「階段を登ると太ももが痛い」原因はご存知ですか?医師が監修!

階段を登るときに太ももに痛みを感じることはありませんか?普段の生活ではあまり意識しない動作でも、階段を登る際には太ももの筋肉に大きな負担がかかります。
この痛みの原因は筋肉疲労や運動不足によるものから、大腿四頭筋炎症、股関節の異常、神経の圧迫など、さまざまな要因が考えられます。
なかでも、運動不足の方が急に階段を利用したり、長時間の移動後に階段を登ったりすると、筋肉が疲労しやすくなり、痛みにつながることがあります。
本記事では、階段を登ると太ももが痛くなる原因と、その対処法について詳しく解説していきます。

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
目次 -INDEX-
太ももが痛む原因

それでは、まず太ももが痛む原因について見ていきましょう。
筋肉痛・肉離れ・骨折などのケガ
突然太ももに痛みを感じた場合、以下のような原因が考えられます。
●筋肉痛
筋肉を大きく伸ばす運動(階段を降りる、スクワット、キックなど)が原因で、大腿四頭筋(太ももの前側)やハムストリングス(裏側)に起こる症状です。
予防には運動前後のストレッチが有用なほか、運動後のアイシングも痛みの緩和に役立ちます。
●肉離れ
急なダッシュやジャンプなど、筋肉に強い負荷がかかる動作で筋肉が部分断裂する怪我です。
痛みとともに張りや腫れを伴い、場合によっては“ブチッ”と音がすることもあります。
放置すると再発しやすく、早期の診察と治療が必要です。
●骨折
太ももの骨折は、転倒やスポーツなどによる強い衝撃、あるいは骨粗鬆症による骨の弱化が原因となります。
痛みと腫れが顕著で、骨粗鬆症の方では軽微な衝撃でも発生する可能性があります。
骨折が疑われる場合、整形外科での精密検査(レントゲンやMRI)が必要です。
病気が隠れている
太ももに痛みを感じるものの、怪我とは異なる場合、病気が原因となっている可能性があります。
例えば坐骨神経痛では、太ももの前や裏にチクチク・ピリピリする痛みが生じることがあります。
この痛みは、腰椎のトラブルや神経の圧迫によるものです。
また、深部静脈血栓症では、太ももの腫れや痛みが見られ、重篤化すると命に関わることもあります。
さらに、筋肉や骨に関わる炎症や腫瘍が原因のケースも考えられます。
太ももの筋肉の役割と種類

痛みが生じることのある太ももですが、どのような構造になっているのでしょうか。
以下で解説します。
太もも前側の大腿四頭筋
大腿四頭筋は、膝関節の伸展と股関節の屈曲に関わる筋肉群で、身体のなかでも体積が大きい複合筋です。
大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋の4つの筋肉で構成され、それぞれ異なる役割を持っています。
大腿直筋は大腿四頭筋の中心となる筋肉で、膝を伸ばすだけでなく股関節を曲げる独自の働きがあります。
腰を曲げたり足を前に上げたりする際に活躍します。
内側広筋は太ももの内側にあり、つま先を外側に開く動作や足を踏ん張る際に重要な筋肉です。
外側広筋は大腿四頭筋のなかで一番大きく、膝を伸ばしたりつま先を内側に寄せたりする際に使われます。
中間広筋は深層に位置し、膝を伸ばす際にほかの筋肉をサポートします。
日常の動作や運動に欠かせない大腿四頭筋は、体の動きを支える中心的な役割を果たします。
太もも裏側のハムストリング
ハムストリングは太ももの裏側に位置する筋肉群で、膝関節の屈曲や股関節の伸展を担います。
日常生活では膝を曲げたり足を引いたりする動作で活躍し、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つで構成されています。
大腿二頭筋は外側に位置し、長頭と短頭で構成されています。
長頭は膝を曲げるだけでなく股関節を伸ばす働きもありますが、短頭は膝の屈曲に特化しています。
半膜様筋は内側に位置し、筋肉の膨らみが膝寄りにあるため膝関節の屈曲で主に使われます。
半腱様筋も内側に位置し、半膜様筋を覆うように走行しています。
短距離走の選手に発達しやすく、特に股関節の伸展に重要です。
これらの筋肉は大腿四頭筋と拮抗しながら体のバランスを保ち、動作をスムーズにする重要な役割を果たします。
太もも内側の内転筋群
内転筋群は、股関節を内側に閉じる動きや足を内側に回す動きに関与し、日常生活では歩行や体の安定に重要な役割を果たします。
恥骨筋、大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋の5つで構成されています。
恥骨筋は内転筋群の最上部に位置し、股関節の内転と屈曲を担います。
この筋肉の柔軟性を保つことで骨盤の安定が向上します。
大内転筋は大きく、股関節を閉じたり伸ばしたりする際に活躍します。
長内転筋は大内転筋の前にあり、股関節の内転を支える筋肉です。
この筋肉が弱まるとO脚の原因となることがあります。
短内転筋は長内転筋を補助し、内転や内旋の動きを担います。
薄筋は股関節と膝関節の動きに関わる二関節筋で、内転に加えて膝を曲げる動作にも重要です。
これらの筋肉は股関節や骨盤の安定性を保つために欠かせない存在です。
階段を登ると太ももが痛む原因

ここまで太ももが痛む原因や筋肉の構造についてご紹介しました。
それでは、どうして階段を登る際に太ももが痛むのでしょうか。
太もも前側の痛みで考えらえる原因
以下では太もも前側の痛みについて解説します。
大腿神経痛(だいたいしんけいつう)
大腿神経痛とは、腰から太ももに伸びる大腿神経が圧迫・損傷されることで、太ももの前側に痛みやしびれ、感覚の鈍さが現れる状態を指します。
症状は電気が走るような痛みやジンジンとしたしびれなど、患者さんによって異なり、安静にしていても治まらない場合があります。
原因として考えられる病気は以下のとおりです。
- 腰椎椎間板ヘルニア:腰の神経が圧迫され、脚の付け根から膝にかけて鋭い痛みを引き起こします。
- 腰部脊柱管狭窄症:歩行中に痛みやしびれが強くなり、休むと軽減するのが特徴です。
- 糖尿病性神経障害:高血糖による神経ダメージが原因で、左右対称に痛みが出ることがあります。
- 妊娠による圧迫:お腹の成長に伴い大腿神経が圧迫され、痛みやしびれが発生することがあります。
大腿四頭筋炎症
大腿四頭筋炎症とは、大腿四頭筋に過度な負荷がかかり、炎症を起こす状態を指します。
なかでも膝上や股関節周辺に痛みが出る傾向があり、運動をすると痛みが増し、安静時には軽減するのが特徴です。
大腿四頭筋は、立つ・しゃがむ・立ち上がる・ジャンプ・踏ん張る・キックといった動作に深く関与するため、スポーツや長時間の歩行で酷使すると炎症が起こりやすくなります。
また、急激な運動やウォーミングアップ不足も炎症を引き起こす要因となります。
太もも裏側の痛みで考えらえる原因
以下では太もも裏側の痛みについて解説します。
坐骨神経痛
坐骨神経痛とは、腰から足先まで伸びる坐骨神経が圧迫されることで発生する痛みやしびれのことを指します。
主にお尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて症状が現れ、ピリピリと電気が走るような痛みや、鋭く刺すような痛み、鈍痛などが特徴です。
原因としては、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などが挙げられます。
軽度であれば消炎鎮痛剤やストレッチ、運動療法で改善が見込めますが、重症化すると歩行困難や排尿障害を引き起こすこともあります。
肉離れ
肉離れとは、筋肉が急激に引き伸ばされたり、収縮したりすることで筋線維が損傷する状態を指します。
なかでもハムストリングス(太ももの裏の筋肉)は肉離れを起こしやすく、ダッシュやストップ、急なターン動作などが原因となります。
また、肉離れは再発しやすいため、リハビリやストレッチをしっかり行うことが大切です。
太もも内側の痛みで考えらえる原因
以下では太ももの内側の痛みについて解説します。
閉鎖神経痛
閉鎖神経痛とは、骨盤の奥を通る閉鎖神経が圧迫され、太ももの内側に痛みやしびれが生じる神経障害です。
例えば、長時間座る習慣がある人や、脚を組む癖がある人に起こりやすい傾向があります。
股関節内転筋群炎症(こかんせつないてんきんぐんえんしょう)
股関節内転筋群炎症とは、股関節の内転筋群に炎症が生じ、太ももの内側に痛みを引き起こす状態を指します。
内転筋は、足を閉じたり、前後のバランスを整えたりする役割を持っており、日常生活の動作やスポーツで頻繁に使われる筋肉です。
太ももの痛みを軽減するストレッチ方法

太ももの痛みが生じた場合、以下のようなストレッチがおすすめです。
大腿四頭筋のストレッチ
大腿四頭筋を柔軟に保つことで、膝や股関節への負担を軽減し、太ももの前側の痛みを和らげます。
以下のストレッチを実践してみましょう。
立位で行うストレッチ
1.壁やイスに手を添え、バランスを崩さないように立つ。
2.片足の膝を曲げ、足首を手で持って後ろに引く。
3.太ももの前側がしっかり伸びるのを感じながら、15〜30秒キープ。
4.反対側も同様に行う。
うつ伏せで行うストレッチ
1.うつ伏せになり、片足の膝を曲げてお尻に近づけるように手で持つ。
2.上半身はリラックスしたまま、太ももの前側を伸ばす。
3.20秒×3セット繰り返す。
無理に反動をつけず、ゆっくりと行うことが大切です。
毎日続けることで柔軟性が向上し、痛みの予防につながります。
ハムストリングのストレッチ
ハムストリングスは、太ももの裏にある筋肉群で、柔軟性を高めることで膝や腰の負担を軽減し、怪我の予防にもつながります。
座って行うストレッチ(長座体前屈)
1.床に座り、両足を前に伸ばす。
2.つま先に向かってゆっくり体を前に倒す。
3.太ももの裏が伸びるのを感じながら15〜30秒キープ。
4.無理せず、自身の届く範囲で行う。
立って行うストレッチ(ヨガ風)
1.立った姿勢で片足を前に出し、膝を軽く曲げる。
2.もう一方の足を後ろに引き、腰を少し落とす。
3.息を吐きながら後ろ足に重心を移し、前足のハムストリングスを伸ばす。
4.各足10回ずつ繰り返す。
どのストレッチも反動をつけずに行い、心地よい範囲でキープすることがポイントです。
内転筋のストレッチ
内転筋(太ももの内側の筋肉)は、股関節の動きをスムーズにし、姿勢の安定にも重要な役割を果たします。
柔軟性を高めることで、太ももの内側の痛みや違和感を軽減できます。
座って行うストレッチ(バタフライストレッチ)
1.床に座り、両足の裏を合わせる。
2.両手で足首を持ち、息を吐きながら上体を前に倒す。
3.無理せず、心地よいところで10秒間キープ。
4.ゆっくりと元の姿勢に戻す。
立って行うストレッチ
1.両足を肩幅よりやや広めに開く。
2.片足の膝を曲げ、反対の足の内ももをしっかり伸ばす。
3.伸ばしている側の足の付け根を手で押さえると効果的。
4.左右各20秒ずつ行う。
これらのストレッチを習慣にすることで、内転筋の柔軟性を向上させ、股関節の可動域を広げることができます。
無理のない範囲で行い、継続することが重要です。
改善しない場合は整形外科を受診しよう

太ももの痛みが続く場合、まずは整形外科を受診するのが基本です。
スポーツ中の怪我や、突然強い痛みが生じた場合は早めの診察が推奨されます。
また、何となく痛みが続いたり、しびれを伴ったりする場合も、適切な診断を受けることが重要です。
編集部まとめ

階段を登る際の太ももの痛みは、筋肉の疲労、炎症、神経の圧迫、関節の異常など、さまざまな原因が考えられます。
軽度の筋肉疲労であれば、ストレッチや休息をとることで回復が見込めますが、痛みが長引いたり、しびれや腫れを伴ったりする場合は、整形外科などでの診察を検討しましょう。



