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「過去の記憶があまりない」のは何が原因?受診の目安となるセルフチェック法も解説!

「過去の記憶があまりない」のは何が原因?受診の目安となるセルフチェック法も解説!

過去の記憶があまりないで、身体はどんなサインを発している?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

秋谷 進

監修医師
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

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1999年、金沢医科大学卒業。金沢医科大学研修医を経て2001年国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)小児神経科、2004年6月獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)小児科、2016年児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職(東京西徳洲会病院小児医療センター)。専門は小児神経学、児童精神科学。

「過去の記憶があまりない」症状で考えられる病気と対処法

「あれ?そういえば、小学校の頃の修学旅行ってどこに行ったんだっけ?」
先日、友人との会話の中で、思わずつぶやいた言葉。ふと自分の記憶の曖昧さに気づきました。楽しかったはずの 過去の記憶が、まるで霞がかかったようにぼんやりとしているのです。
皆さんは、このような経験はありませんか?
過去の記憶が曖昧だったり、思い出そうとしてもなかなか思い出せなかったり。それはもしかしたら、単なる「物忘れ」ではなく、何らかの病気のサインかもしれません。今回は、「過去の記憶があまりない」症状で考えられる病気と、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。

過去の記憶があまりないの症状で考えられる原因と対処法

もともと人間は忘れる生き物です。人間は五感を通してさまざまな情報が脳に流れていき、常に情報処理を並列で処理しています。これを全て記憶してしまっていては脳が情報ですぐパンクしてしまいますよね。そのため、忘れるのはもはや生きるのに「必須」といっても過言ではありません。
一方で、それでも過去の記憶がある程度はないと会話として成り立ちません。「相手が自分のことを覚えているのに自分は相手が誰だかわからない」状態が続くと信頼関係の構築にも支障が出てきます。これが、過去の記憶がわからない「病的な状態」といえますね。
過去の記憶があまりない「病的な状態」には、どのような原因が考えられるのでしょうか。大きく分けて3つのケースが挙げられます。

  • 脳機能が一定以上、異常なレベルで過去の記憶を保管できないようになっている(器質的な問題):認知症、脳梗塞、脳出血、頭部外傷、コルサコフ症候群など
  • 脳の機能は正常だが、心のさまざまな要因で「記憶に蓋」をしてしまっている(心因性の問題):解離性健忘、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ病や不安障害
  • 記憶はあるが、正しい記憶と整理がつかない状態になっている(認知バイアスの問題):想起バイアス:、発達障害

このように色々な原因が考えられるので、それぞれに対して対処法が異なってきます。
例えば器質性のケースでは、薬物療法やリハビリテーションといった対処法がよいかもしれません。一方で心因性のケースでは心理療法という対処法が有効でしょう。このように、原因によって対処法が大きく変わってくるので、まずは医療機関に受診して原因をしっかりと見極めることが大切です。

すぐに病院へ行くべき「過去の記憶があまりない」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
心因性の場合には一度心を落ち着かせるだけでもある程度有効かもしれませんね。しかし、応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

日常生活に支障が出る強い症状の場合は、脳神経内科・脳神経外科へ

「過去の記憶があまりない」という症状が、日常生活に支障をきたすほど強い場合は、脳に器質的な問題が生じている可能性があります。例えば神経内科・脳神経外科に行かなければならないほどの症状の特徴としては以下の通りです。

  • 新しいことも覚えられない: 数分前の出来事や、今日の日付を忘れてしまうなど、新しい情報を記憶することが困難になります。
  • 昔の記憶も曖昧: 幼少期の記憶や、数年前の出来事など、昔の記憶も思い出せなくなることがあります。
  • 時間や場所の感覚がなくなる: 現在が何月何日なのか、自分がどこにいるのかわからなくなることがあります。
  • 人格の変化: 温厚だった人が急に怒りっぽくなるなど、性格や行動に変化が見られることがあります。
  • 日常生活に支障をきたす: 食事や着替え、トイレなどの基本的な動作が困難になったり、仕事や家事ができなくなったりするなど、日常生活に大きな支障をきたします。

では、これらの症状をきたした時、どんな病気が考えられるでしょうか。例えば、以下のようなことを考えるべきでしょう。

  • 認知症: アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症などはもちろん「過去の記憶障害」にも影響はでます。
  • 脳血管障害: 脳梗塞、脳出血などが生じた場合も記憶に影響が出ることがあります。
  • 脳腫瘍: 脳にできた腫瘍が、記憶をつかさどる領域を圧迫することで記憶障害が起こります。
  • 頭部外傷: 事故などによる脳へのダメージが引きずることで生じます。
  • 脳炎:ヘルペス性脳炎などウイルスや細菌によって脳に感染症をきたしている状態。
  • 他の内分泌疾患や全身疾患も記憶に関わることがあります。

したがって、頭部MRI検査やfunctional MRI(fMRI)と呼ばれる認知症の検査、頭部CT検査を行うことが多いでしょう。したがって、これらの症状がある場合は神経内科や脳神経外科に受診するようにしましょう。

受診・予防の目安となる「過去の記憶があまりない」ときのセルフチェック法

受診すべき症状の特徴はお伝えしましたが、それでもいまいちピンと来ない方もいるかもしれません。そこで、わかりやすい具体的なエピソードを交えてセルフチェック法を作ってみました。みなさんは何個あてはまるでしょうか。

  • 友人と旅行に行ったとき、自分がどんなお土産を買ったのか全く思い出せない。
  • 学生時代の友人と会ったとき、共通の友人の名前が出てこない。
  • 家族に「この間、こんなことがあったよね」と言われても、全く記憶にない。
  • 職場で、以前上司に指示された内容を忘れてしまい、同じことを何度も聞き返してしまう。
  • 鍵や財布など、よく使うものをどこに置いたのか頻繁に忘れてしまう。
  • 電車の乗り換え方法がわからなくなり、目的地までたどり着けないことがある。
  • 約束の時間に遅刻したり、約束自体を忘れてしまうことが増えた。
  • 料理の味付けが濃くなったり、薄くなったりすることが多くなった。
  • 同じ話を何度も繰り返してしまう。
  • 以前はできていたことが、今ではできなくなっていることに気づくことが多い。

これら10個のエピソードのうち3つ以上当てはまった場合は「中等度以上の記憶障害」の可能性が高いので、病院に受診するようにしましょう。神経内科、脳神経外科、精神科など、ご自身の症状に合わせて適切な診療科を受診するとよいですね。なにごとも早期発見・早期治療が大切です。

「過去の記憶があまりない」症状が特徴的な病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「過去の記憶があまりない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

解離性健忘

解離性健忘とは、強いストレスや精神的なショック体験がきっかけで、ある期間の記憶が全く思い出せなくなる病気で、自分の名前や住所なども忘れてしまう場合もあります。
対処法や治療法は心理療法が中心であり、原因となったトラウマを克服することが大切と言われています。日常生活に支障をきたすほどの記憶障害がある場合には、精神科や心療内科を受診して相談してください。

発達障害

発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りにより、社会性、コミュニケーション、想像力などに困難を抱える状態です。記憶の仕方に特徴があり、特定の事柄に強いこだわりを持つ一方、他の記憶が曖昧になることもあります。
対処法や治療法は、薬物療法と並行しながら、得意なことを伸ばしたり、苦手なことを克服するための訓練を行うことです。日常生活や社会生活に困難を感じている場合には、精神科や心療内科、小児科を受診して相談しましょう。

ASD

ASD(自閉スペクトラム症)とは、発達障害の一種です。コミュニケーションや対人関係が苦手で、特定のものへの強いこだわりや、感覚過敏などを伴います。記憶力に優れている場合もあるが、記憶の仕方に偏りがあることもあります。
対処法や治療法には、薬物療法や行動療法、療育などが挙げられます。コミュニケーションや対人関係に困難を感じている場合には、精神科や心療内科、小児科を受診して相談しましょう。

想起バイアス

想起バイアスとは、過去の出来事を都合の良いように記憶したり、特定の記憶を強調して覚えていたりする現象のことです。誰でも経験するもので、病気ではありません。
対処法や治療法は、客観的な記録や他者の意見を参考に、記憶の歪みを認識することが重要と言われています。記憶の歪みが日常生活に支障をきたす場合、他の精神疾患の可能性も考慮し、精神科や心療内科への受診を検討することをお勧めします。

PTSD

PTSDとは、生命の危険を感じるようなトラウマ体験後、その記憶がフラッシュバックしたり、悪夢を見たりするなど、精神的な苦痛が続く病気で、記憶障害を伴う場合もあります。
対処法や治療法は、薬物療法と心理療法を行うことです。トラウマ体験後、強い不安や恐怖、不眠などの症状が続く場合には、精神科や心療内科を受診して相談しましょう。

「過去の記憶があまりない」の正しい対処法は?

では、過去の記憶のないことに対して応急処置のような家庭でできる対処法はないのでしょうか。結論からいうと、記憶障害に対して、家庭でできる根本的な治療法はありません。
しかし、症状の悪化を防いだり、記憶力を維持・向上させたりするために、日常生活の中でできることはあります。まずは以下から試してみるとよいのではないでしょうか。
十分な睡眠と休息: 睡眠不足は記憶力や集中力に悪影響を及ぼします。質の高い睡眠を十分にとりましょう。
バランスの取れた食事: 脳の働きに必要な栄養素をバランスよく摂取しましょう。特に、魚に多く含まれるDHA・EPAは記憶力向上に効果が期待できます。
適度な運動: 運動は脳の血流を促進し、認知機能の維持・向上に役立ちます。軽いウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
知的活動: 読書やパズル、ゲームなど、脳を使う活動は、記憶力や思考力を鍛えるのに効果的です。
ストレスをためない: ストレスは記憶力の大敵です。リラックスできる時間をつくり、ストレスを解消しましょう。
禁煙・節酒: 過度な飲酒や喫煙は、脳の機能を低下させ、記憶障害のリスクを高めます。
社会的なつながりを維持: 人とコミュニケーションをとったり、地域活動に参加したりすることは、脳の活性化につながります。
しかし、これらの対策はあくまでも補助的なもの。記憶障害の疑いがある場合は、自己判断で対処せず、必ず医療機関を受診するようにしましょう。

「過去の記憶があまりない」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「過去の記憶があまりない」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

過去の記憶があまりない、思い出せないのは病気でしょうか?

秋谷 進医師秋谷 進(医師)

必ずしも病気とは限りません。誰でも経験する、加齢による物忘れや、一時的な記憶力の低下である可能性もあります。しかし、日常生活に支障をきたすほどの記憶障害や、他の症状を伴う場合は、病気の可能性も考えられますので、医療機関への受診をおすすめします。

子どもの頃の記憶があまり無いのは何故でしょうか?

秋谷 進医師秋谷 進(医師)

幼児期健忘といって、正常なことです。乳幼児期の学習は未熟で記憶をうまく固着できなかったり、記憶の貯蔵に必要とされた神経ネットワークが、後に発達したものに飲み込まれてたりして、当時の記憶が引き出せなかったりするためとされています。したがって、これは通常の発達課程を見ているので、大きな問題はありません。

ストレスで過去の記憶を思い出せなくなることはありますか?

秋谷 進医師秋谷 進(医師)

はい、あります。強いストレスを感じると、脳の働きが阻害され、記憶力や集中力が低下することがあります。また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、トラウマ体験が原因で記憶障害が起こることもあります。

まとめ 過去の記憶があまりに症状が続く時は心療内科・精神科で相談

「過去の記憶があまりない」と感じたら、まずは落ち着いて、ご自身の症状をよく観察しましょう。 単なる物忘れなのか、それとも何らかの病気のサインなのかを見極めることが大切です。生活習慣の改善や記憶を呼び起こす工夫を試みても症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたすほどの記憶障害がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

「過去の記憶があまりない」症状で考えられる病気

「過去の記憶があまりない」から医師が考えられる病気は23個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経系の病気

精神系の病気

  • 解離性健忘
  • 解離性同一性障害
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 不安障害

その他の病気

  • 幼児期健忘
  • 薬剤性記憶障害(睡眠薬、抗不安薬などの副作用)
  • ビタミンB1欠乏症
  • 加齢による記憶力低下

このように色々な原因があるので、自己判断せずに適切な医療機関に受診をお願いします。

「過去の記憶があまりない」に似ている症状・関連する症状

「過去の記憶があまりない」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 新しいことが覚えられない
  • 時間や場所がわからない
  • 性格や行動に変化が見られる
  • 食事や着替え、トイレなどの基本的な動作が困難になる
  • 仕事や家事ができなくなる

これらの症状が継続する場合には、早めに医療機関で相談することをお勧めします。

この記事の監修医師