「脳貧血になりやすい人の特徴」はご存知ですか?前兆となる初期症状も医師が解説!


監修医師:
伊藤 陽子(医師)
プロフィールをもっと見る
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
目次 -INDEX-
「脳貧血」とは?
みなさまは「脳貧血」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 読んで字のごとく脳の貧血、つまり脳に血液が行かなくなることで酸素が欠乏する状態となり、急に目の前が暗くなったり、倒れてしまったりすることが起こります。 この後の項目で詳しくお伝えしますが、脳貧血は一般的な貧血とは全く異なるもので、正しくは起立性調節障害(起立性低血圧を含む)や血管迷走神経反射によって起こる脳循環不全を指します。 本記事では脳貧血について、その症状や特徴、症状や予防法について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。「脳貧血」と「貧血」の違いとは?
では、「脳貧血」と「貧血」は何が違うのでしょうか? 「脳貧血」は正式な医学用語ではなく、起立性調節障害や血管迷走神経反射によって起こる脳の虚血状態であることはすでにご紹介しました。 これに対し、一般的な「貧血」とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが少なくなった状態を指します。 ヘモグロビンが減少すると、体内へ酸素を運ぶ働きが弱くなるため、症状として息切れ、疲労感、めまい、顔面蒼白などが起こります。 まとめると、貧血とはヘモグロビンの不足が原因となって起こり、これに対して脳貧血は脳への血流が不足している状態のことです。脳貧血になりやすい人の特徴
それでは、脳貧血になりやすい人とはどのような方なのでしょうか。 以下に特徴や脳貧血を招きやすい生活習慣を挙げていきます。長時間立ちっぱなしの人
長い時間立ったままでいると、重力の関係もあって血液が下半身に集まり、脳への血流が不足しやすくなります。低血圧の人
一般的に「貧血の症状」という時に、脳貧血、特に起立性低血圧の症状を指している方が多いです。 この起立性低血圧とは、朝、寝床から起き上がる時や椅子から立ち上がった時などにふらつきを覚える状態のことです。 立ち上がった際、収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が10mmHg以上低くなる場合に起立性低血圧とみなされます。 これは普段は正常な血圧、もしくは高血圧の方でも、立ち上がったときに血圧が低下して起きることがありますので、自分は低血圧ではないと思っている方でも注意が必要です。睡眠不足の人
睡眠不足の状態が続くと、自律神経系のバランスが崩れ不調を招き、脳への血流が低下して脳全体の酸素不足を招くことがあります。 いわゆる血管迷走神経反射による脳貧血の状態です。 この場合の脳貧血は、睡眠不足のほかに疲労の蓄積でも起こり得ます。水分不足の人
人間は喉の渇きを覚えた時はすでに脱水状態であると言われています。 体内の水分が減少すると立ちくらみが起こりやすく、適切な水分補給は血圧を保つ仕組みである末梢血管抵抗を上げることが知られています。 水分補給の際は、一気にたくさんではなくコップ1杯程度の水を複数回に分けて摂ることで、身体への負担も少なく水分を補うことができます。特定の薬を服用している人
起立性の低血圧には、普段服用している薬の影響で起こる場合もあります。 主に高血圧や狭心症の治療に使われる薬、ほか、抗うつ剤や安定剤なども起立性低血圧を招く可能性があります。 これらの薬を服用中の方で、脳貧血の症状が起こるようでしたら、主治医と相談してみてください。脳貧血の前兆となる初期症状
脳貧血の前兆と思われる症状はいくつか挙げられます。 他の病気が潜んでいることも考えられますので、気になる場合は早めに医療機関を受診してください。立ちくらみ
急に立ち上がった時に目の前が暗くなり、ふらつきを感じる状態が立ちくらみです。 急激に動いた時の反動で脳貧血が起こる場合がありますので、ゆっくり立ち上がるように気をつけましょう。 一時的なものであればさほど心配はいりませんが、頻繁に起こる場合や、気持ち悪くなったり失神したりする場合は他の病気の可能性も考えられます。 心当たりがあれば内科を受診してください。めまい
「めまい」も脳貧血の際によく見られる症状です。 目の前がぐるぐる回るだけではなく、足元がふわふわした感じになる種類のめまいもあります。 それぞれ「回転性めまい」「動揺性めまい」と呼ばれます。 対処としては、まず安静にすることです。 また、普段から規則正しい生活を心掛け、自律神経系のバランスを乱さないようにしておくことも大切です。 めまいの症状だけではなく、ものが二重に見えるなど視界がおかしい、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は脳卒中などの緊急性の高い疾患が疑われますので、その場合はためらわずに救急車を呼んでください。頭痛
頭痛にはさまざまな種類があり、片頭痛や身体・精神にかかるストレスが原因とされる緊張型頭痛、強烈な痛みを伴う群発頭痛、また、他の疾患が原因となって起こる頭痛もあり、自己判断で放置するのは危険です。 頭痛が繰り返し起こるようでしたら、その原因をはっきりさせるためにも頭痛外来や神経内科、脳神経外科といった科を受診してください。 また、痛みがだんだん強くなる、吐き気や嘔吐を伴うなど、いつもと違う頭痛の場合は緊急性の高い脳の疾患の可能性もありますので、我慢せずに救急車を呼んでください。脳貧血の主な原因
脳貧血は脳への血流が不足することで起こります。 では、その原因にはどのようなものがあるのでしょうか。低血圧
脳貧血が起きる原因として一般的なものに低血圧があります。 血圧が低いということは、全身に血液を送る圧力が低いということです。 すなわち、心臓より上にある脳への循環が悪くなりやすくなる場合があります。 生活に支障をきたす場合は内科または循環器内科を受診してください。自律神経系の乱れ
通常時は血圧が正常の範囲内であっても、血液の流れや血圧、心拍数などをつかさどる自律神経系の働きが不調となると、脳貧血を招く場合があります。 自律神経系は生活リズムの乱れ、過度な飲酒、喫煙、運動不足、ストレスなどが原因でバランスを崩すことがありますので、規則正しい生活、適度な運動、ストレスコントロールなどが対策となります。 自律神経系の乱れによる身体症状はさまざまです。 たとえば動悸が一番強い症状である場合は循環器内科など、症状に合わせた診療科を受診してみてください。脱水状態
発汗などで体内の水分が失われ、なおかつ適切な水分補給ができていない場合は脱水症状の恐れがあります。 脱水状態になると体内を循環する血液の量が減り、低血圧状態を招き、脳貧血リスクが高まります。 ふらつきなどの症状が出ているようでしたら、横になり水分補給をし、安静に過ごしてください。 症状が治まらない場合は内科を受診しましょう。受診・予防の目安となる「脳貧血」のセルフチェック法
・座っている状態からすぐに立ち上がった時にめまい、ふらつきなどが起きるかどうか ・長時間立っているときにふらつきが起こるか ・脳貧血の症状がいつ、どのような場合で起きるか記録を取る どのような状況で脳貧血の症状が起こっているか、自分でチェックし、症状が続く場合には内科を受診しましょう。脳貧血の予防法
急に立ち上がらない
急に立ち上がることで、脳への血流を一時的に低下させる恐れがあります。 起き上がる時や椅子から立ち上がる時は、ゆっくりとした動作で行うようにしましょう。適度な運動
運動は全身の血流を促す効果が期待できます。 特に下半身周りを動かすことで、心臓から遠い位置の血液の循環に効果的です。十分な水分補給
脱水状態は血液の循環を悪くし、脳への血流を減少させる恐れがあります。 普段から水などを定期的に摂取し、発汗が多い時は必要に応じてスポーツドリンクや経口補水液も効果的に使い、水分の補給に努めましょう。「脳貧血になりやすい人」についてよくある質問
ここまで脳貧血になりやすい人などを紹介しました。ここでは「脳貧血になりやすい人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
長時間立ちっぱなしでいると脳貧血を発症するのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
長時間立ちっぱなしでいると脳貧血を発症する可能性があります。立ちっぱなしの状態が続くと、重力の影響で脳への循環が悪くなり、血液供給が不足しやすくなるからです。長時間立っていて、脳貧血の症状がある場合には、横になれるようであれば横になり脳への血流を改善させましょう。横になれなくとも、座位になり、水分を良く摂り休憩することをお勧めします。
脳貧血をすぐに解消する対処法を教えてください。
伊藤 陽子(医師)
まずは横になりましょう。その際、クッションなどを用いて足を高くすると脳への血流が増加するため、なお効果的です。
脳貧血を予防するために食事で注意することはありますか?
伊藤 陽子(医師)
特定の食材に脳貧血を予防する効果はありませんが、起立性調節障害を改善するためにはたんぱく質、ビタミン類、鉄分などをバランス良く摂ることが大切です。