「足がすくんで上手く歩けなくなる」のは”何の初期症状”?他の原因も医師が解説!

ある日、何気なく歩いていたのに、突然足が前に出なくなった。そのような経験をしたことはありませんか?足がすくむ症状は、日常生活に支障をきたすだけでなく、心理的にも大きな不安を引き起こします。
この記事では、なぜ足がすくむのか、どのような病気が隠れているのか、そしてどう対処すればいいのかを、わかりやすく説明していきます。予防法や病院に行くべきタイミングについても触れていくので、最後までお読みください。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
目次 -INDEX-
足がすくんで上手く歩けなくなる理由
足がすくんで歩けなくなる主な原因は、神経系のトラブル、加齢による筋力低下、心理的要因やストレスの3つです。
神経系のトラブル
一つ目は、神経系のトラブルです。私たちの身体は、脳からの指令で動いています。この指令系統に問題が起きると、足がうまく動かなくなることがあります。特に、動きのリズムを司る脳の部分に異常があると、足がすくみやすくなります。
例えば、パーキンソン病という病気では、歩き始めの一歩が出にくかったり、歩いている途中に突然足が止まってしまったりすることがあります。これも神経系のトラブルが原因です。
加齢による筋肉の衰えや筋力不足
二つ目は年齢とともに避けられない筋力の低下です。若い頃と比べて足の筋肉が弱くなってくると、バランスを取るのが難しくなります。すると、転ばないように無意識のうちに足がすくんでしまいます。また、関節が硬くなるのも年齢の影響です。これも滑らかな歩行の妨げになります。
心理的要因やストレスの影響
三つ目は、意外かもしれませんが心の問題です。「転んだらどうしよう」という不安や、過去に転んだ怖い経験が、知らず知らずのうちに足をすくませてしまうことがあります。日々のストレスや悩み事も、体を緊張させて歩きづらくさせる原因になります。心と身体は密接につながっています。
足がすくんで上手く歩けなくなるときに考えられる病気
足がすくんで上手く歩けなくなる症状には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。ここでは代表的な病気をいくつか解説します。
パーキンソン病
一つ目はパーキンソン病。これは脳のなかの物質であるドパミンが減ってしまう病気です。特徴的なのがすくみ足で、歩き始めの一歩が出にくかったり、歩いている途中で急に止まってしまったりします。また、小刻みで前かがみの歩行が特徴的です。
治療法としては、投薬治療やリハビリといった方法があります。パーキンソン病の場合、早めに治療を始めると症状の進行を遅らせることができる可能性があります。
脳梗塞や脳卒中後遺症
次に脳梗塞や脳卒中の後遺症があります。もし、脳の一部が傷ついてしまうと、身体の一部が麻痺したり、感覚がおかしくなったりして、スムーズに歩けなくなることがあります。なかには、筋肉が常に緊張して硬くなる痙性麻痺という状態になり、それが原因で足がすくむこともあります。
このような場合は、早めにリハビリを始めるのが大切です。適切な訓練を続けていけば、歩く機能を取り戻せる可能性が高まります。
その他の神経疾患
ほかにも足がすくむ原因となる神経の病気はいくつかあります。
例えば、下記のようなものがあります。
- 脊髄小脳変性症
小脳や脊髄の神経細胞が減少し、バランスを取るのが難しくなる病気です。 - 多発性硬化症
中枢神経系に炎症や脱髄が起こる自己免疫疾患で、歩行障害の一つとして足がすくむことがあります。 - 正常圧水頭症
脳脊髄液の循環障害により脳室が拡大し、歩行障害などの症状が出ます。
これらの病気は一般の人には少しわかりにくいかもしれません。もし足がすくむ症状が気になるなら、医師に診てもらいましょう。
足がすくんで上手く歩けないときの対処方法
突然、足がすくんで歩けなくなったら怖いですよね。しかし、ちょっとした工夫で症状が改善したり、転ぶリスクを減らしたりすることができます。ここでは、すぐに試せる対処法をご紹介します。
座る・深呼吸するなど一時的にリラックスする
まず何より大切なのは落ち着くことです。焦って無理に歩こうとすると、かえって転んでしまう危険があります。もし、足がすくんで歩きにくいと感じた場合は、下記の内容を実践してみてください。
- 安全な場所を見つけて座る
近くにベンチや椅子があれば、そこに腰かけてみてください。座ることで身体の緊張がほぐれて、足のすくみが解消されることがあります。 - ゆっくり深呼吸してみる
ゆっくり呼吸するだけで、身体も心もリラックスできます。 - 筋肉をほぐしてみる
座ったまま、足首を回したり、つま先を動かしたりしてみてください。筋肉の緊張がほぐれていくのを感じられるはずです。
これらの方法で少し楽になったら、ゆっくりと立ち上がって、一歩ずつ歩き始めてみましょう。焦らずに自分のペースで大丈夫です。
周囲の人にサポートをお願いする
一人で何とかしようとして、かえって危ない目に遭うのは本末転倒なので、周りに人がいるならば、遠慮せずに助けを求めましょう。
まずは、はっきりと状況を説明することが大切です。例えば、「すみません。足がすくんでしまって動けません。少し支えていただけませんか?」といった具合に、具体的に何が起きていて、どのような助けが必要なのかを伝えましょう。
腕を貸してもらうのも効果的です。誰かに支えてもらえれば、バランスを取りやすくなって、歩きやすくなります。
もし近くに休める場所があれば、そこまで案内してもらうのもいいでしょう。ちょっと休憩するだけで、症状が和らぐこともあります。人の助けを借りることで、安全に移動できるだけでなく、気持ちも安らぎます。
支えとなる杖や手すりを活用する
足がすくむ症状で困っているなら、杖や手すりといった補助具を使うと、歩くときの安定感が増して、足がすくむ症状も和らぐことが期待できます。杖は、一本杖や四点杖(四つ足の杖)を使うと、とてもバランスが取りやすくなります。また、手すりも大切な味方です。階段を上り下りするときや、トイレを使うときなど、手すりがあると安心して歩行しやすくなるでしょう。歩行器も有用です。両手でしっかり支えられるので、身体全体が安定して、より安心して歩くことの支えとなるでしょう。
これらの補助具を上手に使いこなせば、転倒のリスクが減り、安心して歩くことができます。
歩幅を小さくしてゆっくり歩き始める
足がすくんでしまったら、焦らずにゆっくりと歩き出すのがコツです。まずはその場で小さく足踏みをしてみましょう。これで身体のリズムが少し戻ってくるはずです。そして次に小さな一歩を踏み出してみてください。うまくいったら、少しずつ歩幅を広げていきます。
ただし無理は禁物です。無理をせず、自分のペースで歩きましょう。このように段階を踏んで歩き始めると、身体が自然と歩き方を思い出してくれるものです。
原因に応じたリハビリや治療を受ける
足がすくむ症状が頻繁に起こったり、長く続いたりする場合は、やはり病院で診てもらうのが一番です。そして、診断がついたらリハビリが始まります。リハビリでは、理学療法士さんと一緒に、バランスを取る練習や歩く練習をします。
また、日常生活の動作を楽にする練習や、家のなかの環境を整えるのも大切です。これは作業療法士さんが手伝ってくれます。そして、場合によっては、薬を使ったり、手術をしたり、特殊な装具を使ったりすることもあります。
こういった治療やリハビリを続けていくと、症状がよくなったり、生活がしやすくなったりします。
日常生活でできる予防策
足がすくむのを防ぐには日頃の心がけが大切です。ここでは誰でも簡単にできる4つの方法をご紹介します。これらを毎日の生活に取り入れれば、足がすくむリスクを減らせる可能性があります。
定期的なストレッチや軽い運動を行う
足の筋力やバランス感覚を保つには適度な運動が欠かせません。できる範囲で次のような運動を続けてみましょう。
- ストレッチ
ふくらはぎ、太もも前面、太もも裏をしっかり伸ばします。 - バランス運動
片足立ちや、つま先立ちに挑戦してみましょう。最初は支えがあるところで取り組まれてみるのがおすすめです。 - 筋力トレーニング
椅子に座る動作を繰り返すスクワットや、かかとの上げ下げをするのがおすすめです。 - ウォーキング
毎日15〜30分くらい、ゆっくりとしたペースで歩いてみましょう。これらの運動は無理のない程度から始めて、少しずつ回数や時間を増やしていくのがコツです。
適切な靴やインソールで足への負担を軽減する
足がすくむのを防ぐには靴選びも大切です。どのような靴を選べばいいか、ポイントをいくつか紹介します。まずはサイズに注意しましょう。つま先に少し余裕があって、かかとがしっかり固定される靴がおすすめです。歩く際の衝撃を和らげてくれるクッション性の高い靴もおすすめです。また、安定性も重要なポイントで、靴底が広くて、横にぶれにくい構造の靴が安心です。重さは軽すぎず重すぎずの、ちょうどいいものを選びましょう。
それからインソールも役立ちます。足の土踏まずをサポートするタイプを使うと、さらに歩きやすくなりますので、靴選びで迷ったら靴屋さんのスタッフに相談してみましょう。
栄養バランスの取れた食事を心がける
足がすくむのを防ぐには食事管理も重要です。筋肉や神経を健康に保つために、次のような栄養素を意識して摂取しましょう。
まずは、タンパク質です。お肉や魚、卵、豆腐に多く含まれています。
また、カルシウムの摂取も忘入りようにしましょう。牛乳やヨーグルト、小魚、ほうれん草などに多く含まれています。また、ビタミンDも取り入れることをおすすめします。少し日光浴をしたり、魚やきのこを食べたりすると摂取することができます。そして、ビタミンB群も玄米や豆、野菜から取り入れましょう。
バランスの取れた食事と健康的な生活習慣が、足のすくみの予防につながります。
十分な睡眠とストレス管理を行う
足がすくむのを防ぐには、睡眠とストレス解消も大切です。
睡眠の取り方としては、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけましょう。寝室は静かで暗く、快適な温度に保つのがポイントです。寝る前にゆっくりお風呂に入ったり、軽い読書をしたりするのも、リラックスに効果的です。
さらに、ストレス解消も心がけましょう。好きな趣味を楽しんだり、深呼吸や瞑想を試してみてください。それから家族や友達とおしゃべりするのも大切です。悩みを抱え込まずに、誰かに話すだけで心が軽くなります。
このような日々の心がけが足がすくむのを防ぐことにもつながります。
医療機関に相談すべきタイミング
足がすくむ症状は実は深刻な病気のサインかもしれません。そのため適切なタイミングで病院に行くことが大切です。
日常生活に支障が出る場合
このような場合は迷わず医療機関を受診しましょう。
- 2週間以上も症状が続いている
- 足がすくむ回数が増えてきた
- 症状がだんだんひどくなってきた
このような症状が見受けられた場合、進行させないためにも早めに病院を受診しましょう。
まとめ
足がすくむ症状は神経系の問題や加齢、心理的要因など、さまざまな原因で起こります。ときにはパーキンソン病や脳卒中の後遺症が関係していることもあります。日頃から予防を心がけつつ、症状が長引いたり日常生活に支障が出たりしたら、早めに病院へ行きましょう。そして、諦めずに前向きに治療に取り組んでいきましょう。
「足がすくむ」の異常で考えられる病気
「足がすくむ」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
足がすくむ症状を放置すると、転倒による怪我のリスクだけでなく、隠れた神経疾患が進行するおそれがあります。日常生活に支障を感じる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。



