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「ハント症候群(顔が動かせない・めまい・耳が痛む病気)」の原因・治療期間はご存知ですか?

公開日:2022/08/11  更新日:2022/10/12
「ハント症候群(顔が動かせない・めまい・耳が痛む病気)」の原因・治療期間はご存知ですか?

突然顔の半分が動かなくなったり、めまいや耳の痛みが起こったりしたらハント症候群かもしれません。ハント症候群は、脳疾患などほかの症状との判別が難しく、治療が遅れると後遺症で社会復帰に悩むケースもあります。

今回はハント症候群の症状や特徴、治療方法、ほかの顔面麻痺との見分け方について説明します。1日も早い治療で後遺症を残さないようにしましょう。

和佐野 浩一郎

監修医師
和佐野 浩一郎(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。2018年より独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部室長。日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医・補聴器相談医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本耳科学会耳科手術暫定指導医、頭頸部がん専門医・指導医、日本がん治療認定医機構日本がん治療認定医、日本気管食道科学会気管食道科専門医。

ハント症候群とは

ハント症候群とは?

ハント症候群とはどのような病気ですか?

ハント症候群は、正式には「ラムゼイハント症候群」といい、顔面神経麻痺に加えて耳の痛み・水ぶくれ、難聴、めまいなどが突然起こる病気です。10万人に約5人が発症するといわれており、顔面神経麻痺では発症頻度が高いものです。
ハント症候群は、水痘帯状疱疹へルぺスウイルス(すいとうたいじょうほうしんヘルペスウイルス)が顔面神経で悪さをすることで発症します。

原因はウイルス感染ということですが、うつるのでしょうか?

基本的にハント症候群は、子どもの頃に水痘に感染した際に身体の中に潜んでいる水痘帯状疱疹へルぺスウイルスが再活性化して起こるため、人に感染することはまずありません。しかし、患部の発疹に触接触ることでウイルス感染を起こす可能性はあります。
通常、ウイルスは免疫機能の働きによって顔面神経の神経節でおとなしくしています。しかし、疲れやストレスなどで免疫機能が低下するとウイルスの勢いが抑えられなくなり、顔面麻痺などさまざまな症状を発症します。

症状についてくわしく教えてください

ハント症候群の主な症状は、顔面神経麻痺による表情筋の運動障害です。片側の目や口をしっかりと閉じることができず、おでこにもしわを寄せることができなくなります
ハント症候群では顔面神経だけでなく、周辺の脳神経の働きをも障害するため多種多様な症状が現れます。耳の周りに水ぶくれや強い痛みが起こる耳の帯状疱疹、難聴やめまいなども発症するのが特徴です
これら症状のあらわれ方はさまざまで、数日から1~2週間かけて徐々に症状が出てくることもありますが、すべての症状がそろうのは半数程度です。治りにくい顔面麻痺では後遺症が残るケースも多くあります。

何科を受診すればいいのでしょうか?

耳鼻科です。耳痛や耳たぶの水ぶくれなど耳の症状が早く出れば、早期に耳鼻科で適切な治療を受けられるため症状を軽くできます。しかし、めまいや顔面神経麻痺が起こると脳外科や内科を受診する人がいて、治療が遅れるケースもあります。
脳疾患による顔面神経麻痺との簡単な見分け方は、おでこのしわです。脳に異常がある場合には額の麻痺が起こらないため、顔面麻痺でもおでこにしわをつくれることがあります
また、ハント症候群と似ていますが、単純へルぺスウイルスによって発症するベル麻痺の顔面麻痺では、合併症はなく顔面の麻痺だけです。

ハント症候群の治療方法について

ハント症候群の治療方法とは?

早期治療できたときの完治率や完治するまでの期間は?

ハント症候群では早期治療によって予後が左右されます。発症してから7~10日間かけて顔面神経はどんどん変性していくので、7日以内に十分な治療を行うことが大切です。
回復できるかどうかは、症状が最も重いときの症状の程度が関係します。早い段階で治療ができ、麻痺が軽度ならたいてい1~2カ月程度で治ります
顔の片側をまったく動かせない重度の麻痺だと、完治できるのは60~70%程度です。一般的には治りやすいのは発症から3カ月以内ですが、半年から1年以内でも回復する可能性はあります。
顔面麻痺の後遺症では、目を閉じると口が一緒に動く病的共同運動やけいれんなどは見た目に異常が分かるため精神的につらい状況を引き起こす可能性が高いでしょう。めまいは1~2カ月程度で改善するものの、難聴は完治しないこともあります。

どんな治療が行われますか?

早期の治療はウイルスに対する薬の投与で、ステロイドと抗ウイルス薬を使います。水痘帯状疱疹へルぺスウイルスには一般的に「バラシクロビル」や「アシクロビル」が投与されます。
軽度の症状であれば外来通院で内服治療を行いますが、症状が重度の場合には入院して点滴治療が可能です。10日以内に適切な治療を開始できれば、顔面神経麻痺を比較的軽く抑えることができます。
しかし、ハント症候群を発症した人の約半数は後遺症が残ってしまうため、回復期にはリハビリが必要です。リハビリは病的共同運動やひきつれの症状を予防するのが目的で、神経障害がある方にだけ行います。

後遺症が残ったらどうなりますか?

ハント症候群の顔面神経麻痺の症状が重症だと、病的共同運動やけいれん、ひきつれなどを起こすことがあります。ほかにも、めまいや難聴などが残っていると、人とのコミュニケーションだけでなく、車の運転などの日常生活に支障がでてしまうことがあります
顔面神経の後遺症にはボトックス注射や形成手術といった治療法があります。ボトックス注射は外来通院で受けられ、効果が持続する2~5カ月おきに治療が必要です。形成手術は緊張している表情筋を切除する方法ですが、治療を受けられる医療機関は限られています。

ハント症候群の予防について

ハント症候群の予防

ハント症候群を予防するために有効な手段はありますか?

ハント症候群を予防するには、まず水痘帯状疱疹ウイルスに感染しないことです。まだ感染していない子どもには水痘ワクチンを接種することで、ハント症候群を予防できます
水痘に感染しなければ、水痘帯状疱疹へルぺスウイルスが顔面神経の神経節に潜伏することはありません。

水痘にかかった大人はもう予防できませんか?

大人でも水痘ワクチンを接種することで、ハント症候群を予防できます。すでに水痘にかかったことがあれば、ハント症候群を発症するリスクはありますが、水痘ワクチンを接種すると水痘帯状疱疹へルぺスウイルスに対する免疫力が高まるという研究結果があります。
予防接種を定期的に行うことができれば、加齢や体調不良で免疫力が下がってもハント症候群の発症を予防できるのです。

日常生活で気を付けておくといいことはありますか?

ハント症候群を予防するためには、免疫力を高めるように普段から規則正しい生活を送ることが重要です。また、ストレスや過度な運動は免疫力を低下させて水痘帯状疱疹へルぺスウイルスが暴れだすきっかけをつくる可能性があります。
睡眠不足や過労などを避け、定期的にリフレッシュやリラックスできる時間をつくって、身体と心を休めるようにしましょう。
また、糖尿病になると免疫力が低下して感染症にかかりやすいことが分かっています。栄養バランスの良い食事を摂ることも、ハント症候群の予防につながるでしょう。
ビタミンやたんぱく質を摂ると、代謝が上がって免疫力をサポートしてくれます。また、発酵食品や食物繊維を積極的に摂ると、腸内環境が整って免疫力の向上につながります

編集部まとめ

ハント症候群は治療が早ければ早いほど、完治できる可能性も高くなります。症状の特徴を見抜ければ、早く耳鼻科を受診して適切な治療を受けられます。

もし後遺症が残っても受けられる治療はありますが、そもそもハント症候群を発症させないことが大切です。ハント症候群の後遺症で悩まないためにも、子どもには定期の水痘予防接種を受けてもらい、日常生活でも免疫力を高める行動を意識してみましょう。