「夜になると眠れない」原因・対処法はご存知ですか?医師が徹底解説!


監修医師:
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)
目次 -INDEX-
「夜になると眠れない」原因と対処法
夜になると眠れない原因と対処法
通常、「夜に眠れない」症状は、医学的には「不眠症」や「睡眠障害」という病名に分類されます。 そして不眠症や睡眠障害にも、以下の3パターンあることが知られています。- 入眠障害:寝る前の間に時間がかかってしまう状態のこと。いわゆる「寝つきが悪い」という症状になります。
- 中途覚醒:睡眠途中に覚醒状態になってしまい、再び寝るのに時間がかかる状態です。そのため、断眠されている状態になり睡眠の質が悪くなります。
- 早朝覚醒:朝早くに起きてしまう状態であり、連続した睡眠時間が起床時間が早いために短くなってしまいます。
- 入眠前に心身ともにリラックスさせるような「儀式」をする
- 睡眠環境を改善させる(枕や寝具を変える・照明を落とすなど)
ストレスで夜になると眠れない原因と対処法
ストレスによる不眠症になることもあります。ストレスを1日のうちに解消できないでいると、睡眠前にも高い覚醒状態を引き起こし「興奮して寝られない」といったことが起こるのです。 また、ささいなストレスが原因ならばともかく、親しい人との死別や今後の将来に不都合が生じるような場合などは、ずっと長引いてしまうこともあります。 すぐに解消できる方法としては- リラクゼーション技術(深呼吸、筋肉の弛緩)
- マインドフルネスなどの瞑想や認知行動療法
夜になると眠れず、昼になると眠い原因と対処法
中には「夜になると眠れず、昼になると眠い」という人もいるでしょう。もちろん不眠症で夜寝られなかった人が昼に眠くなるということもありますが、「遅延型睡眠相症候群(DSPS)」という疾患かもしれません。 遅延型睡眠相症候群は特に若者に多く見られ、普通の人が眠る時間に眠れず、朝もなかなか起きられない状態になります。夜遅くになっても眠くならず、朝方にやっと眠りにつくことが一般的ですね。 いずれにせよ体内時計が著しくぐずれてしまっている状態ともいえます。遺伝的要因や、光の暴露不足も要因の1つでしょう。 そのため、すぐにできる処置としては生活リズムを徐々に早める「クロノセラピー」や朝の明るい光を浴びることで体内時計をリセットする「光療法」、メラトニンの服用が行われます。 通常、遅延型睡眠相症候群の治療は一般的に睡眠クリニックや精神科で行われます。すぐに病院へ行くべき「夜になると眠れない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。以下の症状の場合は、精神科または睡眠専門クリニックへ
- 長期間にわたり夜間に睡眠を取ることができない場合
- 日中の活動に著しい支障をきたしている場合
- 睡眠不足による重度の精神的、身体的症状が現れている場合(動悸や息切れなど)
- 睡眠不足の根底に精神疾患があると考えられる場合(双極性障害やうつ病など)
「夜になると眠れない」症状の特徴的な病気・疾患
うつ病
うつ病とは、気分が落ち込み、興味や喜びを感じる能力が低下する病気です。原因は多岐にわたりますが、遺伝的要因に加えて生活環境、社会的ストレスなどが複雑に絡み合って発症します。 うつ病に伴う不眠症の場合、単なる睡眠薬だけでは効果がありません。 抗うつ薬や認知行動療法などのうつ病に特化した治療が必要となります。 うつ病の診断と治療は、通常、精神科や心療内科で行われます。- 日常生活に支障をきたすほどの気分が落ち込む
- 自殺をしたくなる時がある
- 3週間以上無気力が続く何もしたくない
睡眠障害
睡眠障害とは、睡眠に関連したいろいろな病気の総称。大きく分類すると、不眠症・過眠症・睡眠時随伴症などがあります。 睡眠障害は色々な疾患が混ざっているので、治療法もさまざまなものがあります。 通常、睡眠障害の治療には、行動療法、睡眠衛生の改善、薬物療法を組み合わせて行われます。 睡眠障害は通常、睡眠専門クリニックや精神科だけでなく、一般的な内科でも治療されることがあります。 睡眠障害が一過性の場合は自己解決できることも多いですが、- 日中の過度の眠気が起こる
- 夜間に何回も目覚める
- 日常生活に支障をきたしている
不眠症
不眠症は、精神や神経による病気のために、自力で眠りたいのに眠れず、日中の活動に影響が続く状態をいいます。 不眠症の治療も背景となる疾患を見つけることが大切。そのため、睡眠薬による対処療法だけでなく、カウンセリングや行動療法、背景となる疾患としての治療も重要になってきます。 不眠症の診断と治療は、精神科または睡眠専門クリニックで行われることが多いです。必要に応じて、内科で基礎疾患の有無を調べることもあります。 不眠症が長引くと、日中のパフォーマンスの低下にも繋がります。自力で解決できそうになければ医療機関に相談しましょう。不安症
不安症とは、過剰な心配や恐怖により、日常生活に著しい影響を及ぼす精神疾患の一つです。 特にストレスが多い環境下で発症することが多いですね。急に漠然とした不安に襲われたり、不安なことを考えると夜寝られなくなったりします。 不安症の治療には認知行動療法が効果的で、ベンゾジアゼピン系を中心とした脳の興奮を抑える薬物と組み合わせて行われます。 不安症の診断と治療のために、まず精神科を受診するようにしましょう。また、不安症の根本原因を解決するために心理士によるカウンセリングが行われたりもします。 不安症の症状が日常生活に支障を来たす場合や、自力で改善が見られない場合は、精神科専門医の診断を受けるようにしましょう。「夜になると眠れない」症状の正しい対処法は?
「夜になると眠れない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「夜になると眠れない」症状についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
夜になると眠れない時は、無理に寝ない方がいいですか?
秋谷 進(医師)
夜に眠れない時に無理に寝ようとすると、「寝なきゃいけない」とかえって焦ってしまい、ストレスや不安を増大させるきっかけになりかねません。 そこで、もし20分から30分経っても眠れない場合は、一度ベッドを離れてリラックスできる活動に切り替えてみましょう。例えば、暗い環境で読書をする、穏やかな音楽を聴く、または軽いストレッチや深呼吸のエクササイズを行うとよいですね。 また、ベッドを使用するのは睡眠のみに限定し、寝る以外の活動(テレビ視聴、スマートフォンの使用など)は避けるようにしましょう。
寝る前にやると眠れなくなることについて教えてください。
秋谷 進(医師)
次のことは避けるようにしてみてください。 ・カフェインやニコチンの摂取:コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなどカフェインを含む食品や飲料は、刺激物であり覚醒効果があります。寝る数時間前にこれらの摂取を避けることが重要です。同様に、たばこのニコチンも刺激物であり、特に就寝前の喫煙は避けるようにしてください。 ・アルコールの摂取:アルコールは初期には睡眠を促進するかのように感じられますが、実際には睡眠のサイクルを乱し、夜間に覚醒しやすくなります。 ・重い食事:寝る直前の重い食事は消化に時間がかかり、胃腸が活発に動くため、体が休息状態に入るのを妨げます。可能な限り、就寝の2〜3時間前には夕食を済ませるようにしましょう。 ・過度な運動:適度な運動は睡眠の質を向上させることが知られていますが、就寝直前の激しい運動は体温を上昇させ、神経系を刺激し、眠りにくくなることがあります。寝る1〜2時間前には運動を避け、リラックスできる活動に切り替えましょう。 ・電子機器の使用:スマートフォン、タブレット、コンピュータの画面から発せられるブルーライトは、体内のメラトニンの生成を抑制し、睡眠を妨げることが報告されています。就寝前1時間はデジタルデバイスの使用を控えましょう