「男性不妊」とは?検査・治療・原因についても解説!【医師監修】

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監修医師:
平澤 陽介(東京医科大学病院)
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2008年3月 北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師
男性不妊とは

では、この一定期間とはどのくらいのことをいうのでしょうか。日本産婦人科医会では「不妊症を判断する期間は不妊期間が1〜3年と諸説あり」とされています。しかし、WHO(世界保健機構)では「1年以上の不妊期間を持つもの」と定義されているのです。日本では、1年以上妊娠しない場合に不妊症と診断し、年齢が高い場合にはより早期に検査と治療を開始するという考え方が一般的になっています。
男性不妊の種類と症状

男性不妊の種類は基本的に造精機能障害・性機能障害・精路通過障害の3つです。この3つの種類とそれぞれの症状について解説します。
造精機能障害
何らかの影響によって作られる精子の数や動きに問題があったり、奇形率が上がることによって、妊娠できなかったりするものを造精機能障害といいます。精子は男性器の中の精巣のなかで生成され、精巣上体や陰茎を通って射精されるまでの間に運動能力をつけていきます。しかし、精子が作られてから射精されるまでの間に何らかの問題があると完全な精子になれません。この造精機能障害の原因は精巣の近くにある血管が膨らんでしまう精索静脈瘤・加齢・ストレス・ホルモンの影響・遺伝子によるもの・持病などといわれていますが、多くのケースで不明です。造精機能障害の治療方法では、漢方薬・ビタミン剤・抗酸化剤が使われています。 また、意外と精索静脈瘤が原因のこともあり、専門である泌尿器科を受診して、エコー検査で精索静脈瘤の有無を確認してみてください。もし精索静脈瘤が原因であるならば、手術で直すことにより不妊も治癒できる可能性があります。
性機能障害
この性機能障害は勃起障害(ED)によるものと、射精障害の2つに分けられます。十分な勃起ができず勃起不全になってしまうEDの原因は糖尿病・動脈硬化などがありますが、多くの場合は性行為にプレッシャーを感じてしまう心因性だといわれています。次に射精障害には、精液が膀胱に逆流してしまう逆行性射精や精液が出ない無精液症の場合があるのです。これらの原因は、精神的なもの・神経障害・薬剤によるものなど様々です。このような性機能障害に対する治療には、抗うつ薬・PDE-5阻害薬・器具を使ったマスターベーションによって射精を促す方法があります。また、これらの治療が無効な場合や希望しない場合は他の治療方法として人工授精を行うこともあります。
精路通過障害
精子が正常に作られているのに、通り道が塞がれることによって射精された精液の中に精子が出てこない病気を閉塞性無精子症といいます。精子が作られてから射精されるまでに、精巣上体・精管・射精菅などを通って尿道を通過しますが、その通り道の途中である精管が欠損していたり、鼠径ヘルニアによって道が塞がれたりすると精子が精液に出てこられないのです。こういった精路通過障害の場合には、閉塞した精子の通り道を再建すること・精子を医師が採取して顕微授精を行うことによって妊娠の成立が期待できます。
男性不妊の原因

未だに男性不妊に関して明確な原因はわからないことも多いです。しかし、その中で男性不妊に関係があるといわれているのが遺伝的要因・過度なストレス・過度なアルコール摂取です。これら3つの原因について詳しく解説します。
遺伝的要因
遺伝的な要因によって男性不妊になる場合があるのです。男性不妊と遺伝的要因の関係は科学的に証明されているので簡単に説明します。精子中のDNAを構成するタンパク質にプロタミンというものがあります。男性不妊の方の精子を調べてみると、正常な方に比べてプロタミンの減少・欠損・突然変異がみられる場合が多いのです。また、遺伝による不妊症の場合はその子供も不妊症に悩まされるケースも考えられます。このように男性不妊の原因には遺伝的な要因が絡んでいる場合があり、その子供も親の不妊症の影響を受ける可能性があるのです。
ストレス
仕事や家庭での過度なストレス・肥満・喫煙・睡眠不足・不規則な食生活なども男性不妊の原因になります。また、日常のストレス以外にも性行為のプレッシャーによって勃起不全や射精不全が起こります。このような性行為へのプレッシャーによって、男性不妊になってしまう場合もあるのです。そのため、男性不妊の疑いがある方は日常的に過度なストレスがないか、規則正しい生活が送れているかなどを確認しましょう。
アルコール
男性不妊の原因の1つにアルコールの過剰摂取があります。なぜなら、男性がアルコールを飲みすぎてしまうと、男性ホルモンであるテストステロンの産生を妨げられます。そうなると、精巣が萎縮してしまいます。また、アルコールを摂りすぎてしまうと、脳の視床下部にあるテストステロンを産生するための細胞も減少させてしまうのです。すると、アルコールを摂取していない時でもテストステロンが作られにくくなってしまいます。このように、アルコールの過剰摂取によって男性不妊が引き起こされることがあります。また、アルコール摂取によってEDが引き起こされ、結果的に不妊になるケースもあります。つまり、男性不妊の疑いがある方は、飲酒の習慣を見直す必要があるでしょう。
男性不妊の検査方法

- 精子の量・数
- 奇形がないか
- 運動の質
- 精液の濃さ
- 白血球の数
- 感染症がないか
一方の泌尿器科的検査は問診やエコーなどを使って男性器や内分泌系の問題がないかを確認するものです。この泌尿器科的検査の流れは以下の通りになります。
- 診察
- 超音波(エコー)検査
- 採血による内分泌検査
- 採血による遺伝子検査
- その他の特殊な検査(精子の生険・勃起力の検査・精嚢や射精管のMRI検査など)
男性不妊の治療方法

- 生活習慣の改善
- サプリメントや漢やホルモン剤などの投与
- 人工授精
- 精索静脈瘤手術
- 精路再建手術
精索静脈瘤手術は非常に大変な手術に思われがちですが、実際は検査も手術も比較的短時間で行え、手術も日帰りが可能なのです。このように、男性不妊の治療は症状・原因に合わせて選択されています。
治療に保険は適用される?

しかし、夫婦間で行われる人工授精などは保険適用になりません。この保険適用外の治療の中で国の助成を受けられる治療が、体外受精・顕微授精・男性に対する精子回収などの治療です。このように、不妊治療には保険適用されるもの・されないもの・国からの助成があるものの3種類があるので、ご自身に合った方法が保険適用されるのかどうか確認しながら治療を進めましょう。
すぐに病院に行った方が良い「男性不妊」症状は?
緊急性はありませんが、妊娠を望んでおり、避妊をしないで性行為をしているにも関わらず一定期間妊娠しない場合は、早めに受診を検討しましょう。行くならどの診療科が良い?
主な診療科目は、泌尿器科、産婦人科です。 問診、診察、精液検査、超音波検査、血液検査(内分泌検査、染色体検査など)、必要に応じてMRI検査などが実施される可能性があります。病院を受診する際の注意点は?
持病があり内服・外用している薬がある場合は医師に申告しましょう。治療する場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。まとめ
