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「男性不妊」とは?検査・治療・原因についても解説!【医師監修】

男性不妊

男性不妊をご存知でしょうか?

不妊症といわれると女性の問題だと捉えられがちですが、実際は世界の不妊症の多くが男性側の問題でもあるのです。

実際に2017年のWHO(世界保健機関)の調査では、女性側に原因があるのが65%・男性側に原因があるのが48%・男女両方に原因があるのが24%という結果でした。

このように、不妊症の原因のおよそ半分が男性側にあることがわかっています。

しかし、現段階では自分に原因はないと考える男性が多く男性不妊が知られていないのが現状です。

そのためこの記事では、男性不妊の種類・症状・原因・治療方法・保険適用されるかどうかなどについて解説します。

この男性不妊を多くの方に知ってもらい、男性の行動変化のきっかけになれば幸いです。

平澤 陽介

監修医師
平澤 陽介(東京医科大学病院)

プロフィールをもっと見る
2008年3月 北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師

男性不妊とは

悩む
妊娠が成立しない期間が1年以上続き、その原因が男性側にあると男性不妊といわれているのです。まず、健康に問題のない男女が避妊をせずに性交渉をして、一定期間を過ぎても妊娠しない状態が続くと不妊症の疑いが出てきます。不妊症の疑いがある場合にクリニックに受診し夫婦で検査をして、不妊症の原因を調べます。検査の結果により、不妊の原因が男性側にある場合を男性不妊というのです。
では、この一定期間とはどのくらいのことをいうのでしょうか。日本産婦人科医会では「不妊症を判断する期間は不妊期間が1〜3年と諸説あり」とされています。しかし、WHO(世界保健機構)では「1年以上の不妊期間を持つもの」と定義されているのです。日本では、1年以上妊娠しない場合に不妊症と診断し、年齢が高い場合にはより早期に検査と治療を開始するという考え方が一般的になっています。

男性不妊の種類と症状

医者
ここまでの解説で、妊娠が成立しない期間が1年以上続き、その原因が男性側にあると男性不妊だとわかりました。では、どのような男性不妊の種類と症状があるのでしょうか。
男性不妊の種類は基本的に造精機能障害性機能障害精路通過障害の3つです。この3つの種類とそれぞれの症状について解説します。

造精機能障害

何らかの影響によって作られる精子の数や動きに問題があったり、奇形率が上がることによって、妊娠できなかったりするものを造精機能障害といいます。精子は男性器の中の精巣のなかで生成され、精巣上体や陰茎を通って射精されるまでの間に運動能力をつけていきます。
しかし、精子が作られてから射精されるまでの間に何らかの問題があると完全な精子になれません。この造精機能障害の原因は精巣の近くにある血管が膨らんでしまう精索静脈瘤・加齢・ストレス・ホルモンの影響・遺伝子によるもの・持病などといわれていますが、多くのケースで不明です。造精機能障害の治療方法では、漢方薬・ビタミン剤・抗酸化剤が使われています。 また、意外と精索静脈瘤が原因のこともあり、専門である泌尿器科を受診して、エコー検査で精索静脈瘤の有無を確認してみてください。もし精索静脈瘤が原因であるならば、手術で直すことにより不妊も治癒できる可能性があります。

性機能障害

この性機能障害勃起障害(ED)によるものと、射精障害の2つに分けられます。十分な勃起ができず勃起不全になってしまうEDの原因は糖尿病・動脈硬化などがありますが、多くの場合は性行為にプレッシャーを感じてしまう心因性だといわれています。次に射精障害には、精液が膀胱に逆流してしまう逆行性射精や精液が出ない無精液症の場合があるのです。
これらの原因は、精神的なもの・神経障害・薬剤によるものなど様々です。このような性機能障害に対する治療には、抗うつ薬・PDE-5阻害薬・器具を使ったマスターベーションによって射精を促す方法があります。また、これらの治療が無効な場合や希望しない場合は他の治療方法として人工授精を行うこともあります。

精路通過障害

精子が正常に作られているのに、通り道が塞がれることによって射精された精液の中に精子が出てこない病気を閉塞性無精子症といいます。
精子が作られてから射精されるまでに、精巣上体・精管・射精菅などを通って尿道を通過しますが、その通り道の途中である精管が欠損していたり、鼠径ヘルニアによって道が塞がれたりすると精子が精液に出てこられないのです。こういった精路通過障害の場合には、閉塞した精子の通り道を再建すること・精子を医師が採取して顕微授精を行うことによって妊娠の成立が期待できます。

男性不妊の原因

落ち込む
ここまでの説明で男性不妊の種類には造精機能障害・性機能障害・精路通過障害の3つがあり、それぞれに原因や治療法があることがわかりました。ここからは、男性不妊の原因について解説します。
未だに男性不妊に関して明確な原因はわからないことも多いです。しかし、その中で男性不妊に関係があるといわれているのが遺伝的要因過度なストレス過度なアルコール摂取です。これら3つの原因について詳しく解説します。

遺伝的要因

遺伝的な要因によって男性不妊になる場合があるのです。男性不妊と遺伝的要因の関係は科学的に証明されているので簡単に説明します。精子中のDNAを構成するタンパク質にプロタミンというものがあります。男性不妊の方の精子を調べてみると、正常な方に比べてプロタミンの減少・欠損・突然変異がみられる場合が多いのです。
また、遺伝による不妊症の場合はその子供も不妊症に悩まされるケースも考えられます。このように男性不妊の原因には遺伝的な要因が絡んでいる場合があり、その子供も親の不妊症の影響を受ける可能性があるのです。

ストレス

仕事や家庭での過度なストレス・肥満・喫煙・睡眠不足・不規則な食生活なども男性不妊の原因になります。また、日常のストレス以外にも性行為のプレッシャーによって勃起不全射精不全が起こります。
このような性行為へのプレッシャーによって、男性不妊になってしまう場合もあるのです。そのため、男性不妊の疑いがある方は日常的に過度なストレスがないか、規則正しい生活が送れているかなどを確認しましょう。

アルコール

男性不妊の原因の1つにアルコールの過剰摂取があります。なぜなら、男性がアルコールを飲みすぎてしまうと、男性ホルモンであるテストステロンの産生を妨げられます。そうなると、精巣が萎縮してしまいます。また、アルコールを摂りすぎてしまうと、脳の視床下部にあるテストステロンを産生するための細胞も減少させてしまうのです。すると、アルコールを摂取していない時でもテストステロンが作られにくくなってしまいます。
このように、アルコールの過剰摂取によって男性不妊が引き起こされることがあります。また、アルコール摂取によってEDが引き起こされ、結果的に不妊になるケースもあります。つまり、男性不妊の疑いがある方は、飲酒の習慣を見直す必要があるでしょう。

男性不妊の検査方法

検査
男性不妊の検査は精液検査泌尿器科的検査の2つに分けられます。精液検査で確認するのは以下の通りです。

  • 精子の量・数
  • 奇形がないか
  • 運動の質
  • 精液の濃さ
  • 白血球の数
  • 感染症がないか

精液検査の流れとしては、2〜7日間の禁欲生活をした後、家庭や病院でマスターベーションによって射精し精液を採取します。この精液採取は採取後にすぐに検査を行えると精度が高まるため、病院での採取が望ましい場合が多いです。
一方の泌尿器科的検査は問診やエコーなどを使って男性器や内分泌系の問題がないかを確認するものです。この泌尿器科的検査の流れは以下の通りになります。

  • 診察
  • 超音波(エコー)検査
  • 採血による内分泌検査
  • 採血による遺伝子検査
  • その他の特殊な検査(精子の生険・勃起力の検査・精嚢や射精管のMRI検査など)

泌尿器科的検査の診察では、睾丸・精巣の大きさの測定や精索静脈瘤の有無を触診で確認します。より詳しく観察するためにエコーを使った検査や採血で内分泌機能・遺伝子検査を行っていくのです。その他の検査は、採血まで行って原因が不明の場合や症状に合わせて行います。

男性不妊の治療方法

薬
男性不妊の治療法は、原因に応じて薬物療法や外科的処置が行われます。主な治療法は下記の5つです。

  • 生活習慣の改善
  • サプリメントや漢やホルモン剤などの投与
  • 人工授精
  • 精索静脈瘤手術
  • 精路再建手術

男性不妊の場合、始めは生活習慣の見直しからスタートする場合が多く、改善しない場合は必要に応じた服用や手術を行います。
精索静脈瘤手術は非常に大変な手術に思われがちですが、実際は検査も手術も比較的短時間で行え、手術も日帰りが可能なのです。このように、男性不妊の治療は症状・原因に合わせて選択されています。

治療に保険は適用される?

保険
不妊治療に関しては保険適用されるもの・されないもの・国からの助成があるものに分けられます。保険適用されるものは、男性なら精管閉塞や性機能の異常といった症状の治療で女性なら、子宮奇形・感染症・ホルモン異常等の治療です。このような個々人の症状に対する治療は保険適用と定められています。
しかし、夫婦間で行われる人工授精などは保険適用になりません。この保険適用外の治療の中で国の助成を受けられる治療が、体外受精・顕微授精・男性に対する精子回収などの治療です。このように、不妊治療には保険適用されるもの・されないもの・国からの助成があるものの3種類があるので、ご自身に合った方法が保険適用されるのかどうか確認しながら治療を進めましょう。

すぐに病院に行った方が良い「男性不妊」症状は?

緊急性はありませんが、妊娠を望んでおり、避妊をしないで性行為をしているにも関わらず一定期間妊娠しない場合は、早めに受診を検討しましょう。

行くならどの診療科が良い?

主な診療科目は、泌尿器科、産婦人科です。

問診、診察、精液検査、超音波検査、血液検査(内分泌検査、染色体検査など)、必要に応じてMRI検査などが実施される可能性があります。

病院を受診する際の注意点は?

持病があり内服・外用している薬がある場合は医師に申告しましょう。

治療する場合の費用や注意事項は?

保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。

まとめ

カップル

ここまで男性不妊の種類と症状・原因・治療方法・保険は適用されるのかについて解説してきました。

男性不妊は誰にでも起こり得るもので、適切に対処することによって改善できたり、子供を授かるチャンスがあったりすることがわかりました。

また、そのための治療も保険適用や国からの助成があるものが多いので、費用の面でも以前に比べたら負担が少なくなっています。

そのため、男性不妊の疑いのある方は是非一度不妊治療を行っているクリニックに受診して相談してみることをおすすめします。

男性不妊症状の病気

関連する病気

  • 無精子症
  • 乏精子症
  • 精子無力症
  • 精子不動症
  • 精子奇形症
  • 閉塞性無精子症
  • 先天性精管欠損
  • 膿精液症
  • 無精液症
  • 逆行性射精
  • 勃起不全(ED)
  • 膣内射精障害
  • 精巣炎
  • 精巣上体炎