能性もあります。明らかにストレスが原因の場合は精神科的疾患の可能性もあります。
「ストレスによる耳鳴り」に似ている症状・関連する症状
「ストレスによる耳鳴り」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 耳鳴りのせいで眠れない
- 耳鳴りのせいで会話がうまくできない
- 耳鳴りのせいで聞き取りが悪い
- 耳鳴りのせいで集中できない
- 聴覚過敏
耳鳴りの場合、難聴があるかどうかが診断に最も重要な情報です。また、耳鳴りで「困っている症状」をうまく治すことが治療方針になります。



