「歩く振動でお腹が痛い」原因はご存知ですか？考えられる病気も医師が解説！

歩く振動でお腹が痛いとき、身体はどんなサインを発している？Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師：
中川 龍太郎（医療法人資生会 医員）

「歩く振動でお腹が痛い」症状で考えられる病気と対処法

歩く振動でお腹が痛い症状は、あまり経験したことがない方も多いのではないでしょうか。というのも、ただお腹が痛い場合と違って歩行の振動だけで痛みが出るというのは、かなり重篤なケースが多いのです。どのような疾患が考えられるのか、これからご説明していきます。

歩く振動でお腹が痛い症状で考えられる原因と対処法

歩く振動でお腹が痛い症状の場合、腹膜炎の可能性があります。
腹膜炎について詳細は後述しますが、端的にいえば腹部の臓器表面を被っている腹膜に炎症が起こった状態です。原因には腹部臓器の感染症（急性虫垂炎、胆嚢炎、膵炎など）が多く、放置しておくと全身に感染が広がり命に関わります。症状は歩くだけでお腹に響くような激しい腹痛、嘔吐、発熱などが特徴的です。
ご自身でできる対処法はなく、腹膜炎であれば緊急の状態ですので、まずは医療機関を受診してください。受診先の診療科は、消化器外科が望ましいです。ただし夜間休日であれば救命救急センターの受診も検討してください。

子供で歩く振動でお腹が痛い症状で考えられる主な原因と対処法

子供で歩く振動でお腹が痛い症状の場合、ウイルス性胃腸炎の可能性が考えられます。そのほか、下痢が見られない場合には虫垂炎や腸重積症の可能性もありますが、ここでは主な原因となるウイルス性胃腸炎を解説します。
原因になるウイルスには、エンテロウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどがあげられます。ウイルス性胃腸炎の基本治療は脱水の予防であり、脱水の程度の判断が大切です。大まかに嘔吐が1日1～2回であれば軽症、1日5回未満なら中等症、1日5回以上なら重症；かなり脱水に陥っていると考えます。ご自宅で出来る対策は、経口補水液を使い脱水の予防、補正を行うことです。
主な診療科は小児科です。脱水の程度が重症の場合は入院治療の適応となりますので、急いで受診してください。またいつもより不機嫌な様子や、お腹全体が板のように硬くなっている、高熱を伴う場合は先述の腹膜炎の可能性があり、緊急性も高くなります。早めに小児科を受診しましょう。

女性で歩く振動でお腹が痛い症状で考えられる主な原因と対処法

女性で歩く振動でお腹が痛い症状の場合、骨盤腹膜炎の可能性が考えられます。詳細は後述しますが、骨盤腹膜炎とは骨盤の中にある臓器（子宮、卵巣、直腸、膀胱など）を包む腹膜に炎症が起こった状態です。
原因は感染症（特に性感染症）、子宮内器具の交換不足、手術後の合併症となります。
吐き気や発熱に加えて、下腹部の痛みが特徴的です。腹膜に炎症が及んでいるため、歩く振動さえも響いて痛くなることが多いです。
骨盤腹膜炎に対しては早期に医療機関で治療を開始することが重要です。症状を自覚したら、早めに受診しましょう。診療科は産婦人科が専門です。ただし、高熱や悪寒戦慄、歩けないほどの腹痛が見られる場合は非常に重篤ですので、救急外来の受診も検討しましょう。

男性で歩く振動でお腹が痛い症状で考えられる主な原因と対処法

男性で歩く振動でお腹が痛い場合、急性虫垂炎の可能性が考えられます。急性虫垂炎とは、腸管の虫垂（盲腸）と呼ばれる部分に炎症が起こる疾患のことを指します。若い年代から高齢者まで幅広く見られ、やや男性に多い病気です。特徴的な症状として、食欲低下や腹痛（みぞおちから右下腹部へ移動する）、吐き気や嘔吐、発熱といった症状が特徴的です。
軽症であれば、抗菌薬の内服のみで治療が完了することもありますが、重症な場合は外科手術が必要な場合もあります。そして歩くだけでお腹が痛くなる場合は重症なケースが考えられます。受診すべき診療科は消化器内科、消化器外科です。歩行だけでお腹に強い痛みが響き、嘔吐や発熱も見られる場合は緊急性が高いため、夜間でも迷わずに医療機関を受診してください。

生理のときに歩く振動でお腹が痛い症状で考えられる原因と対処法

生理のときに歩く振動でお腹が痛い場合、月経困難症の可能性があります。月経の期間に起こる腹痛や腰痛といった、いわゆる生理痛（月経痛）によって日常生活に支障をきたす場合、月経困難症と診断され治療の対象となります。
症状は月経痛以外に、お腹の張りや吐き気、食欲低下、下痢、疲労感や脱力感、めまい、動悸、などがあります。
月経困難症は大きく原発性と続発性に分かれます。簡単に説明すると、原発性は月経そのものによる出血量が多いことによって起こり、続発性は子宮筋腫や子宮内膜症など臓器に何らかの異常があって、それに続いて起こる病態です。
治療法は、続発性であれば元々の原因になっている疾患の治療を行います。原発性の場合は、痛み止めを内服したり低容量ピルを内服して月経をある程度コントロールするという方法があります。
痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は、早めに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は婦人科です。月経困難症の場合は、緊急性はありませんので日中に受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「歩く振動でお腹が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

お腹全体が板のように硬くなっている場合は、消化器外科へ

お腹全体に痛みがあるだけでなく、板のように硬くなっている症状を指します。これを医学用語では“板状硬”と言い、非常に重要な身体所見になります。これまで紹介した腹膜炎は、腹部に一部分のみに見られる場合と、腹部全体に見られる場合がありますが、後者の方がこの所見を示し、かつ重症度が非常に高くなります。（汎発性腹膜炎）
このような際は命に関わるケースが多いため、すぐに消化器外科のある病院を受診しましょう。見つからなければ救急外来受診を検討してください。

受診・予防の目安となる「歩く振動でお腹が痛い」ときのセルフチェック法

• 歩く振動でお腹が痛い以外に嘔吐症状がある場合
• 歩く振動でお腹が痛い以外に発熱がある場合
• 歩く振動でお腹が痛い以外に悪寒戦慄がある場合

「歩く振動でお腹が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「歩く振動でお腹が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

腹膜炎

腹膜炎とは、その名の通り腹膜（お腹の臓器の表面を被っている膜）に炎症が起こった状態です。急性と慢性があり、急性腹膜炎は急激に発症して激痛を伴い、放置すると命に関わります。慢性腹膜炎は比較的緩やかに進行し、腹水といってお腹の中に水が貯まってくることが多いです。
腹膜炎になる原因疾患は、急性では胃・十二指腸潰瘍穿孔、腸管穿孔、急性虫垂炎、急性胆嚢炎、急性膵炎、などがあります。一方、慢性のものはがんや結核などが考えられます。
ご自身でできる対処法はなく、すぐに医療機関で十分な治療を受ける必要があります。急性腹膜炎の場合、基本的には緊急手術になります。原因となる疾患の治療をしつつ、腹膜に覆われた腹腔内を洗浄する必要があります。慢性腹膜炎の場合は手術になることは少なく、薬で治療したり、腹水を抜くための管を入れたりすることが多いです。
特に急性腹膜炎は、悪化すると全身に細菌が広がり、敗血症や多臓器不全といった命に関わる状態になります。経験したことのない激しい腹痛や歩くだけでお腹に響く、吐いてしまう、お腹が板のように硬いといった症状が見られる際は、すぐに医療機関を受診しましょう。消化器外科への受診が望ましいのですが、夜間休日であれば救命救急センターを受診しましょう。

骨盤腹膜炎

骨盤腹膜炎とは、先述の腹膜炎のうち、膀胱や直腸、子宮・卵管といった骨盤内臓器を包む腹膜（骨盤腹膜）に炎症が起きた状態です。骨盤腹膜炎の多くは、子宮頸管炎、子宮内膜炎、子宮付属器炎といった骨盤内炎症性疾患（感染症）が進行することによって起こります。
この骨盤内炎症性疾患の原因は、子宮内避妊器具(IUD)を交換せず長期装着していること、
開腹手術後の感染、そして近年増加している性感染症（クラミジア、淋菌感染）があげられます。骨盤内炎症性疾患自体は、無症状であったり軽症であるために罹患していることに気付かれないまま進行することもしばしばです。そして無治療のまま放置していると骨盤腹膜炎に進行してしまいます。
症状は急性のものだと下腹部全体の激しい痛み、悪寒を伴う39℃以上の発熱、吐き気や嘔吐などがあり、慢性期では骨盤内の臓器が癒着を起こし、下腹部の痛みに加えてお腹の張り、下痢、便秘などがみられます。
骨盤腹膜炎は先述の腹膜炎の一種であり、当然重症度の高い病態です。ご自身でできる対処法としては骨盤内炎症性疾患のうちに発見、治療することが重要です。無症状〜軽症のことも多いですが、一般的には月経中〜終了直後の下腹部痛や性交時痛、不正性器出血を伴うことが多く、これらが見られた際には適切に医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は産婦人科です。
また骨盤腹膜炎にまで及んでいると考えられる激しい腹痛や高熱などが見られた際は、緊急性が高いため、産婦人科でなくとも救急外来の受診を検討してください。

「歩く振動でお腹が痛い」ときの正しい対処法は？

ここまでご紹介した内容からわかるように、「歩く振動だけでお腹が痛い」場合、基本的には重篤なケースばかりです（軽症で済む可能性があるのは急性胃腸炎や月経困難症のみです）。
この症状の場合、まずはこれらの重篤なケースである可能性を否定することが重要です。ご自身で対応せず、早めに医療機関を受診して、その上で医師の指示を仰いでください。

まとめ　歩く振動でお腹が痛いときは消化器外科で相談

歩く振動でお腹が痛いときは、基本的に腹膜への炎症を考えることが一般的です。程度によっては即、緊急手術という場合もありますので早めに消化器外科を受診しましょう。

「歩く振動でお腹が痛い」症状で考えられる病気

「歩く振動でお腹が痛い」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

歩く振動でお腹が痛い症状の原因は、消化器系の病気だけでなく婦人科系の病気が原因になることもあります。ご自身では判断が難しいことや、軽いものと判断して実は重篤な病気であることもありますので、症状が改善しない場合は一度病院受診を検討してください。

「歩く振動でお腹が痛い」に似ている症状・関連する症状

「歩く振動でお腹が痛い」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「歩き振動でお腹が痛い」症状のほかに、これらの症状がある場合でも「腹膜炎」「急性虫垂炎」「骨盤腹膜炎」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。