目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 症状から調べる
  3. 「イントネーションがおかしい」のは”脳の病気”?構音障害の症状と治療を医師が解説!

「イントネーションがおかしい」のは”脳の病気”?構音障害の症状と治療を医師が解説!

「イントネーションがおかしい」のは”脳の病気”?構音障害の症状と治療を医師が解説!

話し方のイントネーションがおかしいと感じることはありませんか。人によっては、リズムや抑揚が不自然になり、伝わりにくい話し方になってしまうことがあります。このようなイントネーションの違和感に気が付くと、「もしかして病気のせい?」と不安になる方もいるでしょう。
イントネーションの異常は単なる個性ではなく、脳や神経の異常・発達障害・構音障害・失語症などが原因で起こることもあります。本記事では、イントネーションの異常が現れる可能性のある病気やその原因、治療方法について詳しく解説します。
当事者の方はもちろん、周囲の方にとっても役立つ内容となっていますので、参考にしていただけると幸いです。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

プロフィールをもっと見る
2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

イントネーションがおかしいのは病気のせい?

イントネーションは、話し方のリズムや抑揚を作る重要な要素です。地域によるアクセントの違いは自然なものですが、意図せず単調になったり、不規則な抑揚になったりする場合は脳や神経の病気が関係している可能性があります。イントネーションの異常は、以下の病気で見られることがあります。

  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など):脳の損傷により発話のリズムが崩れる
  • パーキンソン病:声が小さくなり、単調な話し方になる
  • 小脳障害(脊髄小脳変性症・小脳梗塞など):言葉のリズムが不規則になりぎこちない話し方になる
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS):発音が不明瞭になりイントネーションの調整が難しくなる
  • 進行性球麻痺・多系統萎縮症:声のトーンやリズムが変化しやすい
  • ハンチントン病・ウィルソン病:発話のコントロールが難しくなる
  • ギランバレー症候群・重症筋無力症:筋力の低下により発話が困難になり抑揚がなくなる
  • 難聴:自分の声の抑揚を調整しにくくなる

イントネーションに異常があると、話し方に違和感を覚えやすく、意思疎通が難しくなることもあります。 原因を理解し、適切な対応を取ることで、発話のしやすさを改善できる場合があります。当事者や周囲の方が適切な理解を持つことも、コミュニケーションの助けになるでしょう。

構音障害の原因

構音障害の原因はさまざまで、先天的な要因と後天的な要因に分けられます。 先天的な要因としては口蓋裂や舌の形態異常などがあり、後天的な要因には脳血管障害(脳梗塞・脳出血)・神経疾患(パーキンソン病・ALSなど)・心理的要因などが含まれます。原因によって構音障害の種類や症状の現れ方が異なるため、それぞれの特徴を理解することが重要です。以下で、構音障害の主な原因について詳しく解説します。

病気やけがによる器官の欠損や形の異常によるもの

病気やけがによる発声発語器官の欠損や形の異常による構音障害は、器質性構音障害です。器質性高温障害とは、口腔・咽頭・鼻腔などの構造的な異常によって発音が困難になる状態を指します。先天的なものは口蓋裂・口唇裂などです。話をする際に口蓋や鼻から空気が抜けたり、口唇や舌の欠損で十分に動かせなかったりすることで発話が不明瞭になります。後天的なものとしては、主にがんの切除によるものです。舌がん手術後は舌の一部が欠損するために発音が困難になります。また上顎がんを切除すると、口腔と鼻腔がつながることで空気が漏れて発音がしにくくなります。

神経や筋肉の病気によるもの

神経疾患や筋肉の病気、脳卒中などの脳血管障害による構音障害は、運動障害性構音障害です。ディサースリアとも呼ばれます。ディサースリアとは、神経や筋肉の異常によって発話に必要な口・舌・喉・呼吸器の動きが障害される状態を指します。口腔機能に麻痺が生じて動かしにくくなったり、呼吸機能が十分に機能しなくなったりすることが原因です。神経疾患や筋肉の病で代表的なものは、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症・ハンチントン病などです。

心理的要因によるもの

心理的要因が関与する構音障害は、心因性構音障害と呼ばれます。心因性構音障害とは、ストレスや心理的負荷が原因となって発話が困難になる状態のことです。心理的な要因として、以下のようなものが挙げられます。

  • ・強いストレスや緊張
  • ・トラウマや精神的ショック
  • ・うつ状態や不安障害

これらの影響により、発話が途切れやすくなる・言葉が詰まる。話すスピードが不規則になるなどの症状が見られることがあります。心因性構音障害の症状は一定ではなく、心理的状態によって変動することが特徴です。そのため、明確な器質的異常(神経や筋肉の異常)が認められない場合でも、心理的要因が証明されれば心因性構音障害と診断されることがあります。

構音障害の症状

構音障害の症状は、原因や機能によってさまざまです。うまく発音できなかったり、話す速度が通常より不自然になったりします。個人差があるので一律なものではありませんが、主な症状を下記にまとめました。

うまく発音できない音がある

先天的もしくは後天的の影響で口唇や舌、顎などに異常があると、発音しづらい音が生じることがあります。例えば舌の動きが制限されると、舌先を使うタ行・ラ行の発音が難しくなることがあります。また、唇の動きが制限されると、マ行・パ行・バ行などの発音が不明瞭になりやすいでしょう。これらの症状は、麻痺や欠損によるものだけでなく、発達の過程で特定の音を正しく発音できない場合にも見られます。 発音のしづらさを改善するためには、リハビリや発話訓練が有効なこともあります。

声が小さくなる・かすれる

脳血管障害や神経疾患が原因で、声が小さくなったりかすれたりすることがあります。呼吸や声帯の機能低下によるものです。声量が低下するのはパーキンソン病に多く見られる症状です。また、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や声帯麻痺などの神経疾患では、声がかすれて聞き取りにくくなることがあります。

言葉が途切れる・舌がもつれる

脳血管障害や神経疾患が原因で舌の筋力低下可動域不十分な状態になると、言葉が途切れたり舌がもつれたりすることがあります。

イントネーションやアクセントがおかしくなる

特に運動障害性構音障害では発話が単調になり、イントネーションやアクセントの調整が困難になることがあります。例えば脳血管障害では声の高さや大きさの変動があまり見られないことによって、抑揚が乏しい発話となる傾向があります。

話す速度が不自然になる

構音障害では話す速度が不自然になることがあります。例えば脳血管障害による麻痺の影響で全体的に発話スピードが低下するケースがあります。また、小脳梗塞などで生じる失調が原因で発話速度が安定しないという症状が見られることがあるでしょう。

構音障害の治療方法

構音障害の治療は、症状に合わせて行う必要があります。機能を回復させて話しやすい状態に改善するという目的は同じです。ここでは、リハビリテーション・発音補助装置・外科的治療について紹介します。

リハビリテーション

構音障害のリハビリ方法はさまざまですが、主に以下の方法があります。

  • ・息を吹く訓練
  • ・発声訓練
  • ・口腔機能訓練
  • ・構音訓練

息を吹く訓練はブローイングと呼ばれます。鼻から息が抜けやすい方に有効な訓練方法です。発声訓練は、声が小さい方に対して行ったり訓練の準備運動をしたりする際に実施します。口腔機能訓練は、口唇や舌の筋力向上訓練・可動域訓練などがあります。口唇や舌の不調を改善し、機能を向上させる訓練です。構音訓練は、正しい発音の仕方を意識しながら練習し、明瞭度を改善する訓練方法です。単語から始めて短文・長文・会話と段階を上げていきます。最終的には、訓練時だけでなく日常会話でも正しい発音で話せることが目標です。

発音補助装置の使用

発音補助装置は、口腔や咽頭の欠損や機能障害による発話の困難を補うために使用される装置です。先天的な口蓋裂や、がんによる切除手術の後遺症などで発音が困難になった場合、歯科医師が作製する補綴装置を用いることで発音の補助や食事機能の改善が期待できます。以下に主な装置を紹介します。

  • ・口蓋補綴(口蓋床)
  • ・顎補綴(顎奥歯)
  • ・鼻咽腔部補綴
  • ・舌接触補助床

口蓋補綴や顎補綴は義歯と一体化したものが多く作られます。口蓋裂や術後の口蓋欠損を補って空気や食事が鼻腔へ抜けるのを防止するほか、発音時に舌を正常位置に直すための装置です。鼻咽腔部補綴は鼻腔と口腔を閉じる軟口蓋の機能を補綴し、お口のなかに空気を保てずに鼻に抜けてしまうのを防ぐために装着します。鼻咽腔部補綴は以下の3種類です。

  • ・軟口蓋栓塞子
  • ・バルブ型スピーチエイド
  • ・軟口蓋挙上装置

軟口蓋栓塞子は手術などで軟口蓋が欠損した方が適用で、軟口蓋を装置で塞ぎます。バルブ型スピーチエイドは鼻咽腔を防ぐ大きさのバルブを上顎の奥に入れて装着することで、鼻漏れを防止するものです。軟口蓋挙上装置は口蓋裂・脳血管障害などが原因で軟口蓋の動きがよくない方、軟口蓋が短縮され息が鼻に抜けてしまう方が用いるものです。装置で軟口蓋を持ち上げることで軟口蓋の閉鎖不全を解決して鼻漏れを改善します。舌接触補助床は腫瘍など手術や病気で舌が切除されたことによる機能不全の場合に、口蓋部を厚くする装置です。口蓋部を厚くすると発音時に舌が口蓋に着きやすくなるため、構音改善が期待できます。

外科的治療

発音や口腔機能の改善を目的として、外科的治療が必要になることがあります。先天的な異常や病気、外傷による影響が大きい場合、手術によって構造を修正し、発話や咀臓機能を向上させることが可能です。以下に代表的な外科的治療を紹介します。

  • ・口唇裂形成手術
  • ・口腔瘻孔閉鎖術
  • ・口蓋裂形成手術
  • ・咽頭弁移植術
  • ・舌小帯伸展術
  • ・外科的顎矯正術

口唇裂には一般的にミラード法+小三角弁法と呼ばれる口唇裂形成手術を行います。術後に正常に近い状態に形成することが可能です。口蓋裂・頭頚部がんの手術・外傷などにより口腔と鼻腔がつながって息が抜けやすくなった状態には、口腔瘻孔閉鎖術を施行します。粘膜を引き寄せて縫合する手術です。口蓋裂形成手術は口腔と鼻腔を閉鎖する役割の口蓋帆挙筋を左右つないで裂を塞ぐプッシュバック法、軟口蓋を伸ばして閉鎖するファーラー法があります。咽頭弁移植術も口腔と鼻腔を閉鎖するために咽頭粘膜と口蓋垂を引き寄せてつなぐ手術です。舌小帯伸展術は舌の裏側に着いている短いひものような舌小帯を正常の長さにして機能を獲得し、発音を改善するための手術です。歯列の不正や噛み合わせの改善には外科的顎矯正術を行います。裂部に骨を移植して歯列矯正し、それでも不十分なときは上顎・下顎の骨を切除して、よい噛み合わせに修正します。

まとめ

構音障害には、口腔機能などの欠損によるものや神経・筋肉の病気が原因のものなどがあります。

症状としては、舌がもつれたり発音しにくかったりイントネーションが正常と異なったりします。

実施されるリハビリテーションは、息を吹く訓練や発声訓練・構音訓練などです。

欠損がある場合は発音を改善させるために外科的治療が行われることもあり、口蓋裂形成手術や咽頭弁移植術などが実施されます。

先天的なものは個人差があるので慎重に検討すべきですが、評価や訓練のタイミングは早い方がよいことがあるので異常を感じたときは医師に相談しましょう。

後天的なものは多くががんの切除や脳血管障害・神経疾患などが原因です。遺伝的な要因で発症する場合もありますが、生活習慣病が影響する場合もあります。

日常的に健康管理を心がけることも大切であり、気になることがあれば医師の助言を求めるようにしましょう。

「イントネーション」の異常で考えられる病気

「イントネーション」から医師が考えられる病気は27個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

口腔外科・形成外科

  • 口唇裂
  • 舌小帯短縮症
  • 頭頚部がん

脳神経内科・脳神経外科

耳鼻咽喉科

精神科・心療内科

小児科・精神科

これらの病気は発話のリズムや抑揚に影響を与える可能性があります。話し方に違和感がある場合は、原因に応じた適切な診療科を受診しましょう。