「後頭部が痛い」時の対処法はご存知ですか?医師が徹底解説!
日常生活の中で、後頭部に痛み・頭痛を感じることはないでしょうか。例えば、日頃ストレスをため込みすぎる生活をしていると、後頭部あたりに頭痛を感じることがあるかもしれません。
日本の場合では、国民の約4人に1人が頭痛に悩んでいることがわかっています。頭痛には、他の病気に関係なく生じるものの他に、脳卒中など裏に病気が潜んでいる危険な頭痛もあります。
本記事では、後頭部に痛み・頭痛が生じる原因やその治療法について詳しく解説します。頭痛に悩んでいるという人は、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
後頭部が痛い原因は?
後頭部が痛くなる原因には、主に「後頭神経痛」「一次性頭痛」「二次性頭痛」の3つがあります。
後頭神経痛
後頭神経痛は、首から後頭部にかけて向かう神経(後頭神経)に痛みを生じる症状です。後頭部に位置する動脈(後頭動脈)が何らかの原因で拡張することで後頭神経と接触したり、後頭部を強く打ったりすることで発症します。
しかしながら、多くの場合原因を完全に特定できないため、特発性の症状として知られていることが多いです。後頭神経痛は、主に後頭部に痛みが生じる特徴的な頭痛で次に説明する一次性頭痛に分類されます。
緊張型頭痛などの一次性頭痛
一次性頭痛は、血管、神経、筋肉などの機能の異常が起こることで生じる、いわゆる機能性の頭痛です。
一次性頭痛は頭の全体に痛みが生じる可能性があり、血管などの機能障害が後頭部に生じることで、後頭部が痛くなることがあります。一次性頭痛には、先に説明した後頭神経痛のような神経痛の他に、「緊張型頭痛」「片頭痛(偏頭痛)」「群発頭痛」があります。
緊張型頭痛は、頭蓋骨周囲の筋肉や中枢神経の過緊張などに起因すると考えられてきました。「しめつけられるような」「重りをのせられたような」痛みが生じ、慢性化しやすいことが特徴です。
片頭痛は、何らかの原因で頭蓋内血管に分布する神経が刺激され炎症を起こすことが原因と推察されています。この炎症が血管へと伝わり、「ズキズキする」「脈打つように痛む」ことが特徴です。また、片頭痛は月経との関連が多いため、女性の罹患者は男性の約 3倍多いといわれています。
群発頭痛は、原則頭の片側に痛みが生じ、数週間から数ヶ月間毎日のように頭痛が続くため「群発」という病名が付けられました。一次性頭痛の中で最も痛みが強く、「目の奥をえぐられるような」痛みと表現されています。
二次性頭痛
二次性頭痛は、脳腫瘍や脳卒中、頭部外傷、精神疾患などの他の疾患が原因で生じる頭痛です。一次性頭痛と共通する症状が多いため、一次性頭痛の特徴を有する場合であっても、診察ではまず二次性頭痛が疑われます。
日常生活の中で、頻度と程度が増していく頭痛を感じた場合には、二次性頭痛の疑いがあるため注意が必要です。何度も痛みを感じる場合は、かかりつけ医や専門医への相談も検討してみてください。
後頭部が痛いときの対処法
後頭部の痛み・頭痛は日常生活から対処することが可能です。ここでは、日頃の生活から頭痛に対処できる3つのポイントをご紹介します。まずは日常ケアからスタートしたいという場合の参考にしてみてください。
ストレスをためない
ストレスは頭痛の大きな原因の一つです。特に、慢性的な頭痛の場合のほとんどは、ストレスが関与していると言われています。
ストレスは、人間関係や職場環境、睡眠を含む生活習慣の乱れなど様々な要因から生じるため、完全に無くすことは難しいかもしれません。そのため、適度な運動や気分転換などを取り入れることで、日頃からストレスをため込まないことが大切です。
ストレスの原因が分からない場合は、専門医に相談することも検討してみてください。誰かに話すことで心が落ち着くこともあるので、カウンセラーを訪れてみることも良いでしょう。
ストレッチをする
ストレッチは、特に一次性頭痛の一つである緊張型頭痛に効果的です。緊張型頭痛は主に筋肉の緊張によって起こるため、ストレッチにより緊張をほぐし、頭痛が改善されることがあります。
また、ストレッチをすることで自律神経が整えられ、副交感神経が優位にはたらきます。その結果として、リラックス効果を得ることができ、ストレス軽減にもつながりますので、ストレッチをすることは頭痛に対する非常に良い対処法です。
鎮痛剤を利用する
痛みが強い場合には我慢せず、鎮痛剤を利用しましょう。症状の強さによって推奨される鎮痛剤の種類が異なります。
軽症から中等症の場合には、市販薬として多用されているアセトアミノフェノンや、非ステロイド性炎症薬であるアスピリン・メフェナム酸・イブプロフェンなどが有効です。
中等症以上の頭痛発作や偏頭痛、群発頭痛などには、トリプタン系製剤の使用が良いでしょう。
すぐに受診が必要な危険な頭痛とは?
頭痛にはストレッチをする・市販薬を飲むなどで自然と治るような頭痛もありますが、くも膜下出血に伴う頭痛のように緊急に対応しないと命に関わる二次性頭痛には注意が必要です。
次の項目に当てはまる場合、二次性頭痛の疑いがありますので、我慢せずすぐに受診するようにしましょう。
- 頻度と程度が増していく頭痛
- ひどい嘔吐を繰り返す頭痛
- 50歳以降に初発の頭痛
- いつもと異なる頭痛
- 発熱、体重減少などに伴う頭痛
- 小児期の後頭頭痛
少しでも不安を感じる場合は、躊躇せず医師に相談してみてください。
後頭部が痛い時の治療法は?
頭痛の治療法は一次性頭痛と二次性頭痛で異なります。一次性頭痛の治療は、頭痛時に痛みを止める「急性期治療」と、頭痛の頻度や程度を軽減する「予防療法」の大きく二つです。
急性期治療では、症状の強さに応じてアセトアミノフェノンや、非ステロイド性炎症薬であるアスピリン・メフェナム酸・イブプロフェン、トリプタン系製剤などの経口薬が選択されます。急性期治療に用いられる経口薬は、痛みがピークに達してからでは効果が得られにくくなってしまうため、痛みが出現してなるべく早期に服用することが大切です。
患者さまによっては痛みが生じる前に予防的に鎮痛剤を使用しているケースがありますが、基本的には痛みが出現してから用いる方がよいとされています。余分に鎮痛剤を使用すると、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の発症リスクに繋がるからです。
予防療法は、頭痛の頻度や頭痛の度合いが一定以上の場合に用いられます。また、急性期治療のみでは頭痛により日常生活に支障がある場合や、急性期治療薬が副作用などで使用できない場合に使用が検討されています。予防薬に用いられる経口薬は、頭痛の有無にかかわらず一定の期間毎日定期的に服用する必要があります。予防療法に用いられる薬 剤には、カルシウム拮抗薬や抗うつ薬などが代表的です。
二次性頭痛の治療では、原因となる二次的疾患に応じた治療が必要となります。例えば、脳腫瘍などが原因の二次性頭痛の場合には、手術など外科的手術が必要となるケースもあります。
すぐに病院に行ったほうが良い「後頭部が痛い」症状は?
- 突然、強い頭痛が出現した場合
- 強い吐き気やめまいを伴う場合
- 手足の動かしにくさや意識障害などを伴う場合
これらの場合には、すぐに病院受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、脳神経内科、脳外科です。
問診、診察、血液検査、画像検査(CT、MRI)、髄液検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから症状があるのか、症状が良くなったり悪くなったりしている場合にはどんな時に症状が変化するのか、他にも気になる症状があるのかなどを医師に伝えましょう。
治療する場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
本記事では、後頭部に痛み・頭痛が生じる原因やその治療法について解説しました。
後頭部の痛み・頭痛は、後頭部に特有の神経痛である後頭神経痛の他に、片頭痛など他の疾患に関係なく生じる一次性頭痛、さらには脳卒中など他の疾患が原因で生じる危険な頭痛もあります。
頭痛は日常生活の中で対処することが可能で、ストレスをためないことやストレッチをすることが有効です。
痛みが強い場合には、痛みを我慢せずに市販の鎮痛剤を利用し、場合によって専門医を受診するようにしてください。
少しでも不安を感じる場合は、すぐに病院を訪れましょう。
参考文献