「ストレスで便秘」になる原因はご存知ですか?医師が対処法も徹底解説!


監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。
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「ストレスで便秘になる」症状で考えられる病気と対処法
ストレスで便秘になる症状は、比較的多く見られる症状です。原因はさまざまですが、主に胃や腸といった消化管の病気が関わっているケースが多く見られます。どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます。ストレスで便秘になる症状で考えられる原因と治し方
日常生活でストレスを感じた際に便秘を自覚する症状を指します。ストレスの有無に関わらず、便秘自体は経験された方も多いかもしれません。便秘とは「本来排出すべき糞便を十分に快適に排出できていない状態が続き、日常生活に支障が生じている状態のこと」を指します。原因はストレスに加えて、食物繊維摂取量の減少、運動量の減少や高齢化などの環境要因があります。またパーキンソン病などの神経疾患、うつ病などの精神疾患、糖尿病(自律神経障害を伴うもの)や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、そして切れ痔や炎症性腸疾患、大腸の腫瘍による腸の閉塞といった消化器疾患が原因で、便秘になることもあります。 ご自身でできる対処法は、まず食物繊維を多く含んだ食べ物や水分の摂取を増やし、しっかりと運動して腸の働きを活発にした上で、可能な限りストレス因子の除去に努めることです。それでも改善がない場合は、前述の病気が隠れている可能性があるため、一度病院受診をお勧めします。受診すべき科は消化器内科や一般内科です。原因検索をした上で、ストレスチェックなどを行いながら、便秘を改善する内服薬を飲むのが一般的な治療方針になります。ストレスで便秘と下痢を繰り返す症状で考えられる原因と治し方
ストレスで便秘と下痢を繰り返す場合、過敏性腸症候群の可能性があります。 詳細は後述しますが、この病気はストレス環境下で便秘と下痢を繰り返し、それが排便によって解消されるという病気です。詳しい原因は未だ判明していません。 対処法、治し方は、まずストレスへ向き合うことから始めましょう。何が自分にとってストレスになっているのか探ることは重要ですので、ネット検索でも医療機関でも構いませんのでストレスチェックを行ってみましょう。職場の産業医に相談することも選択肢の一つです。 また腸管自体への対応として、食事内容の見直しがあります。消化に悪いもの(刺激物など)は避けることが推奨されています。 このような対応を行っても効果が見られない場合は、一度医療機関を受診してください。受診すべきは消化器内科や心療内科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。すぐに病院へ行くべき「ストレスで便秘になる」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。便秘に激しい腹痛を伴う場合は、消化器内科へ
ストレスからか便秘が続き、加えて激しい腹痛も伴うようになった場合、腸閉塞が疑われます。腸閉塞とは、便が通っていく腸管の通り道が、高度な便秘、腫瘍や炎症、手術後の癒着などによって通過できなくなってしまい、腸管が閉塞してしまう状態のことを指します。消化した食べ物が流れていかなくなるため、便秘、吐き気といった症状が出現します。また、閉塞している部分に腸が血流不足になると、壊死(組織が腐ってしまうこと)を起こしてしまい、激しい腹痛を伴うこともあります。 診断はレントゲンやCTなどの画像検査で行います。血液検査だけでは確定診断になりません。治療はイレウス管という特殊な管を口から閉塞部分より手前で留置したり、腸の状態によっては手術も行われます。 便秘に加えて、嘔吐や激しい腹痛が見られた際は早めの受診を検討しましょう。受診すべき科は消化器内科です。歩いたり咳をするだけでも腹痛が響くような状態であれば、緊急性が高いので、すぐに病院受診をしてください。受診・予防の目安となる「ストレスで便秘になる」ときのセルフチェック法
- ストレスで便秘になる以外に下痢症状がある場合
- ストレスで便秘になる以外に不眠症状がある場合
- ストレスで便秘になる以外に激しい腹痛がある場合
「ストレスで便秘になる」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「ストレスで便秘になる」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(略称:IBS)は、ストレスのかかる状況になると、慢性的なお腹の痛みや下痢、便秘、ガス貯留によるお腹の張りが続き、かつ排便するとその症状が改善するという疾患です。IBSの発生原因は腸の運動機能障害や知覚過敏、精神的な不調が関わっているとされていますが、詳しい原因は分かっていません。対処法は、高炭水化物食、脂っこい食べ物、コーヒー、アルコール、香辛料など刺激の強いものは避けて、食物繊維が豊富な食べ物を多く摂取することが挙げられます。また睡眠・休養を十分にとり、運動習慣をつけることも有効とされています。 主な診療科は心療内科、消化器内科です。社会生活を満足に送ることができる程度に、症状をコントロールすることが目標になります。消化器内科の医師による腸の状態の把握は重要ですが、ストレス負荷による精神的な不調が原因のこともありますので、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を行う医師の診察を受けることをお勧めします。自律神経の乱れ
自律神経の乱れは病名で表すと、“自律神経失調症”となります。自律神経失調症とはその名の通り、自律神経の働きが乱れてしまい、うまく機能していない状態です。 そもそも自律神経とは交感神経と副交感神経の2種類に分かれます。私たちの体は、この2つの神経のバランスによって、運動時に心臓の鼓動を早くして筋肉に大量の血液を送る、食後に胃腸の働きを活発にする、ホルモンの分泌をコントロールするなど、様々な役割を無意識に行なっています。交感神経が優位の時はいわば“戦う状態”で、鼓動を早めて血圧をあげて、全身の筋肉に血液をめぐらせる、興奮した状態とされています。一方、副交感神経優位とは“休む状態”です。栄養を補給、吸収して睡眠で体力を回復する、リラックスした状態とされています。 この2つの状態の切り替えがうまくいかないために、胃腸の働きが低下して便秘になる、めまい、動悸、息切れ、倦怠感や食欲不振といった症状が出現します。ご自身でできる対応は、いったんしっかりと休息をとり、その上で規則正しい生活を心がけること、まだストレスを除去することです。 それでも症状が改善しない場合は、一度医療機関の受診を勧めます。受診すべき診療科は一般内科や心療内科です。「ストレスで便秘になる」ときの正しい対処法は?
ストレスで便秘になる際の治し方は、「副交感神経優位にする」「腸内環境を整える」の2つが主軸になります。 まず「副交感神経優位にする」ために、睡眠時間をしっかり確保して強度の高くない運動を行う、ゆっくり入浴して体を温めるなど、ご自身でリラックスできる方法を試してみましょう。 また「腸内環境を整える」ためには食物繊維、水分を多く摂取することが重要です。市販の整腸剤も量が適切であれば問題ありません。 この2つに取り組んでも症状が改善しない場合は、ストレス以外の原因を再び調べる必要がありますので、医療機関で相談してみましょう。「ストレスで便秘になる」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ストレスで便秘になる」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
なぜストレスで便秘になるのでしょうか?
中川 龍太郎(医師)
強いストレスがかかると、交感神経優位の状態になります。前述の自律神経失調症の項目で解説した通り、交感神経優位とは“戦う状態”で、副交感神経優位が“休む状態” です。腸が活発に動くことは栄養補給につながるので、休む状態になります。つまり副交感神経優位のリラックスした状態でなくてはいけません。強いストレスがかかると副交感神経優位になれず、便秘につながると考えられています。
ストレスで便秘になったときの解消法を教えてください。
中川 龍太郎(医師)
解消法はしっかりとリラックスできる環境を整えることです。また食べ物の内容を変更することも重要です。
ストレスで便秘なのですがおすすめの食べ物はありますか?
中川 龍太郎(医師)
便秘に対する食事の考え方が重要なのは、「食物繊維を十分に摂る」「水分を十分に摂る」「腸内細菌を整える」といった点です。食物繊維を大量に摂れるよう野菜の量を増やし、水分を1日1~1.5Lは摂取し、ヨーグルトなどの食品で腸内細菌を整えることを勧めます。