「朝起きれない」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
朝起きれない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医師)
「朝起きれない」症状で考えられる病気と対処法
誰もが朝起きられないという悩みを抱えたことがあるかと思います。そのため、「朝起きられない」症状は、病気ではなく本人の甘え・怠けと捉えられることも珍しくありません。しかし、背景には病気が隠れていることもしばしば見られます。どのような病気が考えられるか、以下で解説していきます。
朝起きれない症状とストレスで考えられる主な影響と対処法
ストレスがかかって朝起きられない状態が続く場合、自律神経失調症の可能性が考えられます。自律神経失調症とはその名の通り、自律神経の働きがうまくいかない状態です。そもそも自律神経とは交感神経と副交感神経の2種類に分かれます。私たちの体は、この2つの神経のバランスによって、運動時に心臓の鼓動を早くして筋肉に大量の血液を送る、食後に胃腸の働きを活発にする、ホルモンの分泌をコントロールするなど、様々な役割を無意識に行なっています。これがうまくいかないために、朝起きられない症状や、めまい、動悸、息切れ、倦怠感や食欲不振などの症状が出現します。
すぐにできる対応は、いったんしっかりと休息をとり、その上で規則正しい生活を心がけること、またストレスを除去することです。
それでも症状が改善しない場合は、一度医療機関の受診を勧めます。受診すべき診療科は一般内科や心療内科です。
体がだるく朝起きれない症状で考えられる原因と治し方
起床時に何とも言えない体のだるさ、重たさがあり起きられない、活動できない状態のことを指します。こういった場合、うつ病を発症している可能性があります。他には抑うつ気分や興味・喜びの喪失、短期間での体重減少・増加、食欲減退・増加、疲労感、気力減退、思考力や集中力の減退などが見られます。重症例では自殺念慮(自殺したいという思い)、自殺企図(自殺を計画する、実行しようとする)が見られる場合もあります。
ご自身で何だか起きられないと気づいても、うつ病を発症している場合は、「何も行動できない、考えられない」状態であることが多く、周囲の方が気づき対応していくことが重要です。特に自殺をほのめかす発言などが見られた場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
受診すべき診療科は精神科、心療内科です。医師のカウンセリングなどを経て診断され、治療は抗うつ薬などの内服が行われます。
大人の朝起きれない症状で考えられる主な原因と対処法
大人が朝起きられない症状を指します。こういった場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられます。睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り睡眠中に無呼吸状態が見られる疾患です。1日の中で最も体を回復させる睡眠時に、低酸素状態になってしまうため、疲れはなかなか取れず、起床時や日中にも眠気や疲労感を引き起こす事態を招きます。原因は、肥満やアルコール摂取による舌根沈下(舌の根元の部分が垂れ下がり、空気の通り道を塞ぐこと)であることが多いです。
睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸状態が続くため、心血管系に大きな負担をかけます。結果として高血圧や心不全のリスクを上昇させ、最終的な死亡リスクも上昇する恐ろしい病気です。日中に眠気を感じる、朝起きられない、疲れが取れない、または家族から睡眠中のいびき、無呼吸を指摘された場合は、一度医療機関での精査を勧めます。
受診すべき科は呼吸器内科です。睡眠時ポリソムノグラフィーという、寝ている間にどれくらいの無呼吸や低酸素状態があるかを見る検査を行うのが一般的です。緊急性はないので日中に受診しましょう。
中学生や高校生の朝起きれない症状で考えられる主な原因と対処法
中学生や高校生で朝起きられない症状を指します。こういった症状の場合、起立性調節障害の可能性が考えられます。詳しくは後述しますが、一般的にこの病気は寝ている状態、座っている状態から起き上がる時に脳血流が低下してしまうことで生じます。
中学生や高校生といった思春期は、ホルモンバランスの変化や精神的、社会的なストレスの多い時期です。このストレスによって自律神経の働きがうまくいかず、起床時に調節障害を引き起こすことが多く見られます。
対処法としては、規則正しい生活とストレスを溜めないことを意識して、自律神経の働きを正常に戻すことが重要です。朝起きられないために学業に支障をきたすようであれば、一度病院受診を検討しましょう。受診すべき診療科は小児科や心療内科です。緊急性はないので日中に受診してください。
すぐに病院へ行くべき「朝起きれない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
何も考えられない、自殺念慮が感じられた場合は、精神科へ
先述しましたが、何も考えられない・行動ができないといった症状に加えて、自殺したいという願望が生じていると、重度のうつ病の可能性が高いです。ご自身だけでなく周囲の方が気づいた場合も、すぐに精神科を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「朝起きれない」時のセルフチェック法
- ・朝起きられない以外に倦怠感がある場合
- ・朝起きられない以外にめまい症状がある場合
- ・朝起きられない以外に抑うつ症状がある場合
「朝起きれない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「朝起きれない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
起立性調節障害
起立性調節障害とは、寝ている状態や座っている状態から急に立ち上がることで、脳への血流が低下し、めまいや倦怠感、失神(意識を失うこと)を引き起こす病気です。健康な人でも、過度な緊張状態が長く続くと、これに身体が反応して、副交感神経が過剰に緊張してしまうために起こることがあります。他には加齢に伴って体勢が変化した時の血圧の調整がうまく出来なくなることも原因になります。
対処法はストレス要因を出来るだけ解消し、十分な休養を取ること、また体を起こす際などゆっくりと十分な時間をかけて動くことです。一度経験しただけでは病院受診の必要はありませんが、頻繁に繰り返す場合は一般内科や心療内科の受診を検討しましょう。
睡眠障害
睡眠障害とは、何らかの原因で、睡眠の問題がある状態のことを指します。睡眠障害は大きく7つの系統に分類されます。
- ① 不眠症
- ② 睡眠関連呼吸障害群(閉塞性睡眠時無呼吸症候群など)
- ③ 中枢性過眠症群(ナルコレプシー、特発性過眠症など)
- ④ 概日リズム睡眠-覚醒障害群(睡眠相後退型、 交代勤務型など)
- ⑤ 睡眠時随伴症群(夢中遊行、レム睡眠行動障害など)
- ⑥ 睡眠関連運動障害群 (レストレスレッグス症候群など)
- ⑦ その他の睡眠障害
と分類され、それぞれに応じた対応が必要になります。治療法も様々であるため専門医を受診することをお勧めします。
受診すべき診療科は精神科や心療内科です。
概日リズム障害
概日リズム障害とは、睡眠と覚醒のリズムが障害された状態のことを指します。端的にいうと、昼夜逆転してしまっている状態です。睡眠の質自体は問題ないことが多く、いったん寝てしまえば長時間の睡眠になることが多いです。入眠が遅いために結果として朝起きれない状態に繋がります。
原因は、この睡眠・覚醒のリズムを形成する体内のホルモンの乱れです。治療は、体内時計の位相調節のため、高照度光療法やメラトニン、ビタミンB12などの投与が行われます。緊急性はありませんが、適切な対応が必要な疾患です。ご自身での生活習慣の改善で良くなることもありますが、なかなか改善しない場合は医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は精神科や心療内科です。
「朝起きれない」ときの正しい対処法は?
市販薬には、体の中のホルモンバランスを整えるお薬などがあり、これらは先述の概日リズム障害には有効な場合があります。また生活習慣の改善によって、自律神経失調症や起立性調節障害、概日リズム障害などは解消される場合があります。具体的には以下の方法を試してみましょう。
- ・日中に運動習慣を取り入れ、十分に身体を疲労させる
- ・入浴に時間をかけ、副交感神経を優位にする
- ・睡眠の1時間前に激しい運動や、スマートホン、タブレットなどのブルーライトを見ない
- ・ストレッチなどリラックス効果のある行動をとる
- ・寝酒はしない
これらの行動は特にお体へのリスクなく始められる行動ですので、ぜひ試してみてください。
「朝起きれない」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「朝起きれない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
夜ぐっすり眠れず朝起きれません。低血圧が原因でしょうか?
中川 龍太郎(医師)
「低血圧で朝起きられないこと」と「夜ぐっすり眠れないから朝が起きられない」ことは別の問題です。前者は体質の問題もあり改善が難しい場合もありますが、後者は生活習慣の改善によって解決できる場合も多いです。
朝起きれず二度寝してしまうのですが病院に行くべきでしょうか。
中川 龍太郎(医師)
二度寝してしまうというだけでは受診の必要はありません。その結果、出勤・通学が出来ないなど、日常生活や社会活動に支障をきたすのであれば、受診してみてください。
目覚ましが聞こえず朝起きれないのですが病気なのでしょうか。
中川 龍太郎(医師)
それだけで病気というわけではありません。一般的に睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の二種類があり、周期的に繰り返しています。これらは90分周期でレム→ノンレムと繰り返しており、ノンレム睡眠が終わると起きやすいとされています。意図的に睡眠時間を90分の倍数(3時間、4時間半、6時間、7時間半など)にしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
これまでご紹介した病気の中で、特に重要な病気は、「睡眠時無呼吸症候群」「うつ病」です。この2つはどちらも命に直結する病気で、しかも自分自身では気付きにくいためです。つまり早期発見のためには、周囲の方々の気付きが非常に重要になってきます。もしあなたの親しい方が、これまでご紹介した症状に引っ掛かるようでしたら、ぜひ一度病院に相談を促していただけますと幸いです。もちろんご自身で気づかれた場合は、すぐに受診いただくようお願いします。
「朝起きれない」で考えられる病気と特徴
「朝起きれない」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器系の病気
朝起きられない症状の原因は、呼吸器の問題〜精神的な問題まで様々です。生活に支障をきたしている場合は一度病院受診を検討してください。
「朝起きれない」と関連のある症状
「朝起きれない」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
・標準的神経治療:自律神経症候に対する治療(日本神経治療学会)