「耳の下が痛い」原因はご存知ですか?医師が片方だけ痛む場合も解説!
耳の下が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
森崎 剛史(医師)
「耳の下が痛い」症状で考えられる病気と対処法
耳の下にはどのような臓器があって、どのような病気が発症するのでしょうか。一般的に痛みの原因は炎症や腫瘍による痛み、神経性の痛み、筋膜や骨膜の痛みなど様々です。耳の下の痛みもこれらすべてがありえます。耳の下の痛みについて詳しく解説します。
耳の下が痛い症状で考えられる原因と治し方
耳の下には耳下腺という唾液を作る臓器があります。また耳下腺の中を顔面神経という顔を動かしている神経が走っています。また、耳下腺の中には小さなリンパ節も複数個存在します。その他に耳の下の後ろの硬い部分から鎖骨や胸骨にかけて、胸鎖乳突筋という首の筋肉があります。耳の下の痛みはこれらの臓器に由来する痛みが考えられます。基本的に受診する科は耳鼻咽喉科です。お近くの耳鼻咽喉科で相談してみましょう。
耳の下が痛く腫れはない症状で考えられる原因と治し方
耳の下がピリピリと痛むときは、ベル麻痺という病気の予兆である可能性があります。生活に支障が出るほどの痛みではなく、ピリピリが気になる程度の痛みです。ベル麻痺は末梢性顔面神経麻痺のうちのひとつで、どちらかの顔の動きがある日急に悪くなり、平均で数ヶ月感持続するものです。耳の下がピリピリと痛み、翌日以降にまぶたが閉じにくい、口角が上がりにくいなどの症状があれば、数日以内にお近くの耳鼻咽喉科を受診しましょう。
耳の下の痛みとリンパの腫れで考えられる原因と治し方
耳の下が痛く、周囲のリンパ節が腫れている時、急性耳下腺炎が考えられます。風邪やおたふく風邪のウイルスが耳下腺に炎症を起こしたり、口の中の常在菌が耳下腺から唾液を出す管(導管)を通って耳下腺に炎症を起こしたりする状態です。耳下腺そのものが全体的に腫れることもあります。炎症は周囲のリンパ節を腫らせますのでリンパの腫れとして自覚される方もおられます。すぐにできる処置としては、冷やして炎症を抑えると症状が和らぎます。お近くの耳鼻咽喉科を受診しましょう。
片方の耳の下が痛い症状で考えられる原因と治し方
片方の耳の下が腫れて強い痛みがあるとき、もともと存在している耳下腺腫瘍に由来する痛みのことがあります。耳下腺腫瘍とは耳下腺のなかにできた腫瘍で、比較的頻度が高い良性腫瘍であるワルチン腫瘍はそれ自体は痛みを起こさないのですが、時折腫瘍に細菌が感染してひどい炎症を起こすことがあります。
また、耳下腺の悪性腫瘍は、周囲にズキズキとした痛みを起こすこともあります。痛みが強い場合には腫瘍の可能性もありますのでお早めにお近くの耳鼻咽喉科で相談しましょう。
耳の下から首にかけて痛む症状で考えられる原因と治し方
耳の下から首にかけては、胸鎖乳突筋という筋肉が走行しています。この筋肉は肩こりのときの痛みのもととなっていることが多く、この筋肉の付け根である耳の下の後ろ側の乳様突起という骨のあたりに特に痛みが出やすいです。すぐにできる処置として、痛い部位をゆっくり押してほぐすようにすればしばらく痛みが和らぎます。痛みがひどい場合はペインクリニックなどに相談してみるのもよいでしょう。
酸っぱいものを食べると耳の下が痛い症状で考えられる原因と治し方
酸っぱいものを見た時、食べる時には、唾液を大量に出すために、唾液を作っている耳下腺の組織がぎゅっと絞られるように自律神経によって制御されます。そのため耳の下がぎゅーっと締め付けられるように痛むことがあり正常な反応です。ただしあまりに痛いときには耳下腺から口の中へ唾液を運ぶステノン管という管が細くなっていて唾液が通りにくくなっている、ステノン管狭窄症かもしれません。繰り返すのであれば、歯科の中でも口腔外科という科目を標榜しているクリニックに受診したり、耳鼻咽喉科で相談して総合病院などで精密検査を要するかどうかをみてもらいましょう。
すぐに病院へ行くべき「耳の下が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
耳の下にしこりがあり痛い場合は、耳鼻咽喉科へ
耳下腺腫瘍について少し触れましたが、耳下腺悪性腫瘍つまり耳下腺癌についてもう少し詳しくお伝えします。耳下腺にしこりがある場合、耳下腺付近が全体に硬くなっている場合に注意が必要です。耳下腺癌は周囲の神経に浸潤することで、神経由来の痛みを引き起こします。主要な3つの悪性兆候として知られているものに、顔面神経麻痺(顔の動きが弱くなること)、疼痛(耳の下がズキズキ痛くなります)、癒着(しこりが押しても動かず周りの筋肉と一体化している)、があります。これらの症状が重なっているときにはすぐにお近くの耳鼻咽喉科を受診してください。
「耳の下が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「耳の下が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
化膿性耳下腺炎
急性耳下腺炎のうち、細菌感染が原因であるものを指します。口の中には常在菌という細菌が多数おり、普段耳下腺から口の中へと唾液を運ぶ管に細菌が逆行して感染します。水分摂取を怠っていたり、口の中を清潔にしていないと起こりやすいです。耳の下が痛み、熱が出ることが多いです。糖尿病やステロイド内服中など、免疫状態が弱くなっている方の場合は、細菌感染が進行して膿瘍という抗生剤が効きにくい状態になったり、細菌が全身にめぐり敗血症という命に関わる病態となることもあります。放置せずに病院で早期に適切な抗菌薬治療を開始することが重要です。耳鼻咽喉科で治療法を相談しましょう。
ハント症候群
帯状疱疹を起こすウイルスと同じウイルスが原因で起こる耳の周りの帯状疱疹のことで、顔面神経麻痺、耳鳴・難聴・めまいを同時に発症します。帯状疱疹による耳まわりの痛みがあり、病気が収まったあともその部位の神経痛が後遺症として残ることも多いです。治療は発症から7日〜14日以内に開始されることが望ましいとされており、発症したらなるべく早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。ステロイド治療を行いますが、入院と通院で使用できる用量が異なりますので、よく病院で話を聞いて治療法を選択しましょう。
唾石症
唾液を口の中に運ぶ管、または唾液腺そのものの中に、石ができた状態です。唾液の流れが停滞していると成分の一部が固まって石のようになり、耳下腺炎や顎下腺炎を繰り返すようになります。顎の下の顎下腺に起こることがほとんどで、耳下腺に起こることは少ないです。小さい石は自然に押し出されることもありますが、大きい石は手術で除去しないと自然にはでてきません。炎症の繰り返しがほとんどない場合、なんらかの理由で手術ができない場合には、あえて手術をしないこともあります。耳鼻咽喉科を受診して治療方針を相談しましょう。
おたふく風邪・流行性耳下腺炎 (りゅうこうせいじかせんえん)
いわゆるおたふく風邪で、ムンプスウイルスというウイルスが原因でおこる耳下腺炎です。高熱がでて両方の耳下腺が強く腫れ痛みが出ます。感染力がつよく、流行性という名前の由縁となっています。小児に多い疾患で、あまり知られていませんが後遺症として難聴となることもあります。成人に感染すると男性不妊症の原因になったり、妊婦さんに感染すると胎児の難聴の原因となるなど重大な作用をもたらすことも知られていますので、日頃からの感染予防対策や、ワクチンの摂取などに気をつけておく必要があります。ワクチンは髄膜炎などの副作用の報告もあるため任意接種となっていますが、2017年、日本耳鼻咽喉科学会としては接種を勧める立場をとっています。
急性耳下腺炎
前述の急性化膿性耳下腺炎や流行性耳下腺炎、その他のウイルス性耳下腺炎を総称して急性耳下腺炎と称することがあります。細菌感染の関与が考えられる場合には抗生剤投与が治療となります。放置して進行すると膿瘍といって膿の塊を作り全身への感染症につながりかねないので腫れがひかないときには必ず耳鼻咽喉科の病院を受診しましょう。
反復性耳下腺炎
2歳〜5歳に最初に発症し、その後耳下腺の腫れや軽い痛みを繰り返す病気です。原因は諸説ありますが、耳下腺で作られた唾液を分泌するための細い管の形が未熟であったときに唾液がうまく排出できず、溜まった唾液に慢性的に口の中の細菌が感染していることが原因という説が主流です。2〜3日で自然に治ることがほとんどですが、痛みが強い場合や持続する場合には抗生剤の投与が行われることがあります。10歳ごろまでには自然に収まることが知られており必ずしも病院受診は要しませんが、他の疾患との区別をつけてもらうためにも2〜3日で改善しない場合には耳鼻咽喉科の病院を受診しましょう。
耳下腺腫瘍
耳下腺の中に腫瘍が発生した場合に耳下腺腫瘍といいます。耳下腺腫瘍は数十種類存在しているため原因も一概には言えないのですが、代表的な耳下腺腫瘍の一つである「ワルチン腫瘍」については喫煙が原因と言われています。最も多い「多形腺腫」や前述の「ワルチン腫瘍」などは良性の腫瘍です。これらは基本的に薬での治療は効果がなく、ある程度の大きさがあれば手術で切除することになります。耳下腺腫瘍には痛みはありません。ただし腫瘍内に細菌感染が起こってしまうと強い痛みと腫れをおこしますので抗生剤での治療が必要となります。耳下腺腫瘍は放置すると進行し癌化するものがありますので、耳の周囲に発生したしこりがあるときには痛くなくても一度耳鼻咽喉科の病院を受診することをおすすめします。
「耳の下が痛い」ときの正しい対処法は?
耳の下が痛いとき、時間帯や諸事情ですぐに病院受診ができないことはよくあります。病院受診までの応急的な対応として発熱や痛みに対しては市販の解熱鎮痛薬を使用しても良いと思います。ロキソプロフェン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの成分が記載してあるものが痛み止めです。これらの薬剤は解熱作用もあわせ持っています。また、炎症に対しては冷やすことで症状が和らぎます。ただし、これらの処置で症状は良くなっていても病気自体は改善しているわけではないので、あまり鎮痛薬などでの対応を続けていると病気が進行して取り返しのつかないことになります。あくまでも市販薬は応急処置として使用するにとどめましょう。やはり病院で適切な診断と治療を受けることが早期改善の鍵です。
「耳の下が痛い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳の下が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
耳の下が痛くて腫れているときは何科の病院で治療できますか?
森崎 剛史 医師
耳鼻咽喉科です。
大人で片方の耳の下が痛いのはおたふくかぜでしょうか?
森崎 剛史 医師
おたふくかぜは片方または両方の耳下腺におこり、片方だからおたふくかぜとは言えません。
食べ物を食べると耳の下が痛いのは歯が悪いのでしょうか?
森崎 剛史 医師
歯が原因で耳の下が痛むことは少なく、部位からはむしろ顎関節の異常はありえます。
耳の下の痛みや腫れは放置しても自然に治りますか?
森崎 剛史 医師
進行していく病気も多くありますので、放置してよいかどうかを病院でみてもらいましょう。
耳の下の痛みはストレスと関係がありますか?
森崎 剛史 医師
経験的にはストレスはベル麻痺、ハント症候群、耳下腺炎などあらゆる病気と関係していますが、直接的な原因とまでは断定できません。
子供で耳の下が痛い症状で考えられる原因と治し方を教えてください。
森崎 剛史 医師
反復性耳下腺炎といって小児に繰り返す耳下腺炎は思春期をすぎるころに自然に軽快します。おたふくかぜは通常のかぜと同様解熱鎮痛をしながら自然に収まるのを待ちます。
まとめ
耳の下の痛みの原因として、耳下腺、筋肉、神経、顎関節など様々な臓器の病気があげられます。軽い痛みのものからズキズキとした強い痛みのもの、病院でも自然に収まるのを待つものから放置すれば進行して重症になるものまで様々ですので、早めに一度は病院に受診してその後の検査・治療方針を医師と相談しておくことが重要になります。病院受診をためらわないようにしてください。
「耳の下が痛い」で考えられる病気と特徴
「耳の下が痛い」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
放置すると重症になるものもありますので必ず病院受診をしましょう。
「耳の下が痛い」と関連のある症状
「耳の下が痛い」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
「耳の下が痛い」の他にもこれらの症状がある場合は、「ベル麻痺」「急性耳下腺炎」「唾石症」「顎関節症」「ハント症候群」などの疾患の可能性が考えられます。急激に悪化したり、しこりがあったりするような場合には、早めに耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。